優しい希望   作:すかーれっとしゅーと

41 / 47
久しぶりの投稿になります。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。

【ここまでのあらすじ】
希が鈴峯女学園 高等部 生徒会副会長に内定しました。


第35話 パイナップル Side-N

 私は、副会長を引き受けることになってしまった。

まんまと久保生徒会長と裕子にはめられた形。

 

……裕子、今度会ったときは、ケーキでも奢ってもらうからね……

 

 そんなことを思うしか、私に抵抗手段はなかった。

 

ため息をつく。

 

 先程用意された、紅茶に口をつける。

ダージリンかな。美味しい。

凛、お茶も美味しく入れることができるとは、彼女は、何でも完璧なのか……。

 

 

 

仕方ない。これからの予定を考えよう。

 

「……副会長に立候補するということになるんだろうけど、何をすればいいの?」

「4月22日の金曜日に投票があります。選挙期間は1週間前の15日からですね」

 

私の隣にいつの間にか陣取った凛が、淡々と説明する。

副会長以下の役職は、在校期間は問われないこと、編入すぐでも立候補できること、最低限生徒会長の推薦は受けるが、基本的に誰でも推薦は取れるので大差がないことなど。

……ほぼ、武蔵野女子学園と同じ要項だった。

 

「15日までに必要事項を記載した、立候補受付書を生徒会に提出することになります」

「では、今、書こうかな……」

 

「希さん、まだ新学年のクラスが決まってないので、それは無理です」

「そうか……残念」

「でも、私は、希さんがそこまでやる気になってくれて、嬉しいです」

 

 彼女は喜んでいるけど、回避できないことなら早い方がいいと思っただけなんだよね……。

決して、副会長に関して、やる気があるわけではないんだけど。

 

「……希様、当選、確定……」

葵は葵で、そんなことを言ってくる。

 

……まだ、わからないから。

有力な対立候補がいるかもしれない。むしろ、いて欲しい。

 

「……小夜ちゃん、裏工作、完璧……」

……そこの姉妹、ブイサインをするんじゃない……。

 

「入学式と始業式で、何か目立つようなことをすればいいでしょうか……」

 

 小夜は「希様がするなら」とか言いながら、すでに乗り気のようだ。

私に何をさせるつもりなの?少し発言が怖い。

 

「……うん、これでノンが私の後継に……私の受験シーズン安泰ですね……」

 

 久保生徒会長は、自分の机でゆっくり紅茶を啜っている。

後継って何?振り向くと、微笑みを返された。

 

 

 

 

トントン

 

 

 

 

そんな中、生徒会室のトビラをノックする音が響く。

 

「どうぞ」

 

久保生徒会長の声で入って来たのは、2人の女の子。

 

 1人は2つ結びで、頭の左右から長いしっぽが勢いよく跳ねている。

もう1人は、両頬をやっと覆うくらいの短い髪をしていてボーイッシュな雰囲気だ。

 

どちらも緑のカーデガンにグレーのスカート。

 

 この出で立ちで、彼女たちが中等部の人間だということがわかる。

ちなみに、凛と葵も3月までは中等部所属なので、一応同じ服装をしている。

ただ、中等部生徒会は、秋に引退しているため、こちらを手伝っているみたいだ。

……彼女たちの首には、水色のリボンが光っているので、新三年生のようだ。

 

「遥さん、来てのお楽しみって……何?」

「……我々もいろいろ忙しいのですから、勘弁頂きたい」

 

 片方の子は、両しっぽをぴょこぴょこさせて、満面笑顔だ。

もし、犬のしっぽが付いているなら、ブンブン振っているかのように。

対して、ボーイッシュな子は、いたって冷静だ。

むしろ呼ばれて迷惑しているようだ。

 

心春(こはる)(まい)、この子の編入手続きをして欲しいのよ」

 

久保生徒会長は、クリスを指し示す。

ようやく自分の話になったと思ったクリスは、軽く頭を下げた。

 

「……あーっ!外人さんだー!」

犬の子は、クリスに向かってダッシュ。

 

「こらっ!心春っ!……」

 

 ボーイッシュの子は、声では止めようとするものの、そこから続かない。

どうやら、金髪の子を見るのが、珍しいようだ。

「コハル」と呼んでいるところから、こちらが舞、クリスの目の前まで来て、じーっと見つめている方が、心春という子になるのかな……。

 

「……スミス・クリスティーナと言います。よろしくお願いします」

「……しゃべった!」

 

クリスの流暢な日本語による挨拶に、心春は歓声を上げている。

 

「スミスさん、日本語上手いですね」

「クリスは、小学1年から日本にいるから、問題ないみたいですよ」

 

感心している凛に、これまた近くに移動してきた小夜が説明する。

 

「編入手続き?なぜ今、なんだ?」

「ええ、スミスさん、4月から中等部に通い始めるみたいだから」

 

「……生徒会につなぎとめておこうってことか……」

「……目立つ子は、早めに唾、つけておきたいでしょう?」

「……アンタってひとは……」

 

 久保生徒会長と舞が、何やら話をしている。

話の内容がきな臭い。

とはいえ、広告塔として、目立つ子を取り込むという考えは、嫌いではないかな。

 

「中等部の子たちも来たので、改めて自己紹介をお願いしましょうかね」

久保生徒会長が、周囲を見回した後、私と小夜を見据えて、そんなことを言ってくる。

 

「おい、遥。自己紹介って、何のためにやるんだ?」

 

 舞が、不思議そうな顔をしている。

彼女たちは、私が副会長になることを知らないので、当然の反応だろうね。

 

「ああ、この2人、今日から編入して来たんだけど、ウチに入ってくれるから、ね」

久保生徒会長は、2人に、私と小夜を紹介する。

 

「佐々木 希です。よろしくね」

「山崎 小夜。よろしく」

 

 初対面とはいえ、同じ学校の後輩。

私は軽く会釈し、小夜はぶっきらぼうに挨拶をする。

 

脇坂(わきさか) 心春(こはる)だよ。みんなのココロに春を呼ぶ、コハルちゃんだよ!」

 

 犬の子は、相手が年上で初対面でも、丁寧語関係なしの自己紹介だった。

……小夜が少し気に障ったかのような表情をしている。

私に対していつも丁寧語で接してくる彼女は、人一倍上下関係に厳しい。

友人に接するかのような言葉を発する心春に対して、「希様の前で、中学風情が生意気」とか思っているみたいだ。

 

私は気にしないんだけどね……、この子、かわいいじゃない。

 

「……佐々木(ささき)(まい)、……です。佐々木先輩、山崎先輩、よろしく……お願いします」

 

 ボーイッシュの子は、先程の口調を変えて、丁寧に応対してきた。

本当は「佐々木 舞だ」「よろしく頼む」と言うところを、気を付けているらしい。

 

ん……?佐々木?ユウ兄様と苗字が一緒だけど、親戚とかかな……?

 

「ほーら、心春!先輩に失礼だろう……すみません、コイツ、いつもこんな口調なので……」

「……えー、なんで?舞、離してよー!」

 

 心春の頭を下げさせて、取り繕うとする舞に、その意味も解っていない心春。

どうやら、舞は、小夜の様子を察知して、何とか雰囲気を良くしようと努力しているみたいだ。

……心春がかき回して、舞がフォローに回る……そんな2人の関係を垣間見ることができた。

 

 

小夜の気分を逸らすために、話題を変えてあげようか……。

ユウ兄様の親戚かどうかも気になるし。

 

「佐々木さん?」

「……何……でしょうか……」

 

声をかけると、少し驚かれた。

「私は特に失礼なことをした覚えがないのに、なぜ?」って顔をしている。

 

「同じ『佐々木』では、紛らわしいので、下の名前で呼んでもいい?私に対しても呼んでいいから」

「私は構いませんが……いいのでしょうか?」

 

「良いも悪いも、私は『ノゾミ』と呼ばれた方が落ち着くから」

「ああ、そういう……。「佐々木」はクラスでも何人かいることが多いから、自然と下の名前で呼ばれることに慣れますよね。わかりました、希先輩」

 

 

……私、佐々木になって3日だから、少し違うかも……。

それに、今まで周りにそこまで「相田」も「佐々木」もいなかったからなぁ……。

勝手にユウ兄様の親戚かもと思ってたけど、「相田」姓が被るときと同じみたい。

むしろ、慣れるほど多いという舞の周辺の「佐々木」姓に驚くよ。

 

「舞と区別するため、みんなも私を、『佐々木』以外の名前で呼んでくれると助かります」

……久保生徒会長と、心春以外は、すでに「ノゾミ」呼びだったりするんだけど、気にしない。

 

「……で、心春と舞。ノンに、副生徒会長になってもらうことにした」

「……えっ?うそー!編入したばかりで、いきなりは無理だよー!」

「こらっ!心春!……でも、希先輩には悪いけど、私もそう思う……」

 

 舞は、私をチラッと見て、申し訳なさそうにしている。

心春の言葉は、砕けすぎてるけど、言ってることは、真っ当だ。

 

現に、私自身もそう思っている。

 

 武蔵野女子では、ある程度顔が知れ渡っているけど、ここでは新顔だ。

そんな否定的な2人に対して、久保生徒会長は、いい笑顔をしている。

まるで予想通りの反応で、それを変化させることを決めつけているみたいに。

 

……それはそうとして、久保生徒会長は「ノン」呼びにすることにしたんだね……。

呼ばれていたことはあったから、違和感はないけど、思い切り間を詰められた感じだよ……。

 

「ウチの生徒会選挙において、家柄が結構影響することは、2人ともわかっているでしょう?」

「まあ、そうだな……心春も、こんなどうしようもないヤツだが、結構なお嬢だし」

 

「……まーいー、私が会長になれたのは、私自身の資質!」

「……世界に羽ばたくレジ袋製造会社のお嬢がそれを言ってもな……」

 

「……いや、堂々と誇れないー、レジ袋なんて、さ……地味すぎて」

「希先輩、山崎先輩ー。コイツの親の会社、日本のレジ袋生産、一、二を争っているんです」

 

 

……レジ袋製造業……。

確か、日本では3社しか生き残っていないので、「一・二を争う」と言われても微妙かも。

とはいえ、その3社で日本のレジ袋の供給を担っているのだから、凄いことには違いない。

 

「……で、遥。それと希先輩が、どう関係あるんだ?」

「……希ちゃん、どこかのお嬢様なの?……ゥデッ!痛いです、山崎じぇんぱい……」

 

とうとう小夜のげんこつが飛んできたようだ。心春は頭を擦っている。

 

「……なんとノンは、『アイダコーポレイション』のご令嬢なんだよねー」

 

 久保生徒会長は、まるで自分のことかのように、言い放つ。

これを、世に言う「ドヤ顔」というヤツなのではないだろうか。

 

「……またまたー、遥さん。そんな誰でもわかるようなウソ、つかないでくださいよー」

 

 心春ちゃんが、笑顔で反論する。

先程、小夜に殴られて悶絶していたはずだけど、回復は早いようだ。

 

「アイダコーポレイションの社長は相田 徹ですよー、苗字が『相田』じゃないじゃないですかー」

 

 一女子中学生からお父様の名前が出て来ることに一瞬驚く。

……でも、ニュースや新聞を見ていたら、それなりに出て来る名前でもあるので、そんなものなのかも。

 

「相田 希って、あの『伝説の生徒会長』じゃないか。そんなひとが、こんなところまで来るわけが……」

舞は、私と久保生徒会長を交互に見ながら、混乱している。

 

 

……「伝説の生徒会長」って、いったい何のことかな?

 

 

「希さん、アナタが中等部生徒会長をしていた時代に編入してきた生徒が、新聞部と結託して物語を作ったようで……、鈴峯女学園中等部では、有名な話になっているのですよ」

 

私の表情を読み取ったのか、的確に説明してくる凛。

この子、小夜と違う面で優秀すぎるんだけど……。

 

「私も会長も編入書類を見るまで、『佐々木 希』が『相田 希』とは気づいてませんでした。彼女たちが失礼すぎることを言ってますが、許してもらえますか?」

 

 後輩たちのために小声で平謝りしてくる。

……それは、良いのだけど、どんな物語になってるのだろうか……。

すごく気になる。

 

「まあ、この用紙を見ていただければ、真実かどうか、わかりますよ」

 

 久保生徒会長は、机の上に1枚の用紙を置く。

心春と舞は、静かに注目している。

私も気になるので、彼女たちの後ろから覗く。

 

 

 

 

武蔵野女子学園 生徒No.158247 佐々木 希

配偶者:佐々木 優と婚約するため、生徒手帳に記載している「相田 希」から変更

 

3月9日 名前変更申請   3月15日 学園長承認

3月9日 妊娠優遇措置申請 3月15日 学園長承認

 

備考:

申請者 相田 徹 本人との関係:父

佐々木 優の自宅からの通学のため、申請者の希望により変更

 

 

 

 

 それは、私の名前変更と妊娠優遇措置の許可証明だった。

確かにこれなら、私が「相田 希」であること、父が相田 徹であることを証明できる。

学園長の印も押されていて、偽物とは言い難いものだった。

 

「……えーっ?マジで伝説の会長、ノゾミなのー?」

心春は、振り向いて私と目が合うなり、そう叫んだ。

 

「……ってことは、鬼の執行者、サヨは……痛い痛い、痛いからー」

小夜は、すでに心春にアイアンクローを決めていた。

 

「……ちなみにもう1人『仏のユッコ』は、現・武蔵野女子学園高等部生徒会長のことです」

すかさず、凛が補足を入れてくれる。

 

「……私に、ユッコさんの代わり、勤まりますかね……」

 

おずおずと、自己主張少なげにつぶやく少女。

……凛、そこでいきなりぶっこむの止めて。

本当に止めて、ね……。

 

 

誰が伝えたかわからないけど、私は「伝説の生徒会長」ということらしい。

 

逆らう者は許さない、壁になるヤツはなぎ倒す「鬼の執行者・サヨ」

財政管理はお手の物、経費というアメとムチを使い操作する「仏のユッコ」

その2人が絶対君主と崇め、2人以上の能力を持つ「会長・ノゾミ」

 

この3人が生徒会に所属して、様々な出来事や無理難題を解決していく。

 

そんな痛快物語「武蔵野生徒会・中等部編」は、ここでは知らないひとがいないくらい有名なのだそうだ。

本来なら、作り物として冗談半分で伝わるところなのだけど……。

部活動でのつながりや編入者、さらに教師から伝わる話から、どうやら限りなく真実らしいということに気づき始める。

 

そんなこともあり、ますます人気となったようだ。

 

 

「そうかー、ノゾミとサヨがいるなら、当選確実、だね!」

 

 小夜から解放されて、確信を持って叫ぶ心春。

むしろ、有名な「鬼の執行者・サヨ」にいたぶられてご満悦のようだ。

 

 

 

そんな中、

 

「……佐々木 優……ユウ兄ちゃんが婚約……?えっ?ウソー」

私は、そんな舞のつぶやきを、聞き漏らすことは、できなかった……。




【パイナップル】

パイナップル科アナナス属のパイナップル(学名:Ananas comosus)は別名をパインアップル、パインナップル、和名は鳳梨(ほうり)と呼ばれる常緑多年草。
果実だけをパイナップルと呼び、植物としてはアナナスと呼ぶこともある。

細長く、しっかりした堅さの葉っぱが放射状に伸びる。
葉っぱの先端はトゲのように鋭くなっており、フチにもノコギリのようなギザギザを要する。株の中央から太い花茎を伸ばして、その先端に紫色を帯びた小さな花をまとめて咲かせる。

1コに見えるパイナップルの実は、およそ100~200の小さな花が残した果実の集合体で、このような形態を「集合果」と呼ぶ。
私たちが普段食べている黄色い果肉の部分は、花の土台となっている「花床」と呼ばれる部分が肥大して、多量の汁を含むようになったものである。

実を収穫後、根茎から再び芽を出し、これが成長すると先端部に結実する。
しかしながら、収穫ごとに実が小さくなっていくため、株を3年以上用いることは少ない。

多くの市販品を生産している農園では、同一個体のクローンである同一品種ばかりを植えるため、自家不和合性によって受精がほとんど起こらず、果実内に種子ができない。

それでも、時々他の農地の他品種の花粉がハチなどによって運ばれるなどの原因で受精が起きていることもあり、皮として剥いた部分と食用になる果肉の境界部分に褐色の胡麻粒のような種子が小数見られることがある。
これを土にまけば発芽するが、開花して果実をつけるに至るまで何年もかかる。

そのため、増殖させるときは、葉の付け根の腋芽が発達した吸芽を苗として用いる。
果実ができた後に生える冠芽を使った挿し木の方法もあるが、吸芽よりも開花まで時間がかかるため、経済栽培では使われていない。

パイナップルは、パインとアップルをくっつけた言葉で「松ぼっくりに似たリンゴ」という意味。
パインはマツ(松)のことで、アップルは「価値のある美味しい果実」を表しており、リンゴそのものを指しているわけではない。


開花時期:不定期
花の色:薄紫色
原産地:熱帯アメリカ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。