ガンダムアーキテクトレイヴンズ 自堕落な一個人   作:人類種の天敵

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黒服にと言えばカ○ジ

 

 

緑色の眩しい閃光が奔る、灰色の一角獣を中心に広がった閃光は周りのビルや瓦礫を飲み込んで大規模の爆発を引き起こした。

コロニーの地面はひび割れ、煙や炎が上がり、フィールド コロニーBは壊滅的な損害を被った。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………は、は………なんだよ、これ……」

 

ぽっかりと穴の空いたクレーターから遠く離れた場所に、パンツァーストライクはいた。

機体を覆っていた巨大なシールドや追加装甲はボロボロか、既に無くなっている。

背中に背負った主砲は未だ健在ながらも、最早パンツァーストライクの耐久力が限界近くなのは明白だ。

 

「ま、間に合った……。嫌な予感がして追加装甲をパージしながら盾で防いで離脱………なのに、なのに」

 

約三分の二を消失した盾を投げ捨てたパンツァーストライクは周りを警戒しながら背中のランドセルに格納しているアサルトライフルを取り出してマガジンをセット、コッキングレバーを引いて薬室に弾丸を装填する。

 

「盾はロスト、パンツァーストライクの耐久値もギリギリ……!追加装甲を失った今で機動力の無いパンツァーストライカーじゃ鈍い的とおんなじだ……」

 

カタカタとボードを叩いて装備や各種OSの最適化。

 

「主砲の先制攻撃……、それも一撃で仕留めなきゃ勝てない。ファランクスは一応機能してるけど上空に逃げられたら固められて終わる……狙撃モード起動」

 

ストライクのフェイス部分を背中のランドセルから現れた大きなゴーグルが覆う。

そのまま首位を見渡すが、あの一角獣はどこにも存在しない。

 

「はぁ、はぁ、………?………何かおかしい?なんなんだ、この……違和感は」

 

荒い息遣いが唇から漏れる。

乱れた呼吸を何度も何度も繰り返して胸騒ぎを押し止めようとする。

ホログラム、幻想の筈の仮想世界に体が、意識が引き込まれていくようだ。

誰かに見られているような、値踏みされているような視線が機体中にまとわりつく。

ふと、砂煙を突き抜けて上空に灰色の一角獣が姿を現した。

その機体は体を覆うように緑色の美しい粒子を放出し、それらは砂塵に干渉したことでパチパチと小さな摩擦や火花を散らしていた。

 

「………綺麗」

 

パンツァーストライクを操縦する瑞穂はつい、灰色の一角獣を見て呟いた。

ガンダム系には見られない丸みと角の両立、白い騎士のようでいて、頭部には伝説の一角獣を模した角が見えている。

 

まるでヒロインチックな機体だ。

 

瑞穂が知る由もないことだが、その機体は、最高のアーキテクトによって全身を新規に設計され、最強の“リンクス”にして最後の“レイヴン”の為に開発された“白い閃光”を継ぐ伝説の“ネクスト”。

 

超高速機動の中で自機よりも速い機体のメインブースターへ弾丸を当てる高い精度を待ち、一度機能停止して海の底へ沈んだ後に、再び蘇る再起動システム。

 

最大規模勢力の都市を守る守護神にして新たなドミナントに敗れた古きドミナントの機体。

 

その空に敵は無く、ボロボロの翼は、また、広げられる。

 

スライド変形した大型の背部スラスターから眩い光が溢れ出し、超推力によって弾かれた灰色の一角獣はパンツァーストライクの装甲を蹴飛ばした。

たったそれだけで何十メートルも吹き飛ばされたパンツァーストライクは、ゴロゴロと転がっていってビルへとぶつかることで一時停止、メインカメラを前方に向けると、目の前には銃を構えたホワイト・グリントが。

 

(この……感じはっ!動きが読まれてるのか!?)

 

よろめきながらも立ち上がり、両手で構えたアサルトライフルを撃ちまくりながらサイドステップ。

弾丸は吸い込まれるようにホワイト・グリントの左脇へ、どうやら全弾避けられたようだ。

 

(なんで……当たらないんだよっ!)

 

ドヒャアッッッ

 

(なあっ!?)

 

目の前に敵機が迫る

 

ドヒャアッッッ

 

アサルトライフルの銃口を向けるが、奴は吹き荒れる突風や轟音と共に姿を消す。

アラーム警報……ホワイト・グリントは右に?

 

ドヒャアッッッドヒャアッッッ

 

いない、今度は左?いや、後ろ!?

 

ドヒャアッッッドヒャアッッッドヒャアッッッ

 

「なんなんだよ!一体……ッ!?」

 

弄ばれている、誰に?あの男に、あの男の駆る灰色の一角獣に?

 

ドガァッ!!!

 

「うわあっ!?」

 

蹴り倒された。

最初と変わって尋常ならざるパワーを持ったホワイト・グリントに踏みつけられてパンツァーストライクはピクリとも動けなくなる。

 

『なるほど……こういうことか。これは確かに、俺ら以外に扱える輩はいないから安心だ』

 

ホワイト・グリントがパンツァーストライクを踏みつけているおかげで、お肌の触れ合い通信が可能となり、烏丸の声が鮮明に聞こえる。

彼は瑞穂の知らぬ女性の名前を口に出して舌打ちをする。

 

『だけど……はぁ、面倒なことになった。もしや、これは巻き込まれたか……?』

 

なんの話だよ、弱々しく呟いた後に、また、機体の周りを緑色の粒子が巻き起こり、次いでパンツァーストライクとホワイト・グリントを、眩く包み込んだ。

 

 

 

『 バトル エンディド 』

 

「………負けた」

 

ストライクを握りしめた瑞穂は口を開けて呆然としていた。

ウィーン、と自動ドアが開いて客が現れる。

1人は平均的な身長の、金髪の髪を肩の上で切り揃えた人物で、もう1人は隙のない瞳を持つ、白髪の少女だ。

 

「よう、フィオナ・イェルネフェルト」

 

「どうも。ホワイト・グリントが完成したと聞きました」

 

「ああ、後は塗装だけだ。それよりも、少し話をしないか?」

 

「…………分かりました。アナ」

 

フィオナ・イェルネフェルトとアナトリアの傭兵を引き連れて店を出る。

近くの路地裏に入り、腕を組んで目の前の女を睨み付けた。

 

「まさか、コジマ粒子がリンクスにしか扱えない代物だったと思わなかったな。コネクタもないのにあの感覚は久しぶりだった」

 

 

 

彼が知ることはない。

AMSを介してリンクスとネクストACとを繋ぐことを、この世界の住人には、無意識化の内に心を通じてガンプラとの精神を同一化させる者が少数であるが存在することを。

 

それらはアシムレイトと呼ばれるシンクロ現象のようなものだと言われているし、信じないものには唯の厨二病だろと言われることもある。

フィオナ・イェルネフェルトもまた、アシムレイトとリンクスの関係性を研究しているが、未だにその実態を解明出来てはいない。

 

 

 

「……そう、ですね。この世界の空気や土壌が影響したせいか、毒性も弱まりましたし、従来の粒子でエネルギーを得ようにも、成果は芳しくありません」

 

「クレイドルを飛ばすまではなくとも、扇風機を扱うほどすらないのか?」

 

「はい。これ単体なら、利用価値も脅威もないのですが……貴方やアナが扱う分には、本来のコジマ粒子としての五分の1くらいは引き出せるようですね」

 

プラモデルを自由自在に動かせる分には、か?

 

「なるほど、何百万の人間を乗せる鳥籠。それを飛ばすだけの粒子の5分の一か。リンクスが扱うなら現代兵器は効かないだろ」

 

最後の方なんてほぼイジメだった。

 

「まあいいか。塗装はするから後で報酬をよこせよ」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

淡々と礼を述べるフィオナ・イェルネフェルト。

しかし、ただプラモデルを使っただけで報酬を弾むとは、随分と気前の良いことだと俺は苦笑まじりに感じた。

それにしても、たかがガンプラで自分の身を守る……ね。

 

「フィオナ」

 

寝ぼけ眼の少女がフィオナ・イェルネフェルトの名前を呼ぶと同時に、彼女の服を引っ張る。

その目は、自分の愛機が戻って来るのを待ち遠しく待っている、正にそれだ。

アナトリアの傭兵……リンクス戦争の英雄が自機を再現したプラモデルをワンコのように尻尾振って待つとはなぁ。

 

「では、戻りましょう」

 

その言葉に頷き、店の中に戻る。

店の中では真凛と、何故か店員の氷那乃が熱い激戦を繰り広げていた。

真凛の不知火が所狭しとビルを蹴り、三次元機動を行い、氷那乃が動かしている水色のケンプファーが機体中に取り付けたショットガンによる弾幕でフィールドを埋め尽くす。

 

不知火の肩に取り付けられたオプションパーツのコンテナから円筒状の物体が勢いよく飛び出した。

ミサイルだ。

ミサイルはまっすぐ飛ぶもの、グネグネと軌道を描くもの、広く迂回しながら目標へ接近して水色のケンプファーに颯爽する。

しかしケンプファーはフルオートのショットガンで全て迎撃しつつ、腰部のラックから何か撃ち出した。

 

ピカッ、光る、閃光弾。

ビルの陰に咄嗟に隠れた不知火は閃光に構うことなく接近する。

真正面からの散弾、此処で不知火は腰部のスラスターを、出力全開にして強引に突っ込む。

 

「ほぁーーー!!」

 

間抜けた気合いに続く烈剣。

背中側のハンガーに備えられた長刀のグリップを握ると同時に上から下へ降り抜かれた。

その剣先は確かにケンプファーのコックピットを捉えていた。

 

「あ、負けた〜」

 

「いぇーいー!!ブイブイ」

 

呑気に試合をやっていた2人と何気に落ち込んでいる瑞穂にホワイト・グリントの塗装をやらせる。

もちろん俺もやる、無論フィオナ・イェルネフェルトとアナトリアの傭兵にはやらせない。

何もすることのない2人はバッグから取り出した弁当箱を開けて同時にあーん、と食べさせるイチャラブ空間を作り出した。

 

そして俺はというと、ホワイト・グリントの右肩を塗装し終え、アナトリアの傭兵が使っていたエンブレムを貼った。

 

ホルスの目とでも言うらしいこれは、アナトリアの傭兵が扱うならば必要だろう。

 

「出来たぞ」

 

完成したホワイト・グリントをアナトリアの傭兵に手渡す。

青眼の一角獣は、本来の持ち主に渡ると同時、その白い機体をぼんやりと薄く光らせた。

 

「ありがとうございました。報酬は既に」

 

渡されたのは一枚のカード。

表面にはパスワードが書かれている。

言わずとも分かる、この『ダウンギャンブル銀行』とやらに報酬金が振り込まれているのだろう。

 

「おう……あ、ところで。なんでーーー」

 

ホワイト・グリントを作ればお前の身柄を守ることにつながるわけ?

 

ウィーン

 

フィオナ・イェルネフェルトにホワイト・グリントの必要性を聞こうとしたその時、店の自動ドアが開き、そこから黒服を着た男たちがわらわらと入って来た。

 

「そこ、スペース開けれないのか?」

 

「キツ……。こっちのガンプラケースをそっちの方に積めないか?ほら、端っこ持てよ」

 

「おい、こっちにあと3人は入れるぞ」

 

「右いけ右、こっちはもう無理だ」

 

……………………………。

 

「わぁ〜。お客さんが一杯だぁ〜」

 

「ちょ、ちょ、ちょ。さ、触るな!」

 

「うひっ!?誰かダイレクトに触った!幾ら真凛ちゃんでもオコですなー!」

 

黒服ズの集団にポカンとしてる内に店の中は黒服ズで満員になり、瑞穂と真凛は痴漢まがいのことをされたようだ。

バキッと殴打音に続き、黒服の1人が頭を抱えて蹲った。

 

「………“企業”」

 

ピクッと、フィオナ・イェルネフェルトが発した呟きに身体が動く。

顔を、目を上げた途端、黒服たちが一斉に俺の方を見て身構える……が、元々狭い店の中にぎゅう詰め状態になっているので身構えるもクソもない。

目の前の黒服と唇が触れ合う所だったので必死に首を捻って不機嫌に睨む。

 

「あっ……申し訳ない……///」

 

オイ、テメェもしかしてワザとか?

男の行動に眉を顰めてフィオナ・イェルネフェルトに小声で話しかける。

 

「知ってる奴らか?このふざけた黒服は」

 

「先程申し上げた通りです。貴方なら分かる筈ですが」

 

企業……企業か。

 

「俺が知ってる企業は、こんなバカ丸出しの思考をしていなかったと思う」

 

「…………それには、私も同意見です」

 

フィオナ・イェルネフェルトと俺は達観した目でぎゅう詰めの黒服ズを眺めて一つ嘆息した。

 

「ハハハーッ!なんか面白いことになってるじゃなーい?」

 

「!?」

 

「この声は……!」

 

ざわざわ……ざわざわ

 

黒服ズの向こう側から軽いノリの男の声が聞こえる。

すると、黒服ズはギョッと顔を強張らせてそそくさと身なりを整え始めた。

何処か背景にザワザワ…ざわざわとか聞こえてくる。

 

「ひとまず、そこから出て貰えますか」

 

続く冷淡な女の声。

黒服ズは顔を引攣らせて店から出て行く。

黒服ズのせいですし詰めだったリトルサンの店内から黒服ズがいなくなり、真凛や瑞穂、フィオナ・イェルネフェルトがホッとした表情を浮かべた。

 

「イェルネフェルト教授。随分と探しましたが?此処には一体何の用でしょうか?」

 

「ハハッ、キャーロリーン。この店からしてプラモデルを買いに来たに決まってるじゅわぁーん」

 

「主任は黙って下さい」

 

出て来たのは、ボサボサ気味の黒髪天パで、顎に無精髭を生やす、おちゃらけているようでいて、少しの隙すら見せない謎の男と。

スーツ姿でキッチリと身だしなみを整え、無機質なメガネと冷酷な瞳を携え、胸部分に『♡キャロル・ドーリー♡』などというどこかズレた名札を提げた謎の女。

 

その姿を視認した途端全身から殺気を放つアナトリアの傭兵と体を強張らせるフィオナ・イェルネフェルト。

 

「あんたらは?」

 

「企業所属、キャロル・ドーリーと申します。以後、お見知り置きを。……それと、彼は主任。こちらは覚えなくても結構です」

 

「随分と酷えじゃぁーん!キャーロリーン!!?ギャハハハハ」

 

その質問に、無機質なメガネをクイッと直した金髪の女は淡々と返し、男は笑いながら大げさに肩を竦ませて両手を広げたオーバーリアクションを取る。

 

三日月のように歪めた笑みとは引き換えに、両目は少し足りとも笑っていないくせに。

 

「へえ」

 

アナトリアの傭兵と、主任とやらが対峙するプレッシャーの濃さに何処か懐かしい気分に浸りながらも、

 

(あぁ、これは……。随分と怠い事態になりそうな予感がすーるよー)

 

 

 

口には出さず、心の中で悪態を吐くことに留めた俺を、誰でもいいから手放しに褒めて欲しかった。

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