鶏物語でも明るい万能の神様として出てくるクロイス
しかし、彼も以前は神ではなくちゃんと人間として一生を終えていた。
これはそんな人間として生きていた彼の身の回りに起きた、ちょっぴり不思議なお話である。
第0話「始まりの雪」
しんしんと粉雪が降り積もる夜、少年は1人夜道を歩いていた。少年の名前は黒井 昴(くろい すばる)。20歳という若さでその才能を買われ、俳優として芸能界にて働いていた。昴は元々物覚えが良く、そのビジュアルのおかげもあってか若手ながら人気は凄まじかった。今日は仕事の終わりに妹である雪女(ゆきめ)から頼まれた買い物を済ませ、帰路に至っている所であった。
「んにしてもこんな寒い中、わざわざ買い物なんてさせなくても・・・全く兄貴使いが荒いぜ・・・」
そんな愚痴を吐きつつ辺りを見渡してみると、煌々とネオンが輝いているのが分かる。
「そうか...世間ではクリスマスか。何が聖夜だ...くだらねぇ...。」
昴は世間では笑顔を見せてるが、それは演技にすぎない。実は人付き合いは苦手な方で異性と付き合うなんてもってのほかだ。手を繋いでるカップルなんざ見るだけで気分悪くなる。そんな中、改めて妹から頼まれたものを確認する。
「えーっと、今日の晩飯で買うものは全部買ったな。・・・なんだ?この最後に書いてあるやつ」
そこには小さくケーキ忘れないでねって書いてあった。さすが妹である、普段は兄に当たってばかりの雪女だが、たまぁにこういった優しい面を見せてくれる。
「ふっ、あいつもたまには気が利くじゃん...たまには早く帰って何か買ってやらないとな。」
少し急ぎ足で雪道を駆けていくと、すれ違いざまに誰かとぶつかった気がした。
「す、すいません。大丈夫ですか?」
「どこ見て歩いてんだよ!!少しは気ィつけろよ」
うーん...一見男か女か分からない子供とぶつかったようだが、どうやら怪我もないようだ。しかしあれが年上に対する態度かよ・・・。その子供とはその後一言も交わすことなく別れた。が、その時だった。子供を1台の高級車がひこうとしていたのを昴は見逃さなかった。この雪道だ、スピードもかなり出ている。子供の足ではまずよけられないだろう。さすがの昴も人が事故に遭うのを見過ごすほど冷たい人間ではない。すぐさまその子供を抱えた状態で向かいの雪道に滑り込む。車とすれ違う際、軽く舌打ちが聞こえた気がした。しかし、滑り込んだ先にはもう1人黒い衣装に身を包んだ身の細い男が、すぐさま昴の意識を奪い、その子供と一緒に何処かへ連れていってしまった。
あれから何時間経ったのだろう・・・
目が覚めたらそこは真っ暗で物静かな空間だった。
次回へ続く...