「ここに包丁をいれてと…内臓を取り出して…3枚に下ろしたら塩漬けにして焼かないと…。アラは…」
ども、戦艦棲姫の戦姫です。いま台所に立って調理をしています。
海で拾っ…もとい保護した艦娘、天龍さん、龍田さん、暁ちゃん、響ちゃん、雷ちゃん、電ちゃんに今ご飯を作ってあげようと思っているところ。
ボロボロだったし、何より疲れているように見えたからお風呂に入れてあげた。
結構長湯だったよ。私もあの中に入りたかった畜生。
「にしても深海棲艦が敵である私たちにご飯をね〜」
「っけ。どうせ手懐けた後俺たちを餌にすんだろうよ!」
「そんなこと言わないの!あの深海棲艦だって親切にしてくれているんだから!」
「んなモン信用できるかよ!」
「うふふ。天龍ちゃんも雷ちゃんも喧嘩しないの〜」
天龍さんと雷ちゃんが口論している。龍田さんが言うように口喧嘩とも言うが。
時雨ちゃんが言うには天龍さんと龍田さんは姉妹艦と言うものらしく、服装も同じだとか。
私的には龍田さんが姉の方だと思っていたけど、天龍さんの方が姉らしい。龍田さんが大人すぎるのかな?まあ触れないでおこう。
「おっともう鯖焼けちゃったか。皿に盛り付けてと…。あ、味見味見…うん美味しい!次魚介スープを作らないと。まず蟹の塩茹でを作った後にアラを入れとけば大丈夫かな?早速作らなくては。なべなべなべ…」
今晩の献立は鯖の塩焼きと魚介スープと蟹の塩茹で。
時雨ちゃんが鯖を沢山捕って来たから塩焼きを作って見ました。
塩は私と時雨ちゃんが漁業している間に妖精さんたちが作ってくれた。頼もしすぎるぞ妖精さん。
「れでぃだわ…!」
「хорошо。あれが大人というものなのか…!」
「時雨さんと戦姫さんはどー言う関係なのです?」
「それは私も気になるわね。どれぐらいれでぃなのか!」
「それは私も気になる。教えてくれないかな?」
「えーっとどこから説明したらいいかな。まず最初に僕と戦姫が出会ったのは…」
時雨ちゃんと暁ちゃん、響ちゃん、電ちゃんは仲良くお話をしているようだ。
1番上のお姉ちゃんが暁ちゃん。
妹の前では偉大な姉を演じているけど、私から見れば背伸びしたいお年頃なんだな、としか思えない。それが可愛いんだけどね。
2番目のお姉ちゃんが響ちゃん。
姉妹の中では1番大人しい娘だね。時々ロシア語を話すけどすげーって思う。他の姉妹は日本人特有の髪の色だけど響ちゃんは白に近い銀色の髪だった。銀髪碧眼少女も中々いいもんですな。
3番目のお姉ちゃんが雷ちゃん。
天龍さんと口論、もとい口喧嘩をしていた娘。気が強くて頼りになる娘だね。
姉妹の中で1番大人だと思う。巷ではダメ人間製造機とも言われているらしい。
最後に末っ子の電ちゃん。気が弱そうで雷ちゃんとは正反対の性格。とても優しい心の持ち主で、ご飯を誘った時も雷ちゃんと一緒に説得してくれていた。2人合わせて雷電!なんちゃって。なんかすみません。
この4姉妹が暁型の駆逐艦と言う娘たち。
その型とかが同じ設計だから姉妹と言われているのかな。
「せんきさん!」
「てーぶるといすができました!」
「べっどはせんきさんのおとなりのへやと!」
「そのおとなりのへやにせっちしときました!」
「みんなでおとまりかいができるのです!」
「ありがとう妖精さんたち。あそこに置いといてもらえる?」
『りょうかいしました!』
料理を作っている間に足りない机や椅子とベッドを妖精さんたちに作ってもらった。
夜遅くにすみませんと思う。そしてありがとう。
「塩茹では完成っと。わぁ〜!美味しそうだなぁこの蟹。もしこれが冬だったら世界獲れるレベルだよ!…うん美味しい!この塩茹でに使ったスープにアラとかを入れてと。魚醤も作らないといけないね。あとで妖精さんに樽を作ってもらわないと…」
魚醤ってのは文字通り、魚で作る醤油だ。大豆と違って少し塩味がする。
発酵しないといけないから魚醤は作るのに少なくても4ヶ月はかかる。
…え?なぜこんなことを知っているのかって?
それは私のお父さんのお爺ちゃんが漁師だったからです。ふぁい。
お爺ちゃんの家に行っては魚の捌き方とか魚醤とか作っていたからね。自然と出来るようになっちゃった。後お母さんが料理苦手でして。ヤバいと思ったので自分が料理してた。
あれからもう台所に立って7年も経ったのか…。懐かしいなぁ。
…おっとこうしている暇があったら料理しないと。果物果物…。
「できた!!!」
『おぉ…』
鯖の塩焼き、蟹とアラの魚介スープ、蟹の塩茹でができた。
この世界に来てから初めての料理、気合いがはいったぜ…。
「それじゃあ、いただきまーす!」
『いただきまーす!!!』
ん〜!冬じゃないから味はそうでもないって思ったけどやっぱ美味しい!
作った甲斐があった。塩焼きは思った以上に身が離れるから食べやすいし、魚介スープは少ない時間だったけどちゃんと出汁がとれている。
蟹の塩茹でに関してはもう満点に近い。やっぱ冬に食べたかったな。どの魚も旬だし。
夏とか暖かい時期だと熱を逃そうとするから脂分とか逃げちゃうんだよね。でも良かったちゃんと美味しくて。
「美味しいわねこの蟹!」
「姉さん蟹ばっかり食べないで魚も食べないと」
「ん〜!このスープ美味しい!体に染み渡る美味しさね!」
「美味しいのです!美味しいのです!間宮さんと同じくらいに美味しいのです!」
暁4姉妹には好評のようだ。それにしても間宮さんって誰なんだろう。学校の給食調理員さんみたいな人なのかな?
「美味しいよ…!美味しいよ戦姫!ありがとう戦姫…うぅ…」
「時雨ちゃんは泣かないの。私の料理が涙味になっちゃうわ」
時雨ちゃんは泣きながらも私の料理を口にしてくれた。
時雨ちゃんは前の糞鎮守府ではろくにご飯が食べれなかったらしく、料理をあまり口にすることはなかったようだ。ブラック死すべし。
そんな賑やかな中に1人、料理に手をつけない人がいた。
「天龍ちゃん、ご飯食べないの〜?美味しいわよ〜?」
「誰が深海棲艦が作った飯を食うか!」
「もう天龍さんはいっつもそんなこと言って!」
「しょうがねえだろ!なんでお前らはこいつのこと信用できんだよ!?どう見ても俺たちの敵じゃねえか!」
「今はそんなこと関係ないでしょ!?いつまでこんなこと引きずってんのよ!」
食事中になぜか喧嘩が始まった。どうしようどうしよう。止めなきゃ。
「まあまあ喧嘩はそこまでにしといて…」
「テメェが悪いんだろ!テメェが!!!」
「きゃっ!」
そう天龍さんが叫んだ後、料理が乗った皿を私に投げて、そのまま外に出て行ってしまった。
やっぱ信用されてないのかな…私って。
「ごめんなさいね〜。天龍ちゃんはああいう性格なの〜。根はいい子なのよ〜?」
「しょうがないよ。私は深海棲艦で、みんなは艦娘なんだから。ああなるのが普通なんだと思うよ…」
私はそう龍田さんに言いながら天龍さんが投げた皿などを掃除したりした。
「でも…」
「そういうものかしらね〜?雷ちゃんと電ちゃんで天龍ちゃんを説得して来てもらえる〜?」
「別にいいけど…」
「大丈夫なのです?そっとしておいた方がいい気がするのです」
「う〜ん。どうしたものかしらね〜」
説得か…。こういうのは私じゃない人が適任なのかも知れない。でもそれじゃあ天龍さんが他の艦娘に当たってしまうかもしれない。
ここは腹を括って、
「私が説得する」
「え?でもそれじゃ天龍ちゃんが〜」
「しょうがないよ。こういう状況を作った私に責任がある」
「でも〜」
やっぱり駄目か…。
「龍田さん。ここは戦姫さんにお願いする方がいいのかもしれないわ」
「本人だってこうなることは分かってたんだから」
「私もそれに賛成なのです!」
「私もそれに賛成する。天龍さんは私たちを守りたいだけなんだと思うけど、親切にしてくれたんだからちゃんと受け取らないと」
「僕も賛成かな。天龍は戦姫のような深海棲艦に会ったことがないから混乱しているのだと思う。戦姫がそう言う深海棲艦ってことを分かってもらわないと、後々苦労するからね」
駆逐艦の娘たちは私が説得するのに賛成のようだ。
私だって天龍さんに言わないといけないことがある。
「しょうがないわね〜。戦姫さん、天龍ちゃんの説得お願いね〜」
「分かったよ」
龍田さんも渋々承諾してくれた。
私は床に落ちたものを拾い上げてゴミ箱に捨てて手を洗った後、天龍さんが行った方向へと向かった。
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「っち。どいつもこいつもあいつのこと信用しやがって…」
「ここに居たんだ」
「っ!?」
私は砂浜にポツンと座っていた天龍さんに話しかけた。急に声を掛けられたから驚いていたが。
「んのようだよ。深海棲艦」
「話しておきたいことがあってね…」
「信用しろってか?んなこと出来るわけねえだろ!目が覚めたらと思ったら深海棲艦とかいうバケモンと戦わせられるしよ!同期の奴だって、お前らにやられて沈んだ奴だっていんだぞ!?どこをどうやって信用すればいいんだよ!言ってみろよ!」
天龍さんは涙目になりながら、私のワンピースを掴み叫んだ。
「分からないよ…そんなの…」
私は震える声でそう答えた。
「分かんねえなら余計なことすんなよ!テメェらのせいで俺たちが生まれて!目の前で殺され!テメェらのせいでまた生まれて!殺されの繰り返しじゃねえか!そっちは知らねえがこっちは辛い思いしてんだよ!テメェはどうなんだよ!アァ!?」
「分かんないよそんなこと!!!私だって学校から帰ったと思ったら海のど真ん中に突っ立ってたし!仲間である筈の深海棲艦に砲を向けられるし!あんたたちは頼れる姉妹がいるけど、私はいつだって1人だった!あんたらには分からないでしょ!?1人が痛いことよりも辛いってこと!!!」
私も涙目になりながらも天龍さんに言い返した。
私はすぐに1人から脱出できた。妖精さんに時雨ちゃん。
でも海に立っていた時は寂しかった。サメもどきに砲を向けられるのは怖かった。頼れる人がいなくて辛くて怖かった。艦娘には姉妹がいるけれど、私は前の体でも今の体でも妹はいない。
「あんたらばっかり辛い辛い言ってんじゃないよ!なんで深海棲艦がこんなペラペラ喋れるって!?もともと1人の人間だったからだよ!なんで生きてこられたかって!?知識があったからだよ!あんたらだって分かってないじゃないこっちのこと!!!」
「!!!」
「あんたらばっかり被害者面してんじゃないわよ!こっちだって苦労してんだよ!!!」
私は思っていることを全て吐き出した。辛いこと、怖いこと。
天龍さんは私のことを聞いて驚いていた。無理もないよ。そんなこと妖精さんにも時雨ちゃんにも話していないんだから。
「お前も辛い思いしてたんだな…。俺ばっかり過剰に反応して、一人でキレて、深海棲艦だってところしか見てないでお前のことをちゃんと見てなかった…。すまない…!本当にすまなかった…!」
「いいよ…私も言い過ぎた。ごめんなさい…」
天龍さんは私の服から手を離して両膝を地面につけた。涙を流しながら。地面を殴りながら。
私もちょっと言い過ぎたな。天龍さんも辛い筈なのに。
「もう戻ろう?天龍さん。みんなが心配してるよ?」
「でもいいのか…?俺はお前のことを…」
「そんなことはもういいよ。辛い気持ちは一緒なんだから。ね?」
「っ!…そうだな。ありがとな。こんな俺を」
「あーはいはいそーいうのは良いから。帰りましょう帰りましょう!」
私は涙を拭いた後、家に戻ろうとした。そしたら、
「天龍…」
「ん?」
「いちいちさんとかつけなくて良いからよ。天龍って呼んでくれ」
「うん一緒にご飯食べよ天龍!私のことは戦姫って呼んで!」
「ああ、そうだな。一緒に食うか戦姫…」
「それじゃ出発しんこー!!!」
私は走って家まで帰った。龍田さんたちは私が笑顔でびっくりしていたが、そんなことは気にしない。
ちゃちゃっと天龍のご飯を作らなくては。
「…強いんだな。戦姫ってのは……」
天龍は砂浜でそう呟いた後、戦姫の後に続いて走った。
呟いた言葉は誰にも届かず、潮風に流されていった。
色々難しいぜ畜生。
次は戦姫と同じ部類のを入れようと思っています。
感想、誤字報告があったらよろしくお願いします。
次回もお楽しみに。
ちなみに作者のお爺ちゃんは漁師ではありません。