裏切りの隣に愛の手を   作:冷目

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とんでもなく間が空いてしまって申し訳ありません……
メインだけで手一杯でここまで手が回らなかった所存です……
この連休で一気に仕上げたので、かなり雑な部分はあるかと思いますが……よろしければご覧ください
では、どうぞ!





Unplanned participant

 「人類史上最大最悪の絶望的事件」によって混沌の中に堕ちた世界を救おうと活動を続ける未来機関。その未来機関に所属し、超高校級の絶望という「人類史上最大最悪の絶望的事件」を引き起こした張本人を斃した苗木誠。

 英雄と称されるはずの彼は、「絶望の残党」を匿っていた。その罪を追求しようと開かれた査問会議には、様々な思いが交錯したまま始まろうとしていた。

 

 「すみません、遅れました。未来機関第14支部所属……苗木誠です」

 「……来たか、苗木誠」

 

 同行者2名と共に現れた苗木を、査問会議に集まった各支部長が一斉に視線を集中させる。その中でも一際鋭い視線で睨みつける宗方は、さも当然のことのように次の段階へと移った。

 

 「拘束しろ、逆蔵」

 「了解だ」

 「ちょ、ちょっと! 話も聞かないで拘束なんて!」

 

 来たことに対する確認だけ済ますと、逆蔵に視線を向けて拘束を指示する。当の逆蔵も反論をしようとしないどころか、むしろ待っていたかのように手錠を用意して立ちあがった。

 そのあまりに理不尽な場の流れに、苗木の同行者である朝比奈葵は苗木を庇うように前に出る。

 

 「待って、朝比奈さん! 大丈夫だから……落ち着いて」

 「苗木……」

 

 そんな朝比奈を落ち着かせようと、苗木は窮地に立たされながらも精一杯の笑顔を見せる。その姿を見て、朝比奈は元の場所まで下がる。もちろん、まだ納得はしていないだろうが。

 

 「悪いな。江ノ島循子を斃した英雄様に手錠なんてかけちまってよ」

 「あ……いえ、そんな。それに、英雄なんて──」

 

 ──ゴッ!!

 

 「ガッ──!?」

 「苗木!」

 

 わずかながら申し訳なさそうな態度を見せる逆蔵に、思わず油断する苗木。だが、その油断も束の間。唐突に放たれた逆蔵の拳に腹を殴られ、少量の血が口から吐き出される。

 

 「話を聞くよりも先に手を出すのが未来機関のやり方なのかしら?』

 「……どうやら、荒れているようだな」

 

 そんな会議室での出来事を、忌村に仕掛けた盗聴器越しに聞く秋雨。彼自身、何かしら起こるであろうことは予想していたらしく、特に動じる様子は無かった。

 そのまま中の会話に耳を澄ませると、ひとまず傷を負った苗木を治療するため会議の開始を遅らせるという流れになっていった。そのすぐ後に、雪染と苗木が会議室から出て別室へと移動していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お疲れ様です、秋雨副支部長!」

 「……宗方の部下が何の用だ?」

 「え……? あの、秋雨副支部長が自分に用があると言われたのですが……」

 「は?」

 

 その後も会議室前の警備を続けていた秋雨だったが、最初に警備をしていた宗方の部下が戻ってきた。だが、どうにも話が噛み合っていない。そこで、秋雨はその話の出所を探った。

 

 「その話、誰から聞いた?」

 「えっと……十六夜支部長ですが」

 「…………」

 

 その名前を聞いた瞬間、秋雨は全てを理解した。

 

 「あの、それで話とは……」

 「悪い。少しの間、警備を頼んだ」

 「え!? 秋雨副支部長!?」

 

 それだけ言って、秋雨は宗方の部下一人を残して足早に移動を始めた。あまりに唐突な展開に、宗方の部下は事態が飲み込めずにいたが、仕方なくそのまま会議室前の警備を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………」

 

 十六夜惣之助は、基本的に安藤流流歌の傍を離れない。それは彼が子どもの頃からそうであり、大人になって未来機関の一員となった今でも同じだ。そんな彼が安藤から離れるのは、離れざるを得ない状況の時のみ。

 その一つは、人間として最低限必要な生活行為の一つである。

 

 「……よくここがわかったな」

 「会議室から出た時に、わざわざ『便所だ』って言ってたのはお前だろう」

 「お前がどこに行くか聞いてきたから答えたまでだ」

 

 会議室から最も近い場所にある男性用トイレの近くで佇む十六夜に、秋雨はゆっくりと近づきながら声をかける。

 そして、2~3mほど離れた位置で向かい合うと、秋雨は鋭く細めた眼を十六夜に向けた。

 

 「それで? こんなわかりにくい方法を使って人を呼び寄せた理由はなんだ?」

 「お前のことだからすぐに把握したはずだ。それをわかりにくい方法と言うのはどうかと思うぞ」

 「一般的には、って話だ」

 

 普通なら、見に覚えもないのに他人から「話があるから来た」と言われれば「間違いだ」と言ってしまうだろう。それか、その人物を警戒して慎重になる。

 だが、秋雨はその奥にある意図を見抜き、その話の出所を探った。そして、その人物がどこにいるかも冷静に判断して、特に迷うことも無くここに辿り着いていた。

 

 「まあ、そんな話はどうでもいい。それで、お前を呼び出した理由だが……」

 

 しかし、それは十六夜にとって想定内……というより、予定通りのことだった。そうして彼は、そのまま次の行動を開始する。

 

 「ただ一つ……単純なことだ」

 

 そう言って彼は服についているフードを被り、静かにポケットに手を入れる。そして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ビュオ!

 

 「──こういうこと(・・・・・・)だ」

 

 一瞬で秋雨との距離を詰めた十六夜。その彼の手には……ギラリと照明を反射させる鋭いクナイが握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──シュッ!

 

 クナイを握った秋雨の手が、ちょうど秋雨の頭があった部分を横一文字に振り切る。だが、秋雨は瞬間的に両足の力を抜くことで姿勢を崩し、その攻撃を完全に避ける。

 そして、力を抜いた足が膝を突くよりも前に力を込め、体勢を低くしたまま足を大股に広げて立つ。それと同時に構えをとっており、ほとんど十六夜のクナイが頭上を通過した次の瞬間に動いた。

 

 「ハッ!」

 「ぐ!?」

 

 十六夜がクナイを振り抜いた瞬間に、彼のコートをしっかりと掴む秋雨。襟元と右脇の部分……柔道の組み方だ。そうして掴んだのも束の間、そのまま足を十六夜の足元に滑り込ませ、身体を回転させる。

 そして……

 

 ──ダァン!!

 

 十六夜が突っ込んできた勢いすら利用して、容赦のない背負い投げが決まった。派手な音が廊下に響き渡り、その衝撃の強さが伺える。さすがの十六夜も無傷では済まず……

 

 「……ッ!」

 

 勢いよく床に叩きつけたものを見て、秋雨は思わず目を見開く。それは、十六夜のコートを羽織っていたが、十六夜ではなかった。さらに言うならば……人ですらなかった。

 

 ──ジャキン!

 

 「残念だったな……変わり身だ」

 「……まったく、超高校級の鍛冶職人のくせに、忍者みたいなことしやがって」

 

 十六夜のコートを羽織った……特別性の金属。十六夜が武器を作る時に材料としているものだ。

 それを変わり身として秋雨の背負い投げを躱した十六夜は、そのまま背後に回ってクナイを首筋に突きつける。

 

 「どっちの超高校級か、ハッキリさせてほしいものだ」

 「それを言うなら、お前だってそうだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 保育士を名乗るなら、目潰しなんてするべきじゃない」

 

 クナイを秋雨の首筋に突きつける十六夜の眼前……そこには、確実に両の眼を抉ろうと寸前にまで突きつけられた秋雨の指があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………」

 「…………」

 

 首と眼……それぞれ人体の脆い部分に凶器を突きつけ、黙り込む。一寸も動かず、互いに急所を突ける状態を続ける。そんな緊迫感迫る状況が何秒か続き……

 

 「……引き分け、か」

 「そうだな」

 

 そして、唐突に終わった。同時に凶器を引き、互いの身体を解放する。そこには、先ほどまであった張りつめたような緊迫感は欠片も存在していなかった。

 

 「まったく……急に腕試しをするのはやめろっていつも言ってるだろ」

 「本物の襲撃なら急に来るものだ。それに、お前ならいつ始めても大丈夫だからな」

 「誰のせいだよ」

 

 むしろ、そこには友好的(・・・)な雰囲気が漂っていた。

 その証拠に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ガッ!

 

 「腕は落ちていないようで安心したぞ、彷徨」

 「こっちの台詞だ、惣之助」

 

 二人は右拳を合わせ、親しそうに相手の名前を呼ぶ。その顔に、一点の曇りもない笑顔を浮かべて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「しかし、まさかお前がいるとは思わなかった。さすがに今回ばかりは大人しく残っていると思ったんだが」

 「こんな状況だ。静子一人で行かせられるか。本当なら会議室に居続ける予定だったのに……くそ」

 「相変わらず心配性なことだ」

 

 言葉を交わす二人の間には、会議室で見せたような嫌悪感は欠片も無かった。おそらく今ここに、何も知らない会議室にいた人間が来たら自分の眼を疑うだろう。それだけ二人の中は良さげに見えた。

 

 「心配して当然だ。なにせ、あの女がいるんだからな。ついていくのは当然だ」

 「……お前、それは流流歌のことを言っているのか?」

 「他に誰がいる。静子と溝があるのは、未来機関にアイツだけだろ」

 「あれ(・・)は流流歌に非はない」

 「お前らはそう思ってても、静子はそう思ってない。もちろんオレもだ」

 

 だが、忌村と安藤の仲についての話になると、若干ながら表情に影が差し込んできた。

 会議室でのやり取りを見ていれば察する者もいるだろうが、忌村と安藤は過去に起きたある出来事を機に交流を断っている。それまでは友人として過ごしてきたが、今となっては見る影もない。秋雨と十六夜もその輪に入っていた当人だが、二人は今までと変わらぬ交流を続けていた。もちろん、忌村と安藤には悟られないようにだが。

 

 「言っておくが、流流歌に手を出せば容赦はしない」

 「こっちだって静子に何かあれば本気でやる。それこそ、原形も残さずに殺す」

 「……望むところだ」

 

 真正面から、鋭い眼で睨み合う二人。秋雨は忌村を、十六夜は安藤を大切な女性として接している。その思いの強さは並大抵ではなく、それゆえに二人が放つ殺気も本物だった。

 そうして殺気を放った十六夜は、静かに背を向けて歩き出す。秋雨はそれを追おうとはせず、彼はその場に居続けた。

 

 「──ああ、そうそう」

 「……?」

 

 だが、急に秋雨がわざとらしく声を上げたことで、十六夜の足が止まる。何かと思って振り向くと、秋雨が「当然だ」とでも言いたげな表情で十六夜を見ていた。

 

 「お前、静子についてきたオレに心配性だって言ったけど……逆の立場だったらお前だってそうしただろ? だからオレの行動は“心配”じゃない……“当然”のことだ」

 「……フッ、納得だ。やはりお前は良いことを言う」

 

 それを最後の言葉として、十六夜は会議室へと戻っていった。そして、数分後には秋雨も再び会議室前の警備へと戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ─────

 

 ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ん?」

 

 会議室前へと戻ってきた秋雨は、そこにいるはずの人間の姿が見えないことに気付いた。自分に十六夜からの伝言を伝え、離れている間の警備を任せたはずの……宗方の部下が。

 

 (別の場所の警備に行った……? いや、この会議室より警備を優先する場所なんてあるはずない)

 

 宗方の部下の不在を不審に思いながら、秋雨は扉の前に立って警備を行う。一応、会議室の中の状況も確認しておこうとイヤホンを耳にしようとしたところで……それは起こった。

 

 ──ドガァァァァン!!

 

 「ッ!?」

 

 突然の爆発音と共に、大型地震と同レベルの揺れが秋雨を襲う。さらに、揺れが起きるのとほぼ同時に警報音が施設中に鳴り響いた。

 爆発音と警報……この二つが意味するのは、この揺れが外部から大きな衝撃があったことだった。

 

 「──静子!!」

 

 揺れが弱まり始めたところで、会議室にいるであろう忌村の身を案じて秋雨は扉を開ける。

 揺れの影響か、会議室の中の照明は落ちており、非常灯の赤い光だけで照らされていた。

数多くの人間がいる中で、秋雨は一瞬で目的の人物の姿を見つけた。

 

 「静子! 大丈夫か!」

 「だ、大丈夫……。彷徨は……?」

 「お前が無事ならオレも無事だ」

 

 すぐさま忌村の隣に移動し、彼女の安全を確認する秋雨。どうやら何事も無かったようで、目に見える傷はない。

 忌村の安全を確認すると、秋雨は中にいる人間の数を確認する。ほとんどの人間が揃っており、いないのは傷を負った苗木、苗木を治療している雪染、霧切と朝比奈の4人だった。

 

 「何があったんですか!?」

 

 秋雨が会議室に入ってすぐ、会議室から出ていた雪染と苗木が戻ってきた。これで戻っていない人物は2人のみとなったが、事前に集まっていた幹部は全員揃ったことになる。

 

 「認めたくはないが……襲撃だ。今、状況を確認している。……万代、どうだ?」

 「うん……モニターに表示するよ」

 「襲撃……」

 

 宗方が放った言葉を、秋雨はボソリと繰り返す。あり得ないとされていた可能性が起きており、会議室内は緊張感で張りつめていた。

 そんな中、万代はタブレットを操作してモニター画面に各監視カメラの映像を映し出す。どうやらモニターも非常用電源で動いているようだ。

 

 「これは……!」

 「出入り口が瓦礫で塞がれている……」

 「玄関、非常口……エレベーターも使えなくなってるよ……」

 

 モニターに映された現状に、思わず息を呑む未来機関幹部たち。完全に瓦礫に埋まった出入り口だけでなく、エレベーターも使用不能という万代の言葉に、改めて襲撃の大きさを思い知る。

 

 「どういうことよ! ここって誰も知らないんじゃなかったの!?」

 「……誰かが、敵に知らせた…………」

 「ハァ!?」

 「…………」

 「──チッ!」

 

 襲撃が起きた事実に対し、怒りを露わにする安藤。そんな安藤の言葉を受け、疑惑の目で周囲を見渡しながら忌村が呟く。

 自身にも視線を向けられたことで怒りを強くする安藤だったが、秋雨が忌村を庇うように立ったことですぐに背を向けた。

 

 「……まさか、テメーの仕業か。苗木誠……」

 「ち、違います!」

 「……念のためだ。逆蔵、そいつを拘束しろ」

 

 誰も知らないはずのこの施設について、情報を流せる人間がいるとしたらここにいる人間が怪しい。その中で最も怪しい者がいるとすれば、すでに裏切り者のレッテルを貼られている苗木だった。

 逆蔵が苗木を拘束すると、宗方はすぐさま次の指示を出す。

 

 「全員この部屋から出るな。今、警備員と連絡を──」

 

 ──バン!

 

 だが、その瞬間……会議室の扉が勢いよく開け放たれた。そこに立っていたのは、必死の表情で汗を流し、息を切らした朝比奈葵だった。

 

 「け、警備員さんが……トイレで、死んで……」

 「ッ──!」

 「本部、警備員共に連絡取れません!」

 「……そういうことか」

 

 朝比奈の報告に、宗方は目を見開く。その直後に入った、実際に連絡をとろうとした雪染の報告が朝比奈の言葉を揺るぎない真実であることを知らしめる。

 そこで、秋雨は先ほど自身が感じた違和感の正体を掴んだ。いるはずの宗方の部下がいない理由……それは、彼も他の警備員同様に始末されたということ。皮肉にも、十六夜に呼ばれて彼と行動していたおかげで、秋雨は被害を免れたのだった。

 

 「あ、あの……会長」

 「む……?」

 「すみません……遅れました」

 (……第10支部支部長、御手洗(みたらい)亮太(りょうた)? なぜ、アイツがここに……)

 

 すると、息を切らして跳び込んできた朝比奈の後ろから、遅れて二人の人間が入ってくる。一人は霧切響子。そしてもう一人は、今日の会議には不参加だと知らされていた第10支部支部長だった。一見すると支部をまとめる支部長には見えないほど、身体つきも虚弱で血色が悪いその顔を秋雨は見間違えるはずもなかった。

 

 「御手洗君……!? なぜ君が……?」

 「い、いえ、その……やっぱり、大事な会議には出ておかないとと思って……」

 「……そうか、すまんな」

 

 本来なら不参加の御手洗の登場に、会長も少し驚いているようだった。一方、当の御手洗はこの騒ぎの中で来てしまったことを申し訳なく思っているのか、ずっと目を伏せていた。

 

 「落ち着きましょう、皆さん。考えてもみてください。ここには未来機関の幹部……元・超高校級の人間が数多く揃っています。どんな敵にも負けはしません」

 

 混乱が続く会議室全体に届くよう、ゴズはマスクを被っていながらも大きな声を響かせる。ひとまず落ち着くよう呼びかけるその巨体は、こんな状況では何よりも頼もしい姿に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──コトン

 

 

 

 

 

 

 

 

 「だから────ん?」

 

 だが、現実はその上をいく。

 

 ──ブシュウゥゥゥゥ!!

 

 「なっ!?」

 「ゲホ! ゲホ! ちょっと、なにこれ!?」

 「さ、催眠ガス……! しかも、即効性……の……」

 

 どこからか投げ入れられたゴルフボールくらいの大きさをしたモノクロの球体。それに気付いた時にはすでに遅く、その球体から白いガスが勢いよく噴き出した。

 突然のことに再び混乱する会議室。その中で、忌村はすぐにそのガスの正体が即効性の催眠ガスであることを見抜いた。元・超高校級の薬剤師という才能を活かしてのことだったが、正体がわかっても、それを防ぐ術は持ち合わせていなかった。

 

 「ぐっ……! 静子!」

 「彷徨……」

 「しっかりしろ! 目を──ぐぅ……!?」

 

 ガスが噴き出した瞬間、秋雨は忌村の肩を抱く。しかし、すでに忌村はガスによって意識を失いかけていた。なんとか彼女を起こそうとするが、そんな秋雨にも急激な眠気が襲いかかってきた。

 

 「かな、た……」

 「大、丈夫だ……! オレが、絶対に……守────!」

 

 そうして、彼らの意識は闇へと沈んだ。その中で、誰が予想しただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『──うぷぷぷ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ました先にあるのが──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『あ、そうそう。言い忘れてたけど……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 希望の象徴である彼らでさえ、誰かを守ることすら困難な──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ゲームはもう……始まってるんだよね~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶望に染まったコロシアイゲーム(・・・・・・・・)だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──雪染ェェェェェェェェ!!」

 

 紅い液体で染まった会議室に飾られたシャンデリア。雪染ちさだったもの(・・・・・・・・・)を乗せ、それ(・・)は落下する。

 

 ──ガシャアァァァン!!

 

 ガラスと共に飛び散った紅い鮮血は、彼らに絶望の始まりを告げる。そして、その血の宿主である彼女の胸に刺さったナイフが、嘲笑うかのように鈍い光を反射したように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【残り人数……15人】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いよいよ始まりました、コロシアイ
秋雨彷徨がいることで運命はどう変わるのか……ご期待ください
ちなみに、なんで秋雨と十六夜の仲がいいのかは絶望編の方で書いていきたいと思っています
まぁ、一言で言うなら男の友情ってやつですね、ハイ
では、失礼します!


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