提督と艦娘たちの日常小話をお楽しみください。
「提督よ、聞いているのか?」
「んあ……聞いてるよ、だが無理なものは無理だ」
「提督ぅ! 聞いてるんデスカ?」
長門と金剛、まさに混ぜるな危険な二人が執務室に侵入してきているが俺はなだらかに返す。
「そりゃそうだろ。頼み事があるとか叫びながら執務室のドアを破壊してくる奴に頼みもクソもあるか! 大型の奴は艤装外して来いって張り紙や口で言ったろ!」
執務室のドアだがそれ程大きくはない。戦艦クラスの艦娘が通るときは細心の注意が必要である。
「また直せばよかろう、それより重大なことなんだ!」
「そうデスヨ! 日本にはカタチあるものはイツかコワレルという言葉があるデショ?」
金剛がウザったらしい顔でウィンクをかます。
「形あるもの片っ端から壊すお前たちには正直呆れているよ、これだって直すのには限度があるんだぞ」
俺は呆れながらも机から白紙のメモ用紙を取り出す。
「で……なんだ? 聞くだけ聞いてやるよ」
「優しいな提督……」
「うるせぇ、お前らの声が頭に響くだけだ」
「提督、実は……祝勝会を開きたいのデース!」
金剛が軽快なダンスとともに話を進めてくる。
「私たち艦娘は日々の訓練や実践に疲れていマース!」
「そこで提督に祝勝会を開く許可を貰いたいのだ」
まるで打ち合わせをしたかのように長門が繋げてくる。
「この長門……いや、全艦娘の願いなのだ!」
「……そうか。まあ良いだろ」
「「提督!」」
確かに皆疲れているだろう。英気を養わせるのが俺の役目でもあるからしょうがない。
「ただしだ……」
「「ただし?」」
俺はゆっくりとある方向に指を向ける。
「このドアを直してからだ」
「「はい……」」
◆
「しかし、あいつらが代表でねぇ……」
俺は確認途中の祝勝会の申請書を持ちながらふらふらと歩く。
「つーか、なんで祝勝会なんだ? 普通に宴会でも良かったんじゃないのか……相変わらずあいつらの行動は読めねえなぁ」
「あ、司令官! こんにちはなのです」
ふらふらと歩いてる俺に元気で聞き覚えのある声が聞こえた。
「おう、電か」
彼女は電、着任当初の秘書艦であった娘だ。
現在は第一、第二艦隊の指令艦の地位にいる可愛い子だ。
「何かあったのですか? 随分と渋い顔をしていましたけど」
「そう見えるか……実はな、コレを見てくれ」
そういって俺は奴らの提出した申請書を見せる。
「えーと……『第一回祝勝会の提案』? 何ですかコレ?」
電が目を丸くして疑問をぶつけてくる。
「やっぱりそう思うか……」
実際の話、新艦娘着任時の宴はやっているが勝利に関しての宴は大それたものをやってはいない。精々酒を飲む程度だ。
「もう少し明確な理由が欲しいのですけど……」
「あ? あいつらはほかの艦娘どもがやりたいって言っていたから申請しに来たって言って提出してきたぞ?」
「誰もそんなわがまま言いませんよ」
そういえば休みが欲しいとかはよく来たが宴やイベントごとは一切提案をしてこなかったな……。
「あいつら……」
騙されたと思えば妙に腹が立つレベルの嘘だ。
「司令官。それはどうするのです?」
「あー……破り捨てても良いんだが、それじゃあ紙の無駄だ。やるだけやってみよう、俺もその手の酒が飲みてぇ」
俺も面白いことには賛成だ、やるなら徹底的が良いだろう。
「流石ですね司令官……」
電の褒め言葉には呆れが見えたような気がした。
「まあ、わがままって言うなら尚更だ。俺にも不備がある」
「不備……ですか?」
「ああ。お前たちにとってそいつが『わがまま』って言うならこれはお前たちへの配慮が足りないと思ったからだ」
頭をかきながら理由を淡々と喋る。
「司令官……」
「礼はいらん。これは俺が尽くさねばならんからな」
俺は電に背を向けて手を振る。
「ところでこの書類にはご馳走は金剛さんが作る事になっているのですが……」
「あ?」
俺は急ぎ書類見返す。そこには『調理係・金剛』と書いてあった。
「おいおい……何かの間違いじゃないのか?」
「だとしたら誤字より悪質なのです……」
ちなみに金剛の料理センスは尊敬するほどに無い。以前は俺の為にオムライスを作ろうとして卵が原因不明の爆発を起こす始末だ。
「あー。承諾するか迷ってきた……」
「察するのです」
「まあいいか……電、お前が料理の時ついてやれ。重要任務だ」
俺は料理係の欄に『電』と書き足す。
「金剛が何を爆破させるか分かったもんじゃないからな。電と他にもう一人つけて良いから頼むぞ」
「そ、そんなの身勝手なのです!」
俺は電に例の申請書を渡す。
「そいつに判子押して時雨によろしくな。俺は少し寝る……」
「そ、そんなぁ……酷いのです」
電は少し泣きながらも懐に申請書をしまう。
「大丈夫だろ。俺が行ったら二時間コースの説教だが、お前が行けばお茶とお菓子ぐらいは付けてくれるさ」
「二時間は変わらないんですか……」
「揺るがんだろう、あいつは昔から厳しかったらしいからな」
俺は上も見上げながら欠伸をする。
「時雨さんはそんなに厳しいんですか?」
「あの人もこっ酷く叱られてたからな。まあお前なら大丈夫だろう、幸運を祈る」
何かを訴える電に手を振り俺はその場を後にする。
時雨ならば電にはこっ酷く言わないだろう。あいつは努力を重んじる性格だ……怒るときは相手の為にしか怒らない。
「んあ……もう切れたか、煙草」
そういえば肺に悪いって時雨が言っていたような……。
「チッ……さっさと寝ろってかよ」
煙草無しの就寝前なんて何ヶ月ぶりだろうか?
―了―
今回で二回目となりました。
続けられるか一部不安な面がありましたがホッとしています。
次回は提督の過去がチラッとだけわかります。