会議が終わった後イッセーは協力者の内の一人である八重垣と共に冥界を周っていた。
「しかし、八重垣さん。人間のあなたが冥界に来ても大丈夫なんですか?確か普通の人間には耐えられないはずじゃあ」
「心配は要らないよイッセーくん。ミカエルさまから加護を受けているから呼吸をしても何の問題もない」
証明すると言わんばかりに深呼吸をする八重垣に苦笑いをするイッセーだが未だに心配していた。
「私のことが心配かい?」
イッセーの内心を察したのか八重垣は訊くが黙るしかなかった。
「心配はいらない。私も覚悟を決めてここに来ているんだしそもそも妻を一人にするのは二度とゴメンだ」
「それを聞いたらなおさらあなたを死なせはしません」
イッセーは真剣な表情で答えると八重垣も先ほどとは別人になり、寧ろこれこそが本当の顔だと語らせた。
「フッ、私も護られてばかりではない。いざというなったら首だけになっても敵の喉を噛みちぎるさ」
八重垣の覚悟を感じ取ったイッセーはこれ以上語ることはなかった。語るとしたら戦場の中だろう。
「お前が兵藤一誠か?」
「そうですけど、あなたはどちら様で?」
後ろから呼び止められたイッセーは振り向くとそこには小さいドラゴンがいた。しかしイッセーは緊張を解かなかった。
敵意がないとはいえ、ティアマットと同じくらいのドラゴン相手に腑抜けているほど気を抜いていなかった。
「なるほど、冥界の到着から見ていたが一分も油断していないな」
小さいドラゴンはニヒルに笑いながら
「俺は
タンニーンの自己紹介にイッセーは納得する。おそらく本来の姿はドラゴン化したティアマットと同じくらいのサイズと予測する。
「別にとって食おうというわけじゃない。力を抜くがいい」
タンニーンはフッと笑いながら言うとイッセーは余分な力を抜いた。
「何故あなたのようなお方がわざわざ?あなたもイッセーくんに危害を加えるつもりでしょうか?」
冥界に来てからイッセーは英雄のような目で見られたりもしたが兄の一正がはぐれ悪魔となったので一部の悪魔からは襲撃もあったりした。 当然イッセーと八重垣は死なない程度にアホな悪魔たちをシメたが
「手厳しいな、まあいい。これから魔王城まで行くが送って行くか?」
「イッセーくんどうする「それじゃあお言葉に甘えて」え?」
八重垣はイッセーに尋ねるが気にせずにタンニーンに近づいた。
「さあお前さんはどうする?」
「………乗らせて貰おう」
タンニーンはニヤニヤ笑い、八重垣はバツが悪そうにタンニーンに近づく。
「スゲー!まさかドラゴンに乗るなんて思いもしなかった!」
「ハハハ!俺もウルトラマンを乗せるとは思わなかったぞ!もしかしたら後々に伝説になるかもな!!」
イッセーははしゃぐと元のサイズになったタンニーンは大笑いする。
「八重垣さん、早くしないとパーティーが始まりますよ」
「……ああ、今行くよ」
八重垣は子供のようにはしゃぐイッセーに嘆息しながらも着いて行く。
「ここが悪魔のパーティーか、なんかヤバい儀式をやりながらやるかと思ったけど普通のパーティーなんすね」
「確かに賑やかなものだ………っと、イッセーくん、僕は適当に楽しむから君は若い者同士で楽しんでおいで」
若干ニヤニヤした顔で八重垣はイッセーと眼に映ったのは離れる。イッセーはなんのことか分からないが理解するまで時間はかからなかった。
『イッセー(くん)(さん)(先輩)』
「あ、みんな………」
イッセーが言葉を失うのは無理がなかった。絢爛なシャンデリアや食欲を唆らせる食事でさえ飾りにすぎない。そう思わせるほどの魅力、イヤ、魔力を身に付けたリアスたちがいた。
アーシアは罪と闇を照らすお日様を表したような黄色いドレスを纏っていた。その金髪とドレスはどんな罪人であろうと笑顔で許すアーシアを映していた。
ゼノヴィアはアーシアと対極に悪を裁き、悪を清める水のような青い髪を映えさせるような青いドレスを着ていた。
白音は和ませ癒す子猫のような見た目を強調させ、アーシアと同じ可憐さを現す白いドレスを着ていた。
黒歌は白音とは異なり、男を弄ぶ小悪魔な猫を彷彿させるような黒いドレスを着ていた。戦闘時の和服とは真逆のドレスは妖しい美貌を引き立てていた。
リアスは鮮やかな紅髮を際立たせるような真紅のドレスを纏っていた。鹿のような長い脚と蜂のようにくびれた腰、そして全ての男女を魅了してしまうほどの豊かな胸が老若男女を魅了した。
「綺麗だ……」
イッセーはあまりの美しさに見惚れ声を失ったが
「イッセー」
「は、はい」
リアスがイッセーを正気に目覚めさせるが如く呼び止めイッセーの顔に手を添える。
「みんなはイッセーの感想が聞きたいらしいけど、どうかしら?」
リアスは挑発的な笑みを浮かべながら胸を強調してイッセーを誘惑する。
「ええっとそれはですね……」
イッセーは顔を赤らめながら視線を逸らそうとするが
「にゃん♪」
「むぶ!?」
黒歌はイッセーの顔に両手を添えて振り向かせてリアスと朱乃と遜色ない豊かな胸に埋もれさせた。
「そんなに恥ずかしいなら私のおっぱいだけ見てればいいにゃん♪ムラムラが収まらなかったならあとでしっぽり「させない(わ)(です)よ」チッ……」
黒歌はそのままイッセーを誘惑しようとするがリアスたちに阻止され舌打ちした。
「今のうちに………くわばらくわばら」
リアスたちが言い争っている隙にイッセーは気づかれないようにひっそりと抜けていった。
「ふ〜〜……せっかくのパーティーだってのにこれじゃ気が休まらないな」
「贅沢な悩みじゃな」
イッセーは一人で黄昏れていると後ろから誰かに声をかけられ、振り返るとホームレスに似た格好をした長い髭の老人がいた。
「貴方は?」
「ふむ、通りすがりのただの老いぼれじゃよ」
老人は長いヒゲを指で弄りながらそう答えるとイッセーを見ながらフムと言うと。
「お主はこのパーティーを楽しんでいないと見た」
「いえ、そう言うわけでは………」
イッセーは否定しようとするが老人の次の一言で口を噤んだ。
「自分には女を惚れる資格はないと思っているのか?」
「………………」
イッセーは答えない。しかしその沈黙が答えそのものだった。
「ふむ、宗教は違うが迷える子羊に一言。強さだけがお主の全てだと思うな」
「っ!」
言葉に反応するイッセーに老人は笑みを浮かべる。
「光があれば闇があるように、太陽があれば月があるように、人には強さがあれば弱さもある」
「………まあそうですね」
イッセーは老人の言葉にこれまでのことを思い浮かべていた。
「あのおなごたちも誰もお主の強さだけを見ているわけではない。お主の弱さもちゃんと分かっておる」
イッセーは答えない。しかし答えはもう出てた。
「それではおなごたちと仲良くのぅ」
老人は直感したのかイッセーに問い詰めるようなことをせずパーティー会場へ戻った。
「誰もいないな……」
パーティー会場から少し離れた森の奥で薄笑いを浮かべながら歩いていた。
「今度こそ………今度こそ僕のものにしてくれる。もう二度と手放さないよ」
男が笑っていたがその顔に付いているのはドス黒い闇が混ざった瞳だった。
「あの薄汚い兵藤一誠には絶望を味合わせてやる」
イッセーの名前を出すと怒りの表情を浮かべたがすぐに薄気味悪い笑顔に戻る。
「待っててね僕の………」
男は緑の髪を揺らしながらその足を進めた。
次の話がいつ出来るか分かりませんがよろしくお願いします。