カゲミ・ミツツキの島巡り冒険記   作:ルヴァンシュ

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 ふわっと、ゆるりと、息抜きを兼ねてやっていきます。よろしくお願いします。

○注意事項○
 ○何か (改訂等) あればここに書きます。


冒険のプロローグ

…………

…………

 

……ピロン! ピロン! ピロン!

 

「んっ」

 

 机の上に置かれている小型モニターから音が鳴った。のそのそと、部屋に散らばる小物を玩んでいた少女は手を止め、モニターをちらっと見た。

 

 =アローラ地方のククイ博士から連絡です=

 

「!」

 

 少女はがばりと立ち上がると、椅子に座った。応対ボタンを慌ててタッチする。

 

 そして映し出されたのは、白い帽子を被った男の顔だった。向こうの画面が傾き気味なのか、少々斜めに映っている。

 

「ちょっと待って……」

 

 そう言いながら、ククイ博士は画面を安定させた。

 わくわくを隠し切れずうずうずする少女は、安定するや否やすぐに、

 

「こ、こんにちは! ククイ博士!」

 

 と、手を振った。それに応え、ククイも手を振った。

 

「やあ、こんにちは! カゲミ、元気良いねえ!」

 

「はい! 元気です! 元気出ました!」

 

「ハハハ! その上擦りようから察するに、さっきまで、ちょこっとメンドーなことをしてたのかな?」

 

「あー、分かっちゃいましたか? えへへ……」

 

 カゲミはさっきから私物の整理をしていた。引っ越し用の段ボールに詰め込む作業――まだ11歳の少女であり、さほど多くの物を持っていないと言えども、辟易とする作業であった。

 

「分かるよその気持ち! 僕もそっち(カントー)に引っ越したことがあるけどさ、どれから手を付けていいのか迷うし、すぐ目移りしちゃうしで、全然進まないもんだよね」

 

「折角すぐそこに楽しいことがあるのに……お邪魔ったらないです」

 

「そういうものだよ! 楽しいことがあれば、同様に、面倒っちいことだってあったりするもんなのさ――けどその分、それから解放されるだけあって、楽しいことはより一層楽しくなるだろう?」

 

「ああ! なるほどですね! それもそうです」

 

「プラスに考えようぜ、カゲミ! そうすりゃ、人生楽しめる!」

 

「はい!」

 

 ここで、ククイは一度咳払いした。

 

 それはさておき。

 

「カゲミ!アローラに引越しする日がいよいよ近付いてきたね!」

 

「はい! もうすぐですっ!」

 

「良い声だねえ、こっちまで楽しくなってくるぜ――実際のところ、実際に体験した方がよっぽど良いけれど、その前に、アローラのことをちょこっとだけ紹介しようと思ってね。連絡した次第だよ」

 

 モニターに、別ウィンドウで地図が映し出された。四つの島と一つの人工島で構成された地方――アローラ地方だ。

 

「アローラは幾つかの島が集まってできている地方。それが理由なのか、珍しいポケモンばかりだぜ!」

 

「珍しいポケモン! えっと、カントーにはいないポケモンも、沢山居るって聞きました!」

 

「勿論さ! 例えばそうだね……この子とか!」

 

 そう言うとククイは、手の中の丸いボールを上に向かって投げた――モンスターボール。ポケットモンスター、縮めてポケモンを捕まえておくための道具である。

 ボールが開くと、中から光と共に、犬のような姿をしたポケモンが飛び出した。クリーム色の毛並みで、首元の毛には小さな岩が幾つも付いている。

 

「わあ!?」

 

 カゲミは目を輝かせた。

 

「可愛いポケモン!」

 

「イワンコだ。こいぬポケモンのイワンコ。可愛い見た目だけれど、ガッツあるヤツなんだぜ! 隙あらば……あいてっ!!」

 

「きゃうんっ!」

 

 尻尾を激しく振りながら、イワンコがククイの手に噛み付いた。けれどククイは満足げな顔。

 

「痛いなあ――でも、どうした、前より威力が上がっている! 良いじゃないか、ナイスな『かみつく』だぜ、イワンコ!」

 

「きゃうんっ!」

 

「え、えっと!? 博士、大丈夫ですか!?」

 

「おおっと! 要らない心配、掛けさせちゃった? 僕は平気、ほら、ピンピンしてる」

 

「いや、血出てますよ」

 

「いつもの事さ。何の問題もないぜ!」

 

「問題あると思いますが!?」

 

「カゲミには、言ってなかったかな? 僕はポケモンの技を研究しているんだぜ――技ってのは、観察も大事だけれど、それと同じく実際に体験して見るのも重要なのさ!」

 

「は、はあ……! なるほど!?」

 

 受け入れ難いが理解したカゲミ。少なくとも自分は技を受けたくないなあ、と思った。

 

 イワンコはぴょん、と、ククイの肩に乗っかった。

 

「と、このように、ここでしか見られないポケモンは沢山居るぜ! 楽しみにしててくれよな!」

 

「はい! 私、早く直に会いたいです、イワンコに! ……噛まれるのは、ちょこっと遠慮しますけれども」

 

「ハハハ! 僕たちみんな、君の到着を楽しみに待ってるぜ! 勿論、島のポケモンたちもね!」

 

「きゃん! きゃん!」

 

「はいっ!」

 

 ククイは頷き、ちょっと腕時計を見た。にやりと、悪戯っぽく笑う。

 

「あんまり話していると、より時間が掛かっちゃうね――カゲミ! 楽しみ、募らせておいてくれよな! それじゃあ、切るぜ」

 

「あっはい! さよなら!」

 

 ククイは手を振ってから、通信を切った。モニターのデスクトップには、南国的な画像が映し出されている。

 

「は〜〜〜〜」

 

 カゲミは、モニターの横にあるガイドブックに手を伸ばした。何となしに開いたページには、アローラ地方の写真と、ポケモン保護団体《エーテル財団》を特集した記事が……。

 アローラ地方……いったいどんなところなのだろう。カントーとは全然違う島国――豊かな自然に囲まれた南国――愉快適悦パラダイス! カゲミは遠い地に想いを馳せるのであった。

 

 ……しかしながら。

 

「カゲミ、そろそろ引越しの準備始めましょー!」

 

「…………あ」

 

 そのような余韻に浸る暇はあんまりなく――今は、楽しむための下準備に勤しむべきときである。カゲミはさっきとは裏腹に、より一層重い気分で、ごちゃついた床を見るのであった。




 ????????? ▼

 ――純白の壁に囲われた、とある研究所内。

 近未来的な雰囲気の充満する白い世界を駆ける一人の少女がいた。美しい金色の髪を持ち、白いワンピース、白い帽子をかぶっている。灰色のショルダーバッグは大きく膨らんでおり、その中で何かが胎動しているようにも見えなくもない……。
 汗をかき、駆ける少女。その様子は尋常ではなくただ事ではない。実際、彼女の背後からは――。

「待てーっ!!」

 白い服を着た男たちが、迫ってくる。

 少女は必死にリフトへ駆け込み、上昇した。その先は屋外であり、人工的な白とは対極の、しかしこれもやはり人工的な――作られた自然に囲まれたエリア。アローラ特有の月光が降り注ぐ空も、透明なドームで覆われている。

「はぁ――はぁ――――っ」

 少女はバッグの中を見た。中に居る何者かは、不安げな表情を覗かせた。
 追っ手は居ない。逃げるなら急いだ方がいいけれど、かと言って全速力で走っても、今の疲労では追いつかれる……少女は歩き出した。ゆっくりと……見つからないように……。
 しかし、見つからない訳はないのだ――暫く歩いたところで、後ろから。

「居たぞ! 盗っ人だ!」

「っ!!」

 背後から追ってくる二人の男たち。少女はまた走り出した。疲労は、ちょっとマシになった。出口まで走り切れば――!

「そこまでだぞ!」

 だが、そうは問屋が卸さぬようで、曲がり角を曲がった先に、白服の男が手を広げて立ちふさがる。

「ああっ……!」

 少女は振り返ったが――そちらにも、追っ手は居る。

「そんな……!」

 挟み撃ちにされてしまった……!

 ゆっくりと近付いてくる三人の男たち。けれど少女に打つ手はない。

「さあ……そいつを返せ」

「そいつは我々の保護下にある、大切なポケモンだ」

「っ……い、いや……」

 手すりに後退りする。最早逃げ場はない。

「だ、だめ……です……っ!」

 ああ、どうすれば。
 どうすれば逃げられるの。どうすれば、この子を逃すことができるの――!
 少女の、そんな思いに呼応したのか――或いは、純粋にバッグの中の何かが危機を察知したからなのか――突如、バッグから虹色の光が吹き出した。

「なんだ!?」

 光はどんどん大きくなり、眩いほどに明るさは増してゆく――男たちは目を伏せた。そして、光は少女を包み込むと――ほんの一瞬にして、その姿を消した。

「え!?」

「に、逃げられた!?」

 男たちは辺りを見回すが、どこにも居ない。逃げ場はなかった筈なのに?
 唖然として、男たちは空を見上げた。そこにあるのは人工的なガラスのドームと、それを物ともせず光を送る、まん丸い月だけであった。
 
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