明日のこの時間には中を、そして間に合えば明後日には後を投稿します。
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主人公には固い絆で結ばれた友が付き物です。
ホームズとワトソンのように。メロスとセリヌンティウスのように。私にも、竹馬の友があるのです。
今日はそんな親友で・・・・・じゃなく・・・"と"、遊びました。先ずは私の親友をご紹介しましょう。
彼の名前は森近霖之助。その名の通り、森の近くに分布する霖之助です。
その生態は極めて温厚かつ惰弱で、身一つでは朱鷺の一羽も仕留められない程。空腹に負けては、魔法の森で得体の知れないキノコを拾い食いし、よく腹を壊しています。良心のご近所さんがよくお裾分けをくださるおかげで、なんとか生きていますが、彼女の愛想がつきた時が、霖之助の命日となるでしょう。
ちなみに、博麗の巫女の下請けなんぞをやっております。妖怪としての誇りは無いのでしょうか?
聴いてみても「僕は半分人間だから」とか、飄々として
他にも、私率いる『半人組合』の書記も担当させています。現在、総員四名です。新規メンバー募集中!今加入していただくと、霖之助のコレクションから幾つかパクっても許される権利を贈呈します!
おっと、話が逸れました。宣伝は霧雨道具店に公告でも貼るとして、そろそろ本題に入りましょう。
お日様も空のてっぺんから少し下り始めた頃です。私は霖之助の家に侵入を果たしたのです。
怠惰にも、未だ布団の中で、すやすや寝息をたてていた家主に、私は──────
○○○○○○○三人称視点→
想像してみて欲しい。
貴方は仕事を二徹で完遂し、幾度となく夢見た布団へとその身を預けた。
レム睡眠?そんなの要らん。夢など見る暇があるなら、キリキリ体力と精神力の回復に勤めんかい!
何?記憶の定着に必要、だと?こちとら仕事の記憶なんてキレイサッパリ忘れたいんじゃボケェ!!!
夢など見ない。もう何も見たくない。太陽の光が憎い。手付かずの仕事の山が怖い。
もう、もう俺を放っておいてくれ・・・・zzz
斯くして、女神の包容もかくやという安心感の中で、待ちわびた眠りについたのである。
その翌朝。否、昼。
──ああ、二日も風呂に入っていないんだもんな、痒くて当然か。
そんなことをぼんやりと考えながら、決別を惜しむ上まぶたと下まぶたを引き離すと、
目に飛び込んできたのは、
銀髪が麗しい、
ようじょ。
さて、こんなシチュエーションで、貴方ならどうする?
選択肢その一
日本人としての良識に則り、付近に保護者が見当たらない少女の保護を、然るべき機関に要請する。
選択肢その二
求道者としての理念に則して、目の前の可愛らしい幼女に話し掛ける。ボクコワクナイヨー。ナカヨクシヨウヨー。
選択肢その三
眠いから寝る。
選択肢その四
キョドる。
度重なる妖花の家宅侵入にすっかり慣れきってしまっていた霖之助は、那由多分の一秒も迷うことなく、即座に三を選択した。
さあ、目を閉じるんだ霖之助。今、再び、約束の大地へ─────
「ちっ。起きてしまいましたか。」幼女こと妖花は手に持った棒状の何かをへし折りつつ「あと少しで仕舞いだったのに。」と、不穏なことを言う。
やあ、霖之助くん!選択肢が増えたよ♪
選択肢ソノ伍
司令部ヨリ全軍ヘ通達。彼我ノ戦力差ハ絶大ナリ。速ヤカニ退避サレタシ。
言われるまでもありません☆
布団を蹴り上げ、飛び上がって敵前より離脱。不得手な浮遊術を駆使してバランスを取りながら、廊下へ出るふすまに向けて滑空する。引く時間も惜しい、とばかりに勢いのままに任せて蹴破った。
「森近霖之助より司令部へ!我、退避せり!退避せりぃ!」
霖之助は駆け出した。一秒でも早く外へ!善意のご近所さんに助けを求めるのだ!
霖之助は駆け出した。それは自由への逃避であった。
霖之助は駆け出した。そしてそれは、赤信号の向こうへ飛び出すに等しい行為でもあった。
気づいたときには遅かった。
目の前には白い大福。否、半霊である。
我が首に巻き付く半霊の尾。顔に押し付けられる柔らかく、冷たい感触。
気道を二重に塞がれて────
────りんのすけ は めのまえ が まっくら に なった !
○○○○○引き続き三人称→
妖花は
無理に霖之助を起こすようなことはしない。先程の様子から、相当疲れているのだろう事が察せられたからだ。自分の可愛い顔を見て、まるで、化けて出たお岩さんを見た時の伊右衛門のような反応を示すなど、きっと幻覚を見るほど疲れているに違いない。
逃走する時の動きも無駄に機敏であったし、きっと火事場の馬鹿力が出る位、切羽詰まっていたのだろう。さては、昨日は徹夜だったな?
ふと、霖之助が自身の半身──すなわち半霊を抱き枕にしていることに気が付き、妖花は微笑ましい気持ちになる。まったく、確かにこれは幽々子様からもご好評いただけたほどの寝心地を誇るが、わざわざ首に巻くまでしなくても、誰も盗らないだろうに。これでは首が絞まってしまうではないか。やれやれ、仕方がない。
───霖之助は目覚めてすぐに、眠気に負けて二度寝した。首に半霊が巻き付いているのも、彼が寝ぼけて巻き付けたから。首についた圧迫痕も妖花のせいではない。霖之助が勝手にやったことだ。
そういうことでいいじゃないか。
誰も責められない、不幸にならない。正に完璧なプラン。
妖花は事実を隠滅した。
だって、ちょこっといたずらしただけで、あんなに怯えるだなんて、思わなかったんだモン。
私悪くないモン。
勝手知ったる他人の台所。むしろ、通算で使用した回数なら家主より自分の方が多いのではないか、何て考えながら戸棚を漁る。
茶葉をそろそろ買い足さなければ。塩もだ。鰹節はやたらと余っている。あっ、煎餅湿気ってる。七輪で炙ればイケるかな?
水で満たした鍋を火に掛ける。急須を洗って、湯飲みは二つ。お茶請けには蜜柑と葛菓子と、ポケットから転がり出てきたべっこう飴。
まとめてお盆にのせて、居間に戻る。
適当に転がしてあるマジックアイテムや、巫女服や、霖之助や、書籍を上手いこと躱してちゃぶ台に到達。
濃くなりすぎる前にお茶を淹れてやれば、青々とした茶葉の香りがふわりと広がった。
霖乃助が起きるのを待つ。手慰みに蜜柑の白いもけもけを、ひとつも残さずに取ったりして、お茶を一杯。二杯。三杯。
四杯。
五杯。
・・・・・・・。
こいつ、ぜんぜん起きやがらねえ。
喰らいやがれ、寝耳にお茶攻撃!
ぽとっ。
ジュッッ!!!
「ぶわっっつうぅぃぃぃい!?」
「おはようございます霖之助。妖花がお昼をお知らせします」
飛び起きる霖之助。にこやかに挨拶する妖花。霖之助は飛び起きた拍子にちゃぶ台に頭をぶつけて、挨拶するどころではない。
痛みでのたうつ大男に、さすがの妖花も憐れに思ったらしく、労るように話し掛けた。
「大丈夫ですかぁ?お茶飲みますかー、って切れてますね。新しいの淹れた方が良さげです?」
「え?妖花がどうして
「淹れてきますね。」
基本的に幽々子以外の話は聞かない妖花である。
常日頃から巫女に、妖花に、といびられて、理不尽にもある程度の耐性が付きつつある霖之助は、何時もの事だ、と平然と妖花を見送ったのだった。