死した世界の天空は堕ち、圧倒的な火力がこの身を灼く。
嗚呼、これぞ御方々が至高たる所以。
「アインズ・ウール・ゴウン様……至高の御身こそ、まさにナザリック最強の御方…」
(そして……至高の四十一人と……その魂を受け継ぐ各階層守護者は、いつも御身の傍にいるのですね……)
白く染まる視界の中で、その白磁の如き顔を瞳に焼き付けながら、
ナザリック地下大墳墓が第一,第二,第三階層守護者、シャルティア・ブラットフォールンは、
その命を散らした。
*
真っ白な部屋の中、何かがわたしに話しかけてきなんした。
偉大なる御方々の手で創造されたわたしたちほどではありんせんものでありんすが……
人を魅了するには十分たる見目を持つその何かは、
目の前の小さな椅子に腰掛け、
「シャルティア・ブラッドフォールンさん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。短い人?生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです。」
と、告げた。
「あ?」
「私の名はアクア。ここら一体の転生を司る女神です。さて、ここであなたには二つの選択肢が……」
「ちょっと待ちなんし」
アクアはそのまま話を進めようとしているでありんすが、
一つ気になることがありんしたので、止めれば、
「え、なによ。私はこれから今期アニメと積みゲーの消化しなくちゃいけないからさっさと終わらせたいんだけど」
と返ってきなんした。
”あにめ”に”つみげえ”というものはペロロンチーノ様も時折アインズ様の前で話していたもの。
それについて聞きたい気持ちもありんす。
が、
今聞きたいのはそういうことじゃねぇ。
「貴女、わたしが死んだのを不幸と言われなんしたかぇ?」
「え?そんなことが聞きたかったの?死んだんだから不幸に決まってるじゃない。特にあなたの死に方なんて……プークスクス、ねぇどんな気持ちなの?あれだけ堂々と自分が有利宣言しておきながら全部相手の手のひらの上だったってどんな気持ちなの?ちょっと教えてよ。ねえねえ」
コイツ……非常にムカつくでありんすね。
ペロロンチーノ様にかくあれと造られた口調も保つのが精一杯でありんす。
「にしても薄情なものよねぇ、あの骸骨。裏切った部下は即殺すだな……ひっ」
「テメエ……今何つったよ。最後までお残りくださった慈悲深く偉大な御方を“薄情”だ?その不敬、死んで償えやァアアアアアア!!」
先の言なら至高なる御方の偉大さが分かるというもの。
いくら自分が貶されようとも耐えれはする。
だが、アインズ様を侮辱され、激昂しない者などナザリックにいない。
それだけは許せない。
スポイトランスが目の前のクソを排除しようと空を裂くが、クソに届くことはなくギィィィンと音を立てて中空に刺さる。
「あなた、いきなり何するのよ!びっくりしたじゃない!女神バリアがなかったら大変なことよ!ま、女神バリアがある以上あなたは何をしても私に危害なんて与えられないんですけど、ぷーくすくす」
糞が!クソがクソがクソがクソがァア!!
2回、3回と突きつけるがその度に中空で止められる。
随分と硬い守り。でも、
「アハハハハハハ。守りがあるなら、全部剥がれるまで殴ればいい!そうでしょう!」
10回、100回、更に槍撃を重ねる。
そして……
「『ハイパーウルトラ女神ピース』!!」
「ぐっ!?」
いまだ結界は壊れていないというのに、わたしの中から敵意が抜けていく感覚がありんした。
クソを、いや、この女神を排除しなければならないはずでありんしたのに、槍を持つ手に力が入らない。
強制的に精神を平坦にさせられたような感覚でありんす。
「まったく、危ないわね。とりあえず、その状態のまま話を聞いてもらうわ。
もともと人間として生まれ変わる道と、老人みたいに天国で過ごす道があったけど、その二つはあなたにはあげないわ。私をびっくりさせた罰ね。代わりに、あなたには異世界に行く道をあげるわ!よかったわね」
そう言って、女神アクアは異世界に行く道について語り始めたでありんした。
*
この女神の話を極めて簡素にまとめれば、
・ユグドラシルでも、“りある”でも、わたしが死んだあの世界でもない異世界で、魔王を名乗るものがいる。
・魔王軍の侵攻のせいで人類がピンチ。
・そのせいで転生する人が減って世界がやばい。
・言葉はなんやかんやで喋れるし、ついでに何か一つ圧倒的な力を与えられる。
・魔王を倒せばなんでも一つ願いを叶えてもらえる。
ということでありんすね……。
こんなことを聞かされては、その世界に行かない訳にはいかんせんでありんすね!
人類がどうこうとかは別に興味ないでありんすが、
何せ、至高の四十一人でもないのに魔王を名乗るなどの不敬、
そして、その魔王もどきを倒せばナザリックに神々への願いで帰還できるでありんす。
それに、欲を言えば、アインズ様の世界征服において、いらぬ手間をかけさせてしまった分は、一つの世界で償いたいものでありんすから、異世界に行き、その世界を手中に納め、魔王もどきを倒して帰るべきでありんしょう。
と、なれば、帰った後にも活躍できるように、ここの力の選択は真剣にやるべきでありんすね。
女神が渡した力の権利書をパラパラとめくってみる。
……そこには、《聖剣アロンダイト》、《魔剣ムラマサ》といった
これほどありんす中から選ぶのでありんすから、じっくり考えたいところではありんすが……
平穏の魔法が切れてしまえば、この女神のこと、ここから追い出されるに違いありんせん。
ここは直感で……そういえば、アインズ様に勝てなかったのにはもちろんアインズ様のその素晴らしき神算鬼謀による尊き戦術のためでありんすが、そこで突かれたのは、油断と、こちらのMP切れでありんしたね……。
「決めたでありんす。この……《MP常時回復/毎秒5%》に」
「わかったわ。なかなか渋いものを選ぶじゃない。あなたもなかなかね。じゃ、その魔法陣から出ないようにしてちょうだい。」
そう言って女神が手をこちらに向けると、わたしの周りに魔法陣が浮かび上がってきなんした。
込められた情報量は莫大にも程があるでありんす。
読み取れただけでも、〈魂防御/スピリット・ガード〉、〈転移門/ゲート〉、〈記憶操作/コントロール・アムネジア〉、〈閃光/フラッシュ〉などが一括りになってありんす。
「ん~。ゴホンゴホン。シャルティア・ブラットフォールンさん。あなたをこれから、異世界へと送ります。魔王討伐のための勇者候補の一人として。魔王を倒した暁には、我ら神々が貴方の願いをなんでもひとつ叶えましょう。
さあ、勇者よ。願わくば、数多の勇者候補の中から、あなたが魔王を倒す事を祈っています。……さあ、旅立ちなさい!」
声音を作ってから、女神アクアはそうわたしに告げんした。
そして、それと同時に魔法陣も起動しんしたのか、わたしは〈閃光/フラッシュ〉の強い光に包まれんした。
『ハイパーウルトラ女神ピース』の効果によりシャルティアはちょっとばかし人間にも優しくなりました。ナザリックを馬鹿にしない限り攻撃してきません。
そういうことにしてください。