活動報告で書いていた病気は無事完治いたしました、これから投稿ペースを戻したいな…と思ったのですが……
これまた作者の身勝手な都合によりまたかなりの期間更新が滞るかと予想されます。
ですがどんなに時間がたってもエタらないようにするので(できるとは言ってない)長い目でみていただけると幸いです。
投稿間隔が広くなってしまったことを、ここに深く謝罪申し上げます。
それではお楽しみください!
文化祭
中学、高校、大学などで、生徒・学生が中心になって展示、演劇、音楽界、講演会などをすること
(某辞書を参考に一部改編)
「文化祭……かぁ。」
某所のマンション、その一角が瑞鶴と時雨の今期長期休暇の拠点(以下自宅)となる場所である。専門知識…というより不動産のことなどわからないし興味もない時雨にとっては何LDKかはわからない、まぁ二人が暮らすには十分な広さなのだが。
家具は備え付け、それも各々がかなり質の高い物、俗に言うブランド品である。
それらが今回の為だけに用意されていると考えると贅沢なことだ、かかった費用?そんなの聞きたくもない。
まぁそんなことは置いといて、その自宅の一室、一応時雨の私室となっている部屋で時雨は辞書を読みふけっていた。
もちろん暇なのではない、時雨にとって文化祭は楽しむべき学校行事の一つであり数少ない息抜きとなりえる時間だったのだから。
もっとも『楽しむべき』といっている時点でどこか義務感のように感じているところがあるが、まぁそこは艦娘養成学校という特殊な状況下ゆえの思考だろう。
辞書を置いた時雨はわきに置いておいたカバンからプリントを取り出す、プリントには「文化祭実施に関して」と書いてあった。
「『開催は三週間後、二日間にわたって行われる。模擬店及び食品を出す団体は企画書を生徒会に提出の上で審査、展示に関しては各団体自由に風紀を乱さない程度に認める。』と、どこもそんなに変わらないんだね。」
「そりゃそうよね、学校毎に特色があるといっても基本は変わらないわ」
「……瑞鶴、入るときにノックくらいしてくれないかな?」
「ごめんね、けど時雨なら気配察知くらいは余裕でしょ」
「そこまで人間やめてるつもりは無いけどね……」
それでも強く否定はできない、仮にも戦いの中に身を置く彼女達からしてみれば、気配をある程度察知できないような奴は初戦で死ぬ。ましてや彼女達は横須賀所属という精鋭集団の一員であって、それこそ敵味方をそれとなく気配のみで区別できるのだ。
一説には電探を始めとした各種レーダーを装備していた時の感覚が艦娘の身体に残っており、それによって第六感が人間と比べ良くなっているらしい。そもそも、身もふたもない話をすれば艦娘である時点で人間ではないのだが。
またどうでもいい話ではあるが、時雨は現拠点内くらいの範囲ならば瑞鶴の位置は常に感じられる。よって入ってきたのは分かっていたが、大して気にもしなかっただけでもある。
「ねぇ時雨、学校で何か気になることでもあった?」
「どうしたんだい急に、加賀さんが居たことには驚いたけどそれ以外は特に何もなかったよ」
「………ふーん、ならいいわ」
怪しい、根拠はないがとにかく怪しく感じる。とはいえ時雨は(瑞鶴の知るよしは無いが)これでも第零艦隊に所属している艦娘、汚れ仕事をこなす彼女はこの程度で動じるはずもない。
数秒間無言で見つめあった二人だが、先に瑞鶴が話を切り上げた。これ以上の詮索はいけないとそれなりに鋭いと自負している自身の直感が囁いていた、白いLEDライトの無機質な光が床に反射し、二人の顔を照らし出していた。
「…………ごめんね、瑞鶴」
誰もいなくなった部屋で時雨は小さく、それこそ艦娘でさえも聞き取ることが難しいくらいの音量で呟いた。
☆
夢を見ていた…………いや、今も見ている
俗に言う明晰夢と言う奴なのだろう、普段は夢など見る体質でもないのでどこか新鮮だ。
だが、何故だろう?周りの風景ははっきりしているのに記憶に残らない、まるで入ってきた情報がそのまま流れ出ているかのようだ。
感覚で理解はできる、海だ、青い海、どこまでも晴れ渡って広がり続ける海。艦娘である自分にとって一番身近な場所であり、艦娘や深海棲艦を含めた全ての命が生まれた始まりの場所でもあり、そして―――――――――――――――
………………………そして、なんだ?
『ねぇ』
何だ、今のは?何かが聞こえたが、気のせいか?
『ねぇ』
違う、気のせいではない!この声ははっきり聞こえている、――――っ!何だ、本当に何なんだ。何か、この声が聞こえるたびに頭が震える。僕の頭の中の何かが訴えている、何なんだ、本当に、キミはっ!?
夢の中にいる少女――――――時雨はもはやこれが夢か現実か区別がつかなくなっていた、最初は正常だったのだ、いくら夢とは言え彼女はこれくらいで取り乱すような人物ではない。
彼女らしからぬミスだ、どんな時でも冷静に物事を判断して行く時雨がこの時だけはこの「声」の事に心を取りつかれていた、それほどに彼女の心をつかむ何かがその「声」にはあった。
『ねぇ』
尚も声は呼びかける――――――
何処に居るんだ、誰なんだ!?君は、一体、誰なんだ!!
『…………わかるでしょ?』
不意に時雨の耳元で声がする、本当に不意打ちであった。そして彼女は
なっ―――――
次の瞬間に僕の視界は変わった、いや隠されていた視界があらわになっただけなのかもしれない。
それは悍ましい景色だった、有無は赤く、周りが業火が渦巻いていた。頭の中で最後に残ったわずかな理性が考察する、この赤は血液だと、そして海で燃えているのは艤装だと、僕の理性が結論をだす。
そして――――――何かが、立っていた。声の主だろう、先ほどの理性とは真逆の本能がそう告げている。
そしてその顔を見た、凝視した。
そこにハ
刹那、視界がいや世界が歪ンダ。アカいアカい海と業火の境界線が曖昧にナッテいく、世界が縮マル。だんだんと迫ってくるその光景を前にシテ僕は―――――――――
「……………………れ!……ぐれ!……時雨!!」
!?
目が覚めて周りを見渡せ学生服の瑞鶴、そして前を向く学生たち。どうやら眠ってしまったようだ、らしくないな。平和ボケというやつなのかもしれない、まぶたに居座る睡魔を擦り取りながら思った。
何を見ていたんだろう、僕は。何を見ていたかといえば夢だ、それはわかっている、見たという自覚もある。
だけど何を見たのかは覚えていない、見たはずのものを覚えてないのだ。
「…………このように、現状の世界各国では艦娘を保有している国家を中心とした連合を形成しており………」
六時間目、歴史だったか。再起動した頭で教師の話を聞きながら、思い出す。艦娘養成学校だったら追加課題出されるだろうな、と思い苦笑した。
自然と、口からため息がもれた。
☆
横須賀鎮守府 執務室
ところ変わってこちらは横須賀鎮守府、そこでは二人の人物が人類未踏峰である山を前に唖然としていた。
その名も「報告書類山脈」、全国の提督を日夜苦しめる執務室に聳え立つ山脈だ。
「………なぁ大和」
「はい、何でしょう提督」
「これはなんだ」
「提出義務のある書類です」
「「………………………」」
即答、そして沈黙。両者ともに目が死んでいた、具体的にいうと死後三日たった魚の眼である。(わかりにくい)
それにしてもこの量は異常であり、おそらく提督の人生の中で五指には入るほどに多い。
とにもかくにもやらなければ終わらない、現実逃避する暇があるくらいなら仕事しよう、そう思うくらいには二人とも冷静であった…………が。
「なぁ大和」
「デジャヴですねその言い方。で、なんです?」
「さっきから同じことしか書類に記載されてないんだが、やれ先の都市戦闘で使用した艦載機についての詳細を求めるだの、沖合で使用された非質量兵器である戦略級兵器についての詳細だの………どれもこれも使用兵器の詳細なスペックを求めるものばかり、少しは経済的被害や物的損害についてのものはないのかねぇ?」
「仕方ありませんよ提督、今の今まで太平洋戦争当時の技術レベルの艦載機だったのに、今回の戦闘で使用されたのはニュートンも腰を抜かすぐらい変態軌道を可能に、いや実際に披露していた明らかにSFチックな艦載機ですよ」
「まぁ戦闘記録から多少もれることは予想したが……いろいろとイレギュラーが多かったからな」
「がっつり写っちゃいましたね、アカキリー」
事前に明石謹製のAKA粒子(通信遮断粒子、わかりやすく言うとミ〇フスキー粒子)を戦場にばらまくことで情報漏れも防ごうと画策した提督たちだったが、流石にすべて隠せるわけもなく、むしろかなりの数の資料が戦後報告という形で外部に流出してしまったのだ。
なぜ隠そうとしたかというと、理由は簡単、面倒くさいからである。
現在の世界情勢は海路を寸断されたことにより陸路を有するロシアが覇権を狙い、それを指をくわえて見ているわけにも行かないアメリカがあの手この手で権勢している状態なのだ。
なぜこのような勢力図でアメリカの同盟国である日本にお鉢が回ってこないかというと、日本が艦娘を大量保有しているからに他ならない。現状で世界で一番艦娘を保有しており、関連技術もはるか先に行っている日本とはなるべく関係を良好に保ちたいのだろう………あくまで
「それで提督、詳細は本当に出すんですが?」
「バーカ、出すわきゃねぇだろ。そもあれはウチの明石以外には作れないし、万が一作れたとして費用対効果が合わない。それに今後実戦に投入する予定はない、妖精さんの負担も考えないとな」
「ますますウチの明石さんが何なのか分からなくなってきました………あの人だけ世界観が違いませんか?」
実際、今回投入されたアカキリーは現段階の艦載機を発展させたものであるため(あくまで
そうなるとどんな手を使ってでも手に入れようとする輩が出てくる、まだ来てはいないが時間の問題だろう。唯一の救いは国内にそうした気配がみられないということか。
「そもそも提督、一応艦娘の建造などの基本的な技術はもう世界に公開しているんですよね、なら自国の艦娘を増やして戦力増強をはかればいいじゃないんですか?」
「…………それは少し込み入った話になるがいい機会だ、一区切りついたし休憩しがてらでもいいか?」
「ええ、勿論」
話しながらでもそれなりに進んでいた書類仕事を一時中断し、部屋を後にする二人。机の上にはまだ半分ほどの書類がそびえたっていた。
横須賀鎮守府 提督私室
「なんで提督の部屋なんですか、下手したら私刺されるかもしれないんですけど。」
「ウチにそこまで俺のことを好きなやつはいないし、いたとしても俺は大和一筋だ」
「……………いいから提督、さっきの続きを早く」
「?、まぁいいか。そもそも艦娘を建造するためには大前提として艦船の魂が必要だ、勿論資材も必要だがな」
提督の言うとおり艦娘、正確には人を艦娘にするために必要なのは「艤装」である、そして艤装を作るには資材、艦船の魂の二つ、そして妖精さんと専用の設備があることで初めて建造可能になるのだ。
「資材に関して日本は輸入する体制で行っている、それもこれも艦娘がいるからだけどな。艦娘がいなきゃりゃ海路を使うなんざわざわざ深海棲艦に餌を与えるようなものだ」
「それとこれと何の関係が?」
「大和、各国の艦娘関連の技術状況に関して言ってみろ。確か艦娘養成学校の現社で習ったはずだ、勿論この部屋なら傍聴対策もしてあるからそれなりのお前が握っている情報も話していい」
「え、ええ………まずはアメリカ、アイオワを筆頭とした艦娘の建造に成功しており、尚且つ艤装性能が此方と同等かそれ以上です。ただ極度の人員不足により自国の領海を完全にカバーするには至らず、未だに軍と共同していると。またかなりの練度不足により一戦闘ごとの損害も激しく、それが出撃回数の減少につながる悪循環を生み出すしているとか。次は………」
「そうか、もう充分だ」
「え?」
大和は困惑する、今話した情報は一般に出回ってないとはいえ、防衛関係の者にしてみれば周知の事実だ。故に彼女は突然話を途切れさせられたことに驚いたのだ。
「今アイオワと言ったが、何故艦娘が太平洋戦争当時ないしはその前後の時代の艦が元になっているかわかるか?」
「確かそれは……深海棲艦に対抗できる艦の魂の中で最も強いからじゃないんですか?」
「違うな、ここで重要なのは『艦の魂を拾いあげられる艦』というのは
「つまり、それは……」
「早い話、タンカーだろうが漁船だろうがそれこそイージス艦さえも人が乗っているか乗っていた艦ならば、艦の魂をサルベージすることは可能だ」
事実だ、そも艦の魂とは乗船していた人間の思念の集合体という考えがなされており、船として運用されてさえいれば魂の抽出は可能なのだ。
「まぁ、これから最新鋭のイージス艦の艦娘を建造しようとしたって今回のアカキリーみたいに資材と予算と国際関係の都合上面倒になる未来しか見えないんだがな」
大きな騒乱を起こすと分かっている火種を誰が好き好んで投げるだろうか、だからこその機密扱いなのである。この事実を列強各国が知れば、さらなる艦娘技術の開示を日本に求めるだろう。半形骸化してしまったとはいえ未だに国際連合や国際グループなどはあるのだ、もし各国に迫られたら交渉事を進めるのが他国に比べて下手な日本は押し切られてしまうかもしれない、ならそもそもそういう状況にしなければよいと提督は思っているのだ。
と、その時
~~~~~~♬
「ん?着信か、すまん大和、少し外すぞ。終わったらまた仕事のするから、先に執務室に戻っといてくれ」
「了解しました」
着信音であるバジリスクを連想する曲を聴きながら呼び出し人を確認する提督、呼び出し人は「瑞鶴」と書いてあった。
今回は曲がりなりにも提督が学校に行かせているので(また某青い親の脅h…もとい嘆願もあって)、一応
自分に直接つながる携帯の電話番号を教えているのだ。
とは言えいまは午前中、授業中のはずの瑞鶴が電話をかけてくるということに違和感を感じたが、緊急の案件である可能性を考慮して応答した。
「もしもし、どうした瑞鶴?」
『提督、少し報告することができたわ』
「その声は……加賀か?」
少女達の穏やかな日常の裏で、ある艦娘の過去と陰謀が渦巻くとき、物語の歯車は動き出す。
こんな終わらせ方してるのに間隔空くとか、作者最低だな!(自虐)