やはり一色いろははあざとい。   作:ざきりん

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何も言わずに放置してしまい本当にすみませんでした。
言い訳になりますが、受験やら何やらで中断せざるを得ませんでした…。
読んでくださる方がいるかわかりませんが、またこれから書いていこうと思います。


第5話

春という季節は嫌いじゃない。

桜が辺り一面に咲いていて、爽やかな風が吹き、上を見上げると青空が広がっていて、自分という存在がいかにちっぽけであるかを感じ、自分の考えていることが全てどうでもよく思えてくるからだ。

俺が何をしても、何もしなくても、この世界はいつも通り回っているということを実感できる。そのことが俺に何とも言えない安堵感のようなものを与えてくれるのである。

長々と語ったがつまり何が言いたいかというと、やっぱ長年培われたぼっちの能力は大学でも遺憾無く発揮されるんだなということだ。

 

春を迎え、ようやく長かった高校生活を終えて大学生になった俺は、今までとほとんど変わらない生活を過ごしていた。変わったのは高校時代いつも聞こえていた「っべー」とか「まじないわー」とかいったあの耳障りな声がなくなったぐらいか。

自分で言うのも何だが、そこそこ頭のいい大学に入ったのでみんな真面目で堅いやつばかりだろうと思っていたが、できるやつにもチャラい奴はいるらしい。今も教室、いや、講義室の中心で茶色や赤色に染めた髪をバシッと整えた、いかにもなチャラ男たちと派手な格好の女子たちがワイワイはしゃいでいる。

 

今日の講義はもう全て終わったので、俺はそそくさと教材を片付け、帰ろうとすると、外にサークルや部活動の勧誘を行なっている生徒たちの姿が見えた。

 

面倒だな…。だがしかしこんな時に長年鍛え上げたこのスキルが役に立つのだ!秘技「ステルスヒッキー」!!!

 

 

あっちこっちから「テニスサークルでーす!全員仲良く活動してまーす!」「アニメ、漫画好きのひとー、僕たちと語り合いませんかー!?」

などといった勧誘の声が聞こえるが誰も俺には話しかけてこない。

 

やはり誰にもこのステルスヒッキーは敗られん、ふはははは!などと心の中で高笑いしていると急に耳元から声がした。

 

 

「…あの、、、もしよかったら文学研究部に入りませんか…?」

 

 

……まさかこの俺のステルス(以下略)を看破する者がいるとは…。

だがしかし声をかけられてしまったものは仕方がない。

 

「文学研究部…?」

 

「はい…、自分で小説とか、詩やエッセイなどを書く部活です…。ぶ、部室に案内するのでついてきてください…。」

 

だが断る、と高校までの俺なら言っていただろうが、俺は促されるままにその文学研究部員についていく。純粋に文学研究部が実際に活動している様子が気になったし、将来小説家になるのもありだと思っているからだ。

いやもちろん第一志望は専業主夫だが。そこは譲らない。ただ現実的に考えた結果、他の道も検討しておく必要がある。

しかも小説家だったら家から出なくていいじゃん?自分の好きな時に小説書いて締切破って編集者を困らせればいいじゃん?

ごめんなさい調子乗りました。小説家の皆さんごめんなさい。

 

 

部員の後から文学研究部の部室に入ると十数人の学生が活動をしていた。

そのうち人の良さそうな男子部員と見るからか元気いっぱいな感じ溢れる顔立ちの整った女子部員がこちらに歩いてくる。いや、女子部員にはものすごい勢いでハグされた。どこのアメリカンだ。

 

「おつかれ奈々(なな)ー!しっかり男子捕まえて来てくれてんじゃーん!」

 

「落ち着け桃花(とうか)。彼が嫌そうな顔してるぞ。」

 

「なにー?こんなにきれいな先輩に抱きつかれて嫌な顔するなんていったい後輩はどんな環境で育って来たらそうなるんだ!」

 

「その性格がなかったらなぁ…。」

 

奈々と呼ばれた俺を連れてきた部員は

 

「だって彼ぐらいしか私が話かけられそうな人いなくて…。」

 

彼女は非常に奥手な性格らしく、なかなか話しかけられそうな人がおらず困っていたところちょうど俺(のような大人しそうな人)を見つけたらしい。

 

彼女たちの会話に入れず、どうしようなどと思っているとアメリカンな先輩部員が話しかけてくれた。

 

「やーごめんごめんテンション上がっちゃって!私は斎藤桃花(さいとう とうか)!そんでこっちがきっしーと奈々!よろしく!」

 

「岸田健二(きしだ けんじ)だ。よろしく。」

 

「し…椎名奈々(しいな なな)です…。」

 

「や、まだ部活入るとか決めてなくて、ちょっと気になっただけなんで…。」

 

「それでも構わないよ、気がすむまで見学していってくれ。」

 

なんだか葉山に通ずる何かを持っている気がする…。この爽やかな感じ、整った容姿、岸田先輩には気をつけよう。

 

 

 

結局その日は文学研究部の活動を30分ほど見て帰った。

設備も整ってたし、何よりみんなでワイワイするのではなく個人個人で活動をしている感じが気に入ったので、俺は入部を決意した。

 

斎藤先輩を始め、椎名先輩、岸田先輩、その他の部員も歓迎してくれた。拍手をされた時は少し恥ずかしかったが…。

 

まあそんなこんなでアパートに帰ってくると、ちょうど家から俺宛の荷物が宅配便で届けられていた。

ハンコを押して荷物を受け取り中身を見てみると、たくさんの果物が入っていた。あと小町からのメモも。

 

 

お兄ちゃんへ

 

小町からのプレゼントも受け取ってね!

 

 

と書いてあるが箱の中には果物しか入っていない。とくに気にせず果物をキッチンへ運び、一息つこうとしているとインターホンが鳴った。

 

はい、といってドアを開けると

 

「こんにちは〜せーんぱいっ!遊びに来ちゃいました!」

 

「……一色?」

 

久しぶりに見た彼女は、やはりあざとく、小悪魔のように俺に笑いかけていた。

 

 

 

 

 




書き方を以前とは変えて見ました。
もし読んでくださって何か意見があったらいっていただけると嬉しいです。

ようやく八幡の大学生活が始まりました。
今回出て来た3人の先輩はオリジナルキャラということで、これからもちょくちょく出していこうと思います。笑

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