さて、今回から第二章です、少しいやかなり戦闘まで間がありますが辛抱づよく待っていただければ幸いです!
さて、最近筆者は皆にオッサン呼ばわりされております。同じ提督からは艦これおじさんとも、いやいくら多趣味で四十年ほど前のネタが通じるからってまだ十代のつもりなのにそれはないだろ~!
Wii fit
「貴方の身体年齢は三十六です。」
(`;ω;´)
挙げ句のはてに艦これやりだして戦艦に詳しくなったら「戦前生まれ」と揶揄されるように……どうしてこうなった。
十一、作戦会議
横須賀鎮守府 食堂
「初めましてやな、ウチが軽空母の龍驤や。気軽に呼び捨てで構わへんで!!」
そう言って自己紹介するのは軽空母の龍驤、彼女はここ横須賀鎮守府に所属している唯一の軽空母である。一ヶ月の間長距離輸送船を護衛していたのだがこの前任務完了とともに帰還してきたのだ、それ故に瑞鶴とは初対面となる。
「こちらこそよろしく、龍驤!」
そう言って握手をかわす二人、龍驤は誰に対しても愛想がよかった。しばらく談笑した後、瑞鶴は常々思っていた質問をしてみた。龍驤はここの提督が横須賀鎮守府に来る前からの付き合いなのだ、その龍驤ならばここの提督の過去と最近気づいた
「あのさ、少し質問があるんだけどさ……」
「なんや?ウチが答えられる範囲ならええけど。」
「ここの提督ってさなんか空母を避けてるような感じがするんだけど気のせいかな?」
「なんやそんな事かいな、たぶん消費資材が重いからとちゃうんか、な~んてな!」
流石コテコテの関西弁とギャグスキルで上手くその場を流す龍驤、瑞鶴はさらに違和感を感じて次の質問をぶつける。
「じゃあさ、何で執務室に壊れた腕時計が大事そうに飾ってあるの?」
「!!」
最近気づいた違和感、それは執務室に飾ってある壊れた腕時計だ。少し前に執務室に報告をしに行った時に見つけた。勿論その場で聞いてみたがうまく提督にごまかされた、しかしあそこまで大切にしているなら何か提督の過去に関係あるはず。実際これまで飄々としていた龍驤の顔が初めて凍った、さっきも無理して笑っていたような気がしたがやはりか。
「……アンタ、それを聞いてどないするつもりや?」
「別に何も、ただ興味があるだけよ。」
「ほなら教えることはなんもない、他を当たるんやな。」
すげなく断られた、まぁ予想はしていた。だがこれで確信できてしまった、あの提督には何かがあるそれもとても重いことが。
その時アナウンスが流れた
『瑞鶴さん、至急執務室まで来てください。提督がお呼びです、繰り返します…』
「呼ばれとるみたいやな、行ったほうがええんちゃうか?」
「そうね、ごめんねなんか変な質問して。」
「ええってええって、気にせんといてかまわへんよ!」
そう言って瑞鶴は執務室に向かった、一人になったテーブルにまた一人の来訪者が来る。
「龍驤、少しいいか?」
「……なんや、日向か。ウチになんか用事かいな?」
「いや、さっき瑞鶴と何を話していたのかと思ってな。」
「流石は提督が最初に出会った戦艦やな、何もかもお見通しかいな。」
「はは、私より提督と長く付き合っている艦娘なんてまだいるよ。」
「瑞鶴に提督のことを聞かれた、勿論提督の過去に関しては何も言ってないで。あの人は色々ありすぎたんや………」
「無理もない、むしろあそこまでのことを体験して正気でいられる提督はやはり天才だ。」
提督の過去を知るもの同士思う事があるのだろう、二人はそろって瑞鶴の去って行った方向を見添えていた。
提督の過去に何があったのか、今となってはそれを知るものは数えるほどしかいない。
執務室
「わ、私が秘書艦!?!?」
「ああ、今現在空母の中で一番練度が低いのはお前だ。だから早急に鍛える必要がある、よって瑞鶴を本日付で第四艦隊旗艦及び横須賀鎮守府の秘書艦として任命する。」
「は、はぁ……」
いきなり言い渡された秘書艦任命、しかし理由も納得できる。艦娘には「練度」と言う概念がある、「艤装適正値」、「艤装同調率」と合わせて艦娘にとっての常識だ。
まず「艤装適正値」これは数値が高いほどその艤装の力を引き出せるつまり練度が上がりやすい、しかしこれは先天的なものももちろんあるが努力次第で何とでもなる。
逆に「艤装同調率」はそのときの艦娘の精神状態によって左右される、下手をすると暴走し兼ねない。これは艤装に宿る艦艇の記憶との同調率ともいえる。
最後に「練度」これは艤装に蓄積されていく戦闘経験の事をさす、艦娘の強さを図るのにつかわれる一般的な単位だ。これが上昇することにより「改」という新たな段階に到達できる。
また稀に艤装によってだが「改二」と言う状態に一時的になれる者たちもいる、その状態の艦娘は正に規格外の強さを誇る。
そしてその中でもさらにごく一部が常時改二状態になれる、彼女らは生ける伝説とまで謳われ艦娘の最終到達点とされている。
ちなみに艦娘の練度は三十が平均、四十あればエース、五十あれば主力になれると言われている。
(ちなみに言うと加賀さんの練度は文句なしの百四十である、もはや限界を突破している。この練度にまで到達している者は歴代で加賀を含め十人いるかどうか。)
瑞鶴の練度は……十一である、横須賀鎮守府の平均練度が他よりも遥かに高い六十と言うのもあるがそれでもこれでははっきり言って雑魚だ。しかし秘書艦となった艦娘は経験値の蓄積が他の艦娘より速いと言われる、これなら早期の育成が可能だ。
「しかし、大和さんはいいんですか?」
「私は丁度用事が入って三か月ほどここを空けなければならないので、大丈夫です。」
「と、いうわけでこれからよろしく。」
「りょ、了解しました。」
「さて、初仕事だが重大発表の手伝いをしてもらおうか。」
「いいですけど、重大発表って?」
「それは後のお楽しみだ。」
こうして瑞鶴は秘書艦になった、この後東京襲撃についての事が艦娘達に発表され、大騒ぎになるのだがそれはここでは省く。
深海棲艦の東京襲撃まで残り二十と五日のことだった。
そして数日後、瑞鶴がやっと慣れ始めたころ。
「なんで……加賀さんが一緒に仕事してるんだろう?」
「あなた如きにまかせるのは心許ないからよ、わかった?」
「誰が心許ないですって!?」
瑞鶴は加賀さんと喧嘩していた、その理由はと言うと……
三日ほど前
ガチャ
「加賀です、入ってよろしいでしょうか提督?」
「げっ……」
「入ってから言うなよ……あと瑞鶴、げっ、なんて言わない。それで何の用だ?」
執務室に唐突に現れた加賀さん、何故か眼鏡をかけている。んでもって加賀さんが入ってきた瞬間に嫌そうな顔をする瑞鶴。
「はい、瑞鶴が秘書艦をしていると聞いて代わりにやろうかと。全くダメダメでさぞかし大変でしょうから。」
「何ですって……!」
「じゃあ、この前の書類の漢字はなんて説明するの?」
「うぐっ……!」
実は瑞鶴、秘書艦になって早々にある間違いをやらかした。
『基地航空隊設置許可についての報告書類』を
『基他航空隊投直許可についての報告書願』と書いて送ったのだ、これは酷い。
「提督、こんな小学校の漢字も書けないような頭幼稚園児よりも別の艦娘にしたほうがいいのでは?」
「誰が頭が幼稚園児よ!!」
「でもなぁ、早く瑞鶴の練度も上げたいしな……そうだ!」
「「?」」
……………こうして異例のダブル秘書艦体制で執務をこなすこととなったのだ。
話を巻き戻して執務室、もはやテンプレとも言える加賀さんと瑞鶴の喧嘩が終わった(提督が治めた)後のことだった。
「来客、ですか?」
「そうだ瑞鶴、相手はあの呉鎮守府の提督だ。」
「呉鎮守府って超精鋭じゃないですか!?」
「提督、それはまさかあの件についてですか?」
「流石加賀だな、そうだ今回の件は呉と合同で進めることになっているのは聞いているな、今日はその為に来てもらった。」
呉、それは艦娘の原型となった多くの艦の故郷。第二次世界対戦や太平洋戦争において日本の軍港として活躍、現在は国内における鎮守府の中でも一、二を横須賀鎮守府と争う文字どおりの精鋭だ。
今回は提督の言うように、深海棲艦の東京襲撃に関して詳しい作戦と動きを確認しに来たのだ。電子機器が発達した昨今、しかし面と向かって話すほうが都合が良いことは未だに多いのだ。
「呉鎮守府の提督はどんな方なんですか?」
「それは来てからのお楽しみだ、そうだろ加賀?」
「そうですね。」
コンコン
「来たようですね、今開けます。」
「来たか………」
ガチャリンコ
「一年ぶりね、元気?」
「まあな、そっちは元気そうだな。」
「えっ……呉鎮守府の提督って女性なんですか!!」
「あら……貴女は彼の秘書艦かしら?」
ドアを開けて入って来たのは髪を後ろで纏めた所轄ポニーテールにした女性だった、惚れ惚れするほど鮮やかな黒髪で同姓の瑞鶴でさえ一瞬引き込まれた。
彼女は
「は、はい!瑞鶴です、よろしくお願いいたします!」
「元気そうな娘ね、扶山よ、よろしく。」
「ふっふっふっ……瑞鶴、彼女にはな大きな秘密があるんだよ。」
「もう……もう少し秘密にしたっていいじゃない。」
「秘密ですか?」
「今見せるわね………艤装、装着。」
カチッ
何かが入る音がした瞬間、執務室の中に光が走った。猛烈な光は扶山を中心にして発せられており、思わず飛び出そうとした瑞鶴を加賀さんが手で制する。
光が収まった後には…………
「えっ、扶山提督ってまさか!」
「ああ、彼女は提督にして艦娘という特殊な立場なんだ、だがちゃんと海軍の訓練学校は出てるぞ。」
背中に巨大な艤装を背負った艦娘がいた、後ろで纏められていた髪はストレートになり、服装も白い着物になっていた。
形からして彼女の艤装は戦艦「扶桑」、艦娘艤装の中では一番適性者が多い艤装だ。俗に言う量産型のような物だがその性能は低くない、それどころか戦艦としてのステータスが高水準で纏まっており決して侮っていい物ではない。
もちろん、この艤装も努力次第で強化されていくので逆に戦力の要として据える提督も多い。
「驚きました、まさか提督で艦娘の人がいるなんて。提督はこのことは知っていたの?」
「もちのろん、なんてったって同期だもん。」
「そうね、私と貴方とT督はいつも一緒にいたわね。まぁT督は年上だったけど。」
今話に出てきた通り、扶山いや扶桑は提督の同期いわゆる同級生でありT督と共に悪ふざけする提督をいつも止めていた。(主に物理で)
「あれ?いつか資料で見た扶桑型の艤装とは姿が違うような……?」
「ああ、それか。扶山いや扶桑は常時改二状態でいられるんだ。」
「ええぇぇぇぇ!!??」
改二状態、それは艦娘が途方のない鍛錬と戦いの末になれる形態。その能力は改状態の比ではなく他と比べ圧倒的な力を得る、その改二状態を常時維持できるとはそれは練度が少なくとも八十以上であることが窺える。てっきり提督の仕事のみで殆ど戦場にはでないのかと思っていたがどうやら違うようだ、それどころか積極的に現場で指揮を執っているそうだ。
意外な事実に驚きつつも横須賀鎮守府の提督と呉鎮守府の提督による「対深海棲艦東京侵攻」の会議が始まった、最初に口火を切ったのは提督(以下呉の提督は扶桑と表記)
「まず民間人についてだが……幸運なことに一ヶ月もの猶予期間がある、この期間中にしなければならないことは……
一、戦闘地域の住民の避難
二、各方面の損害への対応
三、都内各地へのトラップ設置
以上の三つだ。」
「現状最優先は戦闘地域の住民の避難ね、恐らく砲撃戦だけでなく最悪は市街地での白兵戦にもつれ込む可能性もあるわ、どの範囲の住民を避難させるの?」
「川が最も入り組んでいる湾岸地帯を含んだ東京二十三区の住民を全面避難だ、T督の世論操作であまり混乱は起きないだろうが……一応もう避難作業に着手はしてもらってる。」
「でもそう上手くいくかしら?」
扶桑の指摘は尤もだ、まだ比較的開発地区である区は円滑に避難が進むだろうが、東京湾から離れた下町に行くにつれてその土地に愛着を持ち避難を断固拒否する住民もいる。提督もそこが問題だった、別にもう一生来れないわけでもないのにとも思うのだがそれは酷と言うものだろう。
しかし提督はこの問題にたいして一つの解決策を見出していた。
「対策済みだ、避難を拒否する人には艦娘が訴えに出かける。」
「「「はぁ!?」」」
瑞鶴や加賀さんだけでなく扶桑まで声を荒げる、それほどに提督の案は常軌を逸していた、軍事機密の塊である艦娘を公共の場に出すなどあってはならない。
「ちょっと提督、どういうつもりなのかしら?」
「うちの駆逐艦の艦娘に行ってもらって泣き落としさせるんだ、勿論正体は明かさないしこれなら大丈夫だろう。」
「貴方は相変わらずゲスい事を考え付くわね……」
駆逐艦は容姿が幼い、それを利用して人の良心に訴えかけるのだ。いわゆるクレ〇ンしんちゃんのまなざしキラキラ光線である。汚い流石提督汚い。
方法はともかくこれで一個目の課題はクリアだ、次は各方面への損害への対応である。これは国が払うことにはなっているが、勿論それだけで納得しない人もいる問題はそこだ。
「次は損害の対応だが、これは大丈夫だろう。」
「どうして?」
「何言ってんだ東京は首都とはいえ元々海に近い、だから常に深海棲艦の危機に晒されているのに今まで発展してきたのが不思議なくらいだ。だからもし損害費を政府が払ってなお文句を言う奴がいたらこう言えばいい、自己責任だってな。」
「もう突っ込まないわ、次行きましょう次。」
次は都内に設置するトラップだ、こちらは既存の建造物を破壊してしまう可能性があるが前述した通り被害がでても負担は政府だ。つまり「やりたい放題」なのである、ここの提督がそんなことを見逃すはずもなく……
「トラップは明石監修の元で色々と作っている最中だ、いや~すごい気合の入りようだった。わざわざ休暇まで取って現場の下見に行ったんだからな、期待できるぞ。」
「あの明石さんに任せていいのかしら……」
「扶桑さん、私も同じです。」
「珍しく意見が合ったわね瑞鶴、私もよ。」
同席している全員からの全否定を受けるが提督はどこ吹く風、まぁそれでも明石を信じよう。きっと大丈夫、きっと……
これで話すことは一通り話したが、ここで扶桑が声を上げる。
「ちょっといいかしら、相談があるんだけど。」
「何だ、相談って?」
「私に実の妹がいるのは知っているでしょ、その子についてなんだけどね……」
「あ~いたな、確か
「その子なんだけどね、山城って言う艦娘になったのよ。しかも艤装適正値が元から五十って言うとんでもないもの引っ提げて。しかも練度六十で改二になれるっていうのよ、本来ならもっと上の練度でなれるはずの改二にね。」
「おいおい嘘だろ………!」
絶句する提督、だがそれも無理はない。艤装適正値とは言うなれば練度の上がりやすさである、普通ならば最初期の時点ではおよそ三十あればいいとされる。これのマックスは百、しかも一般人や艦娘になる前の女性は十あれば天性の才能と言われる。何故三十が標準だと言われるかと言うと、この数値を超えると艦娘をサポートする存在である「妖精」が見えるようになるのだ。
しかし話にあるように美城の適正値は五十、もはや天性などと言う話ではない正に「運命」に選ばれた存在だと言えるだろう。
「すげえな!そんなんだったら即戦力になるだろう。」
「けどねあの子今ある問題のせいで心を病んじゃってるの。そのせいで改二になれたのも一回きり、あの子はうちの大事な戦力なのに……」
「相談っていうのはそれか……どうしたもんか。」
解決した問題と新たに立ちはだかった問題に頭を抱える提督であった、大規模作戦に向けて少しでも戦力が欲しい今、はたして山城を戦線復帰させることが出来るのか?
深海棲艦の東京襲撃までのこり十八日……
皆さんどうも~!青葉ですぅ~!
大和さんがしばらく居ないのでこの私が担当になりましたー!
大和さんが「私の出番……」と言って涙目になっていたの可愛かったなぁ~!
「お前飛んでもないドSだな。」
げぇ、日向さん。でもいいじゃないですか、どうせもう殆ど出番ない大和さんなんて空気ですよ空気。
「げぇって……それにそんなこと言ってるとバチがあたるぞ。」
またまた~!あんなアマの話なんて
「ほぅ……俺の嫁がどうかしたのか?」(ガチギレ)
て、提督、いやちがいます、大和さんことを言っていた訳では、ねっ日向!
(((・・;)
「さぁ行こうか青葉……」
まってお慈悲を!やめてあれだけは――――
バタン
「まぁそうなるな、あぁそうだ。」
次回 行列のできる艦娘相談所
さて、提督はどするのかな?