やはり、『よんでますよ、アザゼルさん』を読み直したのが間違いだったのか・・・・げに恐ろしきは、変態仮面か・・・・。
知らない方はすみません。スルーどうぞ。
PS
これまでの話の日記部分冒頭に、ページ数を追加しました。時間経過がこれまで分かりずらかったので。
一ページで一日とお考えください。
部屋の角でがさごそ。がさごそ。
妖花が己の懐をあさって、取り出したるは、
見るからに強大な神気と妖気を纏った太刀。
パッド。
分厚い日記帳。
はたき。箒。塵取り。雑巾。
毛筆。鉛筆。万年筆。インク瓶。固形墨。鉛筆削り。
十手。手裏剣。札。銅鏡。スリングショット。バール。種子島。キス・オブ・デス。勾玉。金槌。ナンブ。薙刀。五寸釘。
その他色々、エトセトラ。
妖花の懐が空っぽになる頃には、居間の一角におっかない山岳が形成されていた。
ヘルガは脱帽した。これだけの道具を懐に隠し持っていた妖花にも、それを割りと簡単に持ち上げていた自分自身にも。
さあ驚け。妖花は重くなかったのだ。持ち物が重かっただけなのだ。
ヘルガは恐る恐る妖花に声をかけた。妖花はプルプルと震えながら此方を睨み付けている。その姿は雨に濡れた子犬のようにも、決死の覚悟を決めた狼のようにも見えた。
「えーと・・・妖花ちゃん怒ってる?怒ってるわよね。ごめんなさい妖花ちゃん。千才にもなって種族の本能に流されてしまうだなんて、本当に情けないわ。私、お詫びに何でもしちゃうわ。だから、許してくれるかしら・・・?」
「(エッイマナンデモッテ)・・・ごほんっ。良いでしょう。他ならぬヘルガおばさんの申し出です。その謝罪を受け入れます。」
「っ、ありがとう妖花ちゃん!」
感涙して妖花を抱き締めるヘルガ。
ヘルガにとって妖花は、特に気をかけている少女であった。ヘルガを『おばさん』と呼ぶ者は少ない。今も生きているのは妖花だけで、他の者たち───ウェールズに置いてきた親族たちは、とうに亡くなっているだろう。だから、彼ら彼女らに向けていた愛が、今は妖花に向いているのかもしれない。
「ところで、霖之助は?いつの間にか居なくなってますけど、厠でしょうか。」
「あら、本当ね。何処に行ったの・・・・か、しら?」
家政婦は見───失礼。ヘルガは見た。積み上がった道具類のお山の麓に、霖之助の足を。
石のように固まってしまったヘルガの視線を追って、妖花も親友の居所を突き止めた。これを掘り起こすのは大変そうだと思った。なので、
「ヘルガおばさん。ヘルガおばさん。ちょっと下ろしてください。・・・・・ありがとうございます。」
手足を自由に動かせるようになった妖花は、懐を大きく開けて(さらしは巻いてある)、言った。
「皆さん、戻ってください。」
すると、どうだろう。積み上がった品の数々が妖花の懐収納されていくではないか。道具達は、さながら流れる川のように緩やかな動きで宙に浮遊し、主人の元に帰ったのである。
後には青い顔をする霖之助だけが残された。
「は、腹が圧迫されて────・・・・っっ、吐き、そう。」
「あらまあ!大変ね!」
ヘルガの浮遊呪文を受けて、厠に連れていかれる霖之助を、妖花は見送った。
◯◯◯◯引き続き三人称視点→
家主が万年床に伏せたため、二人は霖之助の家を出た。まだ日も高いので、なんとなしに二人はそこらを散歩して巡っている。
ヘルガが言った。
「ところで、妖花ちゃん。」
「なんでしょう、ヘルガおばさん。」
「妖花ちゃんが着ているその服、魔法の品なのかしら?たくさん物が入るようだったけれど。」
「いえ?なんの変鉄もない、只の筒袖ですよ?」
「あら?じゃあ、さっきのあれは・・・・」
「ズバリ!私の能力の効果です!」
「『綺麗に整頓する程度の能力』・・・だったかしら?」
「その通り!清掃活動は勿論の事、腸内フローラの正常化、遺伝子配列の改編、福笑いから整形手術まで何でもござれのステキ能力!一家に一人、妖花ちゃん!幽々子様の胃腸の平和は───私が!守る!!」
妖花はこう言っているが、この能力の本質は『並び替えること』である。観測さえできれば、原子配列だろうが、電子配列だろうが、改変可能だろう。
それはまぁ、ごみや家具の位置を『並び替え』れば、掃除にも使えるだろうが、正直そんなものは無駄も無駄、箒を持った方がコストパフォーマンスの面から考えて適当である。
能力の本質を突くより、掃除婦としての矜持を全面に押し出すことを優先したネーミングと言って良いだろう。
「その能力をどう使ったら、あんなことができるの?」
「さあ?なんかやったらできました。」
解説せねばなるまい。
といっても、難しい話ではない。無理やり詰め込んだだけだ。
皆さんも経験有るのではないだろうか?
意中の彼あるいは彼女が突然部屋に訪れようとしているシチュエーションで、少しでも部屋を綺麗に見せるために、部屋に有る物を片っ端から押し入れに詰め込んだことが。何でも間でも圧縮圧縮、あとで取り出したら幾つかひしゃげて使い物にならなくなったことが。少なくとも漫画では稀に良く見る場面ではある。
妖花はそれをとてつもない力でやっているに過ぎない。
なんか、色々『並び替え』て、空間とか物質とかを極限まで圧縮。取り出すときはまた『並び替え』て、圧縮していたあれこれを拡散してやれば、はい、元通り。
要は、『力ずくの四次元ポケット』と理解していただきたい。
「そ、そうなの?分からないなら、仕方ないわね・・・・。」
改めて幻想郷の理不尽さを痛感したヘルガであった。さてはこの女、かつて自分が魔法の森の生態系を完膚なきまでに破壊し尽くしたのを忘れているらしい。
妖花もヘルガもどっこいどっこいである。
「それよりも、何でも言うこと聞くって、さっき言ってくれたじゃないですか?それなら、ヘルガおばさんに相談したいことがあるのですけど、良いですか?」
「あら、嬉しいわ。お詫びの事なんて抜きにして、何時でも相談してくれて良いのよ。」
「ありがとうございます。それでですね、相談と言うのはですね・・・これは、ヘルガおばさんを経験豊富な女性と見込んでお尋ねするのです。そう、身分違いの恋とでも言いましょうか、私にはお慕い申し上げている方が居まして────」
この時点で、何だか嫌な予感がしてきたヘルガ。
「お仕え申し上げているご主人様に、配偶者的な意味でも主人になっていただくための良い方策などございましたら、伝授していただきたいのです。」
予感が確信に変わった瞬間であった。
「(えっ、ご主人様って幽々子ちゃんの事よね!?でも、妖花ちゃんは女の子で、幽々子ちゃんも女の子で・・・・ええ!?私てっきり、妖花ちゃんは霖之助ちゃんに恋してるものだと思っていたわ。)」
見識有っても、所詮は
混乱の最中、それでも、ホグワーツ創始者の一人として恥ずかしくない優秀な頭脳をフル回転させ、ヘルガは思案した。妖花の想いを肯定すべきなのか。やはり否と判断して、しかしどうすれば、妖花を正しい道に戻せるのか。
やはり情報が不足している。然るに、ヘルガは状況確認から始めることにした。
「妖花ちゃんは、その、えーと、その気持ちを幽々子ちゃんにもう伝えてしまっているのかしら?」
「そんな、とんでもないことです!臣下が主に恋慕するなどと言うことは、許されませんから。」
顔を赤くしながら遠くを見る妖花。暑くなった頬を手で覆って冷ます。半人半霊は低めの体温をしているからして、心地好かった。
普段の行いを見ていると信じられないが、この魂魄妖花、幽々子の前ではクソ真面目である。粛々と付き従い、主人の手足となり、命あったときには「御意」とか言っちゃうのである。ほんと、普段の行いを見ていると信じられないが。
幽々子の配下で一番の忠誠心を誇っていることは間違いがない。
故に、妖花は主人と結ばれることを願うことはしても、それを実行に移すことはしなかった。それは妖花の忠誠が本物だからだ。主人がそれを望まないと、知っているからだ。有ってはならぬ事と、弁えているからだ。
まあ、背徳感が妖花の気持ちを更に燃え上がらせた一因であることは、否めないが。
因みに、妖花は秘しているつもりであろうが、妖花の日記を盗み見た母によって既に淡い恋心が幽々子の知る所となっている事は、白玉楼では公然の秘密である。知らぬは本人ばかり。西行妖ですら知っている。
方やヘルガは一先ず安心していた。他の誰もが知らぬことなら、まだ修正は可能。バレない内に、妖花ちゃんを正道へとそれとなく誘導し、正常な恋に目覚めさせるのだ!具体的には霖之助ちゃんとくっつけて、子供の顔を拝ませてもらおう。
そもそもの前提が間違っているのだが、やはり知らぬは当人達ばかりであった。
ヘルガは妖花の想いを阻止しようとしている事などおくびにも出さず、いかにも親身に考えています、といった雰囲気を纏うことを勤めながら、訪ねた。
「貴方の気持ちは本物なのね?」
何時になく真剣なヘルガの様子に、妖花も真剣に肯首して返した。
「はい。」
「・・・・そう。わかったわ。妖花ちゃん、貴女、私の弟子になりなさい。私が貴女を社交界に出しても恥ずかしくない、立派な淑女(異性愛者)に鍛え上げてあげるわ!」
妖花の片手を取るとヘルガは、突き出した人差し指を上の方にビシッ、と向ける。
彼女が指差すは空か?否、未来である!
師弟二人で、未来に向かって突き進むのだ!
「はいっ、何処までも着いていきます!ししょー!!」
「ええ!着いて来るのよ弟子1403号!」
師弟の関係となった二人の未来がどうなるのか────それは神すら知らない。作者も知らない。
それでも二人は進んでいく。
方や、意中の彼女の左に立つため。
方や、最愛の弟子を異性愛に目覚めさせるため。
二人の旅路や如何に?!乞うご期待!
因みに、ヘルガの弟子1号から1366号まではホグワーツの生徒。1401号はアリス・マーガトロイドである。
◯◯◯◯日記→
今日はなんと良き日でしょうか!
藍様に続き、ヘルガおばさんという素晴らしい人格者を
え?父様は師匠じゃないのかって?
ああ、そんなのも居ましたね。そういえば。
私はアレを師とは認めません。断じて!認めません!!
何が魂魄流剣術ですか。100%貴方の我流じゃないですか。
父様に師事するくらいなら、人里の道場に通うなりした方が有意義です。いえ、勿論、人間に教わったりはしませんが。
そんなことよりヘルガおばさんの事です。
私は常々、師事する方を師匠とお呼びする事に憧れていたのですが、叶いませんでした。呼び方はこれからもヘルガおばさんで固定です。
藍様と言い、ヘルガおばさんと言い、なぜ師匠とお呼びすることを許してくださらないのでしょうか?やはり、まだ弟子として至らぬところがあるのでしょうか?
私が弟子入りした折、藍様は私に自身の事を『藍たま』と愛を込めて呼ぶように、お命じになりました。
勿論私はそのように愛を込めて藍様を呼んでいましたが、それから十五年ほど経ち、私も四十になりますと、流石に『たま』と言うのは恥ずかしくなってきてしまいました。無論、今なら、その羞恥も師に与えられた、かけがえの無い感情として理解できるのですが、如何せんあの頃のわたしは未熟でしたから、つい、藍様に呼び方を別なものに変えてほしいと願ってしまったのです。
妖花一生の不覚です。
あのときの藍様の悲しみようと言ったら、もう、見ていて私の心が抉られるような心地でした。何とか、藍様の気が済むまで、何でも言うことを聞く事を条件に出した事で、落ち着いて頂けたのでした。
今でも昨日の事のように覚えています。
藍様と幽々子様が私を取り合ったりして、私を中心にして三人で寝たり、三人一緒にお風呂に入ったり、前からおっぱいだったり、後ろからおっぱいだったり・・・・・
って、そうじゃありません。書かねばならないのは、ヘルガおばさんの事でした。
一先ず、女を磨くための訓練として、ヘルガおばさんに魔法を習うことになりました。魔法族の魔法です。
そんなの、女を磨く事になんの関係ないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。何でも、世には身長を伸ばしたり、胸を増やしたりできるといった、神の奇跡のような効能を持った薬が有るそうです。
つまり、魔法を学ぶ過程で、より成熟した精神性を手に入れられるばかりか、目的の薬を作成する事が叶うほどに魔法に習熟すれば、その薬で望むがままの美貌も手に入れられるという訳です。更に、習った魔法は普段の仕事や、父様を打倒する助けになるやもしれません。
正に一石二鳥。どころか、ひとつの投石で朱鷺の群れを全滅させるがごとき、素晴らしいプランなのです。
ああ、こんな素晴らしい師匠に師事できて、妖花は
◯◯◯◯◯◯
数年後、この日記を見たヘルガが、とてつもない罪悪感に襲われたとか、襲われなかったとか。
良いお年を!