ガンダムアーキテクトレイヴンズ 自堕落な一個人   作:人類種の天敵

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店員さんは中卒

 

放課後、授業を終えて下校する途中で、真凛に連れられてビルド技術の高い知り合いの元を訪れる途中。

 

「そう言えば、フィオナちゃんとアナちゃん。…………凄かったね!」

 

「言葉を濁すな。言葉を」

 

それは今日のビルド科目の時間。

ガンプラの火力を高めるためにオプションパーツを着ける者、スラスターやプロペラントタンクを増設する者、オリジナルの銃火器をスクラッチする者など、思い思いの時間を過ごしている中であの2人は、本当に残念なプラモデル製作を続けていた。

 

……片や力の加えすぎでフレームが曲がったり角が丸くなった、アナトリアの傭兵のガンプラ。

 

……片や美術的センスのなさが顕著に現れてしまったフィオナ・イェルネフェルトのガンプラの成れの果て、つまり残骸。

 

不器用、下手=素人。

こんな屈辱的な図式が成立してもおかしくないあの2人、ガンプラ学園にわざわざ来て何がしたかったんだろうか。

 

「えへへ、そ、そんな事より、着いたよ」

 

「……ホビーショップ、リトルサン…か」

 

到着した店の看板を見上げ、名前を読む。

真凛曰く、ここにガンプラビルド技術の高い知り合いがいる。

 

「こんちゃー♪」

 

「いらっしゃいませ〜……あっ、真凛ちゃんだー」

 

中にはプラモデルの入った箱が山積みになっている。

客足は……平日だからか、誰1人として店の中にはいなかった。

 

「えへへ、今日初めてのお客さんが来た〜」

 

「ぶいぶい昨日振……………え?」

 

「あれれ?この人は〜?」

 

真凛のお知り合いのお方……、かなり身長が高い。

俺の背が170㎝で、目の前の女性は8〜9㎝くらい上だろうか?軽く見上げてしまう。

背筋はピンと伸びていて、上は黒いシャツに店のエプロンと、下は灰色の7分丈のパンツを履きこなしている。

しかし高身長の割には柔和な笑顔を浮かべているし、雰囲気がポヤポヤだ、「ゆるふわ癒し」系という奴なのだろうか。

 

「烏丸、真凛ちゃんの知り合いの、小日向 比奈乃ちゃんでーす♪」

 

「あはは〜、どーも〜。ホビーショップリトルサンで働いてる小日向 氷那乃です。よろしくね〜」

 

ひらひらと手を振りながらあっけからんと笑う氷那乃さんにぺこりと頭を下げると真凛から補足が入る。

 

「年齢15歳彼氏いない歴=年齢の中卒ワーカーだよ♪」

 

「中卒ッ!?」

 

「あー、もーぅ、真凛〜。彼氏いないのは言わないでよ〜」

 

いや、そういう問題か?中卒ワーカーって結構な要素だと思うんだが。

いや、別に働き口が決まってるのならそれでも良いのか?……クッ、俺も中卒でアーキテクトとして働けばよかったか……!

 

「まあ、クオリティに関しては気にしないで頼みなよ♪私もちょくちょく頼んでるし」

 

「うんうん。真凛からのお墨付きもありますし、リトルサン並びにこの私、氷那乃のことも〜ぜひぜひご贔屓にしてくださいね〜」

 

何時までもニコニコと笑う氷那乃さ………ため年だからさん付けしなくても良いか。

さっそく氷那乃にギミックに用いるパーツの作製を依頼すると、彼女はそれをふんふんと見て軽く頷いた。

 

「これなら大丈夫ですよ〜」

 

マジか。

 

「最近面白い素材を購入したんですよ〜。名前は……ええっと〜、なんだったっけ〜?」

 

氷那乃は凄いマイペースなようだ。

思い出そうとしては忘れ、思い出そうとしては忘れるを繰り返す。

 

「うーん、思い出せないしもう良いかな〜。それで、その素材の特徴っていうのが、粒子を一定量受けると伸び縮みするだよね〜」

 

粒子濃度で伸縮する素材……。

それはそれは……好都合すぎる、本当に素晴らしいなぁ……!

 

「それを使って〜、わぁ〜。可変式の大型スラスター……!凄いね〜。こんなの思い付くんだ〜」

 

資料を見ながらニコニコとレジを打つ氷那乃の動きが止まり、「お会計こちらになります〜」と言われるままその画面を見て、

 

「か、烏丸の動きが止まった……!」

 

「最近開発された素材だから〜、結構なお値段だよ〜」

 

買えない値段じゃないのだ、しかし、これを払ってはまえば結構苦しい生活になる。

例えばお菓子、例えば課金、例えば………。

 

「……まあどうせ金入るしいいや。現金で」

 

「はい〜、ありがとうございます〜じゃあ早速電話番号交換しよ〜」

 

スマホを向けてくる氷那乃にどきっとした。

何故ならこんなシュチュエーションなんぞ前世でも今の人生でもあった事がないから。

 

「…………えっ、い、いや、急にそこまでグイグイ来る?ちょ、ちょっと、心の準備が……」

 

「?」

 

慌てて手を何度もズボンや服装で拭う。

そしてスマホをとって電話番号を交換した。

いやー、この歳でようやく同じお年頃の異性と連絡先を交換するなんてな

 

「うんうん。じゃあパーツが出来たら連絡するね〜」

 

「…………」

 

まあ、分かってたよ?そういうことくらい。

別に悔しくもなんともねーし、最初からあんまり期待してなかったし……。

 

「どんまい♪」

 

うっせーこんちくしょー。

 

「ふっふっふー、氷那乃ー!実はね!真凛ちゃんってば新しい機体完成させちゃったんだよー♪」

 

「えっ、本当〜?わぁー、良かったね〜。それならガンプラバトルしよっか〜。あ、レジ打ちって出来る〜?」

 

「は、俺?」

 

「うんうん、よろしくね〜」

 

凄えこの子あって間もない奴を勝手に店番員に登録すんのか、凄え……!

 

「ケンプファー使おうっかな〜。ジェスタかな〜。それともイフリート?ピクシー?どれにしよっかな〜」

 

「場所は市街地ね!ワクワクしてきたー♪」

 

ガンプラバトルに盛り上がる2人を他所に店にお客さんが入って来た。

 

オイマジで俺にやらせる気か?……ダメだ、もうガンプラバトルに夢中で全然気付く素振りがねえ。

 

「仕方ない……俺がやるか……」

 

はぁ、とため息を吐くと、お客さんは俺に人差し指を向けてぽかんと口を開いた。

 

「なんで……ここに……」

 

どっかで見た事があるような顔をしている。

美少年のような顔立ちに所々跳ねている癖っ毛、確かお嬢様御曹司etcの通う超名門校の制服………あ、

 

「お前かー、ボクっ娘弟」

 

「その言い方は誤解を招くから止めて貰おうじゃないか。……って違う、ここで何してるんです?」

 

警戒の目を向けるボクっ娘弟、又の名を瑞稀ちゃん、違うんだよ、

 

「突然店番頼まれて困惑してるのは俺の方なんだよ」

 

フッと笑って親指を本来の店員に向けると、ボクっ娘は「ああ、そういうこと」とそっけなく納得していた。

 

「それでは、これをお願いします」

 

「ん、納得するや否や即俺にストライクガンダムのケースを渡すとはいい根性してるじゃないか」

 

「帰って早く組まなきゃいけないので」

 

そっけない態度そのままにパサっと札を置くボクっ娘。

 

「なんだ、姉もお前もビルド出来るのか?」

 

「ボクは寧ろ、ビルド方面に向いてるんです。姉さんのもボクが専用に調整したガンプラです。以上」

 

ピッピッピ、と適当にバーコードを読み取って会計を済ませ、袋の中にソッと入れる。

 

「ふーん。まあいいや、また何時かお前ら姉妹ともやりたいもんだな」

 

何の気なしに言えば、ボクっ娘は軽蔑の眼差しを向けていた。

 

「………貴方は、ガンプラ学園の生徒なんですよね。ボク達に申し込まなくても腕の立つ相手は一杯いる。……まさか、ガンプラ学園で負けてばかりだから見かけで弱そうな人に勝負を?」

 

「全員ザコだった。歯牙にかける程の実力も無く、俺に弱者を甚振る趣味は無い」

 

「へ…?」

 

「ただまあ、降りかかる火の粉は払うくらいかな。………お前さ、ガンプラバトルしてる時、何を思って戦ってる?」

 

カウンターに肘をついてボクっ娘と目を合わせて問いかけてみた。

 

「それは……負けない……ように」

 

「殺す気でやれよ。じゃねえと死ぬのは何時もお前だぞ」

 

ほんの少しの悪戯心だった。

俺の思う、ヌルい環境で生きるやつらへの、ほんの当てつけのようなものだった。

 

「分かってるよ!そんな事はっ!!」

 

予想に反してボクっ娘は、店中に響く怒声を上げて俺を睨みつけた。

 

「ボクだって、分かってる!姉さんに言われなくたって……、ボクだって、ボクだって!ボクだってッ!!」

 

「お、おう?」

 

マズイ、軽く脅してみたつもりが何かボクっ娘の琴線に触れてしまったらしい。

 

「分かってるんだ……ボクだって」

 

瞳を潤わせて顔を顰めながら吐き捨てたボクっ娘は、そのまま逃げるように店から出て行った。

 

「………あ、あいつ。……買ったもの忘れて帰った」

 

カウンターに放置された、袋に詰められたストライクガンダムがパッケージを飾るケース、その表面をパッパッと手で払った。

 

「さっきの何だった?烏丸」

 

「この前会ったボクっ娘」

 

「ボクっ娘……ああ、九十九神社の子〜?あれれ、それは〜?」

 

氷那乃が指差す袋を掲げてため息を吐いた。

 

「おっちょこちょいなボクっ娘の家まで、郵送サービスだよ」

 

「「ふーん」」

 

興味を失くした真凛をむんずと捕まえて、人の悪い笑みを浮かべる。

 

「何そそくさ帰ろうとしてんだ。勿論お前には道案内させるに決まってんだろ?」

 

「えぇーーーー!!?」

 

この時気になったのは、結局この2人の勝負はどっちが勝ったのか、それと、店番の給料は払われるのか………まあ、そんなところだ。

 

後は、あいつの涙の理由。

 

 

 

 

 

 

昔、ロクでも無い前世の記憶、俺の前に立ち塞がる男が言った。

 

『悪りいな。美人の涙が最優先さ』

 

………とさ。




最後の名言が分かった人はあの2人にボコられた人→(負け犬組へようこそ!歓迎しよう……盛大にな!)
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