魔法の杖 made of 西行妖   作:縁々

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 二泊三日の勉強合宿(学科生強制参加)を乗り越えたものの、風邪っぴき。今日の模擬試験(担任から「絶対受けろ」という圧力)を喉をごほごほ云わせながらもやりきって、
 
 投稿します。


──意訳──遅れたけど作者は悪くない。


ヘルガおばさんのシチュー

──13ページ目──

 

 

 

 まずはあの人の説明から始めましょう。

 もしこの日記を読んでいる方がいるなら、あなたもご存じかもしれないくらい、幻想郷界隈では有名な方なんですよ。

 

 彼女は幻想郷でも恐らく最古参の魔法使いです。強大な力を持ち、かつて森を農場に作り替えようとして失敗、今の魔法の森が作り上げられた、と幻想郷縁起に書かれていました。

 妖怪人間双方に多大なコネがあり、人里では上白沢慧音と並んで慕われていらっしゃいます。妖怪連中では特に妖精から絶大な支持を集めており、彼女たちと戯れる姿はベテラン保母さんそのものです。

 また、霖之助の命の恩人でもあります。彼女が彼を餓死から救い上げた回数は数知れず。霖之助は一度死んで反省した方がいいですね。

 

 そんな彼女の名は、『ヘルガ・ハッフルパフ』。ついこの間知りましたけれど、エゲレスのご出身だそうでして、彼女の国の言語なら学んでみるのも良いかもしれませんね。

 

 さて、彼女に会ったのは今日の昼過ぎ。暇をもて余して、霖之助の家に押し入ってから、一時間ほど経った位の事でした。

 

 

 

 

◯◯◯◯◯◯三人称視点→

 

 

 

 

 霖之助の家の、居間の、ちゃぶ台の前。そこには、だらしなく顔面の筋肉と言う筋肉を弛めた妖花の姿があった。

 手には一冊の本を持っていて、周囲にも本や巻物が山と積まれている。近づいてみれば容易に判るが、すべて外から流れてきた、又は幻想郷産の性的な書籍───

 

 平たく言えば、エロ本である。

 

 それらに描かれる女性たちは(いず)れもが巨乳、或いは桜色の頭髪をしていた。

 ずばり、何処か西行寺幽々子を彷彿とさせる出で立ちであった。

 

 血は争えないと言うことか。

 妖花は主人に似た特徴を持つ女性たちが乱れる類いの書籍を収集し、あまつさえ、この事実が発覚しては不味いからと、友人に無理矢理匿わせていたのである。

 正真正銘の阿呆(あほう)である。

 寧ろ、エロウである。

 

 引き戸がガタガタ揺れるので、妖花がそちらの方を見ると、エロ本がつっかえて開かない様子だった。妖花は無視して読者に戻った。

 戸の向こうから抗議の声がする。

 

「おいおい、さらっと無視するなよ。開けてくれ。でないと、お茶が冷めるよ。」

「焦らないでください。今、半霊にやらせますから。」

 

 えっ?、と顔もないのに驚いたことがありありとわかる様子で、半霊は妖花が開いたエロ本の方から半人の方に旋回した。半身が目で促すので、仕方なく重い腰をあげて、引き戸を器用に開けてやった。一仕事終えた瞬間には読書に合流した。

 

 霖之助は部屋の惨状を見て、ため息一つ。

 どうしてこんな風に育ってしまったのだろう。親御さんは何をしていたのか。

 カムバック、純粋だった頃の妖花。

 

 おぼんを下ろした霖之助は、山から一冊のつまみ上げ、まじまじと見つめる。

 

「よくこれだけ拾ってくるものだね。この印刷技術から見て、外から流れてきたやつだろう?いやはや、人間の欲というか、執念は恐ろしい。」

「いえ、それは内部で生産したやつです。外の技術と遜色ないでしょう?すごいでしょう?河童が実用化に成功したんですよ。」

 

 同志として鼻が高いです、と妖花はエロ本を読みながら、片手間に言った。

 

 河童と言えば、幻想郷で一番の科学技術を誇る妖怪だ。

 彼らは水中を主な生活域とするので、紙にあまり馴染みがない。従って印刷技術は持っていなかった。が、そうか、ついに開発したか。

 

「同志?」

「はい。蔵書を幾つか見せて、数人引きずり下ろしたんです。」

 

自分の趣味が底辺に属している自覚はあったらしい。

 

「そしたら、ずるずる嵌まって、印刷技術も作画技術も確立しちゃいますし、すごいんですよ彼ら。紙の上では天狗達に下克上しまくりですよ。彼らに言わせれば、天狗は皆、おそいうけ?なんですって。よく分かりませんけど。」

「・・・・・そうか。」

 

 霖之助は頭が良いので、ここから先は踏み込んではならない領域だと理解した。

 押し黙って、視線をさ迷わせて、新たな話題を探す。ふと、妖花の尻に文字通り敷かれて座布団代わりにされている、憐れな魔導書が目についた。妖花に言わせれば、絶妙な高さをしているらしかった。

 

「人の家に性的な(こういう)本置くの、止めてくれるかな。その本に食べさせればいいだろう?」

「無理です。これ大半が借り物なので。」

「・・・誰がこんなに貸してくれるんだ。」

「仲間内で回しているんですよ。」

 

 くそっ、この話題も地雷だったか。

 心の中で地団駄を踏んだ、その時、救世主あらわる。

 

 ノックの音がした。玄関からだ。これ幸いと駆け出して、霖之助が向かうのは勿論玄関である。それ以外に無い。

 玄関引き戸の前で一呼吸おいて、それから取っ手に手をかけた。勢いのまま開けてしまうのは不味い。相手は大恩のある、礼儀を払うべき相手だ。

 曇りガラスを透過する影の形で、来訪者が誰であるか見当はついていた。案の定、見知った顔が、開かれた戸の向こうにはあった。

 

 見た目年齢二十才そこそこの女性だった。西洋の出にしては短躯で、何処か幼げな雰囲気の残る顔立ちをしている。その身をゆったりと包むローブは、安心感のあるオレンジ色に染められていて、遠目に見るとカボチャのように写るだろう。

 彼女は、ヘルガ・ハッフルパフは、人好きのする笑顔を浮かべて言った。

 

「霖之助ちゃんこんにちは。ごめんなさいね?お昼時に押し掛けてしまって。私ったら、またご飯を作りすぎてしまったのよ。ほら、これ。ビーフシチューなのだけど、もしお昼がまだだったのなら、食べるの手伝ってくださらない?それとも、もう済ましてしまったかしら?」

 

 ヘルガが傍らに浮かせた鍋の蓋を取ると、赤ワインとトマトの優しい香りが霖之助の鼻腔を占領した。隣にはまだ湯気のたっているパンが入ったバスケットも浮いている。

 

「こんにちはヘルガさん。どうぞ、上がってください。美味しそうなシチューですね。そうだ、妖花が今来ているんですけど、良いですか?」

「まあ!妖花ちゃんが?勿論良いわよ。会うのは久しぶりね。あの子はたくさん食べるから、今日にはこのお鍋を空に出来るかもしれないわ。うふふ、もっと作ってきても良かったかしら。」

「きっと喜びますよ。」

「うふふ、そうかしら?そうだといいのだけど、あの子、舌が肥えてるじゃない?だから、気が気じゃないのよ。その内がっかりされるようになるんじゃないか、って。きっとご両親に良いものを食べさせてもらっているのね。」

「彼女の主人さんが味に厳しい人だから、というのもあるかもしれませんね。」

「幽々子ちゃんね!あの子とも長い間会っていないわ。元気にやっているかしら。そうだわ、今度何かお裾分けにでも伺いましょう。」

 

 そんなこんな話しているうちに、居間に着いた。

 居間は見違えて綺麗になっていて、エロ本のエの字も無い。それどころか、僅かに部屋の隅に積もっていたはずの埃すら、綺麗に取り去られていた。

 流石、と言うべきだろうか。能力を使ってモモイロのアレコレを隠蔽したらしい。

 静かにお茶を飲んでいた(フリをしている)妖花が、さも今気が付きました、といった風にしてヘルガに話し掛けた。

 

「あっ!ヘルガおばさん、いらしてたんですね!ご無沙汰してました!お会いできてとっても嬉しいです!」

「あらあら、妖花ちゃんお久しぶりね。私も嬉しいわ。それ、ぎゅー!」

「えへへ、ぎゅー。」

 

 この空間に、エロ本を読みながら鼻息を荒くしていた少女などいない。居るのは満面の笑みで大好きなおばさんとハグを交わす妖花のみである。

 霖之助から見れば、媚びっ媚び甚だしい妖花だった。

 

 見慣れた光景ではあるが、(見た目は)二十代の女性がおばさん呼ばわりされるのに、違和感をぬぐいきれない霖之助である。

 これは長くなりそうだ、と予想して、再開の喜びを分かち合う二人を尻目に、食器を取りに向かったのだった。

 

 

 

◯◯◯◯◯また三人称→

 

 

 

 さて、パンもシチューも見事に平らげた三人である。

 早々に戦線を離脱した霖之助は畳に倒れ伏した。反面妖花は白玉楼で昼食を済ませた上に、シチュー六杯とパンも七つを胃に納めて尚、へっちゃらな様子で霖之助の腹に腰掛けている。尻を動かす度に霖之助が苦しげに呻くのは、愉快だった。

 この家のちゃぶ台で本を読むには赤本が、ものを食べるなら霖之助の腹が、最も適度な高さをしていた。

 

 ヘルガはそんな二人の様子を微笑ましげに見守っていた。

 

 違うんだ、ヘルガおばさん。これは仲良し二人組の微笑ましいじゃれ合いなんかじゃないんだ。霖之助の顔がゲロまみれになるかどうかの瀬戸際なんだ。だから、どうか助けてあげてください。

 

 そんな誰かの声が聞こえたのかは定かでないが、ヘルガは妖花を抱き上げた。霖之助は救われたのだ。

 ヘルガが首をかしげると、向き合う妖花も鏡写しのように首をかしげる。右へ左へ。上を一緒に向いてから、もう一度目を合わせ、またしても首をかしげてからヘルガは言った。

 

「もしかして、妖花ちゃん重い?」

「!!??」

 

 この言葉は妖花の玉鋼が如き強靭なハートを穿ち貫くに十分な殺傷力を秘めていた。秘めていたと言うか、明らかに致命傷だった。

 半霊がヘルガの手を振り払い、妖花を部屋の隅へと誘導する。三角座りでネガティブなオーラを振り撒く妖花の肩を叩いて、慰め───ているのか分からないが、何処か心配げであるように見えないでもないような気がしないでもない。

 

 立て、立つんだ妖花。

 

 さあ、八百万の神々も見よ。妖花は立ち上がった。

 壁に身を引きずるようにしながらも、立ち上がったのだ。

 彼女は未だ真っ白に燃え尽きてはいなかった。黒々として火の燻る炭の状態で踏み止まっていたのである。

 

 一方でヘルガも己の言動を悔いていて、内心では慌ててしまっていた。無意識にタップダンスを踊ってしまうくらいの慌てようである。勿論心の中で。

 男子諸君は心するが良い。『重い』『太い』は女性にとって禁句である。無論、千年前に忘れてきてしまったきらいはあるが、生物学上(宗教学上?)女であるヘルガもその事は心得ていた。

 筈だった。

 人でなくなってはや千年、少しふとましかった頃の肖像画がホグワーツの校長室に飾られていることが、かなり大きな気がかりだったヘルガである。そういった言葉には人一倍敏感な質であった。

 それでも学術的興味には勝てなかったのである。

 学術的興味。

 そう、学術的興味だ。

 だって、あり得ないだろう?

 

 せいぜい130㎝そこらの幼女の体重が、

 

 100㎏を軽く越えているだなんて。

 

 




 妖花ちゃんデブ疑惑浮上。(疑惑で終わります。ご安心あれ。)


今更だけど、キャラクター補足


魂魄妖花
 主人公。原作には影も登場しないオリキャラ。一応妖夢の伯母ポジ。
 ノット転生者。
 現幼女(成長するとは言っていない)。
 銀髪金目。まな板。
 早う魔法学べやワレ。

森近霖之助
 東方キャラ。香霖堂の主人公。
 銀髪眼鏡。
 原作では道具屋やってるけど、今は無職。

魂魄妖忌
 東方に影だけ登場する九割オリキャラ。妖夢の祖父。
 銀髪金目。
 所謂若妖忌。
 妖花の下品なところは大体こいつの遺伝。

ヘルガ・ハッフルパフ
 ハリポタ世界の偉人。半分オリキャラ。
 ホグワーツの創設者の一人。料理関係の魔法が得意だったらしい。
 薬膳極めたら人じゃなくなってた的な設定。

マーリン
 お前クビな。(リメイク前には居た人)


2016/12/23 誤字修正しました。報告してくださったかたはありがとうございました。
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