ヒューマノイドと警察官 四章   作:とましの

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36話

「Mシリーズは特別に開発された戦闘機能付きヒューマノイドだって、知ってるよね」

徳川を研究所まで送り届けるため自動車で移動する。その間にレオーネが説明を始めた。

市販のヒューマノイドには戦闘機能が搭載されていない。それは人が日常生活を送る上で必要ない機能であるためだ。そうやって必要ない機能を取り除いていくことで価格を抑えることができる。

しかしMシリーズは元々警察の要請によって研究開発が行われてきた。現に001や最新型の004と005は警視庁に所属している。そしてそのため戦闘から反射能力まで、すべてにおいて桁違いのスペックを持っていた。

「002は戦闘機能を捨てたらしいけど、その分だけ演算能力がずば抜けてる。そんな高すぎるスペックのヒューマノイドを欲しがる人はいくらでもいるよ」

「……レオーネのあの映画の影響もあるだろう」

自動車の運転をしながら語るレオーネの後部座席で徳川がぽつりとつぶやいた。とたんにレオーネは苦笑いを浮かべて不可抗力だと返す。

「だけど、僕が開発発表された時は一億出すという人もいたらしいよ。002が生まれて米国へ贈られた時は、次の機体を買うという人もいた。まだ何も発表していないのにね」

一億という金額を耳にしても魚住はそれを実感することができなかった。もしレオーネの話が事実なら、一億を越える価値のある新型が野良として街を歩いていたことになる。

「レオーネはあの映画を見てないのか」

そこで再び徳川が口を挟んだため、レオーネはバックミラー越しにちらりと見た。

「今の僕は真珠以外に目を向けない主義だからね。だけどそんなにその映画の影響は大きいの?」

「映画に003も出てるんだ。主人公である001が事故の中で少女を守る時に、瀕死の003がそれを助けた。それを映画も忠実に再現してる。だから……」

適切な言葉を探しているかのように徳川は言葉を途切らせ視線を動かしていた。魚住はそんな徳川の様子をじっと見つめる。

「きちんと魚住さんの元へ届けられるようになるまで、黙っているつもりだった。迷惑をかけたくなかったから。今の彼を守ってくれなんて言えないから」

すみませんと小声で謝罪した徳川を魚住はじっと見つめていた。彼の言いたいことが欠片も理解できないのは、魚住自身の理解力の問題か。それともここでは自分だけがヒューマノイドではないためか。

「真珠」

返す言葉すら浮かばない魚住に、運転席から声がかかった。

「今の君に、003を守る義務はないんだよ。ああ、003というよりも006か。あの子は君の知るヒューマノイドではないし、持ち主でもないからね。だから真琴は、元に戻せるまで黙っていたんだよ」

君を苦しめたくないからねと告げるレオーネは穏やかな声色を持つ。この半年間、レオーネは毎日こうして魚住に穏やかな態度を向けている。だからこそ魚住は何事もないように仕事をしてこられた。

しかし優しくされ気を使われ続けるのは、性に合わないと心から思う。

「俺はテメェらに守られ続けるほど弱くねぇよ」

赤信号で止まる車内の中で魚住がそう告げるとレオーネはすぐに口を開きかけた。しかし口を閉ざすとにこやかに微笑んで見せる。

「……それでこそ真珠だね」

 

 

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