優しい希望   作:すかーれっとしゅーと

37 / 47
いつも読んで下さり、ありがとうございます。

今回は特別版です。
急遽思い付きで書いたので、短めです。


【番外編】私の誕生日 Side-N

「今日は、ノゾミの誕生日だから、今夜はどこかで食事をしよう」

今朝、玄関で、唐突にそんなことを言い出したユウ兄様。

 

「ぅえっ!誕生日なら、家で豪勢な食事でいいのに!クリスもいるんだから!」

 

 そう、私は、約1年間過ごした、今の家族が気に入っている。

許嫁のユウ兄様、1年前、急遽一緒に住むことになった中1のクリスティーナ……。

3人で外食となると、それなりにお金が掛かる。

いくらユウ兄様の給料が多いとはいえ、私とクリスの食費、娯楽費を出してもらっている手前、余計な出費は遠慮したい。

……私が料理すれば、節約できるし、そこまで味が変わらないと、勝手に自負している。

……確かに、クリスマスイヴの「銀河」は美味しかったけど、ね……。

 

「あ、私は、小夜姉様のところで待っているから、お二人さん、ごゆっくりー」

 

 中学生のくせして、今夜の食事を早くも脱退する旨を伝えてくるクリス。

彼女は、私たちと一緒に暮らし始めたせいか、空気を読むスキルを上げてきている。

 

……何も準備せずに、ここ広島に来たときと、違う子みたい。

 

「……と、いうことで、ノゾミ。今夜は外食、な」

そう言い放つと、彼は出勤していった。

 

「……ノゾミ姉様、幸せ者ですね……」

 

 後ろでは、クリスがニヤニヤしながら、眺めている。

彼女には、毎日、いってらっしゃいのキスを見せつけているので、いつもの光景。

中学生には、毒だけど、この時間しか、いちゃいちゃできないから、仕方がないんだよね。

 

 

 

 

 

……とはいえ、2人での外食は、クリスマスイヴぶり。

私の誕生日のために、誘ってくれたのだから、嬉しいに決まっていた。

受験生向けになり、厳しさを増した授業内容も、苦にならない。

生徒会長の仕事も難なくこなす。

今夜が楽しみすぎて、仕方がないのだ。

 

「今日の希様は、調子良すぎです」

小夜は呆れかえっている。

 

「私の補佐が要らないみたい……」

副会長見習いの中学生、心春(こはる)も、遠くから見守るだけ。

 

「……本当に、希ちゃんは、愛しの旦那様補正かかると、万能なのにー」

 

 何でいつも本気出してくれないのよ……そんな顔をしている、(りん)

その横で、ニコニコして見守ってくれている(あおい)

 

「旦那様と同棲し始めて、1年なんだろ?そろそろ来るんじゃね?」

期待を持たせるようなことを言ってくる明日香(あすか)

 

……そ、そうかな……?

 

あえて考えないようにしていた懸案。

……今のままでも、十分幸せだよ。本当だよ……。

 

 

ブブブブブ

 

 

机に置いていた私のスマホが震える。

 

 

・本日18時、広島中央郵便局前で待ち合わせ、しよう

 

 

ユウ兄様から、メールが入った。

中央郵便局?どこにあるんだろう?

 

「小夜、『広島中央郵便局』ってどうやって行けばいいかな?」

 

交通については、小夜に聞くに限る。

広島滞在期間は、私と同じなんだけど、この子は鉄道とバスに詳しい。

 

「土橋からですと、3号線の『宇品(うじな)二丁目』行きに乗って、市役グムーッ」

「いや、希、『中電前(ちゅうでんまえ)』で降りるといいよ」

 

小夜の口を塞いで、明日香が被せてくる。

 

「グムーッ、グムーッ」

 

 不服そうな顔をして、暴れている。

そんな彼女の耳元で、明日香が何かを囁くと、彼女は暴れるのをやめた。

 

「中電前で下りるといいの?」

「ああ」

「……はい」

 

2人は頷く。

 

 

 そんなこともあり、私は、路面電車に乗って、中電前駅で降りた。

すると、そこには、リュックを背負った、通勤帰りのユウ兄様がいた。

 

「あれ?中央郵便局じゃなかったの?」

「いやーお節介2人組を介して、ノゾミがこの電停で降りると連絡あってな」

 

彼は気まずそうに、頭をかいている。

 

「とりあえず、歩こうか」

 

 そう言うと、私の手を取って、歩き出す。

普段、手をつないで歩くことが少ないため、少し照れる。

彼は、そんな私に気づいているのかどうか、わからない。

 

 横断歩道を渡り、歩道を歩く。

少し早足なのか。彼は、手を引っ張って、ズンズン進む。

中央郵便局を過ぎて、茶色い建物の前を通る。

 

中区役所

 

茶色い建物の前で、ユウ兄様は、歩みを止めた。

 

私と向き合う。

無言の時間が長く感じる。

 

「……待たせてごめんな」

 

そう呟くと、封筒を取り出した。

そこからは、見覚えのある、書類が……。

 

「もう1年経ってしまったから、今度はノゾミ、君が最後の著名をして欲しい」

 

 

……人生最高の誕生日になった。

 

 

 

 

プルルルルルルルルル……

 

目覚ましが鳴る。

 

ああ、夢か。

 

今日は、ユウ兄様と初めて過ごす私の誕生日。

こんな夢を見てしまうと、少し期待してしまう。

 

正夢にならないかなぁ……。

 




希さんの誕生日が3月3日なので、書いてみました。
いつもと違い、2000文字行ってません。

今進んでいる話のネタバレ的なところもありますが、まあ仕方ないです。
あくまで、夢の話のため、この通りにはならない・・・・・はず。

ちなみに明日香は、希に「市役所」という言葉を聞かせたくなかった模様。
せっかく旦那がサプライズをしかけようと思っているだろうに、と気を使ったようです。
お節介2人組は、小夜とクリスのことです。
小夜からクリスに連絡し、クリスから優に連絡した模様。
皆から愛されています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。