【ここまでのあらすじ】
優は、本人の知らないうちに次期社長になっているらしい……
夕ご飯を食べて、風呂にも入った。
浴室では、いつも見ている風景との変化を感じられ、少々、新鮮だった。
見慣れない、ボディーソープ、シャンプーやリンス、コンディショナーの数々。
それらは、ノゾミが持ち込んできた物である。
彼女のボディーソープなどのの香りが充満していて、落ち着かなかった。
そんな気持ちの高ぶりを、なんとか湯船につかることで落ち着かせて、風呂を出る。
引き戸を開ける。
部屋には、脚を伸ばして座り込み、スマホを見つめているノゾミが居る。
いつの間にか、長い髪は後ろにまとめて三つ編みにしている。
これもまた、先程までと雰囲気が変わっていた。
昨日までは、なかった光景。
小さくて華奢な、黒髪、後ろは三つ編みの女の子。薄い水色の寝間着が映える。
それに引き換え、俺の方はTシャツにトランクス。
初日くらいは、何かズボンでも履こうかと思ったのだが、気にしないことにした。
俺が部屋に入ってきたことに気づいたのか、ノゾミが顔をこちらに向ける。
俺の姿を見て、顔をしかめる。
「どうした?」
「……ユウ兄って、服、気にしないひと、なの?」
「……あまり服を買いに行かないな……」
彼女は、顔をしかめた状態で、動作が止まっている。
何かを思いついたのか、急に笑顔になり、こんなことを提案してくる。
「今度、一緒に服、買いに行きましょう……ね」
目が真剣だ。
「うら若き乙女の前で、その格好は有り得ない!反論は聞かない!」
言葉の勢いに、俺は辟易する。
「今度の日曜日に、買い物行きましょう。決定!」
有無を言わず、来週日曜の予定が決まってしまった。
生活費の管理を決めたときもそうだったが、ノゾミって押しが強いな。
……これから先、俺の主張は、通るのだろうか……。
そんな将来への不安が、頭を
彼女の方に目を向けると、「デート、デート」……と、ご満悦である。
そうか、デートの約束とも取れるのか。
彼女が笑顔になった理由に納得しつつ、苦笑する。
……トランクスだけなのは、さすがにアウトだったか……。
自分自身の見通しの甘さに反省しつつ、寝間着のズボンを出してきて、履いてきた。
ノゾミはチラッとこちらを見て、何も言わずに微笑んでいる。
今はこの格好で良いらしい。
「……私の前で、格好悪いユウ兄は、許されない」
そんな、言葉が聞こえたような気がしたが、聞かなかったことにしよう。
うん、聞いてないぞ……。
★★★
しばらくの間、お互い、思い思いの時間を過ごしていた。
俺はパソコンの前でネットサーフィン、ノゾミはスマホを弄っている。
夜も更けてきた。
「そういえば、ノゾミ」
「なあに、ユウ兄」
……呼ぶと答えてくれるこの関係、いいなぁ……。
初日にして、そんなことを思っている自分に、少し呆れてくる。
ひとのぬくもり、ひととのつながり、ひととの生活……。
自分で思ってた以上に、焦がれていたようだ。
「そろそろ、寝ようか」
そう言って、収納から布団を出す。
俺の家には、たまに趣味関係の友達が泊まりにくるということもあり、布団は3セットある。
今日みたいに、急遽1人泊まるということになっても、対応可能。
布団を2セット、収納から下ろす。
「俺はキッチンで寝るよ」
さすがに、同じ部屋で寝るのは危険だと思う。
俺の精神耐久値が持たない可能性がある。
それに、ノゾミが、1人じゃないと眠れないということもあるかもしれない。
睡眠については、ひとそれぞれ、他人のわからない、変なこだわりがあるものだ。
そう思って、俺が使う布団を担いで、キッチンに移動しようとする。
後ろからTシャツの端をつかまれて、引っ張られる。
引っ張られた方向に振り向く。
「一緒に寝ようよー」
「……いいのかい?」
思わず、そんな言葉が口をついて出る。
この時期のキッチンは若干肌寒いし、慣れてないので、無事に眠れるのかどうか、不透明だ。
そんな潜在的な意識がそうさせたのかもしれない。
どうやら、ノゾミが絡むと、決意したことが簡単に覆ってしまうらしい。
そんな俺ってどうなんだろう、と、内心呆れながら、ため息をついた。
キッチン側を頭にして、敷布団を2枚、隣り合うように敷いた。
少し肌寒いので、掛布団と毛布も一緒だ。ノゾミは、脇で立って様子を見ている。
敷き終わると、布団に入る。
左肩を下にして、横向きに寝転がる。
スイッチが入ったように、目がトロンとしてくる。
明日からは、平日。いつも通り、仕事だ。
早く寝ないと、身体が持たないぞ……。
自分自身に言い聞かせて目を閉じた。
睡眠開始……、のはずだった。
掛布団が動く。
布団の中に少々の冷気が入ってきているように感じる。
それもすぐに遮断されたようで、元のぬくもりに戻ったようだ。
俺は、再びまどろみに入ろうとする。
しかし、それは許されなかった。
右腕を何者かに捕まれ、右脚を2本の何かに挟まれる。
そして、背中には、2つの存在感のある、柔らかなものを感じている。
俺は、自分自身がどのような状態になっているかを、一瞬で理解した。
これは、かわいい許嫁が、布団に入ってきて、絡んできている……と。
右腕をつかんでいた彼女の腕をつかみ、目を瞑ったまま、身体を反転させる。
右側を下にした状態で、彼女と向き合った形になったはずだ。
抱き寄せたなら、さぞ、驚くだろう。
そんなことを思いながら実行に移す。
ノゾミの肩をつかみ、背中に腕を回した。
……が、驚いたのは俺の方だった。
俺の手のひらが触れたのは、布の感触ではなく、つるつるした肌の感触。
寝間着どころか、ブラジャーの紐の存在すら、見つけることができない。
肩のぬくもり、肩甲骨と思われる凸凹が、直接左手のひらに伝わってくる。
首筋から肩口、そして背中まで、手のひらを誘導するも、布地の存在を見つけることができなかった。
1つにまとめてあった三つ編みは、前に回しているようだ。
俺は、思わず、唾を飲み込む。
……裸?彼女は今、裸なのか……?
これは第2の挑発なのだろうか。
それならば、冷静に「楽しく」迎え撃たないとな。
しかし、挿入活動はしない、そう堅く誓う。
目を瞑って、あえて視界を確保していない。
想像力を精一杯働かす。眠気は、一気に吹き飛んだ。
いたずら、開始である。
今の状況確認から入る。冷静に。しかし身体の1部は熱く……。
敵は俺の正面にいる。
肩と背中に布地の存在が確認できなかったため、おそらく上半身は、裸であろう。
と、いうことは、目の前に小ぶりな突起物が存在していることになるが……。
そこには、触れずに行く。
抱き寄せた辺りから、お互いの右頬が触れあっている状態になっていた。
鼻先にいい香りが届けられている。彼女の髪の匂いであろうか。
耳には、彼女の息づかいを感じることができる。言葉は発していないようだ。
しかし、緊張している気配を感じる。
彼女の意図は、よくわかっていない。
美味しく、今度こそ頂いて欲しい、そんな意味なのか。
はたまた、勝手に寝てしまった俺に対する、抗議のつもりなのか。
今となっては、どちらでも構わなかった。
ただ、面白そうな「おもちゃ」が目の前にある、それだけである。
彼女の背中に当てた、左手のひらを、下半身方向へ動かし、探索を開始する。
五指を滑らすように、乙女の柔肌を移動させていく。
それに合わせて、彼女が身体を震わせるのがわかる。もぞもぞと動いているようだ。
空いている右手を、彼女の腰と敷布団の隙間から通し、背中に回す。
彼女が逃げないように。
そして、右手のひらも背中から下半身方向へ、探索に回すが、布地を発見することができなかった。
まさかの全裸なのか。右手の五指を滑らせていく。
腰から臀部へ。
恥ずかしさからなのか、彼女の身体に力が入っていく様子が腕を通して伝わってくる。
そんなことにもかまわず、臀部を撫でまわす。
一方、左手の五指は、内腿へ移動させて、感触を楽しむ。
傍から見ると、30の男が16の少女の肢体を弄んでいるという、最低な光景である。
が、同じ布団内で繰り広げられている、どこから見ても「夫婦の営み」。
まだ「夫婦」ではないが、誰も文句は言えないだろう。
10分近く経ったか、俺は一心不乱にノゾミの身体の探索に勤しんでいた。
首筋、肩口、背中から腰、臀部、腿、内腿、そして足先まで。
軽ろやかに、触れるか触れないかを調整しながら、乙女の柔肌というリンクで、十指を躍動させる。
まるで、ピアノを弾くかの如く、優しく、弾むように。
それでも、あえて、胸と股の付け根には触れなかった。
誰にでも解る、在り来たりに素晴らしいものは、いつでも探索できる。
それよりも、自分にしか見つけることのできない、より素晴らしいものを見つけ出した方が楽しい。
一般的には「焦らし」という手法ではあるのだが、挿入活動をしない今回には、あまり関係がなかった。
長く身体を触られているからだろうか。
俺の耳には、ノゾミの、尋常ではない息づかいが届けられている。
16歳という、少女の域から脱し切れていないその肢体からも、
荒い息をして、恐らく赤く染まっているであろう彼女の表情を確認したい。
そんな欲望に負けそうになる、が、こちらも我慢。
尚も、左手は彼女の両内腿を、右手は背中から腰を移動させる。
すでにその肌は、湿っぽいものが浮かんでいる。布団の中は、高温多湿になっていた。
彼女がもぞもぞ動く。くすぐったいのだろう。
まだまだ「青い果実」。開発はされてないらしい。
ふと、左手を彼女の頭付近に持ってくる。
頭を撫でる。そこで俺は目を開けた。
目の前には、いきなりの行動変化に、どう反応していいのかわからない、そんな表情の彼女がいた。
「……ノゾミお嬢様」
「ハァ、ハァ、ハァ……」
彼女が息を整えるまで待つ。
「ハァ、ハァ……何…………?」
そう返事した後も、呼吸は少し早いようだ。
「なんで、俺の布団に潜り込んでるの?」
「ハァ、ハァ……えっ?一緒に寝たかったから……」
「……で、なんで何も着ていないのかな……?」
「私、いつも裸で寝るの……ん……」
そう答えた後、身体をよじらせる。
俺の左手が彼女の耳を触ったからだ。
ほほう。ポイント発見。
彼女の耳に軽く息を吹きかける。
彼女がビクンとなった。
よし、今日はこれで良しとするか……。満足満足。
★★★
「ノゾミー」
「なあに、ユウ兄」
すでに呼吸を整えたノゾミは、俺の胸の中に抱かれている。
「入ってくるのはいけどさ、全裸は勘弁して」
「なんでー?」
「さっきみたいに無駄な探求心が起こってしまうから」
「私……、大歓迎なんだけど」
笑顔で答えてくる。
「……まるで、ユウ兄に全身で抱いてもらっているようで……気持ちいいし……」
そこまで言うと、赤くなって俺の胸に顔を埋める。
「明日、平日。明日、仕事。OK?」
「……」
「俺、寝たいの。寝不足で仕事する、これ命にかかわるから」
「……ごめんなさい」
彼女の声が沈んでいる。理解して反省したらしい。
話し合いの結果、明日からは、寝間着の上部分とショーツを着るということになった。
「……明日からは、布団1枚しかいらないな……」
「へへへ……」
俺の言葉を聞いて、嬉しそうにしている。
こうして抱きしめていることについては、嫌いではない。
ぬくもりと幸せを感じる。
「なあ、ノゾミ」
「ん?」
「耳、弱いんだな……フッ!」
彼女の耳に息を吹きかける。
ついでに、耳の内側をペロッと舐める。
「……ヒャッ!」
ビクンと反応した。何度もする。楽しい。
「……もう、ユウ兄、きらーい……」
そう言ってそっぽを向く。それでも俺の傍から離れるつもりはないようだ。
俺は苦笑する。
どれだけ俺のこと、好きなんだ。そして信用しているんだ……と。
その信用が、今の俺にはまだ重い。悪くはないんだけど、慣れるまで時間かかりそうだ。
いつの間にか、ノゾミは、俺の胸の中で寝息を立てていた。
よくもまあ、布団に潜り込んだ、顔を出さない状態で眠れるなぁ……。感心する。
男としては、突起物や付け根部分も普通に気になるが……、それは、またの機会に。
彼女の頭を撫でて、今度こそ眠るために目を瞑る。
2人の静かな寝息が空間を支配する。
★★★
……業務完了。私も家に戻りますか……
希様のアノ声、聞けませんでしたが、弱点はわかりました。耳ですか……
私も、試してみますか……
影も帰途に着く。
次の話は明日15時に投稿します。
【ハナカイドウ(カイドウ)】
バラ科リンゴ属のハナカイドウ(花海棠)(学名:Malus halliana)は、別名をスイシカイドウ(垂絲海棠)、ナンキンカイドウ(南京海棠)とも呼ばれる。
樹高4~5mほどに成長する泣くよう小高木で、多くはつぼみが赤く、開花すると薄紅色に変化する。大きな木ならば、桜のような華やかさを演出してくれ、先端から順に花を咲かせていくため、1ヶ月近く、楽しむことができる。
9~10月頃になると、リンゴに似た赤い実を実らせる。
海棠という漢字は、棠が梨を意味し、「海を渡ってきた梨」という意味で名付けられた。長めの花茎を伸ばし、垂れ下がるように花をつけるため、スイシカイドウとも呼ばれる。
開花時期:4月~5月
花の色:ピンク色、白色
原産地:中国