境界線上の死神   作:オウル

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ごめんなさい(汗)


十話 肆 前編

救いに行くことを止めに来たはずなのに

 

気が付けば立場が変わっていた

 

・・・あれ?

 

配点(政治家)

 

――――――――――――

 

「何ぃー!!!!????」

 

正純は叫んだ。

 

オイオイオイオイオイオイ!ちょっと待て!

お前、それ、私の立場の話だろう!?

 

正純が叫び終えたのを見計らって、トーリが続ける。

 

「いやだってセージュンよ、ホライゾン救いに行ったら聖連と大戦争になるんだぜ?」

「待てぇーい!!!!」

「どうした正純?先生は確かに「それぞれの立場」とは言ったが「どっちがどの立場か」なんてこと、明言してないぞ?」

 

一度トーリに待ったを掛けようとした正純に、康景が告げる。

 

・・・いや確かにそうだけども!

 

「トーリが始めてお前が続く・・・お前はさっき「トーリが先攻でも構わない」と認めたよな?一度契約書にサインしたんだから、多分キャンセル料とか出るんじゃないか?」

「あ、うん、もちろん出るわよ?五回分くらい」

 

康景のキャンセル料という言葉に反応したオリオトライ。

 

・・・キャンセル料で殴り五回分とか死ぬぞ!

 

こちらが困惑の表情を浮かべると、康景は、

 

「大丈夫だ正純、「鞘で五回分」なら多分「一発目」で意識がなくなるから、残りの「四発分」は何も感じなくなるぞ」

「な、何が大丈夫なんだっ!それ、確実に「一発目」で死んでるじゃないか!?」

「そうよ康景、流石にそんな惨い事しないわよ・・・ちゃんと「五回分」感じるようにきっちり「五発」で仕留めるから」

「「余計惨いよ!!」」

 

しかも仕留めるって言ったよ!?

 

周囲がツッコむが、オリオトライは否定しなかった。どうやらマジなようだ・・・。

 

オリオトライがさらっと怖いことを言った事に対し康景が「ですよねー」と何事も無いように話していた。

 

あれ?おかしいな、なんか葵の方がまともに見えるぞ・・・?

 

正純は目をこすったが、そこにはオリオトライが素振りをしてそわそわしている現実しかなかった。

 

「なぁセージュン、俺に教えてくれよ。ホライゾンを救った方が得になる事って、何かあるのかな?俺もヤスも馬鹿だからその答えがわからねぇ・・・だから俺に教えてくれよセージュン、俺が・・・俺たちが望んだことがどういうことなのか」

 

*******

 

まさかこんな形で暫定議会と敵対することになろうとは・・・!

 

しかも中途半端な事をして討論に違反すれば遠まわしに言って「死ぬ」。

それはオリオトライに師事している康景が遠まわし(直接的か?)に「死ぬ」と言っているんだから確かな事だろう。

額に汗が出る正純、しかもそれは緊張によって出る汗ではなく、ヤバいことに直面した時の汗だった。

 

「ホライゾン助けに行って上手くいったらよ、メンツがなくなったイタ公のオッサンがプッツンして聖連と全面戦争になってヤベェ事になると思うんだわ。なにしろ聖連は世界的に見てほとんどの国だろ?世界全部敵に回して戦争することになる」

 

おい、誰かコイツに入れ知恵しただろう!?

 

昨日正純が暫定議会の秘書たちから聞いた内容をそのまま言われた。

そこでふと、トーリの後ろでカンニングペーパーを読んでいる康景が目に入った。

 

・・・お前か康景!

 

康景は意外と顔が広い。

この間康景と町を歩いていたら正純の知らない武蔵生徒達や住人が康景に挨拶をしていたのを思い出した。

 

多分暫定議会にもコネがあったりするんだろう・・・。

 

厄介というより面倒臭い相手が隣にいることに正純は内心焦った。

 

「戦争大変じゃん?その辺の事、セージュンはどう思ってんの?」

「そ、それはだな・・・」

「んん~?なんだってぇ~?セージュンくぅ~ん?ちょっと聞こえないなぁ~?なんだって?」

 

くっそ!ムカつくな!

怒りを抑えてとりあえずわかってることで思いついたことを話した。

 

「・・・いいか?ホライゾンを救う事で得られる利点は、主権を確保できることにある」

「おい、ヤス主権って?」

「主権ていうのは・・・主に「対外的な主権」「対内的な主権」とそれを支える「最高決定力」っていう三つの能力を指して、これがあることで独立国家として認められるってそんな感じの物・・・だ?」

「お、おうよ、もちろん知ってたし!・・・知ってたし?」

 

大丈夫かこいつ等・・・?

葵はともかく康景、お前も疑問形にしちゃだめだろう・・・。

 

「ホライゾンは正式に認められた元信公の嫡子なんだ・・・今まで聖連から影響下にあった元信公ではなく、何の影響下にもないホライゾンが極東の支配者になる」

「ヤスじゃダメなの?」

「俺はそもそもホライゾンの母親に拾われたってだけで、元信公も俺の事を一度も「息子」だとは公言しなかったからな・・・俺がなっても正当な理由も根拠も無い」

 

そう、康景は確かにホライゾンの家族だったのかもしれないが、聖連が元信公の嫡子だと正式にみとめたのはホライゾンだけだ。

故に康景が支配者として名乗り出てもそれには他国に認めさせるだけの影響力は無い・・・だからホライゾンでなければならない。

 

「だが、正純・・・学生主体の世の中で、ホライゾンは学生じゃないんだぞ?今から救ったとして記憶の無いホライゾンが入学試験に受かるのか?」

「別に試験の方法は一つじゃないだろ?」

 

その言葉にトーリが反応して

 

「裏口か!おいおい、裏口入学なんて余だけにしておけよ!」

 

違う、そうじゃないだろ馬鹿。

 

******

 

六畳一間のミリアムと東の部屋

 

「東・・・貴方まさか!?」

「違うよ!あれは葵君のでまかせで・・・!」

「うらぐちってなあに?」

 

あらぬ風評被害が生まれていた

 

******

 

「・・・一芸入試か」

「そうだ、大罪武装の所有者なんて貴重な能力、一芸に値するだろ?」

「マジかよ!?ってかうちに一芸で入ってきた奴って誰かいたっけ?」

「ネンジとイトケンだよ、それくらい覚えとけよ馬鹿」

 

正純は、ここまで来て妙な違和感を得ていた。

康景はわざとこちらが答えやすいような質問を誘導しているのか?

そう思った正純だったが、確信が持てなかった。

 

「つまり、ホライゾンを救う事で他国からの干渉無しに支配者を迎えて、他国と対等な関係になれるんだ」

「諸刃の剣でもあるがな」

 

康景は俯きがちに話した。

そう、ホライゾンを救う事で他国と対等になれるが、同時にそれを認めない聖連側と戦争は避けられない。

まさに諸刃の剣だ。

 

「じゃあホライゾンを救ったら戦争は避けられないのか・・・」

 

トーリがそう言って、康景が懐からカンニングペーパーを取り出した。

もはやカンニングペーパーを隠す気はないらしい。

 

「よし、じゃあヤス!お前の特技の「モノマネ」でいっちょ読み上げてくれ」

「普通でいいだろ・・・では、商人の小西様からご質問・・・『姫を救いぃ、極東の主権を回復しても、戦争が起こることによって死人が出ぇるかもしれません。そのような場合どぉんな考えをお持ちですかぁ?』だそうだ」

 

小西の独特な喋り口調が思ったより似てたので、正純は笑いをこらえた。

 

なんで真顔モノマネそんな似てるんだよ、卑怯だぞ!

 

よく見たら背後でも何人か笑いを堪えていた。

気を取り直す。

 

「・・・戦争を回避した場合でも戦死者が出ることを、二人は知っているか?」

「あ?戦争しないのに死者が出んのかよ?」

「聖連による極東居留地の予算凍結の事か・・・」

 

この時、正純は、己の中に芽生えつつあった違和感の正体にようやく気が付いた。

康景はこちらが言おうとしていることを理解している。

 

それはつまり、康景なら「ホライゾンを救う側」として、ちゃんとこちらと相対が出来たハズだ・・・。

 

その上でこちらに問いかけて、私に「ホライゾンを救う側」の意見を言わせている。

だがそうする意図がわからない。

正純の疑念を覚えつつ、話を続ける。

 

「そうだ、予算が少ない状態の居留地は公的な事業もいずれできなくなる状態になるだろう。それは医療に関しても同じことが言え、病死者等の数が跳ね上がって結果的に戦死者と同様の死者数になる」

「しかも各居留地を畳んだ場合、聖連は保護を名目に武蔵や極東の技術力や労働力を安い値段で搾取するだろう」

「何だよ、戦争しなくても死人出んのかよ」

「・・・ああ、開戦を前に戦争を回避すれば平和を保てるなんて、未来の悲劇に目をつぶってるに過ぎない」

 

トーリは頷き、次の質問を康景に読ませた。

 

「じゃ、ヤス次の質問も、「モノマネ」でな」

「解ったよ・・・じゃあ正純、次は政治家・・・本多正信様から質問だ」

「!!!」

 

ここで父か・・・!?

 

正純は自分の心臓が高い音を立てるのがわかった。

 

「『もし姫を救いに行くのなら、主権問題ではなく姫を救いに行くだけの正当な大義名分を示してもらいたい・・・彼女を自害させようとする聖連が悪だとする正当な理由を』」

 

康景のモノマネが予想以上に似ていて、正純はその声に父親を重ねてしまい狼狽えた。

今までは極東側の意見として話してきた。

だが、聖連側が悪だという正当な理由を示すという事は、聖連側が間違っているという事を示すという事であり、その理由を納得して理解した国とは戦争を回避することが出来るのだから、全面戦争の回避することが出来る。

 

だが、私に、それが言えるのか?未熟な私に・・・?

 

困惑する正純に追い打ちをかけるように、康景が正信の言葉を代弁する。

 

「『姫を救う事に対し、聖連側に納得できる大義名分を、正義を示さなければすべてが敵に回る!あるのか?姫を救う大義名分が!未熟なお前に、それが言えるのか!』」

 

父の言葉を代弁しているはずなのに、正純にはそれが康景を引き留めた自分に対する責めのような怒号にも感じられた。

 

変だな・・・まるで父と康景に同時に叱られてるれてるみたいだ・・・。

 

襲名に失敗して、政治家とは何であるかを疑問に思い、女であることを半ば隠して生活しているような未熟な私に、それが言えるのか?

正純は己のポケットに入れてあった「聖連に敵対した」場合における対処法を自分なりにまとめた紙を取り出した。

しかしその紙は己に対する不信によってくしゃくしゃになっていた。

 

「わ、私は・・・」

 

こんな未熟者の書いた紙を破ってしまおう・・・。

 

そう思った時、先に康景が持っていたカンニングペーパーを破り地面に投げ捨てた。

 

「正純・・・俺たちは・・・俺は、お前の答えが聞きたいんだよ」

「それは・・・」

「俺もある程度なら、政治家の真似事は出来る。だけどそれは本職じゃないし、俺の考えなんて人の受け売りみたいなもんだから、必ずどこかでボロが出る」

「・・・」

「俺も、そこの馬鹿も、あっちに居る馬鹿共も、皆自分が得意な事しかできない。俺たちの中で政治が得意なの、お前しかいないだろう?」

「だけど・・・」

 

自分は未熟者だ、そう言おうとしたが康景が先に話し始めた。

 

「・・・お前は、ホライゾンが連れ去られる時、俺を止めてくれたよな。俺はあの時、敵を殺そうとした。しかしその時お前は俺を止めた。あの時は頭がいっぱいいっぱいで「なんで止めたんだ」って怒りもしたが、今ならわかる」

「何をだ・・・」

「お前があの時俺を止めたのは、「あの方法じゃ誰も救われない事を理解していた」からだ」

「・・・!」

「だから思ったんだ・・・お前なら必ず、武蔵アリアダストの副会長として、「俺たちの代表」として、自分の答えで俺たちを導いてくれると・・・だから俺は「政治家」としてのお前を、「副会長」としてのお前を信じるぞ」

 

そうか、お前は・・・。

 

正純は康景とトーリが「ホライゾンを救わない側」として討論を始めた理由を理解した。

 

康景・・・お前は、私を・・・こんな未熟な私を仲間だと思っていてくれてたのだな・・・。

 

康景とトーリが本来とは別の立場を選んだ理由は一つだ。

 

・・・私を確実に武蔵側に引き込むためか。

 

なんでそんな事を選べたのか、それは「正純は武蔵側に立って、必ずホライゾンへの道を付けてくれると信じていた」からだ。

 

本来ならホライゾンを救わないなんて立場に、お前たちがなりたいわけないないものな・・・。

 

正純はこの目の前に立つ馬鹿二人の事を少しだけ理解できたような気がした。

だがそこで、階段の方から声がした。

 

まさか・・・。

 

「まさずみ」

「?」

「お、意外と早かったなアデーレ、やっぱお前に任せて正解だったわ」

 

トーリが階段の方にいるアデーレに声を掛けた。

アデーレが持っている桶の中には黒藻の獣が入っていた。

 

いつの間に・・・

 

「あれ?ひょっとしてタイミング悪かったですか?」

「いや、ナイスタイミングだ、アデーレ。お前はホントいつも良いタイミングで来てくれるよな。ありがとう」

「え?そっ、そうですかね///」

 

正純は桶の中の黒藻の獣を見る。

 

「まさずみ」

「・・・どうしたんだ今日は?」

「たすけて」

「・・・何を?」

 

聞いた正純だったが、その答えはすでにわかりきっていた。

 

「ほらいぞん、ともだち、たすけて、まさずみ」

「・・・」

「ほらいぞん、いってたの」

「何を?」

「まさずみ、せいじか、ひと、すくう」「まさずみ、ひんにゅう」

 

貧乳は余計だ!

 

しかし正純はツッコまなかった。

別に貧乳を認めたくないとか、そんな理由では、断じてない。

 

「どうしたら、ほらいぞん、すくえる?まさずみ?」

「それは・・・」

 

複数の黒藻の獣が、桶の縁に立った。

しかしそのうちの一匹が縁から転げ落ちる。

それを正純は手に持っていた紙でそれを受け止めた。

 

「ごめん、まさずみ、かみ、よごしちゃった」

「大丈夫だ、なんなら食ってもいいぞ?・・・私の覚悟はもう、ホライゾンを救う方に向いたからな」

 

私は何を思って何をしてきたんだろうな・・・答えならすぐそこにあったのにな。

 

「政治家だったら・・・救えるのかな」

「ああ・・・お前なら・・・正純なら、救えるさ」

 

ありがとう。

 

正純は心の中で康景に感謝した。

そしてトーリと康景に確認する。

 

「私は、武蔵の代表なんだろうか?」

「「jud.」」

 

その言葉で、もはや正純の迷いはなくなった。

正純は口を開いた。

 

「ホライゾンを救うための大義名分ならあるさ・・・まず一つにホライゾンは三河の君主として引責自害させられる必要は無いという事だ」

 

********

 

正純が告げた言葉に、最後の相対を見守っていた浅間は安堵した。

理由は簡単だ。

ここまでの流れはさっき康景が提案した考え通りに事が進んでいるからである。

 

康景は先程の準備期間中に正純を引き込む方法として、自分たちが「ホライゾンを救わない側に立てばいい」そう提言した。

最初は康景が何を言っているか理解できなかったが、康景は言った。

 

「正純をこちらに引き込む方法だが、まず俺たちが先手を取ってホライゾンを救わない側に立つ。そして俺が質問してアイツを俺たちが望む「答え」に誘導する。それでアイツに「ホライゾンを救う大義名分」を言わせる。アイツなら「極東側」の意見と「聖連側が悪」だとする理由を言ってくれるはずだ・・・トーリにとっては心苦しいだろうが、我慢してくれ」

「・・・お前が言うんなら信じるけどよ、それで上手くいく根拠はあんのかよ?」

「あるよ・・・だってアイツは、俺たちの「副会長」だからな」

「・・・だな」

 

その言葉を聞いたトーリが笑って康景の提案を快諾した。

自分たちは、そのどこから来るかわからない自信に、不安に思いつつも承諾した。

 

正直、ここまで上手くいくとは、浅間は思っていなかった。

 

・・・正純の政治能力もすごいですけど・・・康景君の判断力と推理力もすごいですよね。

 

これまでの展開が、ほぼ康景の言った通りになった。

 

どこまで計算してるんでしょうね・・・康景君は・・・。

 

康景はただの「天然ボケ」のようでいて、結構先の事まで考えていたりする。

ミトツダイラの取引相手の時だって、「相手はおそらく襲名関係を狙って言い寄ってきてるだけだから何とかしよう」と言い始めたのは彼だった(計画の主導はトーリだが・・・)

最初は半信半疑だったが、ミトが実際に私に相談してきたときは耳を疑った。

康景君が言った通りの事をミトが言ったからだ。

他にも色々康景の判断で助かった事例がいくつかあるのだが、浅間はそこで疑問に思った。

 

・・・そこまで判断する力があるのにどうしてミトやマサの気持ちには気づけないんでしょう・・・?

 

これはきっと武蔵アリアダスト教導院の七不思議の一つだと、浅間は考えた。

 

「康景君ってすごいときもありますけど、基本アレですよね」

「だよねぇ、たまにすごいけど基本アレだよね」

「ええ、基本はアレな方ですわね」

「そうよねぇ、康景ってすごい時もあるけど馬鹿よねぇ」

 

皆がぼかして言ってたのに、喜美が最後ストレートに馬鹿だと言ってしまった。

実際その通りなので、誰も否定しなかったが。

 

 

実際にこれが武蔵アリアダスト教導院の七不思議の一つになるのは、少し後のお話である。

 

*****

 

正純は言葉を続けた。

 

「昨夜元信公が行った三河の消失の際、ホライゾン・アリアダストはまだ嫡子ではなかった。略式相続も行われたのは今朝方の事だった」

 

「そうだな浅間?」

そう問う正純の言葉に浅間は「jud.」と肯定した。

 

「ホライゾン・アリアダストは記憶もないまま武蔵住民として生活していたんだ。だから三河消失には何も関わってはいなかった。それがなぜ三河消失の責任を取らねばならない?」

「それは・・・君主だからしょうがない事ではないのか?」

 

康景が問う。

その質問の意図を理解した正純は、もう迷う事は無かった。

 

「自分の与り知れないことに関して、しかも自分が全く関与していない事に関して責任を取らねばならないのならば・・・もしホライゾンが現れなかったら誰が責任を取った?三河の当事者以外誰も三河が消失するなんてホライゾンを含めて誰もわからなかったんだぞ?」

「・・・」

「解るか?今まで何の関係もなかった人間が、聖連が「そう決めた」という理由でいきなり嫡子にさせられ、責任を取らされそうになっていている」

 

正純は一息吸って、続ける。

 

「解るか?聖連が「決めた」らその人物は誰であっても・・・三河の君主に決められた誰かが責任を取らされるんだ!そうだ・・・嫡子にしてしまえば誰だって処刑できる、いわば歴史再現を利用した悪魔のシステムなんだよ!」

 

正純は康景の顔を見る。

その答えを聞いた康景の顔はどこか無表情なのに満足そうに感じた。

 

康景は問う。

 

「だったら、三河消失の責任は何処に行く?」

「三河の住民は仮設居住区画を搭載した船で生活しようとしている・・・だったらそのまま航空都市艦として認定すればいい。つまり三河は消失はしていない、誰も三河消失の責任を取る必要はない!」

 

歓声が湧く。

その歓声に正純は続く。

 

「武蔵アリアダスト教導院はホライゾンの処遇について今の意見を大義名分とし、聖連側に見直しを要求する!」

 

叫んだ。

自分の考えを力いっぱい政治家なりにまとめて告げたつもりだ。

だがそこで、不意にノイズ交じりにこちらに通神して来たものが居た。

 

「詭弁だな」

 

教皇総長インノケンティウス・・・!

 

来た。この男に勝利すればすべてが変わる。

 

人々の価値観も、武蔵の在り方もすべてが。

だがその教皇総長の表示枠を見て、ただ一人、康景は、

 

「・・・やっぱり来たか・・・ゴミが・・・邪魔なんだよ・・・」

 

ただ冷たい目で、まるで部屋に現れた虫でも見るような目で表示枠を静かに見て呟いた。

その呟きを聞き取れた正純とトーリだけが、その康景の静かな威圧感と殺気にぞっとした。

 

 




本当なら「高嶺の花」までやってしまいたかったんですが、文章量が多くなると思ったのでここで切りました
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