魔法の杖 made of 西行妖   作:縁々

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 いよいよ『大陸移動並みの更新速度』タグが本領を発揮してまいりました今日この頃、読者の皆様におかれましてはいかがお過ごしでいらっしゃりますでしょうか。お変わり無いようでしたら、幸いです。
 さて、投稿が遅れた言い訳も兼ねて、ちょっとしたアクシデントがあったことを報告させていただきます。
 
 
 【悲報】とあるアプリに保存していた設定書き溜めその他が全滅
 
 ただでもピンボケしていた青写真ですが、いよいよ何が何だか分からなくなってきました。
 どなたか、完結までのエターナルポースをお持ちでないですか?五千円までなら出しますよ?


誕生絶命日(朝)

 あの柔らかい目覚めから三十分後。門前で妖花が箒を振っていると、向こうの方から歩いてくる人影があった。妖花はその人影に見覚えがあった。

 人影は沢山の荷物を両腕に抱いているが、苦もなくしっかりとした足取りでこちらへとやって来る。やがて朝霧から抜けた彼の顔は、妖花にとって馴染み深いものだった。

 優男風だが目の奥には一本筋の通った光がある。 紛うことなき妖忌の顔だ。

 妖花の手前まで妖忌が来ると、言った。

 

「誕生日おめでとう妖花。朝早くから精が出るのう。」

「おはようございます父様。妻帯者の身でありながら、朝帰りですか?」

「勘ぐったことを言わんでくれ。幽々子様より仰せつかったお役目を片付けがてら、妖花の友人の中で冥界に入れない方々から祝いの品を預かってきたところじゃ。」

 

 妖忌の口調が一話時と違うのは仕様である。決してテコ入れではないので、勘違いのないようにされたい。日頃の彼は老練した口調を心掛けているのである。

 割りと頻繁にその化けの皮は剥がれるが、そこはご愛嬌。

 

 妖忌が抱える荷物は、実に様々だ。腕に抱いてあるのが大小様々な箱を紐で縛って一塊にしたもの。腕にはいくつかの袋を下げ、背中には亀の甲羅のように大鍋を背負っている。半霊の頭に当たる部分には、妖忌が着けるには小さい武者兜が引っ架けてあり、尾には巾着が吊ってある。

 妖忌は腕に抱いたプレゼントの山を妖花に渡す。

 

「ほれ、これはお前の友人から。」

「重っ!」

 

 これでも妖花は人望があるらしく、箱の数は三十にもなった。お陰で前が見えない。さらに不都合なことに、荷物には箱の数と友情に釣り合うだけの重さがあり、体重の軽い妖花ではバランスを保つことが難しい。

 妖術なり魔法なりで体重を増やすこともできるが、女子としては取りたくない手だ。

 やむなく、半霊を巻き付かせるようにして荷物を持たせた。

 漸く開けた視界は、次の瞬間、頭に被せられた何かによって塞がれる。

 先程まで妖忌の半霊に乗っかっていた兜が頭に乗っているらしい。

 

「そして、こっちはわしからじゃ。兜と、羊羮と、櫛と、椿油。あと、旨そうな八ツ目鰻の蒲焼きが売っておったから、ついでに何本か包んで貰ってきた。あとで幽々子様と食べなさい。」

 

 妖忌が半霊に持たせていたものは全て妖花へのプレゼントだったらしく、折角空いた妖花の手が次々埋まっていく。

 最後には妖忌からのプレゼントだけでちょっとした量になった。

 

「今年はえらく一杯くれるんですね。いつもは一つなのに。」

「なに、娘の新たなる門出の祝いじゃ。多少甘やかしたとて、バチはあたらんじゃろう。」

 

 妖花の頭をひとつ撫でると、幽々子に報告する事が有ると言って、妖忌は門を潜って玄関の向こうに消えていった。

 妖花は『新たなる門出』という妖忌の言葉が気になったが、新しい一年ということが言いたかったのだろうと解釈して、納得した。

 

 

 

◯◯◯◯サンニンショウシテン→

 

 

 

 荷物を全て半霊に持たせ、引き続き妖花が掃除をしていると、また向こうからやって来る人影があった。人影は大鎌を担いでいるようなので、きっとあれは死神に違いない。

 案の定、妖花に陽気な挨拶をしてきたのは、赤い髪を左右で纏めた死神の女だった。

 

「やっほー妖花。誕生日オメデト。元気してた?」

「やっほー小町さん。私はいつでも半死半生ですよ。」

 

 小野塚小町はあの世の裁判所に人魂を送る役割を担う死神である。あの世の仕事に従事する同士として、妖花とはそこそこ親しい付き合いをしている。

 彼女には悪癖があって、簡潔に言うと怠け癖である。欲望の囁くがままに仕事をサボっては、上司なり同僚なりに叱られる姿をよく見かける。今回も仕事をサボってきたのだろうと妖花は当たりをつけた。

 

「小町さんは元気そうですね。脱走が上手くいきでもしたんですか?」

「脱走だなんて、人聞き悪いなぁ。友人の誕生日を祝うために泣く泣く労働を投げ捨てた、このメロスのように暖かな心がわかんないかねー?」

「映姫様はわかってくれないと思いますよ。」

「あ、やっぱり妖花もそう思う?四季様も上司としては頼れる方なんだけど、付き合い悪いんだよなぁ。飲み会とか全然来ないし。」

「それとこれとは別問題だと思いますが・・・まあ、あの方が酒を呑んでる絵面だけを見れば、丸っきり違法ですからね。閻魔様としては歓迎できないでしょう。」

「他人事みたいに言うけど、妖花も見たとこ四季様とどっこいどっこいの年格好だからね。」

「失礼な!私も今日で五十七歳。立派なレディーとして着々と研鑽を重ねています。」

「いや、四季様はその何倍も生きてるだろ・・・・。っと、歳の話で思い出した。はいこれプレゼント。誕生日おめっとさん。」

 

 小町が妖花に差し出したのは、大人の背丈でもすっぽり覆えそうに大きな布だった。ただし、その布はお世辞にも綺麗とは言い難く、控えめに言ってぼろ切れ。言葉を選ばす言うなら只のゴミのように見えた。

 人の誕生日にごみを押し付けようと言うのか。

 

「無縁塚で吸魂鬼(ディメンター)相手に追い剥ぎでもやらかしてきたんですか?」

 

 妖花にこう言わせる程度には、みすぼらしい布だった。

 いや、今日日(きょうび)吸魂鬼(ディメンター)の方が良いものを着ているかもしれない。

 

「見た目は重要じゃないよ。使えば透明になるんだから。」

 

 小町はぼろを広げて半霊に被せる。人の半身に汚物を投げつけるのは如何なものかと妖花は思った。悪寒がするレベルの汚さだ。

 次の瞬間、妖花は悪寒とは違う理由で身を震わせた。そうさせたのは驚きだった。

 ぼろ布に覆い隠された半霊が全く透明になっていたのである。

 

 ぼろ布は透明マントだったのだ。

 

「すごい!河童の光学迷彩みたいですね!」

「その例えは嬉しくないなぁ。夢がないというか、どうにもね。魔法みたい!・・・とか言うもんじゃないの?女の子なら。」

「外で言う魔法は幻想郷にとっての科学みたいなものでしょう。」

「それもそうか。」

「というか、透明になれる妖怪って多いですよ。私も妖術で出来ますし。」

「そりゃそうだ!あたいも出来たわ、そう言えば!あっはっはっはっはっ!」

 

 何が面白いのか、口を大きく開けて笑う小町。日頃暇していると、笑いの沸点が低くなるのだろうか。

 

「ところで、こんな、明らかに西洋の古代魔法道具チックなマントを何処で手に入れてきたんですか?」

「あん?あーまぁ、昔に仕事の関係でちょっとね。何百年前かに備品として配られたんだけど、これが便利でさぁ、ついパクってきちゃた。でも、もう使わないから妖花にあげるよ。」

「どう考えても横領品の横流しですね。本当にありがとうございました。」

 

 かといって、貰えるものを貰わない妖花ではない。快く貰い受けると、未だ透明の半霊に人差し指を突きつけた。ズビッ、と効果音のしそうな調子だった。

 おっほん、とわざとらしく咳払いをして、とある呪文を唱えた。

 

レパロ(直れ)!」

 

 一瞬、妖花の人差し指から蛍のような光が舞うと、そこにあるらしき透明のマントに当たって消えた。

 

 使った!妖花が魔法を使った!ハリーポッターが原作の筈の作品の主人公が、八話目にしてやっと魔法を使った!

 遅すぎると言ってやりたい。作品情報欄に『原作詐欺』タグを書き加えざるを得なかった、作者の気持ちにもなっていただきたいものだ。

 

 それから妖花は自慢げに胸を張った。

 

「これが私の魔法修練の成果です!えっへん!」

 

 彼女に犬の尻尾か、もしくはあほ毛の一本でも生えていれば、元気に振られていただろう。

 察するに今しがた唱えた修理魔法について褒めて欲しいようだ。が、マントも半霊も相変わらず透明なので、効果のほどの一切は窺い知れない。

 小町は残念な子を見る目をして、

 

「ごめん妖花。透明だから何もわからない。」

「あっ。」

 

 慌てて妖花は半霊から透明マントをひっぺがす。すると、透明マントからまるで豪雪のように埃が舞った。

 マントは見違えるように綺麗になっていたが、それは破損が回復していたと言う意味であり、汚れを修理魔法で落とすことはできなかったらしい。

 

 至近距離から催涙ガスが如き刺激物を顔面に浴びた妖花は、思わず目を押さえてその場にうずくまり、苦しげに咳き込んだ。

 

「ごっっこほっがっほ!かふッや、ばあ゛いぃっ。え゛んなとこあ゛いりまじだぁ。」

「おーよしよし。傷は浅いぞー。」

 

 いや、かなり深いと思う。

 小町が背中を摩ってやるも、症状に変化はない。咳がマシンガン顔負けの連射を披露する傍らで、妖花の目からはナイアガラが流れている。この涙は生理的なものだと信じたい。

 

 

 

 十分後。

 

 妖花復活せり。

 テイクつー。

 

「これが私の魔法修練の成果です!えっへん!」

 

 先程と全く同じポーズと同じ語調で同じ台詞を言う妖花を、取り合えずといった調子で小町が誉める。

 

「わーすごーい。」

「そうでしょう。そうでしょうとも!頭撫でてくれても良いんですよ。」

 

 己が成果を見せびらかすように、くるくる妖花が回るものだから、またしても豪雪のように埃が待って催涙スプレーがごとき刺激物以下略。

 

 学べ、妖花よ。

 

 

 

◯◯◯さんにんしょー→

 

 

 

 小町は人の家で怠惰を極めるつもりらしい。彼女が白玉楼に入っていったのを見ると、また妖花は掃除を続けた。するとどうだろう、また来客のようである。

 今度は三人連れだ。

 そろそろ朝霧も消えた頃なので、遠くらからでも三人の正体はすぐに理解できた。小柄な閻魔様が一人と死神が二人。死神達は鎌を持っていないことを見るに、小町と違って文官だと推測できる。

 

 閻魔を視界に捉えた瞬間、妖花は反射的にマントを背後に隠した。何せこれは盗品である。

 遅れてこのマントが透明マントであったことを思い出した。半霊に掛け直せば、透明マントの存在など始めから無かったように、実像は空気に溶けて消えた。

 

 妖花が門の前にいるのを見るや、三人は心なし早足になってやって来た。

 

 ピンと背筋を張った映姫が言う。

 

「お誕生日おめでとう御座います妖花。朝からよく励んでいるようで何よりです。」

「お早う御座います映姫様。よくお出でくださいました。」

 

 四季映姫ヤマザナドゥは幻想郷に二人いる閻魔の片割れである。閻魔大王の化身である地蔵菩薩の石像の化身が閻魔になった、という類い稀な経歴の持ち主であり、有り体に言えばお偉いさんだ。妖花もこの人物には幽々子に次ぐ敬意を払っている。

 

「ここにうちの小町が来ませんでしたか?誕生日のお祝いもしない内から申し訳ありませんが、可及的速やかに済ませたい用事なのです。」

「はい、先程いらっしゃいました。今頃は適当な木に登ってお休みになっていらっしゃるのではないでしょうか。どうぞ、幽々子様の僕に閻魔様を止めるような者はおりませんので、ご自由にお探しになってください。差し支えありませんでしたら、私もお手伝いいたします。」

「いえ、こんな仕様も無い事に貴女の手を煩わせる必要はありません。」

 

 映姫は閻魔にふさわしい風格のある声で、後ろに控える二人に指示した。

 

(たかむら)、うづめ、あの馬鹿者を速やかに捕らえてきなさい。今日という今日は許さないわ。賽の川原で子供達に混じって石を積ませれば、少しは大人としての責任を思い出すかしら。」

 

 部下二人は厳粛に返事をして、脱獄囚の確保へ走った。

 残った映姫はポケットから何か取り出すと、妖花に差し出した。

 

「改めて、お誕生おめでとう妖花。ろくな包装もしてないで悪いけど、これ、私からのプレゼントよ。」

 

 そう言って優しく微笑む今の映姫は閻魔ではない。妖花の友人としてこの場に立っている。なので、妖花も心なし口調の角を削って応える。

 

「ありがとうございます。綺麗な石ですねぇ、すみませんこんな高価そうなものをもらっちゃって。」

「良いのよ。あちらの死神なら当たり前に持っているものだから。」

 

 今度は閻魔の目をして、

 

「今度使い心地を聞かせてちょうだい。こっちの死神にも配備すべきかどうか、参考にさせてもらうわ。」

「使う?」

「それを使えば、幽世の住人と通話ができるの。ご主人様大好きな妖花には嬉しいでしょ?」

「おお!ありがとうございます!では早速・・・・。」

 

 映姫にプレゼントされた、ひし形の黒い宝石をどう使ったものか妖花は数瞬考えを巡らせたが、どうやら悩む必要もなく、使いたいと思えばそれだけで望みの相手と繋がるようだ。早速、幽々子の美しい(かんばせ)を思い浮かべた。

 少しの間があって、地面から数センチのところにスターウォーズで見るような立体映像が写し出された。

 我が主人幽々子は未だ眠っているようだった。

 

『んー。まだたべれるー。』

 

 地面で寝返りを打つ(ように見える)幽々子の姿にいたたまれなくて、妖花は石の機能を停止した。

 

「これはいけませんよ。」

 

 わなわなと震えて妖花。

 

「タイミングにさえ注意すれば、これでお風呂もトイレも覗き放題じゃないですか!?いけません。破廉恥です。悔しいですが、欲望に勝てる気がしませんので、これは封印します。」

「なりません。私からそれを受け取ったからには、試用をする義務が貴女にはあります。安心なさい。不慮のラッキースケベを咎める法は、ここにはありませんから。」

 

 冗談めかして言う映姫だが、妖花に性能テストをさせる意思は固いようだ。

 続けて、

 

「ただし、貴女が我欲に屈したときは、私も公正な目で裁かねばなりません。友に悔悟棒を振り上げるような真似を、くれぐれも私にさせないでくださいね?」

 

 スケベ心に身を任せるなら命を懸けよと、この心優しくも厳しい閻魔は言うのだ。これではまるで────

 

「悪魔です。閻魔様、貴女悪魔の方が向いていらっしゃるのではないですか?」

「馬鹿を言わないでください。彼らは堕落を促す存在。対して私は克己を促しているのです。唱える言葉は似かよえど、そこを勘違いしてはなりません。私は貴女を信じているからこそ、試練を与えるのです。貴女がこんな小さな石に躓くような、弱い半人半霊ではないと、貴女の友は信じているのです。もし悪魔に膝を屈することあらば、冥界に傅く存在としての誇りを思い出しなさい。」

 

 また始まった、と幻想郷の住人なら思うだろう。それほどまでに映姫の説教好きは有名である。

 説教と聞いて良いイメージを浮かべる奇特な人間はそうそう居まい。その数少ない奇特な半人半霊こそ妖花である。

 

 時を遡ることおよそ五十年。物心ついた妖花と初の対面を果たした映姫は思った。

 

────あっ、この子絶対将来に何かやらかすわ。

 

 と。

 以来、映姫は妖花の情操教育に心血を注いできた。何せ妖花の周りに居るのはどれも変人ばかり。

 激甘の主人。激甘の父。ド天然の母。そして倫理観を西行妖の中に置き忘れてきた、ファザコンかつシスコンの姉(当時母から父を寝盗ろうと、ガチの策略を巡らせていた)。

 想像しうる限り最悪の教育環境である。

 

────私が正さなければ、冥界に新たなアスモデウスが誕生しかねない。

 

 映姫の正義感が伝播したのか、それは定かでない。けれど、苦心の甲斐あり、妖花は妖怪としては極めて高い水準の倫理観を持つ少女に成長するに至った。

 常に先に立って光りある道を指し示し続けた映姫を妖花は心底尊敬している。閻魔と云う役職を抜きにしてもだ。

 それでも師弟ではなく友として付き合っていけるのは、ひとえに映姫が親身になって、不安の芽をそれとは気づかせずに摘み取っていった努力故であろう。

 

 未だ幽々子の貞操が暴かれていないのは、映姫の尽力の賜物であることを知る者は極めて絶無に近いが、せめて読者の皆さんの心に留めておいてくれると、ありがたい。

 幽々子のスケベ展開が来ないのは映姫のせいだ、なんてひねた考え方をしてはいけない。絶対に。

 

 

 時は戻って現在。

 映姫に説き伏せられた妖花がプレゼントを有り難く頂戴してから五分ほど経った。

 未だ死神達は戻ってこない。

 

「遅い。いったい小町はどこまで逃げてるのかしら。」

「冥界は広いですから、気長に待つがよろしい。」

 

 言って、掃除を終わらせた妖花は箒を懐にしまった。

 

「前から気になっていたのです。その、懐に何でもかんでも入れるの。」

「便利でしょう?むき出しの液体だって収納できるんですよ。我ながらどうやってるのか謎ですけど。」

「便利さは認めるけど、はっきり言って下品よ。」

「さらしは巻いてます。」

「女性が人前で胸元をはだけるのが下品だといっているのです。服にポケットをつけてそこに収納するなり、やり様は幾らでもあるでしょう。どうにかなさい。」

「でも、一人の女として胸に物を収納することに憧れが・・・・・・。」

 

 二人はまず妖花の胸を見、続いて映姫の胸を見た。

 幼稚園児でも容易く登破可能と思われる、なだらかな山岳がそこにはあった。いや、妖花のものに至っては、小山と呼ぶことすら烏滸がましいかもしれない。

 分かりやすく言うと、どちらの胸にも脂質が足りなかった。たぶん資質が無いからだろう。

 

 この話題は止めよう。何も生まれない。

 

 妖花は映姫に付き従っていた二人の死神を思い出した。

 

「そう言えば、あの男性と女性ですが、なんと言いましたか。」

(たかむら)とうづめですね。どちらも優秀かつ勤勉な死神よ。小町にも見習ってほしいわ。」

「・・・もしかして、もしかすると、(たかむら)さんってあのご高名な小野(おのの)(たかむら)さんですか?嵯峨天皇に喧嘩売ったり、井戸にホールインワンからの地獄にノーロープバンジーした、あの。」

「さすが、良く物を知っていますね妖花は。」

小野(おのの)(たかむら)の孫に、小野(おのの)小町(こまち)がいましたよね。たしか。そして死神に小野塚古町。」

「偶然よ。」

「偶然ですか。」

「偶然よ。」

 

 そういう入り組んだ考察は別の作品でしてほしい。

 

「因みに、うづめさんの名前って漢字でどう書きますか?」

「こうです。」

 

 映姫は片足を筆にしたにも関わらず、やたらと達筆な二文字を地面に書いた。

 

『烏爪』

 

 これを英語に訳すと────お察しください。

 

「OK把握。世界は狭いですね。」

「あの世と比べれば、地球などビー玉程度の広さでしょう。」

 

 それからも、とりとめの無い会話を繰り返していると、漸く小町が連行されてきた。

 小町はリトルグレイの気持ちを味わっていた。つまり、同僚二人に挟まれ、左右の腕を掴まれて引きずられている。詳しい構図が知りたい人は『リトルグレイ 捕獲』で検索されたい。

 大人の世間体を投げ出して喚く小町。

 

「あたいは無実だー!」

 

 いと無様なり。

 部下の醜態を見て、映姫の表情は完全に閻魔のそれへと変貌した。冷気をも感じさせるお説教モードのオーラを全開にし、目の奥に熱い炎を灯した。

 

「小町。そこに直りなさい。」

「は、はいぃ!」

 

 完全に竦み上がった小町から、同僚二人は距離をとった。巻き込まれてはたまったものではないからだ。妖花の側まで退避し、小町が冷や汗をだらだら流すのを見て溜飲を下げた。ざまぁ!と思った。

 

「釈明があるなら聞きますが、どうですか小町。」

 

 此処に仏が垂らした蜘蛛の糸を見たり。起死回生の糸口を掴み取るのだ!

 

「思い出してくださいよ四季様!今日は何の日なのか、妖花の誕生日ですよ!友の誕生日を祝わないなんて、そんな友情嘘ですよ。四季様もそう思うでしょ?友情に厚いこの死神を誉めこそすれ、責めるようなことを四季様はしないと、この小町は信じてますから。ね?そうでしょう!?本当は怒ってないんですよね!?」

「阿呆ですか。」

 

 糸は切れた。案の定である。

 怒濤のお説教の嵐があまりに長いので、ここからは巻きでいきます。

 

「真に友情を語るなら、友の誕生日を言い訳に使うなど言語道断です。──<中略>──そもそもこんな早朝に押し掛けて、何を祝おうと言うのですか?──<中略>──プレゼントあげて、じゃあ寝るねって、貴女馬鹿でしょう。──<中略>──妖花の掃除を手伝っていたなら、まだ対応は変わったかもしれません。──<中略>──そもそも、(たかむら)とうづめから逃げたことが、小町の後ろ暗い思いを如実に表しており、──<中略>──やればできるのに、──<中略>──昔から──<中略>──イギリスでだって──<中略>──考えが足りない。──<中略>──そもそも、──<中略>──は明白で──<中略>──よって──<中略>──この前だって────<以下略>」

 

 このように一方的な正論の嵐が局地的に吹き荒れ、最終的には、

 

「そもそも、こういう祝い事は夜が本番でしょう?定時で仕事を終わらせれば、十分に間に合いますよ。その時まで全力で働いて、今度こそ真の友情を証明しなさい。さすれば私も今回の件を咎めることはしないと約束しましょう。メロスだって、一度は諦めたのです。屈した膝を再び伸ばせる者こそ、真に友情篤き者だと心得なさい。」

 

 と、熱血スポコンな調子で締められた。

 

 一応、必要ないと思うが、念のため断っておくと、この作品はジャンプ(熱血系スポコン)作品ではありません。勘違いのございませんようにお願いします。




 現在『イデル作戦』を発動中。
 『一話辺りの文字数を増やすことで、話数を減らし、ぱっと見ハリポタワールドに早く突入したように見せかける作戦』の略です。

2018/4/26 一部表現を書き換えました。



2017/2/4 誤字修正しました。毎度ご報告くださっている方に感謝を。
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