親馬鹿な加賀さんが着任しちゃいました   作:銀色銀杏

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筆が進んだので投稿です!


十四、燃える 東京

東京湾、それは千葉、神奈川、東京によって囲まれた海だ。海と繋がっていながらも地形的に殆ど切り取られた形になっている様はさながら「箱庭」、加えて言うが東京湾はさほど広くない、もしも艦娘が在りし日の姿のまま出現したらすぐさまパンクするだろう。

そしてその東京湾に面する横須賀鎮守府は全ての艦娘が出払ってもぬけの殻、しかしその地下シェルターに提督と大淀はいた。

 

「提督!偵察に飛んでいた明石特製長距離偵察機との通信途絶!」

「あわてるな、最後に反応を確認した地点は?」

「大島沖、東京方面二十キロです。」

 

大島、それは八丈島を含めた伊豆七島で最も東京都寄りの島。八丈島鎮守府からの偵察情報が来た時間を考えればちょうど頃合い、提督の予想通りならば会敵まで後一時間といった所か。

 

「敵の総数を艦種も含めて、概算で構わない。」

「て、敵総数凡そ七百!?か、艦種は駆逐艦、戦艦、重巡、軽巡そして空母まで多数!しかも後方にはさらに増援も!?」

「うっわ~本当に総力戦じゃん、でもこれを撃破すれば日本の制海権は完全掌握確実かな?」

「しかしこんな大規模戦闘……どれだけ沈むか……」

 

目を伏せる大淀、当然だ、こんな大規模戦闘では死者が出ないほうがおかしい。ましてや精鋭とは言え敵の数は此方のゆうに五倍、こんな失い難い戦力をどれだけ無くすのか。それに戦力としてだけでなくこんな理不尽な戦闘に駆り出す罪悪感か。たがしかしっ!提督は!

 

「何言ってんの?誰も死なねぇよ。」

「なっ!この期に及んでそんな希望論にすがるのですか!?」

「大淀、お前ここ長い癖に何も知らないんだな。」

「わかってないのは提督です!確かにここに着任してから誰も轟沈させてないですが今回は……!」

「大淀、こんな理不尽ごときで死ぬようなら俺らはもう生きてねぇよ。俺らはそれ以上のもん積んできてんだ。」

 

そう言われて提督の目を覗き込んだ大淀は理解する、本気だ、と。提督の目は今までのギャグ的な物ではなく、全てを把握し対処しきる正しく「司令官」としての目だった。

腐っても鯛という言葉がある、この変化を見た大淀は即座にこの諺を思い出した。たがしかし、この諺は間違っている、いや適切でないと言うべきか。何故ならば提督は最初から腐ってなど居ない、いや腐る暇などない。あの時から提督は本当の修羅と化したのだから、負けることなどは……許されない。

 

「全艦娘に通達しろ、接敵まで後一時間と。それと各人持ち場に付くように、あと明石に粒子の散布を開始するように伝えて。」

「り、了解!」(粒子……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方海上では

もし誰かがこの状態を上から見て、瞬時に把握できる者はいないだろう、もっとも上から見ようとすればたちまち蜂の巣になるだろうが。

簡潔に言うと大海原にまるで太陽の黒点のように真っ黒な点が一つ、しかもその大きさはおよそ直径三キロはあろうかというサイズだった。その点はゆっくりと移動しながらかくてに東京へと近づいて行った。

そしてその中心で大きな尻尾を携えた少女と大きな黒い塊に腰を下ろしている女は体面していた。

 

「戦艦棲姫サマ、上空ニ敵ノ偵察機ヲ発見、撃墜シマシタ。」

「ソウ、ヤットボンクラナ人間共モ慌テテイルデショウネ。………ソレヨリレ級、アノ件ニツイテハ……」

「ヌカリアリマセン戦艦棲姫サマ、アノ人間ナドニコチラノ真ノ目的ナドヲ見抜ケルハズアリマセン。」

 

目を細める戦艦棲姫、その口には獰猛な笑みが浮かんでいた。最近この島国の艦娘共に押され制海権を奪還されはじめている、その為今回この一帯(日本の排他的経済水域)の深海棲艦を集め攻勢に出た。

 

「フフフ、ワタシタチヲ倒セバココノ海ヲ取リ戻セルト思ッテイルンデショウケド……」

「エエ、コノ戦力デハドウシヨウモアリマセン。戦イハ数デス戦艦棲姫サマ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後

 

戦いとは突発的な物から計画的に始まる物まで幅広くある、今回は後者でありその場合は静かに始まるのが常であった。しかし今回は違った、始まりは……

 

「提督、敵先陣が明石型機銃の射程に入ります。」

「まだだ、まだ打つな。」

『ちょ!もう敵は視認できる距離まできてるんじゃぞ!?』

「まだだ!お前達は全砲門を構えて待機だ。」

「提督!敵の第一陣が全て入るまで三、二……」

「打ち方用意!」

『了解じゃ!』

 

そして、その時は呆気なくやって来た。

 

「一……今です!」

「全砲門発射!」

 

 

 

 

 

 

 

東京湾 

 

『一……今です!』

『全砲門発射!』

「全軍、一斉射じゃ!」

 

 

ドゴガッ!

 

 

凄まじい音と共に発射された砲弾、それと共に明石製の機銃が一斉に唸りをあげる。遅れて着弾の音がする、巨大な水柱のみならずここからも視認できるほど大きな爆炎が立ち上った。

 

「着弾確認!」

『止まるな!航空戦力発艦始め!』

 

提督が予期したように煙の中から現れたのは黒い飛行物、深海棲艦の空母が搭載している艦載機だ。しかもそれだけではない、続くように出てきたのは白い球体の形をした物、それらは後から出てきたのにもかかわらず最初の黒い艦載機を抜かし此方に向かって来た。

 

「あれは……!提督!」

『わかってる長門!此方でも確認した、あれがあるということは姫、鬼級がいるということだ。総員、気を抜くなよ!』

「百も承知!全艦、砲撃の手を緩めるな!」

『こちら陣左翼の蒼龍、艦載機第一陣が敵艦載機と接触します!』

 

瞬間、空一面に火花が広がった。次々に落ちていく両陣営の艦載機、しかし……

 

『ちっ!やっぱ数が多いか……』

「ああ、このままでは制空権を取られるのも時間の問題だ。どうする提督?」

『明石!例の奴はどうなっている?』

『いま操縦系統を既存のゼロ戦ベースの物に置き換えています!後二十…いや十分待ってください!』

 

数で押し殺しに来ている深海棲艦の艦載機、しかも通常の艦載機ならともかくeliteやflagship級になると艦載機自体のスペックにも差がつく。此方は無人のあちらに比べて有人、しかも熟練度は最上級の艦載機の妖精達が乗っている。が、それでも限界はある、いかに一対一なら圧勝できる艦載機といえど数が違いすぎる。

あちらの艦載機の数の予測は此方の約八倍に加えて横須賀鎮守府の空母の数の少なさが痛い、これを打開する為に提督は明石にあるものを頼んでおいたが……

 

『皆聞いたとおりだ、後十分持たしてくれ!』

「簡単に言ってくれちゃって…!」

「仕方ないですよ飛龍さん、っと来ましたよ…!」

 

そういって深雪が指差した先には駆逐、軽巡、重巡そして戦艦の深海棲艦達、しかもちらほらelite個体も交じっている。それが視認できる距離まで近づいていた、と同時にチカチカと光が迸る。

 

「砲撃来るよ!全艦回避して!」

 

ドゴッ!ドドドドドドドドド!!

 

 

 

直後、先ほどまでいた場所に水柱が立つ。間を置かずに今度はこちら側からの砲撃が始まる、それを尻目に空母達は一旦後退する。そして艦載機による支援を行おうとしたがその手を止める、このままでは爆撃すると味方まで巻き込んでしまう。

 

「構わねぇ!そのまま撃て!」

「でも天龍!」

「いいから!」

「どうなっても知らないよ!」

 

言うが早いが艦載機を放つ飛龍、そして放たれた艦載機達は両軍入り乱れた戦場に機銃と爆弾の雨を降らす。この味方まで巻き込みかねない攻撃は確かに効果はあった、しかしそれも一瞬のことだ、すぐに次の深海棲艦達が向かってくる。いまは幸い一隻も抜かれていないがそれも時間の問題か。

 

「だが、こういう戦いこそ燃えるってもんよ……!」

 

そう天龍は不敵に笑って言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦本陣

 

「レ級、戦況ハ?」

「ハッ!タダイマ敵ノ第一次防衛線ヲ突破シヨウトシテオリマス、敵ハ味方モ巻キ込ム攻撃デ押サエテイマスガ突破ハ時間ノ問題デショウ。」

「フフフ……」

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府

 

「これじゃ突破されるな、だが予想済だ。何のために第二軍を配備したと思ってるんだ、しかしこのままみすみす突破させない、もう少し数を減らす。明石!」

「最終作業完了!これで操縦方法は同調できました、妖精さんが乗り込めばいけます!」

「大淀、全軍に呼びかけ!」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちら提督!やっと準備が完了した、妖精さんが乗り込み次第順次発艦!』

「準備ってなんだよ初月!?」

「わからない!けど戦況がこっちに傾くのは確か!」

『こちら右翼の飛龍!いま妖精さんが登乗し終わって矢が出てきたけど……何これ?』

『左翼蒼龍!えーとこれただの艦載機だよね?ほんとに大丈夫?』

 

会話にも出てきているように空母達の矢筒や手元の出てきたのは通常の艦載機の矢、しかし色が青や赤、黄色と色々な色があった。特に変わったとこが見られないこの矢、しかし明石がぎりぎりまで時間がかかる物など早々ない。それにこの土壇場で提督が導入してくるなら何らかの意思があるはず、ととりあえず飛ばしてみる空母達。

 

そしてその直後、空母達は信じられない光景を目にする。

 

「何……あれ……!」

 

それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大空を舞う歌姫たちの守り手、俗に「バル○リー」と呼ばれる戦闘機だった。

 

「ナンダ……アレハ?」

「うっそでしょぉぉぉ!?」

『落ち着け伊勢、あれは明石特製の戦闘機、通称《アカキリー》だ。』

「いや、色々と大丈夫なんですか……?」

 

しかし提督も遊びでこんな物を出したのではない、事実発艦したバル…もといアカキリーは次々と深海棲艦の艦載機を落としていく。それもそのはず機体性能は通常の八倍以上、人間では耐えられないアクロバット飛行でも妖精なら耐えられる。

そして特にサイズがデカイ、どれくらい大きいかと言うと艦娘と同じくらい、つまり人間ほどの大きさである。

そしてアカキリー達はとんでもない機能を見せる。

 

「ほら余所見しない!敵雷撃来るよ!」

「五十鈴!危ない!」

「へっ!?」

「……………!!」

 

敵の酸素魚雷の直撃を受けそうになった五十鈴、しかしそれを見たアカキリーの一機が急降下、瞬時に足と手を変形させてその場から抱き抱えて離脱させる。所轄「ガウォーク」と呼ばれる形態である。

 

「あ、ありがと……」

「…………///」

(意外とわかりやすい。)

 

そしてアカキリーの機能はこれだけではない、読者諸兄の一部は薄々感づいているだろうが。

 

「霧島!右舷後方!」

「しまった!?」

「シズメェ!!」

 

ちょうど死角だった箇所からの砲撃、発射したのは重巡リ級、いくら戦艦の砲撃ではないと言えど無防備なこの体制では轟沈の可能性がある。咄嗟に腕を交差させて衝撃に備える霧島、おそらく腕が二本とも持ってかれるだろうが入渠すれば治るので構いはしない。無慈悲な砲弾が霧島を襲おうとしたとき、一機のアカキリーが躍り出た。

無茶だ、傍から見た比叡はそう思った。まさか自身と引換に霧島を守ろうとしているのか、止めようと思ってももう間に合わない。そう思った時、その影は大きく形を変える。

 

「…………!!」

「ナッ!?」

「変形した!?」

 

霧島達の目の前で戦闘機から瞬く間に人型へ姿を変えたアカキリー、通称「バトロイド」である。そしてそのまま手に持った携行型マシンガンを掃射、迅速に砲弾を撃ち落とした後、即座に反撃に移る。

 

「………!」

「何ダコイツハ?ハヤイ!?」

「!」

「ナニガオコッ――」

 

敵の副砲が至近距離で発射されるがそれを軽々と避けるアカキリー、やがて逆に土手っ腹を撃ち抜かれたリ級は沈んでいった。それを放心状態で見ていた二人、アカキリーは此方を一瞥すると再び変形して大空へ飛び立っていった。

 

「提督はこんな隠し玉を持っていたのね、これなら行ける!」

「いやまだだ綾波、むしろ少し不味い。」

「天龍さん?」

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府地下

 

「これをもってしても制空は五分が限界か……!」

『すみません提督、私がもっと生産できていれば。』

「しゃーない明石、それよか大淀、戦況は?」

「戦力損耗率が三割です、轟沈は……まだ出ていない!?」

「どうよ!」

 

戦闘開始から早くも四時間が経過、戦闘は圧倒的な戦力差にもかかわらず、ほぼ五分の戦いをしている鎮守府側だったが…

 

「とはいえ三割か…潮時だな、第一軍に撤退指示!」

「了解!」

 

撤退を指示する提督、確かに今は互角の戦いをしている、そう「今は」。このままだと直に突破されるのも時間の問題だ、ならば損傷が少ない内に撤退させて新たに防衛線を張るのが得策だ。

 

『蒼龍!提督からの通信よ!』

「そのまま話して!」

『現時点を持って中破、大破の艦娘は付近の小破の艦娘を臨時旗艦として撤退、小破以下の損害艦はその撤退を支援せよ。』

「私はまだ大丈夫!損傷艦の避難後は?」

『敵の防衛を潜り抜け敵空母を可能な限り撃沈せよ、但し轟沈しないこと。』

 

それを聞いた蒼龍他各指揮権を与えられた艦娘達は撤退を指示、撤退戦が始まった。ここは東京湾、幸いにも艦娘が上陸出来る港や波止場などはふんだんにある。事前にその中から分かりにくい場所を選定、撤退時の避難港としていた。そしてその各港には陸自の装甲車が待機しており、傷ついた艦娘を簡易泊地まで移送する手筈となっていた。簡易泊地は五箇所あり、艦娘の入渠と補給、そして建造はできないが装備の改修や開発はできるという正にその名の通り簡易的ではあるが立派な泊地だ。

 

 

「木曾さん!担当範囲内の艦娘全員避難完了したよ!」

「よっしゃ!睦月、お前もただちに退け!」

「でも木曾さんが!」

「お前がいると撤退できねぇんだよ!」

「っ!わかりました!」

 

そう言って退いていく睦月、比較的損傷が少ない木曾はまだ戦闘を続行できる状態だった。連絡によると第一軍で戦闘続行可能つまり小破以下の艦娘は全体のおよそ四割ほど、カウンターで逆に攻めて行くならば人数が少ないのは逆に有利だった。

 

「ここはもう抜かれるか…だがただじゃ抜かせねぇ!」

 

そう言うと木曾は身を翻して敵陣に突っ込んでいった。

このすぐ後第二軍に戦闘体制の伝令が伝わり、東京決戦は第二ラウンドに突入していった。敵はまだ二軍、三軍、四軍と戦力を残している、一番数が多い一軍は殲滅出来たがそれはただの数の部隊、寧ろ数は少ないがeliteやflagshipなどの精鋭が揃う後方艦隊が危険だった、つまり本番はこれからなのである。

そして提督の指示通りに適度に陣中に突っ込んで後方の敵第二軍の空母をある程度撃沈し戻ってきた艦娘達、幸いこの昼戦では轟沈者は誰も出ずに終わる、しかし負傷した艦娘が消費する資材は相当になってしまった。

 

 

 

深海棲艦本陣

 

「戦艦棲姫サマ、第一軍ガ戦闘不能ニナリマシタ。後方ノ第二軍モ三割ホドノ被害ガ出テオリマス。」

「アノヘンチクリンナ艦載機ノセイデ滞空ハ五分マデ持ッテイカレタケド、マダ目的ニハキヅカナイノネ……」

「ココハ間髪入レズニ第二軍ヲ投入シサラニ押シコムベキカト。」

「フフフ、許可スルワ。セイゼイ踊ッテモライマショウカ、愚カナ人間ドモニ……」

 

 

 

 

第二軍 セイバー班

 

「扶桑~提督から通信でもうすぐくるらし…どうしたクマ?」

「いえ、少し違和感がね?」

「クマ!?」

「ああ、些細なことだから気にしないで。」

「びっくりさせるなクマ~」

 

扶桑の違和感の理由、そして正体はもう少し先で明らかになる。間もなく日没、今度こそ入り組んだ川で夜戦が行われることとなる。

実働部隊の艦娘達だけでなく、それを指揮する提督と戦艦棲姫の駆け引きも含め、戦況は益々わからなくなって行く………

 

 




激化する戦い
自分の運命を嘆く者
だが運命をうけいれてしまうかは己次第
その決断を迫られたとき貴方ならどうする?

受け入れるか?

無駄かも知れないとわかっていても尚抗うか?

次回

「不幸を胸に抱きし者」

その決断は貴方の決意だ。

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