なんだなんだ、一体なにが起こってる。
さっきまで動いていた人はフリーズするし、なんか遠くから破砕音が聞こえるし、俺はなんだかしらないけどルシファーに引きずられてるし。
今気づいたんだけど景色も変わってるな。
なんていうか晴れだったのに薄暗い天気に変わったというか。
要約すれば全面的に暗い。
「着いたわよ」
着いた?着いたってどこに。
みたいな視線をルシファーに向けると、彼女はある一点をずっと見てるから、俺もその視線に合わせる。
「もっとタタカワせロー!!」
「あれは・・・!」
視線の先にいたのはモンストで見たことがあるモンスターだ。名前は忘れたけど。
そのモンスターが建物や道を壊している。
「ビゼラー、ね」
ビゼラーとはあのモンスターの名前のことなんだろう。今思い出した。
ルシファーは私服から召喚された当初着ていた服に一瞬で着なおす。
服が粒子状に変化し、違う服に変わる。フォームチェンジというやつだ。
右手を掲げ、指をピストルの形にしてビゼラーに向ける。ほどなくして指先から水色のレーザーがビゼラーに向かって放たれる。
「ガッ・・・・」
そしてレーザーはビゼラーの体を貫通する。ビゼラーは白目を剝き、倒れる。
ルシファーは指先にふっ、と息を吹きかけ、
「余裕」
と言った。
☆
「とりあえず、説明してもらえる?」
「今までの事を?」
「うん」
建物の屋上に移動した俺たち。
周りは相変わらず静止している。景色も薄暗いまま。
ルシファーは私服に姿を戻し、俺と向き合う。
「いーい?トーリ。これから言うことは全て事実だから心して聞きなさいよ」
「わかった」
「よし。まずさっきの事から説明するわ。あれはゲートを潜ってこっちの世界、つまり人間界に来てしまったモンスターの1匹よ」
「ゲート?」
「もともとはちゃんとした理由がなければ開かれることのないモンスター界と人間界を繋ぐ門なんだけど、さっきみたいにちゃんとした理由もないのに悪意だけをもってこっちの世界くるモンスターが増えてね」
さっきのビゼラーってやつ、見るからに凶暴そうな性格してたからな。ちゃんとした理由を言ってもゲートは開かなさそうだしな。あれは。
「ちなみにゲートってどんなの?」
「スマホよ」
「は?」
「だからそのスマホがゲートよ。ただモンスターストライクっていうアプリをダウンロードしている者にしか反応しないけど」
驚いた。ゲートって身近にあるんだな。今の時代モンストやってない人の方が珍しいからな。
つーことは俺の生きてるこの町のあちこちがゲートだらけってことじゃないか。
なんか一機に背筋が凍りついてきた。
さっきみたいなモンスターがこれからもバンバン出てきたらいつか巻き込まれて死んじゃうかもしれない。いや絶対死ぬ。今回はルシファーが楽勝で倒してくれたけど。
「モンスター界の悪意には善意で立ち向かおう、っていう感じで
けど?
「・・・なぜだかわからないけど善意モンスターは悪意をもったモンスターに歯が立たなかったのよ」
「え。なんで?」
「わからない。何度も何度も攻撃しても、まるで蚊が必至にコンクリートの壁に体当たりしているのと同じ。でもね、正義が悪に屈する様を何回も見て絶望する善意を持ったモンスター達に、ある日突然打開策が生まれた」
「それが人間との契約。ってわけか、なるほどね」
「そう。なぜだか知らないけど人間と契約することで悪意を持ったモンスターを屠ることが可能になった、ってオチよ」
悪意をもったモンスターはゲートを通ってこの世界で悪さをする。その悪さを防ぐために今度は正義の心をもったモンスターが悪意をもつモンスターを倒すはずだったんだけど全く攻撃が通用しなかった。
そしてなぜだか知らないが人間と契約することによって、初めて攻撃が効くようになった。
言われたことをもう一回言ってみたけど本当になんで?ってなる。
人間と契約しただけでモンスターってそんなに強くなれるものなの?
モンスターって不思議な生き物だな。
「悪意をもったモンスターが人間と契約したっていう例は?」
「ないわね。今のところ」
「ふーん。まあなんだ、ルシファーも悪を見過ごすことができずに俺と契約したってことか」
「いいえ。私はこの世界がどうなろうと知ったこっちゃない、て思ってたわ」
「え。マジで?」
「マジよ。モンスター界さえ残っていればいい。人間界なんて救うことになんの意味があるの?ってずっと思ってたわ。私みたいに突然召喚されるモンスターもいれば、自分からゲートを通って人間と契約したがるモンスターもいるってわけよ」
髪をくるくるいじりながら言う。
じゃあなんで俺と契約してるんだ?
「私にもわからないわよ」
「心の声読まないでもらえませんかねえ」
「勘よ。気にしなくていいわ」
あ、そ。
「どっちかって言うと私も悪意をもったモンスターね。
「心の底は正義に満ち溢れてたんじゃ―――――」
「ないわね。現に私、結構前だけど火属性と水属性と木属性と光属性のモンスター達が住んでる大陸を10分の6ぐらい吹き飛ばしたことあったから」
「・・・ちなみに理由は?」
「忘れたわ」
さいですか。
「でも召喚されても拒めば良かったんじゃ」
「召喚=契約済みって解釈されるのよ。ほら、あなたの左手の甲を見なさい」
そう言われ、自分の左手を見てみると水色の線で書かれた紋章が浮かびあがってた。
キラキラ光っていて綺麗だ。
「それが契約の証。そして一度契約したモンスターは契約を破棄しない限りモンスター界には戻れない」
「君の性格上、すぐに破棄しても良かったんじゃ?」
「しないわよ。私にもプライドってものがあるの」
ドヤァ。みたいな顔してくる。
大陸10分の6吹き飛ばした奴がプライドって言われても納得しづらいんだが。
「周りの人間がフリーズしたり、景色が変わったりするのは?」
「それは私にもわからないわね。あくまで勘だけど、モンスターが来てしまったことによるこの世界なりの防御策ってところじゃないかしら」
「俺が動けるのは?」
「契約者、だからね。多分」
「なるほど了解した」
知りたいことは全て聞いた。
日常が好きな俺だけど、たまにはこういうのもいいかもしれない。
やってやろうじゃないか。
「じゃ、これからよろしくな。ルシファー」
ルシファーに向けて俺は右手を出す。
それを見てなぜだか知らないがボーっとしている。
もしかして握手知らないのか?
「えっと、この手は何?」
「握手だよ。知らないの?」
「悪手?」
「字が違う。ほら、こうやってやるんだよ」
「あ・・・」
ルシファーの手を掴み、俺の手と握らせる。
「モンスター退治、がんばろう」
「え?あ、う、うん」
?なんで顔が赤いんだ?
にしても・・・。
「ルシファーの手ってすべすべして気持ちいいな」
しまった、つい口に出してしまった。
乙女心って複雑だからな。肩触るだけで「きもい」とか言われたことあるし。
でも本音だから仕方がない。
などと言ってる場合じゃない。ルシファーの恐ろしく鋭い蹴りがくる。
当たったら奥歯折れるな絶対。
「~~~っ!この変態!」
「あっぶね!」
「避けた!?人間なのに!?」
咄嗟の判断だけどな。
「とりあえず逃げよう」
「逃がすわけないでしょ!」
全力で逃げる俺をもの凄い速さで追いかけてくる。
でも顔は真っ赤。あら可愛い。
「怒るなよ、可愛い顔が台無しだぜ」
しまった。また言ってしまった。
「か、かわ、かかかかかかか可愛い!!?!?!?!!!?」
ボンッ!と顔をより一層赤くした。
「~~~~!!!殺す!」
「なんで!?」
「うるさいうるさーい!これでもくらえ!!」
指先をピストルの形にして俺に向けてくる。
まて。あれってもしかしてビゼラーを一撃で倒したあの―――――
ビュンッ!
俺の先にあった壁が突然爆発する。
壁は見るも無残な姿に変わってしまった。
「待て!それは死ぬ!マジで死ぬ!」
「うるさい!一回死ね!」
ビュンッ!ビュンッ!
「落ち着けルシファー!」
「待ちなさいトーリ!」
追いかけっこをしていたら、周りの人間が動き出し、景色も元に戻る。
ビゼラーに破壊された建物や道もなんだかわからないけど修復されてる。
一件落着。って言いたいけど頼むから誰か助けてお願い。
ルシファー可愛い(2回目)