親馬鹿な加賀さんが着任しちゃいました   作:銀色銀杏

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これを書く内に山城が欲しくて堪らなくなって来ました、あの凛々しい顔にふくよかな胸部装甲に柔らかそうな胸部装甲に白くて大きい胸部装甲に……

え?結局は胸部装甲のことしか言ってない?
…………………

所詮男はそんなもんだぁ!!

しかし私は加賀一筋です、決して胸部装甲に引かれたわけではありません。決して。

それでは本編どうぞ~


十二、行列の出来る艦娘相談事務所

「山城を戦線復帰させるのはいいんだが、何で心を病んでしまったんだ?」

「あの子は艤装適正値が高いから身につけている艤装の影響を受けやすいのよ。ここまで言えばわかるでしょ。」

 

合点がいく提督、読者諸兄はご存じであるかもしれないが扶桑型艤装、特に山城の艤装には一つだけ欠点がある。

それほ「装着者の運気を著しく下げる」と言う物だ、それだけ聞けば大したことないと思えるだろう。実際山城の艤装のデメリットであるこの効果が発揮される場面はないと言っても過言ではない、しかし稀に(これはどの艦娘艤装にでも言えることだが)艤装適正値がまた艤装同調率が高いがためにとんでもなくその艤装の影響を受ける艦娘がいるのだ。

件の山城はその影響によりトコトン不幸になっているのである、たかが不幸と侮るなかれ、例えば百分の一でハズレのあるくじがあるとする、普通ならばそうそうハズレは引かない。が、山城の場合は確実にハズレを引くしじゃんけんでも必ず負ける、とにかく運が絡む事象は必ず負け続けてしまうのだ。

これが日常でおこるいわゆる茶番劇のような物に留まればいい、しかし事はそう簡単ではない、艦娘は戦うその中には必ず命中率や敵の艦隊の動きの予測など運に絡む事象がたくさんある、これに負け続けるとしたらどうだろうか?

また自分だけが傷つくならまだいいが、艦隊の他の仲間が巻き込まれるとしたらどうだろうか?

 

誰だって心を病んでしまうだろう

 

「しっかしよりにもよって何で俺なんだ?他にもこういう事が得意な人や艦娘はいるだろ。」

「あら、ここの鎮守府の特性を見れば貴方ほど適任な者は居ないと思うけど?」

「わ~ったよ!やりゃいいんだろ!」

「それに、『妹』の扱いは慣れているはずでしょ?」

 

瞬間、提督の目から笑い、楽しみ、優しさと言った正の感情が一切消え、代わりに深い負の感情が顔を覗かせる。比喩などと言うレベルでなく本当に空気が「凍った」、今までに見たことがない提督の雰囲気に瑞鶴は純粋に恐怖を感じた、ここにいてはいけない早く逃げろと本能が叫んでいるように聞こえた。

しかし扶桑はそんなのどこ吹く風、そのまま話を続ける。

 

「悪かったわね、今度なにかご馳走するからそれでチャラにして頂戴。」

 

その瞬間今までの空気が嘘のように霧散し、いつも通りの対応を始めた提督。扶桑の妹という言葉が提督にとっての地雷だったのか、しかしこれ以上この件に関わっていいことはなさそうなのでこの事は速やかに忘れようと瑞鶴は思った。

 

「冗談と本気の境目を意識しとけよ、山城の件は了解だ何とかしてみる。」

「助かるわ、不甲斐なくて世話をかける妹だけどお願いね。」

 

 

 

 

 

 

そんなやり取りから早一週間超、運命の日まであと七日……

 

「無理だ……できるわけがないよぉ……」

「貴方までネガティブになってどうするのよ……」

 

提督は完全に再起不能(リタイア)になっていた、理由は簡単で山城の放つ負のオーラに飲まれてしまったのだ。

提督が予想していた以上に山城の病みレベルは半端なく、その負の感情の海に問題を抱える艦娘のケアをしてきた提督といえど撃沈してしまったのだ。

問題となっている山城は自室に引きこもることはせず、最低限の仕事のみ済ませたら後は一人でぼっーとしていた。そこを見計らい提督が声を掛けてみたものの凄まじい負のオーラに飲み込まれ今に至る。

それを聞いていた加賀だったが………

 

「で、何で私が呼ばれたのかしら?」

「見ての通り俺はもう駄目だ、つー訳であとは頼んだ。」

「はぁ…………」

 

しかし時期も時期なので戦力が欲しいのは事実、何とかして山城を戦線復帰させたいのだろう。それに同じ女性しかも艦娘同士となれば話が通じるかもしれない、そんなこんなで加賀は山城を訪ねることにした。提督の話によれば山城は仕事の後は鎮守府の港の端っこで海を見ながらぼーっとしているようだ、そこに行ってみたところ山城は確かに提督言う通りぼんやりしていた。

 

「隣、いいかしら?」

「……加賀さんですか、何の用です?」

 

深海棲艦の東京進行を防衛する役目を担う横須賀鎮守府と呉鎮守府、そのため呉の艦娘たちは全員一時的に横須賀鎮守府に移っている、そのため山城と加賀は面識があった。しかしそれでも明らかに歓迎していない態度とともに充満する負のオーラ、しかし加賀は気にしたら飲み込まれてしまうのを知っているので極力気にせずに話を続けた。

 

「今度の作戦、参加しないようだけど?」

「そのほうがいいですよ、私が参加しないほうが上手くいきます。」

「けど貴女は類稀な艤装適正と技術を持っている、貴女がいるかいないかだけでも結果は変わるかもしれない。」

「皆は艤装適正、艤装適正って何もわかってないんです。」

「提督からそのことは聞いているわ、さっき言ったように貴女がとても高い艤装適正を持っていることも。けれど……」

「?」

 

すぅと息を整える加賀、ここからが正念場だ。ここで彼女を上手くのせられるかで今後の展開は変わる、息を吐くと共に一気に言う。

 

「貴女が本当に強いのか試させてくれないかしら?」

「挑発すれば乗っかってくると思ったんですか?」

 

即座に切り替えされる、加賀の言動に何か怪しい物があると敏感に感じ取ったのだろう。しかしここまでは予想の範囲内だ、それを聞いた加賀は懐からある物を取り出す。それは一枚の紙きれで「間宮期間限定スイーツ引換券」と書かれていた、そしてそれを見た瞬間に山城の目が見開かれる。

 

「そ、それはぁ!!」

「数量限定の期間限定間宮スイーツの引換券よ、これならどう?」

「くっ……!」

 

実は山城は甘い物が大好物なのだ、そして一日に最低限の仕事をするのはスイーツの食べ過ぎで太らない為とスイーツの入手が主な理由なのだ。しかし間宮の期間限定スイーツは超人気であり、通常の艦娘にとっても確実にそれが手に入る引換券はプラチナチケットと化しているのにただでさえ半引きこもりの山城には縁のない物のはず……だった。

この情報を加賀は事前に実姉の扶桑から聞いており、また横須賀の間宮が古い付き合いだったこともあり、一枚譲ってもらうことに成功した。(決して職権濫用ではない、決して。)

 

「……本当に勝ったらくれるんですね?」

「無論よ、その代わり私が勝ったら大規模作戦に参加してもらうわよ。」

「そういうことだったんですね、けれど良いわ。演習場に行きましょう、海が私を呼んでいるわ。」

 

そうして二人は颯爽と去って行った。

 

 

 

 

 

一時間後

 

 

「……………」

「わかってたのよ……勝てるわけないって、ふふふふ……」

(どうしてこうなった。)

 

こうなったのは勿論演習の結果が山城の負けだったからである、しかしこの展開は加賀にとっても予想外であった。加賀はもう少し苦戦するだろうと思っていたが……この理由は山城の不運が予想以上に深刻だったからである。

何しろ山城の打った砲弾は不思議な風が急に吹いてきてそれ、逆に加賀がダメ元で放った爆弾がこれまた不思議な風によって山城に着弾という、もはや何か言い訳のないほどの不運っぷりであった。

しかし山城の動きは同練度の艦娘の中では最高峰いや最強であり、今回加賀が勝ったのは不運と経験の差によるものが大きい。事実、加賀が今の山城と同練度の頃に勝負したら恐らく手も足も出ないだろう。それにその本来の実力を不運と言い訳し、本来の実力を出せないでいる恐らく改二になれないのもそれが原因だろう。

仕方なしに加賀は母として知っている「人のやる気スイッチの押しかた」を行動に移した、これは加賀の子育てテクニックでどんな人もやる気にさせてしまう方法である。

 

「加賀さんももう分ったでしょう、どうせ私は伊勢型の下位互換なんですよ……」

「そうね、所詮は扶桑型ね。きっと姉のほうもたいしたことないんでしょうね。」

「……なんですって?」

「所詮扶桑型の艤装適正者なんて雑魚ばっかりだと言ったのよ。」

「……それは私だけじゃなく扶桑姉様まで馬鹿にしていると受け取っていいのかしら?」

「別にそう受け取ってもらっても構わないわ。」

 

乗ってきた、と加賀は思った。これも姉からの情報なのだが、山城は重度のシスコンで姉をものすごく慕っているのだ。加賀はこれを利用して瑞鶴の時のように挑発しやる気をだせないかと考えていたのだが、見事に当たっていたようだ。加賀は攻撃いや口激の手を緩めずにさらに煽っていく。

 

「……見過ごせない発言ですね、撤回してください。」

「何故かしら?私に負けた者の言うことなんて聞く必要があると思う?」

「ならもう一勝負といきましょう、私が勝ったらさっきの発言の謝罪と間宮券ですから。」

 

加賀の思惑通りに乗っていく山城、加賀はこの連戦の中で何か答えが見つかればいいなと思っていた。今回の目的は山城を戦線復帰させればいいので、「加賀に負けて仕方なく作戦に参加」でも構わないのだが、なるべくならその自分の不幸を克服するか割り切るかして戦線に復帰させたいと思っていたからだ。

 

「いいわ、けれど勝てたらね。」

「減らず口を………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに数時間後、日没

 

「くっ何で!?何でなんですか!?」

「…………」

 

あれら二人は演習場を貸し切り、戦い続けていた。加賀に敵うことなく日没を迎えてしまったが、加賀はこの演習の中でやっと山城の実力を出す方法を思いついた。しかしそれにはやはり山城が作戦に参加して、自分で気が付かなければならない。なのに肝心な参加させるように説得するのはできなさそうだったが………まぁ勝ったので結果オーライであるが。

 

「貴女は大事なことを忘れている、それが解らないかぎり私には勝てないわ。」

「この不幸さえなければ……こんな……姉様……」

「ほらまた、もう一度貴方は不幸の意味をよく考えてみることね。約束通り、大規模作戦に参加してもらうわよ。」

「くっ……………」

 

去っていく加賀の後ろ姿を山城は黙って見ていることしかできなかった。

 

 

 

 

時は少し遡って同日の朝、食堂にて

 

「ふぁふぁひにききらいことかある?」

「とりあえず飲み込んでから話して下さいよ赤城さん……」

 

瑞鶴は赤城と食堂で朝食を取っていた、瑞鶴は焼き鮭とご飯と味噌汁という至って普通のメニュー。赤城も同じものを頼んだのだが……量が違った、恐らく瑞鶴の三倍以上の量を物凄い勢いで平らげていく。

因みに何故瑞鶴が赤城と共にいるのかと言うと、ある相談事があったからだ。

 

「んぐっ、それで何の話でしたっけ?」

「赤城さんみたいに強くなるにはどうしたらいいですか、っていうはなしですよ。」

「また唐突ですね、何かあったんですか?」

 

実は瑞鶴は秘書艦として出撃や演習を続けた結果、練度が二十五に到達し「改」になれるようになったのだが

 

「改になれない、ですか……何か心当たりは?」

「いえ……明石さんには恐らく精神的なことが作用しているんじゃないか、と言われたんですけど。」

「もしかしたら私の練度不足かもしれないからもっと強く成りたい、と。」

「はい。」

 

そう、瑞鶴は何故か改造可能な練度に達しているにも拘らず改になれないのだった。明石曰く艤装との同調に問題は無いので何か他に原因があるのでは、と言う話なのだが……

 

「強さと言ってもですね~、純粋な強さはひたすら経験を積む以外ありませんし。恐らく原因は最もっと外の、貴女の心にあるんじゃないんですか?」

「心、ですか……」

「ええ、私が見る限り瑞鶴さんは実力的にはなんら問題がないと思いますし。」

「そう、ですか。」

「時に瑞鶴さん、何故貴女は艦娘に成ろうと思ったのですか?」

「もちろん、皆を守り世界の海を取り戻す為です!」

 

これは瑞鶴が幼い時に艦娘に憧れるキッカケになった出来事の時に深く心に刻みこまれた言葉、それを瑞鶴は目標として今まで頑張ってきた。事実、その目標に向かって努力は怠らなかった。そのお陰でいまこうしていられるのだから、いつからかその言葉は瑞鶴の心の柱となっていた。しかし、

 

「悪くない目標です、しかし少々綺麗すぎますね。」

「え?」

「今まではそのような目標でも特に問題はなかったのでしょう、しかし現実は厳しいものです。貴女の理想ではいつか限界がきますよ、その時あなたはどうなるのか、今一度目指す所を考え直してみればどうでしょうか?」

「限界……」

 

かなりの衝撃を受けた瑞鶴、今まで信じていたものが急に不安定になっていく。瑞鶴は漠然とした不安にかられた、自分が思っているほど現実は甘くないと知った瞬間だった。だがこれでよかったのかもしれない、もし瑞鶴がそれを知らずに理想の限界に直面したなら壊れていたかもしれない。

 

「私から話せることはこれくらいですね、朝食ご馳走様でした。」

「は、はいこちらこそ。」

 

そういって赤城は席を立った、しばらく赤城の言葉の意味と新しい目標のことを考えていた瑞鶴だったが、いつまで考えてもわからずテーブルに突っ伏した。その直後に重要な事実に気づく

 

「あ~~!!赤城さんお金払わずに出て行った!」

 

瑞鶴のテーブルには長い伝票が置かれていた……

 

 

 

 

 

時間は戻り日没後、執務室

 

「……そう、山城は参加してくれるのね。けれど立ち直ってはいないと。」

「すいません、力及ばずに。」

「いいのよ、気にしないで。」

 

執務室には瑞鶴、加賀、提督、扶桑の四人が対面していた。扶桑は加賀からの報告を受け、安堵と共にやはりかと思った。しかし山城に参加させるようにさせられたのはよかった、もしかしたら今度の大規模作戦で答えを見いだしてくれるかも知れないからだ。

 

「さて、今回の編成だが敵が東京湾に来た時にそれを迎え撃つ第一連合艦隊、そして東京内に入った敵を殲滅する遊撃艦隊に別れる。扶桑、加賀の方は?」

「燃料、弾薬は横須賀と呉の遠征部隊をフルで回しているわ、そのお陰でかなりの量はたまった。」

「提督、明石からですがまだ完全にトラップ、迎撃装置及び簡易泊地の設置が終わっていないそうです。」

「了解した、後どれくらいかかるかは?」

「あと四日ほど有ればなんとか、だそうです。」

 

扶桑と提督の間に緊張が走る、ここまで設置に時間が掛かるとはいったいぜんたいどんな物を作っているのか?頼むから大量破壊兵器とかは勘弁してくれと思う扶桑と、どんな物ができんのかオラワクワクすっぞ!な提督であった。

 

「瑞鶴、避難経過は?」

「東京都二十三区及び千葉、神奈川の沿岸都市の避難は九割完了しました住民は殆ど鎌倉に。公共交通機関、空港共に閉鎖、サポート部隊の陸自も配置完了まであと少しです。」

 

今回の作戦では沿岸都市だけでなく周りの都市や最悪砲撃が内陸の都市まで飛んでいく可能性があるので、陸自に待機してもらっているのだ。住民の避難も殆どが完了した今、後は明石達を待つばかりとなっていた。

 

「最後に艦娘達の編成だが明石達の作業が終わってからにする、それまで出撃などは控えて休息を取るように言っておけ。」

「わかったわ。」

「「了解」」

 

それぞれの思い、問題、それらが各々交差する中で運命の日は着々と近づいていく……

 

 

 




うぃ~ん 

ガッチャンコ

「ここをこうして……」

よっ明石!例のもんの調子はどうだ?結構な無茶ぶりだけど大丈夫か?

「あっ提督!時間を見つけてはやっているんですが厳しいですね……」

まぁこんな時期だしな、けど出来れば急いでくれ。

「FGESにデータを入れてるんですけど、いかんせん操縦系統がマッチングしなくて。」

最悪、手作業でやる、か。間に合うか?

「がんばります、私を誰だとお思いで?それより提督。」

おっとそうだった、次回

運命開始の五秒前

衝撃?の事実が明らかに……!


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