裏切りの隣に愛の手を 作:冷目
短編なので、すぐに終わると思うのでどうかご勘弁を……
そしてタイトルは安定の某アプリの英語通訳
間違ってたとしても「オレは悪くねぇ!」
さて、最初から甘さ全開でお送りします
イマイチ書き方がわからないので甘くない表現かもしれませんが、「未熟なんだな」と鼻で笑ってください
では、どうぞ!
彼の周囲に対する考え方は、「まるで子ども」だった。
彼が生まれ持った才能は、まだ子どもである彼にそのような考えに至らせた。
どんな大人でもだ。親でも、教師でも、老人でも。
「は、初め……まして。
「
だから、彼は彼女に特別な何かを感じたわけではない。
彼女も他の者たちと同様、「まるで子ども」な子どもだった。
「希望ヶ峰学園……?」
「そう、すごい才能を持った人だけが入れる学校なんだって。僕はわからないけど、静子ちゃんは色んな薬を作れるんだ。きっと入れるよ」
「だ、大丈夫……! 彷徨君だって、すごい才能を持っているってお母さんも言ってたよ? だから彷徨君も……一緒に、希望ヶ峰学園に行こうよ……!」
それでも、彼は周囲に絶望を感じることは無かった。
むしろ、自分の才能に希望さえ感じるようになっていた。この才能があるからこそ、自分は何事も無く生きていくことができるのだと。
「……え? い、今……なんて」
「……オレが静子を守る。嬉しい時も、辛い時も……いつだって隣に居続ける。静子が死ぬまで……いや、その死からも守ってみせる。一生をかけて、静子を守るって誓う」
「彷、徨……! あり、がとう……!」
自分ならば守れると確信に似たものを感じていた。
この……人の心がわかる才能さえあれば、隣にいる彼女も守ることができると。
こうして、秋雨彷徨は超高校級の保育士としての道を歩み始めた。
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「人類史上最大最悪の絶望的事件」……そう呼称される全世界を巻き込んでの大事件による被害は、少しずつではあるが治まりつつあった。希望ヶ峰学園のOB・OGを中心に組織された未来機関により、事件の首謀者であり超高校級の絶望の
かつて希望の学園とまで呼ばれた希望ヶ峰学園にて起こり、全世界へと中継された最悪のコロシアイゲームを勝ち抜き、江ノ島を死亡させるに至った超高校級の希望と呼ばれる英雄……
彼が「絶望の残党」を保護している、という情報が出てくるまでは。
「活性剤……あと、筋肉増強剤も一応……。それから……」
「大荷物だな」
「ひぃい!」
未来機関第4支部の支部長室に、甲高い悲鳴が響く。その拍子に、ゴソゴソと用意していた大量の薬の一部を女性は落としてしまう。
コロコロと床を転がっていった薬は声をかけた男性の足に当たり、そこで止まる。男性は薬を拾うと、笑顔で女性に渡す。
「ほら。気を付けろよ、静子」
「あ、ありがと……彷徨」
元・超高校級の薬剤師、第4支部の支部長である忌村静子。
元・超高校級の保育士、第4支部副支部長を務める秋雨彷徨。
秋雨から手渡された薬を、忌村は改めて自分の懐へとしまった。
「大事なことを忘れるな。オレは元・超高校級の保育士で、第4支部副支部長。そして静子の彼氏だ」
「ちょ!? きゅ、急に何を言いだすのよ!」
「……旦那って言った方がよかったか?」
「そういう問題じゃないわよ! というか、誰に向かって言ってるのよ!」
突拍子もないことを真顔で言う秋雨に、忌村は顔を真っ赤にしてツッコミを入れる。そのツッコミをスルーしつつ、秋雨は忌村が用意していた荷物を見て「ふむ」と顎に手を添え、忌村に向き直った。
「ところで静子、なんで査問会議に行くだけでこんなに薬がいるんだ? 特に必要はないと思うが」
「し、仕方ないでしょ……。今回の査問会議には、ほとんどの支部長が集まる……。『絶望の残党』が狙うとしたら、またとない好機だわ……」
「確かにな」
用心深いのか、襲撃された際の可能性も考えて用意を進めていた忌村。未来機関にとって、各支部長の存在はとても大きい。逆に言えば、支部長たちを何とかすれば未来機関は瓦解しかねない。
それは未来機関と敵対する「絶望の残党」も周知の事実であり、その支部長たちが一か所に集まる機会があるというのだから、そこを狙う可能性は確かに十分にある。
しかし、忌村はすぐにそんな自分の言葉を否定する。
「でも……今回の査問会議がある場所は、宗方さんが秘密裏に建設を進めていたトコ……。場所自体が地図にも記されてないから、襲撃の心配は無いって……。今の『絶望の残党』には、その場所を突き止めたり、罠を仕掛ける力も残っていないし……」
「ふむ。確かに今の奴らは烏合の衆と言ってもいいレベルだ」
自らの行動を杞憂とでも言いたげに安全な要素を挙げ、忌村は秋雨に安全であることを説明する。その説明の内容に納得したように、秋雨は再び顎に手を添えて頷く。その様子に手ごたえを感じ、忌村はさらに説明を続ける。
「だから、薬の準備はあくまで念のため……。襲撃の可能性はなくても、他にも色んな可能性はあるでしょ? 宗方さんも『心配するな』って言ってたけど、クセみたいなものだから……。それに、私って手元に何か薬がないと落ち着かないし……。あ、このこと宗方さんに話したら『職業病みたいなものだろう』って……」
「…………」
「……彷徨?」
ふと気付くと、どこか遠くを見るような眼をしている秋雨。忌村はその意図がわからず、首を傾げる。
秋雨は黙ったまま、ゆっくりと俯いていく。ますます意味がわからない忌村は、変わらず首を傾げている。そして──
──ギュウ
「──え!?」
突然、忌村を抱き寄せた。
「ちょ、なに!? 急に何を──!」
「……別に、深い意味は無い」
「じゃ、じゃあ離して……!」
「だが断る」
突然のことに戸惑いを隠せず顔を真っ赤にする忌村に対して、秋雨は淡々とした声色で忌村を抱きしめ続ける。「離して」と言われても断り、そればかりかさらに強い力で抱きしめ始めた。
「この秋雨彷徨が最も好きなことの一つは、オレの行動に照れて『やめて』と言う静子に『NO』と断ってやることだ」
「わ、訳わかんないこと言ってないで、早く離して……!」
抱きしめられているため顔は見れないが、忌村には秋雨がこの上ないほど真剣な表情をしているのが予想できた。台詞としてはふざけているようにも聞こえるが、当の秋雨はいたって真剣である。
しかし、だからといって忌村が感じる羞恥の大きさは変わらないため、早く離すよう忌村は秋雨に頼み続ける。
「…………」
すると、急に秋雨の力が緩み、その口も閉ざされた。ようやく終わるかと思い、忌村は安堵の表情を浮かべると……
「……嫌なの?」
「ふえっ!?」
そうして気が緩んだその一瞬。
忌村の目の前に秋雨の顔が現れる。真っ直ぐと目を合わせられ、まるで心の内まで見透かされるような気分になる。再び顔が紅潮し、すぐにでも視線を外したくなるが緊張からか外すこともできない。
超近距離で見つめられ、頭がオーバーヒートしそうになる忌村。それに対して、秋雨は何事もないような表情で忌村の目を覗き込み続ける。
「オレの勘が正しければ……本当は離してほしくなんか、ないでしょ?」
「あ、あぅ……」
囁くように告げられる秋雨の声に、ますます忌村の顔は紅潮していく。口の中が渇いていき、言葉も上手く出てこない。
それはもちろん、異常なまでに近い秋雨との距離も関係しているが、それ以上に忌村の心を乱しているのは……
これこそ、秋雨が超高校級の保育士と呼ばれた所以。
相手を見れば、たとえ言葉にせずともその人の本心がわかる……それこそが秋雨が生まれ持った才能である。まだ言葉も上手く話せない子どもでも何を望んでいるのか、秋雨は見ただけでそれを知ることができる。さらに、そうして本心を知ればその人を真に理解することもできる。
保育士どころか、対人関係においては唯一無二とも言える才能。だから言ってみれば、秋雨の前ではどんな嘘も無意味であり、その心は裸同然なのだ。
「そうでしょ? ……静子」
「ッ──!」
──ドンッ!
目を合わせながら、わずかに首を傾げる秋雨。その言葉に我慢の限界を迎えたのか、忌村は勢いよく秋雨を突き飛ばして距離をとる。
だが、それは“拒否”ではない。その真意は……
「……い、嫌なわけない、でしょ。嬉しすぎて、歯止め効かなくなりそうだったから言ったのに……。ホントに……バカ」
頬を真っ赤に染め、視線を逸らしながら呟く忌村。“拒否”というよりは“避難”に似たその行動。
だが、秋雨はそれも全てわかっているわけであり、彼にしてみれば忌村が自らそれを認めることを待っていたのだろう。
現に、彼は非常に満足気な笑みを浮かべている。そして、笑顔のまま優しく忌村の頭を撫でた。
「……悪い。静子が宗方さんの話ばかりしてたから、少し意地悪したくなった」
「ま、またそんな……。変なところで子どもっぽいんだから……」
「そうだな、自覚してる」
「……も、もういいでしょ? 私、そろそろ準備して出発しないと……」
「え?」
「え?」
しばらく続いたやり取りを切り上げようとする忌村に対し、秋雨は意味がわからないとでも言いたげに首を傾げた。その秋雨の姿を見て、忌村も思わず首を傾げる。
その刹那、秋雨は忌村の顔からそっとマスクを外し、その素顔を露わにする。
「この流れはキスだろ? 常識的に考えて」
「ちょちょちょちょ!? どどど、どこの常識よ、それ!!」
「オレと静子の間では常識だろ」
「わた、私はそんな常識持ってないわよ!!」
もはやタコと見間違えるほど真っ赤に染まる忌村の顔に両手を添えながら、徐々にその距離を縮めていく秋雨。忌村は後ずさっていくが、最終的に壁との距離がなくなって逃げ場を完全に無くしてしまう。
恥ずかしそうに口元を隠し、目を伏せる忌村。秋雨は顔に添えた手を離し、その手をどかす。さらに、どかしてすぐに再び顔に手を添えて、ゆっくりとその顔を上げさせる。
「やっ、ちょ……! ホントに、もう……!」
「歯止めが効かなくなりそうだったから逃げようとしたんだろ? でも、その歯止め……本当はもう効かなくなってるんだよな?」
「ッ~~!」
「問題ない。……オレも効かなくなってる」
優しく、諭すように甘く語りかけられる秋雨の言葉。何を言ってもダメだという諦めもあってか、忌村はゆっくりと自ら視線を秋雨の瞳へと向ける。
「い、いつも言ってるけど……ブラケット(歯の矯正装置)つけてるから、私とのキスなんて気持ち悪いだけ──」
「いつも言ってる。静子とのキスで感じるのは……幸せだけだって」
向かい合う二人の瞳。
微かな吐息すら感じ合うことができるほど近づいた距離。
その唇は互いを求めるように距離を縮めていき……
「彷徨……」
「好きだ……静子」
「わ、私も──」
「失礼します! 忌村支部長! 秋雨副支部長! 第2支部から迎えのヘリが…………あ」
「」
「…………」
目の前の光景に「やってしまった感」を感じまくる部下。
ショックと、お決まりとも言える展開に固まる忌村。
同じく固まったまま視線だけ部下に向ける秋雨。
「た、大変失礼いたしました……! あ、あの、その……ですが、もう時間とのことで……」
「」
もはや言葉すら出ない忌村は、部下からの謝罪の言葉すら届いているかどうか危うい。まさに完全な生殺し状態。こんな状態で査問会議に出向かなくてはならないのかと忌村が考えていると……
「関係ないな」
「──んん!?」
突然、忌村の顔を引き寄せる秋雨。そして、そのままほぼ強引に唇を重ねる。まさか続けるとは思っておらず、完全に不意を突かれた忌村は大きく目を見開く。
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「──さて、じゃあ
「」
再び完全に言葉を失う忌村に対し、秋雨はこの上なく満足気な表情を浮かべて歩き出す。
どこからか黒い鞄を取り出し、忌村が用意していた薬品類が入ったカバンと一緒に持って用意を済ませる。言葉を失って呆然としていた忌村だったが、その様子を見て細々とした声を上げる。
「ちょ、ちょっと……なんで彷徨が準備してるの……? 行くのは私──」
「オレも行くからに決まってるだろ。荷物はオレが持つから、早く行くぞ」
「はああぁぁあぁぁぁああぁ!?」
平然と話す秋雨の言葉に、忌村はキス以上の衝撃を受ける。
こうして、第4支部の支部長と副支部長は査問会議の場へと向かう。
そこで待ち構える、絶望に満ちた狂気の元へと。
キャラ設定などについては後に投稿する『キャラ設定』をご覧ください
オリ主以外は原作の公式サイトを見ていただければ、よりわかりやすいと思います
相も変わらず表現力は皆無なので……
次回から本編突入!
絶望編の方も書く予定ではいるのでお楽しみに!
勢いのままのダンガンロンパ……次回もよろしくお願いします!