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朝です。
普段なら、一日の終わりにこの日記を付けているのですが、今日は興奮のあまり早くに起きてしまったので、こうして手慰みに筆を執った次第であります。
私は今興奮しています。
幽々子様の背中を流させていただいている時くらい、興奮しています。
日頃は冷たい幽々子様の体温を、私の手で暖めていく幸せ・・・・事前に幽々子様がお酒なんてお召しになっていたりしたら、酔いでふらついた拍子に私にもたれ掛かっちゃったりなんかして・・・・・・ぐふふ。
いや、そうではなく。
・・・・どうにも今朝の私はおかしいですね。
眠気と多幸感で朦朧としています。むむむむ。
ああ・・・・・何だか、文字がミミズに見えてきました。
あっ違う。これミミズだ。ミミズがのたくったみたいな文字だ。えーこれ私が書いたの?うそー。
駄目です。
眠い。
寝ます。
いえ、その前に。
興奮しているわ
はっ!今寝てました。
では改めて。
私がここまで興奮している訳を、説明せねばなりますまい。
・・・・・眠気に押されて、興奮が冷めてきてしまいました。
まあ、いいや。テンション上げて行きましょう。
分かりやすく一言で。
今日が私の
じゃあ寝ます。おやす
◯◯◯◯三人称視点→
西行寺幽々子は魂魄妖花の
冷たい身体に温かな心を備えた、優しい主である。
奉公には御恩で応える、誠実な主である。
失態には罰する、時に厳しい主である。
そして、
現実はどうであれ、幽々子は以上のような自負があった。
少なくとも、現に幽々子が優しい主であることは間違いがない。妖花を可愛がっているのも確かである。
程度の問題だ。
どちらも頭に『過度』と付く。
幽々子は『過度』に優しい主で、『過度』に妖花を可愛がっていた。
あるいはもう少し厳しく接していれば、妖花が禁断の愛に目覚めないまま、順当に男性と結ばれる未来もあったかもしれない。いや、無かったかもしれない。妖花の才能を考えると、多分無かったね。うん。
とにかくそんな幽々子だから、
準備は万端。
今日に備えて精を着けるため、昨日の晩は一層暴食に励んで厨房係の夫婦を涙させた。
早く寝た。
気合いを入れるため、この前友人の隙間妖怪から貰った『ショウブシタギー』なるものを着用している。
最早幽々子に一分の隙もなし。これで、今日一日、いつも以上に妖花を甘やかせると云うわけだ。
未だ日の出ない時間に目覚めた幽々子は、静かに寝室を後にした。
未だ半人半霊達が目覚めている様子はない。動く者は幽々子を除いて誰も居ない。幽々子は音無く浮遊して廊下を行くので、今朝の冥界は真の静寂に包まれていた。
目指すのは妖花の部屋だ。
というのも、昨日の食卓で妖花の発した一言を、幽々子が覚えていたからである。
幽々子が
「朝、目が覚めて、先ず最初に見るものが幽々子様のお顔だったら、素敵ですね。」
意訳すると、
「幽々子様と朝チュンしたい。」
である。
しかし、俗世の汚れがすっかり染み着いた掃除婦と違い、お姫様は純粋だった。言葉の意味をそのまま捉え、
「今日は私が妖花を起こしてあげるのよ!」
と、意気込んだが故の今朝の早起きであった。
彼女の純粋さを、妖花にも少しは見習っていただきたい。
いよいよ妖花の部屋が近づいてきた時分になって、幽々子は異変に気がついた。どうしたことだろう。障子から光が漏れているではないか。
すわ遅かったか。
幽々子は障子に一つ穴を開けて、中を覗いてみることにした。なに、後でこれを直すのは妖忌だ。遠慮することはない。えいっ、ぶすり。
して、幽々子が見る先には
どうやら眠っているようだ。
察するに、妖花は日記を着けるのを日頃の習慣としているようだから、その途中で寝入ってしまったのだろう。
一先ず愁いはなくなったようで、安堵のため息を一つ。
最小の動きで音もなく障子を潜った幽々子を出迎えたのは、妖花の半分、死んでる方────半霊だった。温かな光を照射して部屋中を照らしている。
産まれ持った身体だからか、四人居る半人半霊の中で妖花だけは肉体のように霊体も操ることが出来た。こうして半霊を発光させられるのも、妖花だけだ。
「ご苦労様。」
幽々子が労いにキスを一つ落としてやると、半霊は光を赤く変えて照れた事を表現するという、器用な真似をして見せた。
もう一撫でしてやってから、半人の様子を窺う。
やはり、起きる様子はない。誕生日が待ち遠しくて、中々寝入るに寝入れなかった、といったところだろうか。相当眠りは深いようだ。
そっと顔を覗き込むと、可愛らしい寝顔と、柔らかなほっぺが顔と日記に挟まれて今にも押し出されようとしているのが見えた。試しに日記と頬の間に指を差し込んでみると、それはそれは柔らかくて、心地がよかった。
これでも妖花が起きないところを見ると、いよいよさっき立てた仮説が真実味を帯びてきたのではないだろうか。
名残惜しくも指を引き抜くと、黒い粉がパラパラと落ちた。
これは、墨か?
幽々子は自らを背もたれに見立てて妖花の上体を起こさせた。頭は優しく胸で受け止めた。案の定、妖花の頬にはべっとり墨が付いていた。
妖花が起きたら、先ずお風呂に入れてあげなければ。
日記は読めたものではなかった。眠気を堪えて書いていたと見えて、字はまるでミミズがのたくったよう。そこから更に頬で刷り消したものだから、最早情報伝達の役割を放棄した謎の記号の集合体と化していた。
妖花にとっては幸いな偶然と言えよう。
出来るだけ衝撃を与えないよう細心の注意を払いながら、眠れる妖花を布団の中へと運び、幽々子もその隣で横になった。
そうだ、始めからこうしておけば良かったのだ。態々早起きしてこの部屋に足を運ばなくとも、一緒の布団で寝ていれば、それだけで良かったのだ。幽々子は今更ながらに気がついた。
それでも結果は同じである。妖花のかわいい寝顔と頬の豊かな感触を楽しめただけ、得をしたものだと思っておこう。
後は寝起きの妖花がどんな風に喜んでくれるのか、楽しみに待てばそれだけで良い。だが、どうにも早く来すぎたきらいがある。妖花が目覚めるまであと何時間掛かることか、分かったものではない。このかわいい抱き枕を抱いておいて、眠らないのも何だかもったいなく思われる。
ならば、少しの間眠ってしまおう。眠ってしまって、妖花が起きる前に目覚めて、おはようと言ってあげよう。
幽々子が決断する頃には、すでに意識は朦朧としてきていた。
主人の意を汲んで、半霊も光を放つのをやめたので、部屋は眠るに十分な暗さへと変わった。
眠りに落ち、
そして、
幽々子が目覚めると、幽々子の隣は既にもぬけの殻だった。
ドンマイ。
◯◯◯日記→
朝です。
普段なら、一日の終わりにこの・・・・・・これさっきも書きましたね。
では早速本題から。
目が覚めて最初に見たものが、幽々子様のおっぱいでした。
おっぱいでした!!
私は興奮しています。
それだけです。
それだけが伝えたかったのです。
この興奮を筆にのせて発散したかったのです。さもないと、興奮に乗せられて幽々子様の谷間に指を差し込むという不敬を働いてしまいそうなのです。
どうしましょう。全然興奮が収まりません。鎌首をもたげた「
仕方がない。この興奮は掃除にぶつけましょう。たまには能力に頼るのではなく、箒を持つのも乙なものです。
それではいざ、幽々子様を起こさないよう、そーとこの部屋を発つのです。
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