テイルズ・オブ・ザ・レディアントマイソロジー3・闇は破滅か救世か? 作:にゃはっふー
物語の流れ、新年らしからぬスタートですが、これからもよろしくお願いします。
では、どうぞ。
目の前で彼が斬られそうになる。
精霊セレシウスに言われ、邪悪なるモノへ向かっていたことなんて分からなくなる。
ただ一つ言えるのは・・・
彼は悲しそうに見えた・・・
「それで、これはどういうことですか?」
アンジュを始め、リュウを含め、リヒターと言う精霊と契約を交わした者と共に、精霊セレシウスがアドリビトムに集まった。
ただ、いつもの雰囲気ではない。
いまだにカノンノは目を覚まさず、アニーを始めとした医術組が側にいる。
リヒターはすでに回復したが、周りの様子を無視して、リュウを睨む。
「アドリビトムの方に言います、彼はヒトではありません」
「・・・微妙に心当たりがある件」
「あるのかよっ!?」
誰かがそう言う中で、初めてか。人の心、負の感情が聞こえること、自分が五歳くらいかそこらの時、大人の人に見つかって保護されたことを話す。
「だから俺自身、親なんてもん知らないし、それらしいもんもいない」
「そう、だったんだ・・・」
「それは当たり前だ、お前は『ゲーテ』なのだから」
精霊セレシウスはそう言うが、フィリアが静かに尋ねる。
「セレシウスさん、ゲーテ、と言うのは」
「この世界でありとあらゆる負の感情より、生まれ出て消えるはずのモノだ」
リヒトーはそう言いながら、静かにリュウを見るが、周りの者達がにらみを利かせる。
だが、それでも言葉を続けた。
「お前達も知っているが、こいつが使う力はヒトの負だ。世界に害をなし、命を蝕む、有ってはならない存在。それがゲーテだ」
「アァ? だから殺せってことかおい」
スパーダがそう言ったとき、精霊は静かに、
「ああ、ゲーテはこのまま放ってはおけない」
「!?」
その言葉に、神官達は黙り込むが、リュウ自身は気にせずに、
「それより、この世界の異変についても聞かないとな」
「っておいっ、お前のことだろ!?」
「そうだよリュウ!? 君のことだろ!?」
スタンを始め、アドリビトムの面々がそう言うが、
「どうでもいい」
ばっさり切り捨てた。
「精霊セレシウス、貴様に問う。この世界に異変が起き、どうも俺はそれに呼ばれたらしい。その存在に心当たりはあるか?」
「・・・星晶に封印されたモノだろう。だが、世界創造前に起きたが故、私も詳しくは知らない。本能的に危険と判断される、貴様と同じだろう」
「そうかい」
その言葉を聞いて、静かに黙り込む面々。
そして静かにセレナを見るセレシウス。
「星晶が取られ始め、その封印が解け始めたと同時に、それがゲーテを呼び込んだ。二つの異変のために、世界樹は貴方を呼び寄せたのだろう」
「・・・えっ」
セレナに静かに、セレシウスは断言する。
「精霊の世界にまで届く、光り輝く者。ディセンダーの輝き、それはけして間違えない。何故貴方はゲーテと共にいる?」
「・・・・・」
立ちつくすセレナに対して、セレシウスの言葉に、全員が驚く。
「せ、セレナがディセンダー!? ど、どういうこと!?」
「いや、だからこそ、赤い霧の異変を治すことができたのか!?」
「・・・わた、しが」
それに静かに頷くが、
「まあだからどうしたって話だがな」
そうリュウは気にせず、んでと、その場からセレナの手を掴み、立ち去ろうとする。それにリヒターとセレシウスが動こうとするが、
「動けば斬り殺すぞ」
その目はゲーテの瞳。いつの間にか髪も変わり、静かに睨む。
二人は止まり、その変わり様に驚く。
「ゲーテだのディセンダーだの俺らには関係ない。どーでもいい」
「ゲーテっ!! 貴様はいるだけで世界に有害な存在だッ。そんな者に、ディセンダーの側に入らせることはできない!!」
「・・・それでもいい」
身体から闇がわき上がり、周りが困惑する中、静かに、
「元々慣れてる、だがただで死ぬほど優しくないんでね。殺す気なら殺す、自覚したからか、力がなじむしな・・・」
「貴様・・・」
「だが間違えるなよ、いま目の前の危機よりもテメェはカノンノを傷付けた」
「ッ・・・」
その言葉に押し黙るリヒターに、静かに言う。
「殺したければ相手してやる、だがな。所構わずってなら、俺よりタチ悪いってこと自覚しろ。精霊、テメェもだ」
「・・・一つ聞く」
精霊も納得したのか、静かに引いてくれた。
そして、
「何故お前はヒトの姿をしてる?」
「知るか、存在してからこっちも初耳だ」
そんな話をし終え、セレナをカノンノの元に連れて行く。
その様子を黙り見つめ、何人かため息をつく。
「セレシウス、リヒター」
「・・・すまないとは思っている」
「まさかディセンダーとゲーテが仲間とは、思ってもいなかった」
そう言い合う二人に、アンジュは少し黙り込む。そう言うことではないのだが・・・
「リュウはゲーテ? っていう、邪悪な存在なのは間違いない・・・のよね」
実際、リュウの力は異質であり、良い印象は無い。
だが、彼はその力を悪用らしいことに使った試しはない。それを知る者達からすれば、いきなりの話で困惑する中で、セレナが救世主と言われても困るが、
「こっちもこっちで、納得がね・・・」
セレナの光で、生物変化が元に戻り、リュウはダメージ、痛みを負う。
まさに光と闇、水と油な状態だと、納得してしまう。
「だからって、リュウを殺すとか、考えないよな!?」
「それはないわよ、言っておくけど、これはセレナ、ディセンダーもそう考えるわよ」
「・・・」
リヒターもセレシウスも黙り込む中、少し頭を痛めながら考える。
(これでセレナがリュウに対して、好きって知ったからどうなるのから・・・)
そんなことを考えるリーダーであった。
「アニーカノンノは」
「リュウさん、セレナさん。いえ、まだ目を覚ましません」
「カノンノ・・・」
ロックスが側で看病する中、静かに考え込む。
「ったく、なにも考えずに前に出るから」
「!? リュウさんっ、そんな言い方は無いでしょうっ。カノンノは貴方をかばって」
「話によれば俺は世界にとって、消えて無くなった方がいいらしいぜ」
「えっ」
ロックスが驚く中、会議場での話を伝え、二人は驚きながら、セレナは黙り込む。
静かにしながら、それでもアニーは聞く。
「それで、貴方は自分が消えてもいいと思っているんですか?」
「ああ」
即答であり、それにアニーは、
「不愉快」
「!?」
「驚愕」
「・・・リュウさん」
「不信感? か・・・言ったろ、そう言う感情が聞こえるってな」
「・・・」
「困惑」
そう言い放ち、静かに席を立つ。
「ガキの頃からこんなもん分かるからな、他人からは気味悪がれて孤児院たらい回しだし、俺への印象がどうなのかだってすぐに分かった」
「!」
それはどんな気分だろう。他人の悪い、黒い部分が分かるというのは・・・
「くだらねぇ、俺はこの声でそれなりに楽しんだし、おかげで騙そうとする奴を返り討ちにしたり、重宝したんだ。気にしてない」
「・・・」
「だけどまあ・・・命なんて救う価値があるかと言われれば」
その時、セレナは彼を見た。
一瞬だけど、彼の顔は・・・
「無いな」
とても悲しそうだった・・・
「だーーーーーくっそ、なんっなんだよリュウの奴!!」
「まったくよっ、自分のことなのに全然考えてないじゃないッ」
激昂するスパーダとイリアに対して、食堂で黙り込む一同。
コハクがけどと、静かに、
「ヒトの悪い部分が聞こえる、か・・・どんな風だったんだろう」
「うん・・・そうだよね」
シャーリィは静かに考え込むと、ジェイドは、
「きっとろくなものじゃないですよ、彼が人間不信や他人を嫌う行動等々。正直理解できましたよ」
「そんなものですか大佐?」
ティアの言葉にええと笑顔で返す。
「他人を貶めようとする者、自分を見下す者、他人をあざ笑う者。そんな声が聞こえてるのなら、むしろ、彼はよくあの性格で生きてるか不思議なくらいです。私なら自害するか、自暴自棄になってますよ」
「・・・」
その言葉に、全員が黙り込み、クレスは静かに、
「そうか、だから彼は気づいたのか。魔物を捨てる依頼が、実際は生物変化した彼らだってことに・・・」
「でしょうね、実際村長の懺悔か何か、聞こえてたんでしょう。そう言った声が聞こえたりする。地獄でしょうね、そんな日常」
言うのは簡単だが、何人かがぞっとしている。
そんなのが日常なんて、考えつかない。
だが、
「ですが彼にとってそれが日常、ですか・・・」
ジェイドの言葉が心の中で響く中、静まりかえる船であった・・・
たった一人、抜け出した者がいることにも気づかず・・・
「おーい、ネズミ、いるか」
「ん? 旦那久しいですね~」
とある町、たまたま近くだったから抜けだし、情報屋へと足を運ぶリュウ。
店は裏路地のさらに奧、顔パスだが、最初は通るだけで金を支払うか、いい情報を持って帰るなどして、友好関係を気づいた情報屋。
偽名であるが、こちらも偽名だ。まあ向こうはアドリビトム在住なのは知っているだろう。
ローブを着込み、顔を見せないネズミは、イッヒヒと笑いながら近づく。
「実はガルバンゾ国の姫様や、ライマ国の王族関係者が行方不明なんですが・・・ご存じ有りませんか?」
「知らないな」
実際船にいるが、そんなこと知ってるだろと言う顔で、気にも止めない。
基本、ここの情報を利用するのは、大国嫌いな奴らだが、口止め料はちゃんと払っている。時たまに良い情報と、金を払うのだが、
「いえ、今回は良いですよ」
「ん? なんでだ」
「最近は灯火さんがいないと困るんですよ。大国の人達が最近厳しく、中立で力のある組織の方を贔屓してます」
「ほう、なら、俺の欲しい情報を少し融通してくれ」
「はっは、旦那はこれだから・・・抜け目無い」
苦笑するが、彼も抜け目無い。配下が先ほどから毒付きの矢など、目を光らせている。第一、彼が情報屋を取り締まっている保証もない。
だが、ここで自身の声を聞く能力が十全以上に生きる。
自身はこれで、前の世界でも荒稼ぎした。自分にとって、他人の隠し事は、金の成る木だ。
「それでは、記憶喪失の恋人のですか? それとも風景の恋人」
「殺すぞネズミ、その冗談そろそろやめないと本気で」
「いやはや・・・ではなんです?」
「治療薬、自然治癒力を上げるもん」
「・・・今度は難病の恋人ですかい?」
「おい、マジで配下の前で攻撃するぞ」
「やめてくださいな」
そしてしばらく奧へ引っ込み、数分後良い情報を持ってくる。それと共に、帝国の不正情報を纏めた物を渡す。
「おやおや、今回は情報ですか。いいですね~高値で売れます」
「・・・こっちは少しきついが、効力は保証付きか」
「栽培場に住む魔物が手強いですが、その薬草は高値で売買される品物です。まあ、最近はビリビリしてますから、市場には出回ってませんので、採りに行くことをおすすめします」
「了解、またご贔屓に」
「それはこちらですよ。貴方の情報、証拠も何もかもありますから、ご贔屓に」
そしてすぐに出向くリュウの後ろ姿を見ながら、配下の男が尋ねる。
「いいんですかい? こんなやりとりで」
「いいんですよ~最近、ほんっと彼らの組織に助けられてますからね。それに彼は嫌いになれないし、手慣れている。敵に回すより、仲間とまで言いませんが、協力者程度の仲がいいんです。ジェイド大佐にも贔屓にされてますからね」
「そのジェイド大佐には」
「無論、彼のやりとりは売りますよ~」
イッヒヒと笑うが、彼はそのことは知っている。だがあえて無視している。
交渉相手の腹の中すら分かる以上、こういったやりとりで、彼は生きてきたのだ。
そして薬草を手に持ち、医務室へと置いておく。後は勝手にするだろうと思いながら、静かに看板の外にいた。
いまは夜、みな寝静まるか、何かしてるかだ。ハロルドを始めとした学者組は起きてたし、リリスなどの裏方は、カノンノの看病してた。
夜空の下、静かに座り込むリュウ。
だが、目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませば聞こえ出す。
人の負、不安、怒り、嘆き。
それだけならいいが、それにも種類がある。
声が聞こえなくなることは稀であり、ここのように聞こえないことは少ない。
(・・・気持ち悪い)
前の世界は嫌なほど聞こえてきた。頭が痛くなるほど聞こえる雑音が、ここじゃ微か、まあ内容もダイエット、思い人の鈍感さ等々、ホント笑えるものだけだ。
だけだというのに、ひとたび出れば、結局変わらない。
「ああ世界は変わらない・・・消えればいい」
そう呟くと、がたんと音が聞こえる。
ため息を吐きつつ、静かに立ち上がると、
「セレナ」
「・・・リュウ・・・」
ディセンダーと言われ、救世主の少女。セレナ。
どうでもいいことこの上ないが、静かに見つめてくる。接近に気づかなかった。
「貴方にとっって、世界は嫌なの・・・」
「・・・ああ」
星空を仰ぎながら、その目に怒気を混ぜ、拳を握りしめる。
「どいつもこいつも勝手勝手勝手勝手っ、やれヒトの所為にする、ヒトを見下す、ヒトを犠牲にするッ。どこもそうだ、世界が変わってもっ、命は、変わらなく醜いッ」
そして頭を抱える。そうだ、いまだって、
「聞こえるんだよ、いつもいつもいつもいつもッ。自分のことを棚に上げた、負の声が俺に聞こえるッ。いつだって、世界が変わり、国も価値観が変わってるはずなのにッ、声だけは変わらないッ」
「リュウ・・・」
「俺にはここの連中が気持ち悪い」
それにセレナは驚き、リュウは本当に嫌悪する。
「ここの連中は本音で誰かのために、ヒトのために、未来を信じてる。気持ち悪くて吐き気がする」
「どう、して・・・」
「俺の知らない、声ばかりだからだ」
生まれてからずっとそうだった。
聞こえる声は決まっていた。
なのに、
「ばかばかしい、ここの連中はヒトを信じて、明日を信じて、他人を信じてる・・・俺にとってそれはそれは、気持ち悪いくらい不愉快だ」
苦笑しながら、これは本音だ。
だってヒトは、醜い、命なんて、生まれてこなければいい。
「いつも他人と争い、見下し、犠牲にする命なんて、生まれなければいい・・・なのに、助ける? なんでだよ・・・なんで平気で助ける?」
「・・・」
セレナにとって、そんな彼は苦しそうで、辛そうで、悲しく思えた。
「・・・カノンノもそうだ・・・なんで身を挺する・・・その所為で、あの子を思い出す・・・」
「あの子?」
それに黙り込む彼は、それでも静かに座り込む。
それは、本当の彼に思えた。
「俺はお前も気持ち悪い」
「・・・」
「お前からは声が聞こえない、最初は記憶が無いからと思った。まあ、ここの連中に感染したんだろな」
苦笑しながら、セレナは、
「・・・私はディセンダーだからなんじゃ」
「? 関係ないだろ」
それにすぐに答える。
「救世主だろうが、命有るモノの負の声は、俺には聞こえる。お前から聞こえないのは、お前の中に負は無いんだろ」
「そうなのかな」
「まあ、眩しいほど光が強いようなもんで聞こえないし、バカだし、だからじゃねえの?」
「褒めてないし、結局ディセンダーだよね、それ? 私、いま怒ってると思うよ」
そう言うセレナは夜空を駆ける船の甲板で、歌を歌う。
いつもの歌、自然に出てくる、優しい歌。
「・・・ばかばかしい」
そう言って、リュウはセレナが歌い終えるまで側にいて、セレナはそれに、少し嬉しいと思う。
だが・・・
(・・・ホント、ばかばかしい)
闇が深まる。薬草を採るとき、苦も無く、魔物を退治した。
自分がなんなのか、わかり始める。そうか、自分は、
(いない方がいい存在・・・だから俺は・・・)
あの子を救えなかったんだ・・・
夜空の歌の中、答えが出たと、彼は心の底から思った・・・
はい、オリジナルキャラクター出しましたが、モブです。気にしないでください。
ジェイド大佐も、独自の情報網くらい持ってますよねあの人なら。
ちなみに彼がしていた稼ぎは、情報屋か探偵のまねごとですね。色々後ろめたいことは聞こえますから、証拠も何も分かりますから、それを記者に匿名で売っている設定です。
生きづらいか、生きやすいかと言えば、人それぞれでしょうねこのスキル。
それではこれで、お読みいただきありがとうございます。ではよいお年を。