裏切りの隣に愛の手を 作:冷目
忙しかったり体調を崩したりと、書くに書けない日が続いて中々こちらまで手が回りませんでした……!
次回からは少しでも間が空かないよう努めます……(と書いてる今も病み上がりですが……)
では、どうぞ!
A first is a discord
「何度でも言おう……さっさと帰れ」
「何度でも言う……絶対に断る」
楕円型のテーブルを挟んで睨み合う二人の男。
十数人の男女が集った空間が異様な殺気に包まれる。
なぜこのようなことになってしまったのか……話は数十分前まで遡る。
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「未来機関第4支部支部長、忌村静子。同じく未来機関第4支部副支部長、秋雨彷徨。ただいま到着しました」
「ちょ、ちょっと! さすがにここまで来るのはマズイから……!」
査問会議が開かれる場所として指定されたのは、未来機関副会長で第2支部支部長でもある
地図にも載っておらず、施設自体の情報もほとんど外部に流出していない施設。そこに案内された忌村と秋雨だったが、本来ならこれはイレギュラー。それを知っている忌村は顔を真っ青にして秋雨を止めようとするが、時すでに遅し。
「……オイオイ。なんでここに副支部長がいんだ? 今回の査問会議に来るのは支部長だけだろうが」
未来機関第6支部支部長、
「あー、やっぱり秋雨君来ちゃったんだ。付いてきちゃうかなーって予想はしてたけどね」
第5支部支部長、
「…………」
第7支部支部長、
「いやはや、相変わらず仲がよろしいようで。若い二人を前にすると、オジサンは嫉妬しちゃうなー」
第3支部支部長、
「まさに『大根長いと嬉しいな』だね!」
第11支部支部長、
「ええと……状況やイントネーションから察するに、『仲良きことは美しきかな』ですか?」
第12支部支部長、グレート・ゴズ。元・超高校級のレスラーの彼は逆蔵に負けず劣らずの体格だったが、その口調や雰囲気は似ても似つかず。万代の言葉をなんとか解釈していた。
「ホッホッホ。相変わらず、忌村君が大事でたまらないようだね、秋雨君」
第1支部支部長にて未来機関会長を務める
「もちろんです。嫁ですから」
「だ、だからそういうこと言わなくていいから! す、すみません! 言っても聞かなくて、ここまで付いてきちゃって……!」
相変わらずな秋雨の言葉に顔を赤くしながらも、忌村は天願に頭を下げる。いくらプライベートな関係とはいえ忌村と秋雨は上司と部下の関係だ。部下の管理は上肢の仕事であり、その責任も上司にくる。
しかし、当の天願はというと穏やかな笑みのまま首を振った。
「ハハハ、構わんよ。まだ会議が始まるまで時間はあるし、宗方君には私からも口添えをしよう。秋雨君は、本当なら支部長を任せてもいいほどの人材だしな。そういう意味では参加資格がある」
「ありがとうございます、会長」
「す、すみません……」
会長からの許しが出たことで、さらに堂々とその場に居座ることを決めた秋雨。一方の忌村は、申し訳なさそうに再び頭を下げた。
話が終わったところで、忌村は人数分用意された椅子に腰かける。秋雨は座るわけにもいかないので、壁に寄りかかる。もちろん忌村の後ろだ。
「……気に入らねぇな。ここに部外者がいるってのは」
「逆蔵君? 秋雨君だって未来機関の一員なんだから、部外者ではないはずよ」
「だから、今回は支部長だけを集めてるっつってんだろ。支部長じゃないなら部外者だろうが」
「でも実力があるっていうのは本当よ? 秋雨君、支部長になる話だってきてたのに忌村さんと離れたくないからーって断ってるわけだし。はい、忌村さん。秋雨君もどうぞ」
会長の許しが出たといっても秋雨がいることを認めたくないらしく、逆蔵は不機嫌そうに呟く。そんな逆蔵に声をかけながら、雪染は忌村と秋雨にお茶を出す。二人は軽く頭を下げてから、それぞれ用意されたお茶に口をつける。
「大分揃ってきたようですね。会長、まだ来ていない参加予定者は誰ですか?」
「ふむ……本来なら全員に集まってほしかったが、今回は第10支部は不参加。第13支部は支部長代理の者が来るが、到着は苗木君と一緒だそうだ。第14支部支部長も同様だな」
会議室にいる者の顔を一通り眺めて、ゴズが天願に来ていない者について確認する。その中で、今回の会議の中心人物とも言える「苗木」の名を聞き、秋雨はお茶を口にしながら考える。
(第13支部にいる苗木の関係者……というと、
苗木と共に江ノ島循子を斃したメンバーについては、今となっては未来機関に所属するすべての人間が知っている。そのほとんどが第14支部に所属している中、唯一第13支部に所属しているのは朝比奈一人のため、特定も容易だった。
秋雨と同じように特定はできたのだろう。ゴズは「なるほど」と納得しながら、これから来るであろう者を挙げていく。
「となると、残りは三名ですね。第2支部と……
第8支部、第9支部ですか」
「ッ──!」
「…………」
第8支部、第9支部……その言葉を聞いた瞬間、かすかに忌村の身体が硬直する。秋雨も、眉間にしわを寄せて口をつぐんでいる。
すると、まるでタイミングを見計らったかのように、会議室の扉が勢いよく開かれた。
「失礼しまーっす! 第8支部支部長、
「第9支部支部長、
「る、流流歌……!」
「…………」
その二人の登場に、忌村はキュッと自身の手を握る。そんな忌村を見て、秋雨は静かに彼女の肩に手を置く。その視線は、原因とも言える二人に向けて。
元・超高校級のお菓子職人の安藤流流歌、そして元・超高校級の鍛冶職人である十六夜惣之助。この二人、そして忌村と秋雨には切っても切れない関係がある。本来なら、すぐにでも切り離したい関係が。
「……なぜ、お前がここに?」
「あれ~? おかしくない? なんでここに副支部長がいるわけ? もしかして、第4支部にはちゃんと連絡がいってないのかな~?」
忌村と秋雨の姿を見つけた瞬間、真っ先に秋雨がいることにわざとらしく首を傾げる十六夜と安藤。すると、秋雨が一歩前に出て二人と対峙する。忌村を背中で隠し、自身を盾にしながら。
「うるせぇよ、甘党野郎と菓子女。オレがここにいるのはオレの意志だ。連絡ミスを疑うんだったら、集合をかけた上の人間に言うんだな」
「はあ? 何ムキになってんのよ、意味わかんない。相変わらず短気すぎて嫌になっちゃう。ね、ヨイちゃん。はい、アーン」
「……おいちい」
その時の秋雨の顔は誰が見ても一目でわかるくらい「苛立っている」と語っていた。そんな秋雨を、嫌悪感を隠さず見せつける安藤。さっさと背中を向けて十六夜にお菓子を与えていた。
「やっぱこういう空気になるよね~……。色々と気を遣っちゃうよ、まったく……」
「まさに『スイカとサツマイモ』だね!」
「テメェはその意味わかんねぇ言い回しをやめろ!」
秋雨と安藤たちとの衝突で、一気に不穏な空気と化した会議室。黄桜は被っていた帽子を深く被り直しながら、やれやれと苦笑いを浮かべる。万代は相変わらず独特な自己解釈をしており、部屋の空気に苛立った逆蔵にツッコまれている。
「……ふぅ、やれやれ」
そんな彼らを見守りながら、天願は大きくため息をつく。幸い、お互いにそれ以上関わろうとはしなかったので、少しずつだが嫌な空気は消えていった。
……はず、だった。
「第4支部副支部長、秋雨彷徨。この査問会議にお前の存在は不要だ。さっさと出ていけ」
「あいにく、帰れと言われて素直に帰るくらいなら最初からここにいない。それくらいわかるだろ? 宗方さん」
(な、なななな何やってるのよ~……!)
安藤たちが到着し、現時点で到着できる支部長の全員が揃ってから数十分後。今回の査問会議の中心人物である、第2支部支部長の宗方京助が到着する。だが、早々にトラブルが発生している。
理由はもちろん、副支部長である秋雨の存在である。
「今回の査問会議、第4支部は支部長の忌村がいれば十分だ。お前は戻って自分の仕事をしろ」
「静子の傍に居るのがオレの仕事だ」
「未来機関としての仕事をしろ、と言っている」
「静子が心配で仕事なんて手につかん」
「貴様……!」
鋭い目つきで睨みつけながら正論を叩きつける宗方に対し、秋雨は堂々と社会人失格とも言える言葉を返し続ける。
その態度に、より一層表情を険しくした宗方。そのまま秋雨の胸倉を掴みに行きそうな雰囲気を止めるかのように、「コホン」と咳払いが響く。
「落ち着け、宗方君。確かに今の秋雨君は副支部長だが、その実力は支部長に相応しい。この場にいても問題は無いと思うが?」
「……やはり、変わったな。昔のあなたなら、こんなイレギュラーなど認めなかった。それに、いくら実力があろうと組織では現実の肩書が重要だ。だから、オレは認めない」
「宗方君……」
会長である天願の諭すような言葉を聞いても、宗方は断固としてその意志を曲げなかった。彼はあくまで副会長。彼の言うように肩書が重要なら、矛盾しているようにも見える。
だが、今の未来機関の内情を考えるとそうでもない。確かに会長は天願であるが、その実権は宗方が握っている。だからこそ、こうして自分が建設を進めた場所で会議を開き、天願に対しても強気に出ることができるということなのだ。
「何度でも言おう……さっさと帰れ」
「何度でも言う……絶対に断る」
そして冒頭の場面に至る、ということである。かれこれ数分ほど睨み合いを続ける両者に、周りの支部長も飽きれ始めている。
そこで、再び天願が間に入って説得を始めた。
「……ならば、秋雨君には会議が終わるまで会議室入口で警備をしてもらってはどうかな? 入口にいるなら会議に口を出すことはできんが、何かあればすぐに対応することもできるぞ。まぁ、この部屋は防音性だが、さすがに騒ぎが起きればわかるだろう。元々警備をしていた宗方君の部下には、手薄な場所の警備を担当してもらうなどしてもらえば、より万全だ」
「…………」
「…………」
天願の提案に、宗方と秋雨から緊迫した雰囲気が少しだけ消える。互いに考えをまとめているのか、しばらく沈黙が続く。
──ドカッ
そして、最初に宗方が動き、自分の椅子に腰かけた。
「……オレとしても警備の手が増えるのは望むところだ。だが、会議の邪魔をしようとしたなら容赦なく帰らせるがな」
その言葉を聞き、秋雨も小さく息を吐く。そして、そのまま背を向けて扉に向かって歩き始めた。
「オレは会議自体に興味はない。ただ、静子に何かあれば干渉する。それだけだ」
──バタン
こうして、数分に渡って続いた二人の男の睨み合いは終わりを告げたのだった。
ちなみに、その間に何度も名前を呼ばれた彼女はというと……
「」
「いやはや、若いっていうのも中々大変だね」
すでに疲労困憊といった様子だった。
一方、会議室から出て入口の警備につくことになった秋雨はというと、すでに警備をしていた宗方の部下に事情を説明し、その場に残った。そして、一人になったその瞬間に内ポケットからイヤホンとトランシーバーのような機械を取り出し、何やら動かし始めた。そして、耳に着けたイヤホンから聞こえる音声に意識を向ける。
『まったく……会議の前からとんだ茶番だ』
それは、会議室にいる宗方の呆れ気味の言葉。ほぼリアルタイムで口にした言葉が、防音性の壁を挟んだ秋雨の耳にまで届いており……
「……よし、来る前こっそり静子に仕掛けた盗聴器、問題は無さそうだな」
問題ありありな行動をしていた。
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『……以上が、お前たちに伝えるべき情報だ。この情報を踏まえ、お前たちには──』
(……ふむ)
盗聴器越しに支部長たちと同じ情報を知る秋雨。そのまま顎に手を添えて、黙々と自らの意見をまとめ始めた。まず求められることは無いだろうが、情報を知った以上は考えずにはいられないのが人間というものだ。
そのため、近づいてくる彼らの存在に気付くのが少しだけ遅れた。
「……ちょっといいかしら?」
「あ?」
「すみません、遅くなりました」
扉が開かれて中にいる者たちが一斉に注目する中、彼は一歩前に出て堂々と声を出す。
(……なるほど、アイツが)
彼を先頭に、同行者二名も会議室に入ったことを確認すると秋雨は扉を閉める。その過程で、彼の後ろ姿をしっかりと目にしながら。
「未来機関第14支部所属……苗木誠です」
(超高校級の……希望)
今更ですが、第一話投稿してすぐの期間限定でしたが、日間ランキングで6位になっていてΣ(゚Д゚)!? となりました、初めてランキングに入れてすぐにスクショしました、ハイ
多くの方に見ていただけてとても嬉しいです!
次回は絶望編……もとい過去編です
今作では未来編=現代編、絶望編=過去編という分け方をしております
では、失礼します!