コードギアス 黒百合の姫   作:電源式

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第2話

 何かに急き立てられるように、勢いよく上半身を起こし、掛けられていた毛布をはね飛ばす。

 

「ッ! はぁ……はぁ……」

 

 息苦しく、荒い呼吸を繰り返した。

 痛みを感じるほど激しい動悸。

 まるで耳元で心臓が鼓動しているみたいだ。

 そして重度の倦怠感。長い時間、水の中を漂っていたかのように身体が重く、力が入らない。

 自分の身に何が起こっているのか理解できず、漠然とした不安が込み上げる。

 

 暫くの後、正常な呼吸を取り戻し、不足した酸素を得た脳が再起動。

 そこで初めて思考する余裕が生まれる。

 まずは自分が置かれている状況を把握することが先決だと結論を出し、額の汗を手の甲で拭う。

 

 最初に視界に映ったのは、今まさに自分が眠っていたであろう天蓋付きのベッド。マットレスや寝具を含め、高級の上に最が付く代物であることは間違いない。

 眠っていたというのなら、先程の症状は悪夢を見た影響からだろうか。

 寝汗も酷く、汗を吸い込んだ寝衣が肌に張り付いて不快感を齎す。出来ることなら一度着替えたいところだ。

 

 さらに周囲を見渡すと、最高級なのは何もベッドだけではないことに気付く。

 射し込んだ月明かりに照らし出された室内、視界に映る全ての調度品が豪奢であり、それどころか部屋の造りからしても一般的ではない。

 手の込んだ装飾が施された柱、月明かり差し込む飾り窓、高い天井に吊された──照明具として使用するには逆に非効率だろう──シャンデリア、窓の外に併設された広いバルコニーなど。まさしく贅の限りを尽くした、生活する上で無駄としか言えない部屋。

 ただ、それら調度品や内装にはどこか見覚えがあった。

 懐かしいとさえ言っても良い。

 そう、僅かな差異はあるが、まるで幼き日に過ごしたアリエス離宮の自室を思い起こさせる。尤もアリエス離宮は残念ながら帝都ペンドラゴンに投下されたフレイヤによって、二度と訪れる事の出来ない場所となってしまったが────

 

 フレイヤ。臨界と共にセスルームニル球体を形成し、効果範囲内の全てを根こそぎ消滅させる最悪の大量破壊兵器。その効果範囲は最大100㎞にも及ぶ。第二次東京決戦において初めて実戦使用される。その後、天空要塞ダモクレスに搭載され、投下されたフレイヤによって帝都ペンドラゴンは消滅。またダモクレス戦役終盤の富士決戦では、その圧倒的な破壊力によって戦場を蹂躙した。

 

 ダモクレス、富士決戦、超合集国、黒の騎士団、悪逆皇帝、ゼロレクイエム……。

 脳裏に走ったノイズと同時、フレイヤを皮切りに記憶が膨大な情報となって溢れ出る。

 処理速度が追い付かず、脳が悲鳴を上げるかのように激痛を生み出した。

 

「がっ……」

 

 激しい痛みに顔を歪め、思わず衝動のままに叫び声を上げそうになる。手で頭を押さえ、奥歯を噛みしめて押し殺すが、抵抗の甲斐なく俺は意識を失った。

 

 

 

 どれだけの時間意識を失っていたのだろう。

 一瞬か、数分か、いや数十分かも知れない。

 ただ射し込む月明かりの位置から考えて、それほど長い時間意識を失っていたわけではないようだ。

 再び意識を取り戻した時、俺の脳内にはゼロレクイエムへ至るまでの詳細な記憶が鮮明に残されていた。

 だがそれとは別に言い知れぬもどかしさが心に巣くう。

 ゼロレクイエム直後からの先の記憶に靄のような何かが絡み付き、それ以上先を探ることが出来なかった。それこそあの男のギアスによって、記憶を改変されて居た時の感覚に似ている。漠然とした違和感が苛立たしい。

 もちろんギアスやそれに類する得体の知れない力によるものではない可能性も高い。何せ俺はゼロレクイエムによって死んだはずの人間。その後の記憶が存在しないことは当然と言えば当然のこと。人の根源たる集合無意識へと還り、融け合うことによって情報を共有したとでも言うなら話は別だが……。

 

「どうなったんだ、ゼロレクイエムは……ナナリーは……」

 

 そう、悪逆皇帝ルルーシュ=俺の死によってゼロレクイエムは完遂されたはずだった。現に眼前のゼロ=スザクが手にした剣で胸を貫かれた瞬間の記憶はある。熱と痛みと寒さを感じながら、確かスザクの奴に皮肉の一つでも掛けたはずだ。

 そして次に霞んだ視界に映り込んだのはナナリーの顔だったと思う。既に意識は朦朧としていて実感はなかったが、最愛の妹に看取られたことを喜ぶべきだろうか?

 

 いや、そう言う問題ではない。

 もしそこで計画通りゼロによって殺されたのなら、こうして存在している今の俺は何者だ? 

 どうして天蓋付きのベッドで眠っていた?

 その後の世界はどうなった?

 

 先程感じた痛みや現状感じている肌寒さは、生きているからこそ感じられるものだろう。

 そっと胸に手を当てる。スザクに貫かれた際の傷口は既に完治しているのか、僅かな痛みも感じない。

 紛れもなく心臓は鼓動し、己の生存を肯定していた。

 また布越しでも伝わる人間の体温特有の温かさがあった。

 一応更なる確認のために手首にも触れてみるが、やはりちゃんと脈もある。

 

 俺は生きている。

 そう考えて間違いないだろう。

 ならば何故俺は生きている?

 

「……っ、まさか」

 

 思い浮かんだ最も可能性の高く確実な生存理由。

 知る者が限られた異端の儀式。

 それがコードの継承。

 継承者は保持するギアス能力を失う代わりに不変存在、つまりは不老不死となり、新たな契約者のギアス能力を発現させる能力を得る。

 

「いや、それはあり得ない」

 

 首を横に振り、すぐにその考えを否定する。

 俺が知るコード保持者の一人、あの男はCの世界でラグナレクの接続を阻止した際、おこがましい願いと共に存在を否定され、コードを保持したまま集合無意識へと呑み込まれた。

 そしてもう一人の保持者である魔女は、最後まで俺にコードを委譲する事を拒んだ。もちろん自らの死を以て贖罪と考えていた俺自身に継承の意思はなく、それが彼女に伝わり、俺の意思を尊重してくれてのことだろう。

 契約不履行。

 自分だけが利益を享受した。

 生きる為の力を与えて貰い、精神的に支えてくれた彼女の願いを、俺は何一つ叶えてはいない。

 非道い男だと言われても仕方ないな。

 

 そして思考は振り出しに戻る。

 何も解決しない問題。

 情報不足の為、このまま思考を続けても答えは出ないだろう。

 なら情報を得るだけだ。

 

 幸いこんな豪華な部屋を与えられる待遇なのだから、今すぐに生命を脅かされる可能性は低いと考えて良い。拘束されているわけでもなく、少なくとも一定の自由もある。

 

 狙いは何だ?

 悪逆皇帝という存在か、それとも俺が知り得た情報なのか?

 

 何者かの監視下にあるなら、相手は俺が目覚めた事実を既に知っているはず。機密情報局に監視されていた体験を活かし、監視カメラの類を目視で探してみるが、よほど巧妙に隠されているのか発見することはできない。

 何れにしろ遅くとも夜が明ければ何らかのアクションがあってしかるべきだ。

 その時を待ち、今後については相手の出方を窺ってから考えるのが、現状としての最善策だろう。

 

 今後の方針は決まった。

 よし、思考を切り替えよう。

 来るべき時までどう過ごすかだが、二度寝をするなど以ての外だ。この状況で睡眠を取れるほど俺の神経は図太くない。スザクやあの魔女辺りなら、平然と眠りについてもおかしくないが。

 確かに身体を休めることは重要だが、既に十分な睡眠を取っているらしく眠気は皆無。

 そもそも例え眠るにしても先にやるべき事がある。

 そう、まずは着替えだ。

 思考を続けている間も、湿った寝衣によって着実に体温は奪われている。どう動くにしろ、体調を崩していては問題外だ。体調を管理し、コンディションを維持することは全ての基本と言える。

 

 取り敢えず目に付いたクローゼットを目指すためにベッドから降りる。

 柔らかく毛足の長い絨毯に僅かに足が沈んだ。

 

「ん?」

 

 その瞬間、俺はこの身に起こった異変に気付いた。

 酷い違和感ともに襲い来るバランス感覚の変調。

 長い時間眠っていた可能性がある以上、当然と言えば当然か。やはり筋力が衰えているのだろう。それに未だ残る倦怠感も影響しているに違いない。

 

 何故かいつもより視野が狭い。

 ゼロレクイエムの後遺症により視覚に影響が出ている可能性が考えられる。

 まあ、これも原因が想像できるから良いだろう。

 

 何故かいつもより視点も低い。

 何故だ?

 いや、その理由の一つとして、そう感じてしまうのは周りにある全ての物が大型化しているからだろう。近くにあった書棚の最上段には背伸びしても手が届きそうもなかった。

 調度品を必要以上に大きくして何の意味がある?

 むしろそんなことをすれば逆に生活しづらいに決まっている。俺が眠っている間に人間の感性が変わったのか? 大は小を兼ねるがブームになったとでも言うのか?

 

「うん、そうだな、きっとそういう事だってあるはずだ」

 

 俺は無理矢理自分を納得させる。支離滅裂で意味不明。理論的な自分らしくないと自覚しているが構わない。

 決して伸ばした手指が自分の物に思えなかったとか、落とした視線の先に小さな足──まるで幼い子供のものと思われる──があったからじゃないぞ。

 だ、断じて違う、そんなもの俺は絶対に見ていない!

 

「…………」

 

 いや、待て。

 現実から目を背けるな。

 

 心を読むギアスを保持していたマオ曰く、俺の中には常に自分の行動を見ている批評家の俺と、さらにそれを醒めて見つめている俺が居るらしい。きっとこの言葉は彼等のものなのだろう。

 

 現実から目を背けるな、か。

 良いだろう。

 俺は世界を壊し、世界を創造する男だ。

 先程からとてつもなく嫌な、それでいてあり得ない推測ばかりが脳裏を過ぎっているが、こんな所で立ち止まっているわけにはいかない。

 俺ならやれる、やれるじゃないか!

 

 一歩また一歩と足を踏み出す度に、まるで警鐘を鳴らすかのように速まる鼓動。

 渇いた喉がひりつき、嫌な汗が滲み出す。

 それでも立ち止まることなく、恐る恐るクローゼットの傍に置かれていた姿見へと近付き、意を決してそこに映し出されたモノを視界に捉えた。

 

「えっ?」

 

 それを目にした時、最初はまるで理解出来なかった。

 あまりの衝撃に、きっと本能がその事実を受け入れることを拒んだのだろう。

 目の錯覚を疑い、まだ寝ぼけているのではないかと目を擦ってみたり、目頭を押さえてみたりもした。

 だけど何度繰り返したところで結果は同じだった。

 無情にも姿見に映っている姿は変わらない。

 だから────

 

「ほわあぁぁぁぁぁッ!?」

 

 思わず素っ頓狂な声を上げる。

 どうしても上げずには居られなかった。

 

 そう、そこに映っていたのはルルーシュ・ヴィ・ブリタニアではなく、似て非なる超絶美幼女の姿だった。

 

 

 

 

 

─────以下暴走的なネタです。シリアス(笑)重視の方は全力スルー推奨─────

 

 

 

 

 

 しばらくお待ち下さい。

 そんなテロップと共に、俺の脳内には綺麗なお花畑の映像が流れていた。

 そこには幼き日のナナリーとユフィが居て、仲良く楽しそうに生花のアクセサリーを製作している。嗚呼、懐かしく、穏やかで、愛おしい日々。

 その光景に癒され、心が温かくなる。

 そう、ぽかぽかする。

 ふふっ、あはははは、やはり彼女達は可愛い。

 もう何度でも断言しよう。

 ナナリー、可愛いよ、ナナリー。

 そして誰にも嫁にはやらん!

 

 え、俺もこっちへ来いって?

 行きたいのは山々だが、目の前を流れる川が邪魔をするんだ。言っておくが、別に泳げないわけじゃないからな。

 くっ、蜃気楼、いや無頼でもあればすぐに向かうというのに。ええい、船はないのか、船頭はどこに居る!?

 

 目的の人物を探す為に室内に視線を巡らせ、そこでハッと我に返る。危うくもう少しで渡ってはいけない川を渡り、集合無意識へと還るところだった。

 これが現実逃避というものか?

 否、今のはただ思考がショートしていただけだ。

 本当の現実逃避を見せてやろう!

 

 俺は何も見ていない。

 そう、何も見ていない。見ていないったら見ていない。

 大切な事なので4回言った。

 

 大丈夫だ、例え見たとしてもきっとこれは夢だ。俺はまだ目覚めていない。夢の中に居る。つまり夢から覚めた夢というわけだ。きっと俺は疲れているに違いない。超合集国憲章批准式典の前後からゼロレクイエムの瞬間まで、まともに眠る事すらできなかった。故に肉体的にも精神体にも相当の疲労が蓄積されていたのだろう。

 一応頬を抓ってみる。使い古された伝統というやつだ。

 うん、痛いぞ♪

 

「…………」

 

 思わず膝から崩れ落ち、蹲りそうになったが、痛みを感じる夢だってあると自分を納得させる。

 さて、もう一眠りしよう。きっと次に目が覚めた時には、この悪夢も終わっているはずだ。というか終わっていてくれ、頼むから。

 ただ一体どこまで夢だったのかという不安も若干ある。

 可能性としても考えたくはないが、俺の中にある記憶も全て夢だとしたら?

 喜怒哀楽の全てが、行動の全てが、想いの全てが虚構だとしたら?

 それこそ悪夢であり、生きる気力を失ってもおかしくない。

 けれど今はそれ以上にこの耐え難い世界を脱したかった。イレギュラーに弱いことは十分に自覚していたが、流石にこの展開はない。想像すらできないし、したくはない。というかキャパの限界を優に超え、精神が保たない。時間の経過と共に何か大切なモノがガリガリと削られていく。

 

 俺は再びベッドに上がり、道すがら拾った毛布に包まった。

 流石に最高級品、肌触りが違う。

 さあ、全てを忘れ、この心地よさの中で眠りに就こう。

 湿った寝衣の不快感?

 ハハハ、何のことを言っているんだか。そんな些細なこと今さら気にして何になると言う。大事の前の小事だ。

 次に目覚めた時こそ、視界には本来の世界が広がっているだろう。

 そう、夢と希望に満ち溢れた学園恋愛アドベンチャー的なご都合主義万歳ハーレムライフが…………。

 

「何だその安易な厨二的妄想はッ!?」

 

 あまりに酷い精神汚染に一周回って客観的見地に立ち、思わず一人ツッコミを入れながら跳ね起きてしまう。

 確かにアッシュフォード学園での生活に関して言えば、所謂ギャルゲーと呼ばれる恋愛シミュレーションゲームと比べても遜色がないほど、周囲には個性的もといキャラの濃いメンバーが揃っていたのは事実。

 仮にもしゲーム化された場合、きっと主人公は自分に好意を抱かせる恋愛ギアスを保持し、攻略対象者に僕を好きになれとでも宣うのだろう。

 え、俺に使う? ウェディングドレスが似合いそうだから? 止めろ、想像するんじゃない!

 閑話休題。

 だからといって俺が特定の誰かに恋愛感情を抱くことはなかったが、今ここで敢えてヒロイン候補を挙げるとすれば────

 

 エントリー№1 ナナリー・ランペルージ。

 その愛らしさ、健気さ、儚さは間違いなくメインヒロインの座を狙える。というかメインヒロイン以外は認めたくないが、倫理的にも昨今の社会事情的にもアウトだ。決して二次元と現実を混同してはいけない。

 

 エントリー№2 C.C.。

 言わずと知れた唯我独尊ピザ暴食ニート魔女。神秘的? 何それおいしいの?

 だが記憶を封印して、いじめてオーラ全開系メイド属萌え萌え少女と化せばあるいは……。

 

 エントリー№3 紅月カレン。

 猫っかぶりは超一級、成績も悪くはないが基本脳筋のエースパイロット。

 ところであの髪は形状記憶合金で出来ているのだろうか?

 

 エントリー№4 シャーリー・フェネット。

 一応正統派なのか? いや、待て。今さらだが冷静に考えれば、生まれ変わっても好きになる宣言はどうなんだ? 実はヤンデレ属性だった可能性も……。

 

 エントリー№5 ミレイ・アッシュフォード。

 元許婚ではあるが、ゴーイングマイウェイなお祭り女でありトラブルメーカー。

 

 エントリー№6 ニーナ・アインシュタイン。

 彼女に至ってはガチレズ。

 

 エントリー№7 アーニャ・アールストレイム。

 無口系不思議少女だが、その内側に俺の実母の精神を内包している。つまり彼女に手を出せば、間接的に実母にも手を出したことになるのか? 合法近親相姦? それなんてエロゲ?

 

 エントリー№8 篠崎咲世子。

 何でもこなせる完璧メイドだけど実は天然NINJA。

 

 エントリー№9 ヴィレッタ・ヌゥ。

 女教師だけど最終的にモジャを選ぶぐらい男のセンスが壊滅的。

 

 あれ?

 こうやって考えると、まともなヒロインが居ないんじゃないのか?

 ああ、もしかしてこれはアレなのか?

 実はギャルゲー的ではなく──かつてシャーリーのルームメートであったソフィ・ウッドも嵌っていたと聞く──BLゲー的学園ライフ?

 

 リヴァルは最早クラスメイトAだから無視して……。

 ロロは弟系で童顔なショタ属性。一見儚げなイメージを受けるが、その実態は紛れもなくヤンデレ。誘い受けどころか下克上狙うS系攻めと見た!

 ジノも怪しい。普段からやたら肩を組んできたり、過剰なスキンシップを取りたがっているように思える。ハッ、やはりその気が!?

 そして最大の懸念はスザク。幼馴染みというアドバンテージを有し、アイツだけが知る封印指定の過去の痴態もある。何より天然で体力馬鹿という最悪の組み合わせを持ち、なおかつ戦術で戦略を覆すイレギュラーというある意味では俺の天敵だ。

 必然的に考えて、スザクと「ずっと友達だよね?」エンド以上は確定なのか!?

 

“そうさ、童貞坊や”

 

 どこからとも無く魔女の囁きが聞こえた気がした。

 

「うがあああぁぁぁ─────!!」

 

 あまりの錯乱にキャラが崩壊する。

 

 落ち着け、俺。我を忘れるな。

 そうクールだ、クールになれ。

 素数を数えるんだ。

 

 よし、取り敢えず深呼吸しよう。

 ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。

 何か違う気がするが、一応効果はあったようだ。

 熱暴走を起こした思考がある程度の冷静さを取り戻す。

 

 さて、いつまでも狂態を晒しているわけにもいかない。

 何よりそれでは問題は解決しない。

 そろそろ現実を直視し、また受け入れて立ち向かおう。

 

 だから俺は再び姿見の前に立ち、映し出された幼女と改めて対峙する。

 

 

 

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