○告知事項○
何かあれば書きます ▼
【第1話】
3ヶ月後…… ▼
煌々と輝く星々。豊かな海と自然に囲まれた南国パラダイス。そんなアローラ地方の南西部にあるこの島の名は《メレメレ島》。
そのメレメレ島の北部に、まるで白いコテージのようで、そこそこ大きな家がある。最近建ったそこに、カゲミたちは引っ越して来たのである。
太陽の隠れる夜であれども、南国的な雰囲気に一切の翳りはない。静かに光り、癒してくれる月は、新月ゆえに出ていないけれども、それはそれで違った趣があった。
テラスに女性が出て来た。カゲミのママである。その後ろからは、ばけねこポケモンのニャースが付いて来る。額の小判が特徴的だ。
「ん〜! よく寝たわ!」
両手を広げ、大きく伸びをする。
「よーし……っ! ママ、片付けるわよ〜!」
テラスの傍に積まれた幾つかのダンボールを見て、気合いを入れ直したようだ。家具は配置済みであったけれども、まだ小物類などはダンボールの中にある。
「ニャース、カゲミ呼んできて!」
「ぬにゃあ!」
???????? ▼
――ここは、どこだろう?
私は首を傾げた。ついさっきまで、私は部屋にいたはずなのに。周りを見回したところ、どうやら全然違うところに居るみたい。
「……あ、そうだ。私、寝ちゃったんだ」
そうそう思い出した――アローラに着いてから、部屋にダンボールを運んで、それからどっと疲れに襲われちゃったから、一休みしようと眠っちゃったんだ……。
ということは、これは、夢か。
アローラに来て初めての夢! わあ!
……と、興奮したいところなんだけども。
「なにここ……気持ち悪い」
変な……洞窟? みたいなところに私は居た。得体の知れない鉱石が壁に埋まっていて、綺麗に光っている。けれども、どことなく、空気がどんよりとしていて……重苦しい。
「…………」
取り敢えず、進んでみることにした。どうせ夢だと分かっちゃったのだから、まあ、危険は無いよね。
そこかしこに、捻じ曲がったような、奇怪な岩が……いや、植、物……? かな? 分かんないよ……ともかく、奇妙な物体が生えて、或いは突き出していた。不気味すぎる雰囲気。
道幅は狭くないけれど、妙な圧迫感があった……いわゆるプレッシャーというやつ? こういう感覚のことを言うんだろうなと思った。
暫く歩くと、上の方から光が射している場所に来た。行き止まり。
「あれ〜……?」
変な場所。出口はどこなのだろう?
もしかして、天井の穴が出口とか……ポケモンも居ないのに、どうやって出ろと。無理です。
うーむ、とんでもない夢だ。目覚めを待つしかないだなんて。誰か早く起こしてくれないかな〜。
座るのに適した石があったので、取り敢えず座ってみた。ずっと立っていても疲れるから。
すると。
なんと。
「っ!?」
石がずぶりと沈んでしまったではないか――いや、石だけじゃあない、周りの景色が、光が、全て沈んでゆく。
「なにこれなにこれ……!?」
重苦しくも綺麗だった世界は、ドロドロに混じり合い、ドス黒い泥のようになって、私を呑み込んでゆく。覆いかぶさってくる得体の知れない感覚が、ただただ不快だった。
「じぇるるっぷ「じぇるっ「じぇるるっぷ「じぇるっぷ「じぇ「じぇるるっぷ「じぇる――」
何かが蠢くような音が聞こえた。ドス黒くなった世界はだんだんと暗闇に包まれてゆく。その中で、じゅるじゅるとでも言うような音ともに、私は真っ白い、不定形の影を見た。それは闇が深くなるとともに形を変え、真っ黒い、人型になっていった。
「じぇるる「…………「じぇるっぷ「…………「じぇるるっぷ「…………「………………
落ちてゆく。黒い人型の影が暗闇に呑まれてゆく。
怖い――いったいどこまで落ちてゆくのだろう? 落下する感覚だけがひたすらに続いているのだ。怖い。どうしてまだ目が覚めないの?
早く起きて。
早く起きたい!
「ぬにゃ!」
「ん!?」
と、その時、思いが通じたのか、聞き覚えのある声がぼんやりと聞こえた。
「ぬにゃあ!」
間違いない、うちのニャースだ!
と思った瞬間、落下する感覚が一瞬にして消えた。その代わり、現実的な痛みが襲ってきた。
「たにゃあ!!」
カゲミの部屋 ▼
「あ痛っ!?」
思わずがばりと起きた。慌てて周りを見たが、うん、見馴れた物ばかりだ――レイアウトはちょっと見馴れないにせよ。来たばかりだから。
「もー、ニャース……ひっかかないで〜」
「ぬにゃ」
別に血は出ていないものの、ちろっと痛む腕をさすりながら、ニャースに注意した。
じとっ、と私を見るニャース――あら、この様子だと、結構起こそうと奮闘してくれたみたい? なんてこと、さっと起きなかった私が悪いのでは。
「あー、ごめんね。ありがとう、ニャース……おはよう」
「ぬにゃ〜!」
私は頭を掻きながらベッドから降りた。と、動いてみると何だか服がべたべたする。脱いでみると、汗でびっしょりになっている。うわあ……。
「お着替えしないと……」
クローゼットから替えの服を取り出した。アローラに来たら着るつもりで買った新しい服だけれど、まさかこんな形で着ることになろうとは。
ベージュ色で、花柄のカットソー。緑色のカジュアルなホットパンツ。ああ、アローラに来たんだ! って、感じがする!
「ねーねーニャース、似合ってる? 似合ってる〜?」
「ぬにゃあ!」
表情から察するに、きっと似合ってるって言ってくれてるんだと思う。うん。そうだろう。
「あーっと……あ、もしかして、ママ呼んでるの?」
「ぬにゃ!」
「あー、きっと手伝いだぁ〜。服の洗濯は後回しかな」
はぁ……初っ端からあんな怖い夢を見るだなんて、私ってばツイてない――なんて、もう殆ど内容覚えてないんだけどね。
一階・リビング ▼
「おはよう、ママ〜」
「ぐっすり寝てたわね。もう元気になったでしょ?」
「んー、まあまあ」
楽しそうに鼻歌交じりで、ダンボールの風を剥がしているママ。えへへ、この分なら私が手伝う幕はなさそうだな。だといいな。
元々このアローラ地方への引っ越しはママからの提案だった。どうやら長年の夢だったらしい――けれどうちは母子家庭だったので、アローラまで引っ越しするお金は無かった筈だった。
が、なんとポケモンくじに運良く当選したこと、ククイ博士と知り合えたことなど、色々重なって、引っ越しが実現したのであった。ママはこの件について、一生分の幸運を使い果たしたと言っていた。そりゃあ……。
「ねえミヅキ、アローラのポケモン、楽しみ?」
「もちろん! カントーでは見られないポケモンがあちこちに居るんでしょ?」
「そうなの! あたしも早く会ってみたいわ――なんてったって、リゾートとしても有名なアローラ地方!暮らしてるポケモンたちも、みんなゴキゲンに決まってるわよ!」
「気合い入ってるね〜! ママ」
とっても楽しそうで何よりである。かく言う私も、それに負けないくらい、楽しみなんですけどね!
と、その時、ピンポーン、とチャイムが鳴った。
「あら、チャイム。きっとククイ博士だわ。ミヅキ、ちょっと出て」
「はーい」
と言って、ドアを開けましょうと歩きだしたところ、なんとドアを勝手に開けて勝手に入って来た。
「アローラ!!」
白衣を来たククイ博士は陽気にそう言って手を挙げた。いや勝手に入ってくるのは如何なもの? ちょっと動揺しながら、真似して手を挙げた。
「ア、アローラ〜!」
「こうして実際に会うのは、初めましてだね。カゲミ――改めて自己紹介を! 僕がククイです。よろしく!」
「あっはい! こちらこそ――カゲミです。よろしくお願いします!」
「アローラ地方への長旅、お疲れ様! 時差ぼけは大丈夫かい? アローラとカントーは遠く離れているからね――こっちは昼で、驚いただろ? なんて、今はもう夜だけど」
「ククイ博士! 今朝、到着しましたわ」
「たにゃ!」
今度はママが挨拶した。ニャースも一緒に。
「ああお母さん!改めまして!ククイと申します。ようこそ、アローラへ!」
「カントー地方で見たジムリーダーとのポケモン勝負!今でも思い出せます!あれでアローラのポケモン好きになって、来ちゃいました」
「いやあ! ポケモンの技を研究するためとはいえ、ジムリーダーたちにいいようにやられましたけどね!」
ママがアローラ地方に来たがっていた理由が、まさにこれ。私はまだ小さかったし、知らなかったんだけど、どうやらククイ博士、カントー地方へ一時期引っ越していたらしい。それで、カントー地方にある八つのジムに挑戦して――なんとポケモンリーグ出場まで行ったらしい。流石に、チャンピオンのワタルさんには負けたらしいけれど……それでも凄い。
「さて、カゲミ!」
博士は私に向き直って言った。
「隣町に行こうぜ! そこで『しまキング』からポケモンを貰うんだ!!」
「!!」
結構唐突だったので、一瞬言葉を失った。
「し――しまキングって」
「ああ! しまキングはね、ポケモンを戦わせたら敵なしのポケモントレーナーさ! リリィタウンでは、冒険する子供のために、しまキングがポケモンをくれるんだ」
「まあ! ポケモンをくださるの? しまキングって凄いのね!」
ママが嬉しそうに手を叩いた。
「ほら! ミヅキ、準備をしなくっちゃ!」
「あ、えっ……」
「貴女の部屋のダンボールに帽子とバッグが入ってるはずよ。あと机の上に、お父さんの手帳、置いてなかった?」
「う、うん。分かった」
「おっ! どんな帽子か、僕も楽しみだぜ!」
ククイ博士はにやりと笑った。お世辞とかではなく、心からそう思っているというのが雰囲気から伝わってくる。
取り敢えず、私は部屋に帽子などを取りに行った。
カゲミの部屋 ▼
「ふぅ……」
動転した気を鎮めるため、少し深呼吸した。ふう。
……ついに、私、ポケモントレーナーになるんだ〜っ! ちょっと気が早いけれど、はやる気持ちを抑えられない。全然気持ちが鎮まってない!
10歳になると、子どもたちはみんな、自分のポケモンをゲットする事が許される。けれど、私は今までポケモンをゲットしたことはなかった。いわゆるキープというやつもしてもらっていない(因みに、ニャースはあくまで、ママのポケモン)。
それは、私の希望でそうなっていた――私は、冒険の最初にゲットしたポケモンを、初のパートナーポケモンにしたい、と思っていたから。
私は机の上の手帳を手に取って、パラパラとめくった。
この手帳は、お父さんがくれたものだ――昔、お父さんも、カントー地方を冒険していたらしく、そこで得た旅に役立つ知識とかがメモされている。私は手帳をポケットに入れた。
「ふふふっ……!」
ニヤニヤ笑いながら(我ながらこんなににやけるなんて、と思った)、赤いニットキャップとショルダーバッグをダンボールから出した。ママが選んでくれた帽子とバッグ。かわいい!
そして装着! 似合ってるのかな? ニャースは一階に居るから、ちょっとどんな具合か、分からない。けど、大丈夫だよねきっと!
後は、ポケッチよし、ホロキャスターよし。ママのセンスを信じて、私は下の階に降りた。
一階・リビング ▼
一階では、ママと博士が談笑していた。私抜きで何を話してるのかなと、ちょっぴり仲間外れにされたような気分……になったけれど、よくよく聞いてみると、私が交じっても口を挟む幕がなさそうな話だったので、別にいいやって思った。
「あら、準備ばっちりね! 似合ってるわよカゲミ!」
「おっ、良い帽子だね!」
「ありがとう、ママ、博士」
降りてきた私を見て、ママと博士が言った。ちゃんと似合ってるみたいで良かった……私が選んだわけじゃないけれど、似合ってなかったら、それはそれでやっぱりショックだからね。
「よーし、行こうぜ! リリィタウン! しまキングからゴキゲンなポケモンを貰うんだ!」
ククイ博士は腰に手を当てて快活に笑った。気持ちのいい雰囲気の人だな〜って思う。
「いってらっしゃい! ポケモンが来る前に、ママ、ばっちり片付けておくから!」
「にゃあ!」
やったあ! じゃ、なくて、ありがとうママ!
……どうしよう、自分だけ楽しんじゃうっていう罪悪感もあるけれど、掃除しなくていいから楽出来て嬉しいっ! っていう感情もあるよ……。
なんて悪い子なの、カゲミ。
「ありがとう、ママ――じゃあ、いってきます!!」
と思うものの、ごめんなさいも言わずに、ククイ博士を追って私は外に出た。ポケモンを貰えるのが嬉しくて、つい言い忘れてしまった――自分に都合のいいことばかり考えちゃう私はやっぱり、悪い子なんだろうな。
カゲミのポケモン紹介 ▼
「カゲミです!
「今回紹介するポケモンは、ばけねこポケモンのニャース! おでこの小判がチャームポイントのポケモンです!
「まあ紹介と言っても、私、あんまり本とか読まないし、詳しい生態とか、そういう期待には応えられないんだけど……とりあえず今回は、ママのニャースを見て思ったことをお話しします」
「えっと。ニャースって、光るものには目がないらしくて、一旦そういうものを見つけると凄いスピードで捕まえに行くの。昼間は殆ど寝てて、ヌオーみたいにぽや〜っとしてそうなんだけど、全然! あれは完全にハンターのそれだったよ。狩る側の動きだよあれは。止まってる間はじっと見てるんだけど、ちょろっと動いた瞬間に、バッ! って。見てて惚れ惚れするよね〜!
「あと、ニャースはコタツで丸くなるって言葉もあるように、あったかい所が好きなのかな? うちのニャースってば、全然自分の寝るところで寝ないで、ママの布団とか、私の布団とかにすぐ入って来ちゃうの! で、本当に丸くなって寝ちゃうの。でも、寝付くまでは布団を引っ掻いたりしてるから、ちょっと傷がついちゃうのが難点かな……。
「そうそう、私の部屋にメタモンのクッションがあるんだけどね、あれ、ニャースが頻繁に引っ掻く所為であちこち破けてるんだよね〜。あれってどういう意味なのかな? 爪を研いでるのかな? でも研いでるようにも見えないんだよなあ……。
「……こんなかんじかな。紹介になってないような気がするし、改良の必要性を感じるね、このコーナー。どうしたものやら。
「それに一人でやるのに、早速限界を感じたよ。誰か一緒にやってくれる人、居ないかな〜?」
「次回、『リーリエとほしぐもちゃん』。一応次回予告も兼ねてるからね、このコーナー。申し訳程度に」
「まあそんな訳で、手探り状態ですけれど、ふわっとやっていきまーす。次はもっとちゃんと出来ればいいなあ……なんてね!」
エンドイラスト ▼
【挿絵表示】