白髪剣士の気ままなぶらり旅   作:Takari

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2話 1人海の上

 

 

天気は曇り一つない快晴。青々とした空が辺り一面を覆われている。

 

風は少し強めだが出航にはもってこいの日和だ。

 

町の港に俺が使っている小舟が停泊している。

 

何時ものように黒い着物を着た俺は、小舟に荷物を全て積み込み一息ついてズラリと並んでいる町人達の方を向く。

 

「もう行ってしまわれるんですね。もう少しゆっくりしていってもいいんですよ?」

 

町長が代表して前に出て名残惜しそうに言うが、俺は首を小さく横に振って笑む。

 

「居たいのは山々なんですが俺は旅人ですからね。いろんなところを巡るんです」

 

「・・・・・・そうですか。ならば止めるわけにはいきませんね。旅人は自由ですから」

 

「ありがとうございます。━━━━あ、そうだ。また訊くの忘れるところだった」

 

危ない危ない!ここに来た目的をまた忘れちゃってたよ!

 

俺は慌てて懐から一枚の写真を取り出して町長に見せる。宿の中で見ていた集合写真ではなく、生き残った三人の部下が写っている写真だった。

 

「この三人見ませんでしたか?俺の連れなんですけど、はぐれちゃって・・・・」

 

俺は呆れたように溜め息をつく。

 

まったく、何をすればこんなあっさりはぐれちゃうんだか・・・・・。

あの二人の暴走娘を真面目くん一人で担うのは少々厳しいだろうなぁ。

 

俺は内心で苦笑し、真面目くんに同情する。

 

町長はその写真をまじまじと見て頭を捻り、記憶を振り絞るがどうやら見かけたことはなかったらしい。

 

周囲にいる町人たちに問いかけてみても結果は同じで、皆が申し訳なさそうな顔をする。

 

「すみません、どうやら誰も見た人はいないようです。・・・・・・・もしかしたら、ローグタウンのように大きな町に行けば知っている人がいるかもしれません」

 

「ローグタウン・・・・・“始まりと終わりの町”か」

 

確かに、あそこなら広いし一人くらい目撃した人もいるかな?

 

それに、ローグタウンと言えば()が任されていたはず。俺が辞めたあとも代わってなければの話だけど。

 

三人を探すついでに久しぶりに会いに行ってみようかな。彼のことは別に嫌いじゃないし。

 

俺は一人で暫く考え込んで次の目的地を決定する。

 

「じゃあ、ローグタウンに行ってみますね。本当に何から何までありがとうございました!」

 

俺はそう言って船に乗り込み、帆を張って出航の準備を始める。

 

全ての準備が整い、船を出そうとすると一人の少女が此方に駆けてくる。

 

ん? あの娘は確か人質だった・・・・。

 

「白いお兄ちゃん!これあげる!」

 

「これって、お守り?」

 

少女が俺に手を突き出して、木でできた手作りのお守りのような物を渡してきた。

 

「あのとき、ちゃんとお礼を言えなかったから・・・・・」

 

「なるほど、そう言うことね」

 

怖がられて嫌われちゃったかと思ってたけど、しっかりしたいい娘だね。

 

部下三人(おバカたち)にも見習ってほしいよ。

 

俺はしゃがんで少女の目を優しく見て、頭をそっと撫でる。

 

「ありがとうね。これ作るの大変だったでしょ? 俺なんかのために、本当にありがとう。大切にするね」

 

俺はそう言って、早速『白夜』の鞘に紐で結んで固定させる。これなら無くさないし肌身離さず持ってられるね。

 

俺がそれを見せてあげると少女は無邪気にニコっと笑う。

 

「うん、ありがとう!白いお兄ちゃん!」

 

「どういたしまして!それじゃあ、そろそろ行くね」

 

俺はそう言って船の錨をあげて出航させる。

町人たちは笑顔で手を振って見送ってくれた。俺も見えなくなるまでずっと手を振り続けた。

 

 

 

 

 

 

とある島

 

 

そこには三人の男女が食堂で食事をとっていた。

 

その内の青色の髪をした少女が、食後のデザートを食べながら二人に問いかける。

 

「ねーねー。たいちょーどこ行っちゃったんだろーね?」

 

「そうですね、そこまで遠くには行ってないと思うのですが・・・・・・・・って、あなたが勝手にどこかに行くからはぐれたんでしょうが!?」

 

他人事のように言う青髪の少女に激怒する金髪の少年。

 

「まあまあ、これでも飲んで落ち着きなさい」

 

「はあ、ありがとうございます。頂きますね」

 

金髪の少年は疲れきった様子で黒髪ロングの少女から渡された美味しそうな紅茶を一口飲む。

 

最初はごくごくと普通に飲んでいたが、次第に顔を真っ赤にさせていく。

 

「か、辛ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 水っ!水っ!」

 

「はい、みずー」

 

青髪の少女が渡した水を引ったくって勢いよく喉に流し込む。それでも足りなかったのか、二杯目、三杯目も飲み干していく。

 

「はあっ、はあっ、し、死ぬかと思った・・・・」

 

「あら、タバスコ入れてみたのだけどイマイチだったかしら?」

 

「何て物を入れてるんですか!? 普通の紅茶を下さいよ!?」

 

「ははは、わがままだなぁー」

 

二人の少女に始終弄られ続けている少年のストレスは限界で、胃がキリキリと悲鳴をだしてきている。

 

「隊長・・・・・・俺、倒れちゃいますよ・・・・。本当にどこにいるんですか? 早く助けてください・・・・」

 

少年の心からの救援は無惨にも届かず、風に流されてしまった。

 

 

 

 

 

 

「はっくしょん!」

 

俺は誰もいない海の上で大きなくしゃみをする。

 

誰かが噂してるのかな?・・・・・・・案外、真面目くんの嘆きだったりしてね。

 

ま、そんな訳ないか、と直ぐに頭から追いやるって『白夜』の手入れに集中する。

 

「よし、完璧!」

 

白い鞘から抜き出された『白夜』の黒い刀身が日光に当てられて輝く。

 

俺が持つ『白夜』は黒刀と呼ばれる種類の刀だ。

 

何でも、恐竜に踏まれても一ミリのズレも起こさない頑丈な刀だそうだ。

 

中将時代にとある海賊を襲撃した時、すごく大事そうに保管してあったからパクっちゃったんだよね。

 

いやー、まさかこんな立派な刀だとは思わなかったよ。

刀鍛治の職人さんに見せたら目玉が飛び出るくらい驚かれたね。

 

その職人さん曰く、『白夜』は最上大業物十二工の内の一本らしくて、流石にそれを聞いたときは俺でもビックリさ。

 

何せ世界にたった十二本しかない刀だよ?

 

まあ、俺以外にも持ってる人は一人だけ知ってるけど・・・・・・。

 

俺はかつて“暇潰し”と称した手合わせを、かの有名な王下七武海の一人━━━━世界最強の剣士である『鷹の目のミホーク』に吹っ掛けられた時のことを思いだし、身震いする。

 

一太刀振るえば山が一刀両断。

 

もう一太刀振るえば海が裂け、雲が吹き飛ぶ。

 

手合わせする前の島は木々が生い茂ってたのに、終わってみれば更地だもんね。無人島で良かったと心底思う。

 

本当、何をしたらあそこまで強くなれるもんかな・・・・。

 

・・・・そういう俺もよく生きてられたと思うけど。

 

自分が人外の領域に足を突っ込んでしまったのではないかと内心焦ったけど、俺以上に強い人は沢山いるからね。

 

俺はまだまだ普通の人間・・・・・・・だと思う。

 

少々不安になってきた。

 

俺は苦笑しながら『白夜』を鞘に戻して、定位置である左腰に差し込む。

カランカラン、と少女から貰った木製のお守りと鞘が触れあって心地いい音色が奏でられる。

 

「心が安らぐなぁ・・・・・・・っと、あれはニュース・クーかな?」

 

一羽の新聞を配達しているカモメ━━━ニュース・クーを発見した俺は、新聞を購入した。

 

「どれどれ・・・・?」

 

パラパラと捲っていくと、革命軍がどうだの世界政府がなんたらと色々書かれており、興味深く見ていると一枚の紙がハラリと落ちる。

 

「ん?」

 

俺はそれを拾い上げて内容を見る。

 

「へぇ、これはガープさんもお怒りかな?」

 

落ちた紙に書いてあるのは『WANTED』と言う文字、人が写っている写真とその人物の名前、それに金額だ。

 

 

━━━つまり

 

 

「指名手配、海賊のモンキー・D・ルフィ・・・・ね。海軍の英雄のお孫さんが海賊デビューか。しかも最初から三千万ベリーか、まあまあだね」

 

“まあまあ”と言いつつも、ガープさんのお孫さんには興味が少なからず湧いてくる。

 

しかも、この無邪気な笑顔ときたもんだ。ますますガープさんっぽくて面白いじゃん。

 

絶対センゴクさんがため息ついてるよね。容易に想像できてしまう。

 

「・・・・モンキー・D・ルフィ。いつか、話してみたいな」

 

まあ、その前に三人を見つけ出さないといけないんだけどね。

 

 

さてと、そろそろ着きそうかな。

 

俺は凝り固まった体をほぐすように両手を天に向けて背伸びをする。

 

「ここにいてくれよ、三バカさん?」

 

俺は半ば祈るようにそう呟き、船を港に停泊させてローグタウンに上陸した。

 

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