不機嫌になったフィーの機嫌を取り戻すために、シェードたち一行は大通りに出て手頃な飲食店で食事を摂ることになった。
「ん〜!おいし〜!」
皿に盛り付けられた料理が吸い込まれるようにフィーの胃袋へ入れられていき、大きめの四人テーブルには大量の空皿で埋め尽くされている。
「ね、ねえ、フィーちゃん・・・・?そろそろお腹いっぱいになったんじゃない?」
「ぜーんぜん足りないよー。まだ腹五分目くらいー」
フィーの細い体のどこに食べた物が詰め込まれているのか知りたいところだが、シェードは引きつった笑顔で財布を覗く。そして絶望した。
「ドンマイです、シェード隊長。━━━━あ、ご飯おかわりくださーい!」
「自業自得よ、隊長さん。━━━━私はこの苺のタルトをお願いするわ」
「君たち、奢りだからって遠慮をしようとは思わないの!?」
フィー程ではないがどんどん料理を注文していくキースとアイリスに、シェードとシェードの財布は悲痛の叫びをあげた。
そして、漸く三人が食べ終わって(シェードは食欲無し)、四人は町をぶらりと観光することになった。
途中、何度もフィーとアイリスが勝手にどこかに行こうとしてキースとシェードが慌てて引き戻したりと、暴走娘二人のせいで
色々と見て回り、町の中心部にある噴水広場に到着したシェードたちは、端に設置されている横長のベンチで休憩をする。
「シェード隊長・・・・疲れましたね・・・」
「そうだね、キースくん・・・・。心身ともに疲れたよ・・・・」
「男のくせに根をあげるのが早いわねぇ。レディのエスコートくらいちゃんとしなさいよ」
アイリスは自分の横に座っているシェードとその奥に座るキースを呆れるように言う。
男二人は『頑張ります・・・・』と、苦笑をして返事をした。
すると、シェードの膝の上に座っているフィーが彼の着物をクイクイと軽く引っ張る。
因みに、フィーがシェードの膝の上に座るのは四人にとって当たり前であり日常と化してきている。
それ以外にも、一緒に寝たりなどをしているため、周りからは兄と妹または父と娘のように思われている。
ただし、フィーはシェードに対して違った感情を抱いているのかもしれないが・・・・・・。
「たいちょー、あれ何ー?」
「あれは死刑台だよ。海賊王『ゴールド・ロジャー』が実際に処刑された特別物らしいね」
フィーの指差す方向には随分と高さがある死刑台が一つある。この広場も人で埋め尽くされているが、すぐに見つけられるほどの存在感。
道行く人たちは見慣れているのか特に視線を奪われることなく素通りしていく。
「じゃあ、あの人何してるのー?」
「うん?あの人・・・・?」
フィーの続く何気ない質問に答えようと、シェードは再び指差す方を見て目を細める。
キースとアイリスも気になったのか一緒になって同じ所を見つめる。
「男の人が、死刑台の上に登ってる・・・・・・のでしょうか?」
「ええ、
二人は訝しげな表情になってそう言うが、シェードは徐に懐から取り出した一枚の紙をじっと見る。
そして、今度は死刑台に登っている麦わら帽子を被った男を確かめるように見据える。
その行動に疑問を持ったキースとアイリスとフィーは、シェードの見ている紙を覗きこんだ。
「モンキー・D・ルフィ・・・・・指名手配書ですか」
「そう、そして彼はガープさんのお孫さんでもあるんだ。まさか、こんなところでお目にかかるとはね」
「えっ!? 海軍の英雄に孫がいたんですか!?は、初めて知りましたよ!!」
シェードの口から衝撃の事実を聞いたキースは目が飛び出そうなくらいに驚く。
「あら、私は知ってたわよ? 前に隊長さんの付き添いでガープ中将の元に行ったときに楽しそうに孫の話していたわ」
「フィーもゲンコツじぃじから聞いたー」
「そ、そんな・・・・!? 俺、ガープ中将に一度も面と向かってお会いしたことがないのに!」
自分1人だけが海軍の英雄に会ったことがないという事に酷く落ち込むキース。
彼は、実はガープのファンであり目標でもあるのだ。過去にガープが拳で敵を沈めるその姿に目を奪われたそうだ。
シェードは両手を合わせてキースに謝る。
「あ、ああ、タイミングが悪くて連れていけなかったんだよ。ごめんね?」
「・・・・いえ、大丈夫です・・。はい、大丈夫ですとも・・・・・」
明らかにテンションがだだ下がりのキースに申し訳なさそうに何度も頭を下げるシェード。
その時━━━━
ドゴオォォン!!!
「「「「っ!?」」」」
突如として響き渡る爆発音にシェードたちは瞬時に警戒心を強める。
そして、恐らく爆発したであろう噴水の一部が勢いよく吹き飛び、シェード達から少し離れた場所にいる少年とその父親の元へと襲いかかる。
避けようとしても間に合わないと思った父親は、咄嗟に息子を守ろうと包み込むように抱き締めて目をぎゅっと瞑る。
しかし、いつまで経っても瓦礫は襲いかかってこない。
不思議に思った父親は恐る恐る片目を開けて確認してみるが、そこには
━━━否、木っ端微塵にされていた。
周囲の人たちも当たるだろうと思い、目を瞑っていたため何が起きたのか理解できていない。
ただ、そこから少し離れた場所で黒刀『白夜』を引き抜いたシェードの姿があった。
「ふぅ、危なかった」
「・・・・・相変わらず出鱈目ですね、シェード隊長は。この距離で正確に瓦礫だけを狙って斬撃を飛ばすなんて、ふつうできませんよ」
「しかも、丁度よく瓦礫を相殺させる斬撃を瞬時に放つんですもの。私もおかしいと思う」
「たいちょーすごい!」
一仕事を終えて冷や汗を拭うシェードに、キースとアイリスは乾いた笑いをしてフィーは尊敬の眼差しでキラキラと見つめる。
「いや、体が勝手に動いちゃってさ・・・・。━━━━それにしても、これをやったのはアイツらかな?」
シェードは静かに怒りを燃やして広場の中心を睨み付ける。
そこには大量の野蛮そうな男達と、恐らくリーダーであろう大きな赤鼻でピエロのような姿の者、金棒をもった黒髪のスタイルのいい美女がいた。
そして、死刑台の上にいたルフィは首と手を拘束具で固定されて身動きがとれなくなっている。
「あれは、懸賞金1500万ベリーの『道化のバギー』と500万ベリーの『金棒のアルビダ』です。・・・・・・・たぶんですけど。前に写真で見たときと大分違ったような気がしたんですよね・・・・・」
キースが頭を捻って以前見た写真の記憶を引き出そうとしているが、思い出せなかったのか“まあいいか”と、頭から追いやる。
ピエロ男━━━━バギーが死刑台の上まで登り、ルフィの首もとに一本のサーベルを向けて叫ぶ。
「ぎゃはははっ!!これから、ハデ死刑を公開執行する!!」
何故、バギーがルフィを殺そうとしているのかはシェードにはわからないでいるが、不愉快に思っていることだけは確かだった。
「人に迷惑をかけて、更には海賊とはいえガープさんのお孫さんを殺そうとしているのか」
シェードはガープに多大なる恩を感じているため、その孫であるルフィを助けようと白夜に手を掛ける。
すると、空気を振動させるほどの大声が辺りに響き渡る。
「俺は!!海賊王になる男だッ!!!」
ルフィの叫びで、ざわついていた場が一瞬で静寂に包まれる。それから数秒後、再び周囲がざわつき始めて中には驚愕する者、呆れる者、笑う者など多数いた。
しかし、シェードは感心した。驚愕もするし、馬鹿らしいとも思えるがより一層興味が湧いてくる。
「隊長、海賊ですけど彼を助けますか?」
キースはそう言って白色の棍棒を握りしめ、フィーは気引き締めてアイリスは折り畳み式の弓を展開する。
その答えとしてシェードは白夜の柄から手を離す。
「最初はそう思ってたけど、止めたよ」
「あら、止めてしまうの?ガープ中将の大事なお孫さん何でしょう?」
首をかしげるアイリスに、シェードは小さく微笑む。
「確かにそうだけど、ルフィくんのさっきの言葉で助ける気を失っちゃったんだよ。海賊王になりたいのなら、これくらいのピンチは切り抜けて貰わないと話にならないからね」
自分達の上司であったシェードが、ここまで楽しそうな顔をするのを久しぶりに見たキース達。
初めは目を丸くして驚いた様子だったが、ふっと笑みを溢してそれぞれ気を緩める。
「まあ、隊長がそう言うのでしたら止めますけど」
「フィーもやめるー」
「私も隊長さんの指示には従うわよ」
シェードはその返事を聞いて嬉しそうに『ありがとう』と、小さく呟いた。
ルフィの仲間であろう緑色の髪の男が三本の刀を駆使して海賊たちを切り伏せていき、黒いスーツを着こなしている金髪の男が蹴り倒していく。
凄まじい勢いで次々と薙ぎ倒していくも、ルフィのいる死刑台までまだ距離がある。
いくら二人が強者でも相手の人数が多ければ時間もかかるのだ。
シェードたちはその光景を黙って見ている。
そして、とうとうバギーのサーベルがルフィの首を跳ねようとした
━━━━━刹那
ピシャァァァァッ!!!!
一瞬の閃光とともに、一筋の落雷が死刑台へと直撃して大雨が降りだす。
バギーの持つサーベルが雷の目印となって襲いかかったのだ。
『・・・・・・』
この場にいる全員がこのあり得ない出来事に唖然としている。何せ、ルフィの首が跳ねられそうになったときにタイミングよく落雷が起きたのだ。
それにより死刑台は崩壊、バギーは黒こげで当のルフィ本人は拘束具が壊されており無傷だ。
これを好機だと思った麦わらの一味は駆け足で広場から逃げ出し、それを待ち伏せていた海軍の部隊が追いかけていった。
一部始終を見ていたキースたちもルフィの幸運・・・・・悪運とも言えるものに言葉を無くしていた。
それから少ししてからキースは異変に気がつく。
「あれ?シェード隊長がいない?」
「たいちょーなら【
「あら、いつの間に・・・・・」
フィーの指差す方向にキースとアイリスが視線を向けてみると、そこには我らが隊長がバギー海賊団とアルビダの目の前で何かを話している。
シェードはルフィ達が広場から逃げたことを確認した瞬間に【剃】でバギーたちの元へと向かった。
【剃】とは一度に地面を十回以上蹴り、爆発的な加速力を得て高速移動を可能とする、【六式】の内の一つだ。
周囲からは、シェードが突然姿を消したように錯覚するほどの速度。
「さてと、海賊の皆さん。これ以上騒ぎを起こすようなら俺が相手をするよ?」
ルフィたちは助かり、この場からも居なくなったのでシェードは目の前の
部下三人の食事のせいで彼の懐事情は非常に貧しいものとなってしまった。そのため、懸賞金1500万ベリーのバギーと500万ベリーのアルビダはご馳走にしか見えていない。
「何だてめぇ! 俺様の邪魔をするんじゃねぇ!麦わらが逃げちまうじゃねぇか!!」
「お前たち、やっちまいなっ!!」
激怒するバギーの横でアルビダが部下達に指示を出す。
「はい!アルビダ姉さん!!」
剣やピストルを持ったバギーの一味がシェードに襲いかかる。彼らはたった一人の男をなぶり殺しにすることになんの躊躇もなく、逆にそれを楽しむかのように駆けていく。
しかし、バギーやアルビダを含めた海賊たちは最大のミスをした。
この黒い着物を着た白髪の剣士が元海軍本部中将で、何れは大将も夢ではないと言われていた男だとは━━━━
誰も気付いてはいなかった。
「━━━━『舞月』」
シェードは目を瞑り、白夜の柄に手を乗せてそう呟く
それと同時に彼の姿はブレてこの場から消える・・・・・・消えたと錯覚するほどに出鱈目な速度で移動をする。
これは【剃】ではなく、彼の純粋な身体能力だ。
シェードが神速で海賊達を斬り倒していくその姿は、雨と共に舞っているかのようだ。
美しいほどに無駄のない剣撃は、シェードの無意識が引き起こしているものだ。だからと言って、無差別に刃を向けているわけではなく、敵味方の区別はついている。
この『舞月』を習得するために、彼の部隊全員がつき合わされてボロボロになったのはまた別のお話・・・・・。
また、この技は【剃】では出すことがでなかったため、彼は苦手なトレーニングを文字通りの死ぬ気でやりきったのだ。
お陰で、彼の身体能力は下手をしたら【
気付けば、数十人いたであろうバギー一味は皆が地に伏していた。血が流れていないところを見ると、峰打ちで倒したのがわかる。
「な、何だよ!?こいつの馬鹿げた強さは!?東の海にこんな化け物がいるなんて俺様は聞いてねぇぞ!!」
この現実が信じられないのか、バギーは明らかに動揺していた。
「・・・・・いい男」
アルビダはルフィの事など頭から消え去り、頬をうっすらと赤く染めて蕩けるような表情でシェードを見つめている。
すると、海軍の部隊を引き連れた一人の人影が現れる。
「その男は“元”海軍本部中将、『白夜』で名高いクロロ・シェードだ。
海軍を止めた後は部下を連れてフラりと何処かに消えたと聞いていたが、まさかこんな所に来ているとはな」
この者は、口に2つの葉巻をくわえて髪は銀に近い白色。一見してヤクザのように見えて、背中には七尺十手が装備されている。
シェードがその姿を見ると、笑みを浮かべて手を振る。
「やあ、海軍本部大佐『白猟のスモーカー』くん。元気してた? 会うのは二年ぶり位だったかな」
「さあな、覚えていねぇよ。それより、これは一体どういう状況だ?ひでぇ有り様じゃねぇか・・・・・」
スモーカーは夥しい人数の海賊が気絶している姿を一瞥して口から煙を吐き出す。
「彼らが俺の警告を聞かずに襲いかかってきたからお仕置きしておいたんだよ。あ、それと、道化のバギーと金棒のアルビダを捕まえるからお金用意しておいてね」
そう言って、スキップしそうな位に上機嫌な様子でバギー達に近づいていく。
スモーカーの部下たちは、自分達の上司にこんな口を聞けることに呆然としていた。
スモーカーは、相変わらずの性格をしている
「第二部隊は、白夜がバギーとアルビダを討伐した時に捕縛しておけ!残りの部隊は俺と来い!麦わらのルフィを捕らえに行く!」
『はっ!』
スモーカーの指示を受けてすぐに平静を取り戻し、部下たちはそれぞれの役割を遂行しに行く。
「後は君だけだね、金棒のアルビダ」
シェードの足元には、気絶しているバギーがうつ伏せで倒れている。
バギーは自身の『バラバラの実』の能力で腕を飛ばしたり様々な攻撃を仕掛けるも、あえなく瞬殺。
アルビダはその攻防を目にして恐怖に陥るのではなく、ただぼーっとシェードを見つめていた。
「どうしたの? 反撃とか逃げようとはしないの?」
「ア、アタシの『スベスベの実』の能力の前ではお前の刀も通らないよ!」
ハッと我に帰ったアルビダは金棒を手に持ってシェードに襲いかかるが、全て紙一重で避けられる。
シェードは白夜を一振りして金棒を弾き飛ばし、アルビダの首筋に雨で濡れた刃を添える。
「なら、試してみようか?」
「っ・・・・!?」
シェードの蒼く冷たい瞳が、アルビダの心を完全に射止めた瞬間であった。
その時、背後からただならぬ殺気が襲いかかる。
「・・・・・・たいちょー、何してるの?」
シェードはギギギ、と首だけを動かして声の主を確認する。
そこには、メラメラと怒りの炎が燃え盛っていると錯覚する程にご立腹なフィーの姿があった。
「フィ、フィーちゃん?何って、海賊を捕らえようとした・・・・・・だけですけど・・・・」
ついつい敬語で答えてしまったシェード。
「また、おんなのひとを誑かしてたの?」
何時ものように間延びした喋り方ではなくなり、シェードは冷や汗を大量に流す。
「俺、誑かしたことなんて一回もないよ!? 今だって普通に戦ってたでしょ!?」
「・・・・・・問答無用」
聞く耳を持たないといった様子で、フィーは青い髪を揺らしてシェードに襲いかかる。
シェードはアルビダとバギーの事なんて既に考えておらず、一目散で逃げる。
「ま、待って!? 勘違いだ━━━━うおっ!?危ない!?」
「勘違い?あのびじんさんの顔を見てもそれが言えるの?」
フィーの殺人級の拳が、シェードの避けた先にある壁に突き刺さる。
特に痛みを感じておらず、続けて拳を繰り出していく。
シェードは何故、フィーがここまで怒りに満ちているのか本気で理解していない。
そして、彼は必死のあまり口から禁句を言ってしまう。
「な、何でも言うこと聞くから!! 頼むから落ち着いて!!」
その言葉を聞いたフィーは、シェードの鼻頭すれすれで拳を止める。
「なん・・・・・でも?」
「う、うん!何でもだよ!」
暫くこの体勢のままで固まっていると、フィーのハイライトの無くなった瞳がみるみる輝きを取り戻していく。
「じゃあ、許すねー」
先程とは打って変わって満面の笑みを浮かべているフィー。
シェードはほっと胸を撫で下ろす。
「隊長、何してるんですか? 周囲の視線が痛いですよ・・・・・」
「また一人、隊長さんの毒牙に犯された女性が増えたわね」
キースとアイリスは揃って頭に手を当てて溜め息をつく。
「俺が何をしたって言うのさ・・・・・。誰か、こんな俺に答えを教えてほしい・・・・・」
シェードは天に向かって一筋の涙を流して嘆くが、キースとアイリスは哀れみの目で見つめる。
「たいちょーにはフィーが着いてるから大丈夫だよー?」
「いや、元はと言えばフィーちゃんが━━━━いえ、何でもないです」
フィーに指摘しようとするシェードだが、再び拳を握り締める姿を目にして訂正する。
その後も、シェードは不用意に変なことを言わないように気を付けていると、ふと視界に拘束されているバギー達が映り込む。
「あ、お金貰わないと」
シェードはニコニコ笑顔で捕縛している海兵の元へ向かう。
「すみませーん。この二人の懸賞金を受け取りたいんですけど」
「はっ!只今部下に準備させていますので、暫しお待ち下さい」
▽
その後、道化のバギーとその一味、そしてどこか様子のおかしかった金棒のアルビダは海軍に連行されていった。
俺達一行は雨降りの中、急いで宿をとって部屋の中で冷えた身体を温めている。
それにしても、あの時のフィーちゃんの顔、マジなお怒りだったね・・・・・。
・・・・・わからん、本当にわからんよ。
━━━━でも、今はそんな事よりも此方の方で気分が上がっちゃうね!
「この二人分の懸賞金、2000万ベリーがあれば暫くは飢えなくてすむ!」
「ははは、嬉しそうですね」
キースくん、そんなに可哀想なものを見るような目で俺を見ないでよ。俺だってお金でここまで喜びたくは無いんだから。
それに、君たち三人の食費でお金が無くなっちゃったんだからね?
「それで、これからどうするの? まさか此処に滞在するわけでもないのでしょう?」
「そうだね、アイリスちゃんの言う通り此処に長居はしない。明日には船を出そうと思うよ」
「じゃあ、何処に行くのー?」
俺の膝を枕にして仰向けで寝ているフィーちゃんが問い掛けてくる。
俺は不敵に笑みを浮かべる。
「それは勿論、
一つ目の技━━━━━━━
『舞月』
・シェードが編み出した剣技の一つで、相手と一騎討ちよりも大人数の時に使う方が効果的。
・苦手な見聞色の覇気を唯一使った技で、目を瞑り視界を遮断することで余計な情報を取り入れないようにする。
そして、驚異的な身体能力で敵へと突き進み、範囲の狭い見聞色に反応した者を白夜に身を委ねるようにして斬り伏せる。
シェードと白夜が一体となった形になり、その姿が“舞っている”ように見えたため『舞月』と名付けられた。
・始めの頃は【剃】で『舞月』を完成させようとしたシェードだが、どう頑張っても滑らかな動きが出来なかったらしく、ガープ中将とセンゴク元帥にトレーニングを頼み込んだ。
二人から出された地獄のようなトレーニングを死ぬ気でやりきったお陰で、今は人外染みた身体能力を誇っている。