Fate Zero After ##   作:焼肉大将軍

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第二幕 英霊集結
英霊集結


「ふむ、始まったと見て、間違いない様だね」

 

 九条の街外れにあるラドクリフ家の洋館の一室。テレビを前に白銀の英霊、セイバーは言った。テレビ画面では燃え盛るホテルの一室が映っている。金切り声を上げるレポーターが何事か叫んでいる。どうやら先程、九条繁華街近くのホテルにて爆弾騒ぎとそれによる火災があったらしい。先日から起こる住民の失踪・怪死と共に市全域に厳戒態勢が敷かれた上での事であった。

 勿論、ニュースの内容は審判役を務める教会によって情報統制が入っているにしても、これは一戦やらかしたと見て間違いあるまい。全ての英霊が出揃い、審判役から聖杯戦争の開始が言い渡された直後の事である。

 セイバーはテーブルの上の皿から胡桃を取ると片手で器用に殻を割って中身を食べた。

 

「マスターは、どうする気かな?」

「知れた事。全て倒す。それが父様から与えられた至上命令だもの」

 

 マスターであるホムンクルスの少女は当然とばかりに答える。少女の言葉の自信は虚勢ではない。彼らは圧倒的に有利な状況にある。御三家の一角ラドクリフ家の手回しによって敵地の中に強固な工房を構え、今回の聖杯戦争において最強の戦闘能力を持つ魔術師が最優のサーヴァントであるセイバーを召喚したのだ。正に磐石の布陣である。

 

「苛烈だね。だが、それは結果に過ぎない」

 

 セイバーが親指で胡桃を弾く。胡桃は真っ直ぐに飛んで、窓の外、庭の向こうの通りにある電柱の上に止まっていたカラスを射抜く。

 

「あれは……」

「使い魔だね。視線が四つ。この拠点は既に敵にも知られている様だ」

 

 言いながらセイバーは塀の上に座っていた猫へと胡桃を飛ばして撃落とし、少女へと向き直って微笑む。

 

「では出掛けようか」

「出掛けるって、どこへ?」

「さて、何処にしようか? 何にしても、こんな所にいたって気が滅入るだけだろう?」

「意味不明。拠点を放棄するつもり?」

「いや、そんなつもりは無いさ。少し、辺りを見て回るだけだ。そうだな、マスター。君はどう行動するべきだと考えているのかな?」

 

 批判の言葉を述べたマスターに対して、セイバーは肩を竦める。アルファは淡々と続けた。

 

「聖杯戦争の序盤は様子見がセオリー。私達は強固な工房というアドバンテージがある。この工房内で守りを固め、使い魔で情報を収集する。動き回らなければならないのは寧ろ強固な拠点を確保出来ない外来の魔術師達、それと、アサシンやバーサーカーのマスターとなった者達」

「へぇ、何故そう思う」

 

 セイバーは笑いながら腕を組み、アルファへと問うた。本来、各英霊には召喚された時点で聖杯戦争についての知識が備わっている。アルファはセイバーの真意が分からず、苛立ちを感じながらも、問いに答える。

 

「消耗の激しいバーサーカーで長期戦は無理。マスターが保たない。正攻法で勝ち目の無いアサシンも同じ。敵の情報収集が生命線になる以上、動かなくてはならない。外来の魔術師達はどう頑張ってもそれ程強固な工房を築けない。時間が無いし、拠点を強化すればするほど他の魔術師に居場所がバレやすくなる。例外はキャスターくらい」

「他のマスターについての情報は?」

「今判明しているマスターは六人。正確には六組。御三家の私、マキリ、御形。時計塔の講師オーギュスト。元審判役の聖堂教会所属の神父サヴィオ。東欧の魔術師フォンダート兄妹。もう一人時計塔から参加すると聞いていたけど、そちらは結局、参加出来なかった。だから、残る一人は不明」

「ふむ、彼らについて詳しい情報はあるのかい?」

 

 セイバーが続けて問い、アルファが返す。

 

「マキリの拠点は南東の住宅街にある古い一軒家。蟲を魔術によって使役する。御形の拠点は旧市街の外れにある。魔術の種類は不明。時計塔のオーギュストは駅前のホテルを拠点に選んでいる。拠点を隠す気ゼロ。相当な自信家だけど、それに見合う実力はある。時計塔屈指の土使い。元監督役サヴィオの拠点は不明。元代行者らしく、戦闘経験、身体能力は断トツと見るべき。フォンダート兄妹も拠点不明。音を操り、暗殺を得意とすると聞いてる」

「良く知ってるね。その情報はどこから?」

「父様が私の為に調べてくれた物だから間違いない」

 

 アルファはそう断じた。それを聞くと、セイバーは一度目を閉じて黙り込み、何事か考え込んでいたが、少しすると元の柔和な表情に戻る。

 

「ふむ、成る程。では他の参加者はどう行動する?」

「優先的に令呪を与えられる御三家、マキリと御形は安定して戦闘能力の高い三騎士の残り、ランサー、アーチャー、もしくは強力な宝具を持つ英霊が多いライダーのいずれかを召喚した筈。時計塔のオーギュストも多分そう。マスターは身を潜め、ランサー、ライダーの機動力、アーチャーの単独行動スキルを活かして偵察、哨戒行動を取る」

「何故、その三クラスだと思う?」

「安定して強い。消耗が激しいバーサーカー、大した戦闘能力を持たないアサシン、対魔力スキルを持つ相手に絶対不利のキャスターを、早い段階で降霊可能な御三家の人間が態々選ぶ理由が無い。そして、オーギュストが拠点の隠匿に力を注いでいないのも、自身の力の誇示だけでなく、強力な英霊を従えているからだと推測出来る。それに、彼等は強力な英霊を呼べる触媒を得られるだけのツテもある。戦闘に秀でたクラスは御三家とオーギュストで独占していると見て良い」

「ふむ、成る程。では他のマスターは?」

「外来の魔術師達については詳細不明。でも、行動は大体分かる。バーサーカーのマスターは敵を探してセットで徘徊」

「何故、二人一緒で徘徊すると思う?」

「理性も対魔力スキルも持たないバーサーカーの単独行動は自殺行為。そして、対魔力スキルを持たないバーサーカーでは敵の工房内での戦闘に耐えられない。故に、獲物を探して徘徊。キャスターのマスターは陣地作成一択。アサシンはマスターは身を潜めつつ、情報収集」

「何故、アサシンは単独行動する?」

「下手に二人で出歩くとアサシンが持つ気配遮断スキルの邪魔にしかならない。それに、戦闘になった場合、アサシンの戦闘能力ではマスターを護りきれない」

 

 アルファは一度言葉を切って自らのサーヴァントを見据えた。相変わらず彼は笑っているばかりでその真意は見定める事はアルファには出来なかった。彼女は続ける。

 

「彼等は暗殺の機を待つ為、土地の龍脈上にあるであろう敵の拠点を探す。でも、御三家とオーギュストの工房には迂闊には踏み込めない。気配遮断スキルも万能じゃない。そして、アサシンの戦闘能力では三騎士には勝てない。それは向こうも分かっているはず」

「成る程、では僕等が取るべき行動は?」

「こちらに威力偵察を行う可能性のある御三家との戦闘に向け、万全の態勢で望む事」

 

 セイバーは首を振る。

 

「それでは不足だ。僕達が恐れるべきは、最優のサーヴァントに対して弓、槍、騎兵が手を組む事だ。一度、威力偵察に来たランサー辺りを逃がせば、これは癖の強い他のサーヴァントと違って簡単に起こりうる。拠点が互いに分かっている御三家達は接触が容易だしね」

「偵察に来た敵を工房内で確実に仕留めれば……」

「向こうも雌雄を決するつもりでは来ない。敵も英霊、逃げに徹されれば確実に落とせるとは言い難いな。宝具を使えば殺れるだろうが、僕の宝具は使えば真名がバレる。この拠点が敵の使い魔共に見張られてるとあっては、他の連中にもバレるだろう」

 

 セイバーは言いながら、腰の剣を指で叩いた。

 

「ではどうするの?」

 

 アルファの問いに、セイバーは笑顔を返す。

 

「先にランサー、アーチャー、ライダー辺りの誰かと組んでしまおう。バーサーカーを使い潰すのが最も美味いが、流石に無理だろうからね。さて、先の三騎を従えているであろう、マキリ、御形、オーギュストとやらについて詳しく分かるかい?」

 

 

 

 かくして、夜半、セイバーとそのマスター、アルファは監視の使い魔を処理した上で洋館を抜け出し、古臭い店屋が軒を連ねる商店街を通って南東の住宅街へと向った。目的地は御三家の一角、マキリの館。目的は同盟の申し入れだ。

 今は間桐と名を変えたマキリ家は、怪物と呼ばれた先代の当主が先日亡くなっており、今回参戦したのは新鋭の若造だと言う。得体の知れない御形よりも御し易し、との判断であった。先代同士が交流があった事もある。オーギュストを外したのは、自信過剰な手合いであろう点と、外来のマスターと組んでは、御形とマキリ、御三家同士の結束を呼びかねないとのセイバーの懸念からだった。

 尤も同盟成立と同時に御形、オーギュストと切り崩しに掛かる予定であるので、問題では無いのかも知れない。無論、彼等を先に叩くのは三騎士の二体が手を組んだとあらば、敵の更なる同盟を呼びかねないからだ。彼等さえ落としてしまえば、残る三騎が手を組んだとて恐るるに足らず、という訳である。

 

「セイバー、何故、貴方は霊体化しないの?」

「何故って、つまらないだろう? それに折角女性と店を眺めながら歩くんだ。当世風に言えばデートという奴じゃあないか? そのエスコート役たる男に、消えろってのは酷いんじゃあないかい?」

 

 セイバーはそう言って肩を竦めると、先程自動販売機で買ったアイスを一口齧る。彼はその銀髪を後で括り、ラドクリフの洋館にあった黒のスーツを着こなしている。どこか無機質な印象を残す美少女と一部の乱れも無くスーツを着込んだ優男。疎らに燈る街灯の下、シャッター街を歩く彼等の姿は、少々異質な存在と言える。

 とはいえ、辺りに人目は無かった。他の魔術師の仕業であろうが、既に先日から行方不明者や怪死者が出ている上に、更には爆弾騒ぎがあったばかりと来ている。夜半の人通りが無くなるのも無理は無い。

 

「貴方を現界させるにも大量の魔力が必要。こんな事で消耗は馬鹿らしいわ」

「こんな事とは心外だね。どの様な道であれ、道中楽しまなくては。それに、君にはこの程度、大した事は無いだろう? はい、どうぞ。冷たくて美味しいよ」

 

 セイバーはそう言ってアイスをアルファへと差し出す。彼女は暫しセイバーを睨んでいたが、やがてそれを受け取って口を付けた。

 

「美味……しい……?」

 

 口の中に広がった未知の食感に、アルファは怪訝な顔をする。それは彼女にとって未知の食感だった。何より、冷たくて、甘い。神妙な顔付きになっているアルファの顔を見て、セイバーは微笑んでいる。それがどうにもアルファには気に入らない。

 

「何?」

「いや、何も」

 

 ジト目で睨むアルファにセイバーはただ微笑を返す。それがまたアルファには気に入らない。

 

「貴方のやっている事は無駄だらけだわ」

「ふむ、そうかい? それより、アレなんか似合うと思うんだけど、どうだろう?」

 

 そう言ってセイバーは目の前を指差す。アルファが促されて視線を向けた先にあったのは、明りの落ちたブティックのウィンドウに飾られた白いワンピースだった。

 

「セイバー、貴方、あんな物を着る気?」

「僕が? ハハッ、マスター、君が着るんだよ。君は華奢だし、素材が良いからね。ああいう服が似合うんじゃあないかと思う訳だ」

「……意味不明。機能的じゃない」

 

 アルファはセイバーを睨み付ける。アルファはこの英霊が苦手だと改めて思った。ステータスは高いし、何より父様の選んだ触媒によって呼ばれた英霊なのだ。弱い筈は無い。しかし、軽口が多く、どうにも捉え所が無い。何より、真面目でないのだ。この聖杯戦争に対して。

 私が聖杯を持ち帰れるかどうかは、この英霊に掛かっていると言うのにッ!!

 憤懣を宿した少女の瞳を、セイバーは肩を竦めてやり過ごす。正に、柳に風、暖簾に腕押しといった体だった。アルファはどうにも堪え切れなくなって言う。

 

「真面目にやって、セイバー」

「ふむ、真面目に? それは心外という物だ。これでも私は、至極真面目にやっているのだがね。まぁ、良いだろう。では、マスター。今、僕達を付けている奴は誰だと思う?」

「えっ?」

 

 アルファは不意の言葉に頓狂な声を上げる。彼女は全く気付いていなかった。咄嗟に、アルファが敵の気配を探ろうとし、セイバーがそれを制する。

 

「あ、視線を送らない。索敵もしない。緊張が相手に伝わる。笑って笑って。何でもない会話をしている様に。一人じゃないね。幾つか視線を感じる。魔術師とサーヴァントに、使い魔かな」

「セイバー、いつから気付いていたの?」

 

 アルファは笑おうとして、ぎこちなく引き攣った顔で聞く。ムカつく事にセイバーはその様子に大きく笑うと、細い路地を指差す。示した先は目指す間桐邸とは逆方向だ。

 

「ちょっと前から、気配はあった。人気も無い事だし、誘い出そうか」

「正気とは思えない。速やかにこの場から離脱するべき」

 

 アルファは自らのサーヴァントの信じ難い言葉に我知らず声を荒げる。最早、彼女は自らの態度を気にかける余裕も無かった。当初の予定は既に崩壊している。敵に知られる事無く間桐との接触は最早不可能。否、この場に止まれば、敵サーヴァントとの戦闘は避けられまい。それも他の敵魔術師に監視された状態で相手取る羽目になりかねない。それだけは避けなければならなかった。

 

「ふふ、それは正論だが、正道ではないね。あらゆる道は切り拓く物だ。降りかかる火の粉は払わなければならない」

 

 対するセイバーはあくまで泰然自若とした態度を崩さない。

 その目は自負と自信に満ちている。しかし、彼が肉食獣を思わせる好戦的な笑みを浮かべ、その目に妖しい光が宿るのを見て取ると、アルファはどうしようもない不安に襲われるのだった。其処に在るのは伝承に語られる常勝の騎士では無く、戦闘を愉しまんとする戦鬼の貌だ。

 アルファは失策を悟った。自らのサーヴァントについて見誤っていたと。

 このサーヴァントを私は、御し切れるのか? どうこの場を切り抜ければ良い? 逃げる様にセイバーを説得する。どうやって? 令呪を切る? こんな序盤で?

 彼女の頭脳は目まぐるしく回転し、自問自答を繰り返した。アルファは幼子が抱くのと同種の焦燥で以って、言葉を探す。全ては、自らの存在理由の為に。彼女に全てを押し付けて高みの見物を決め込む父親の為に。

 しかし、結果として、それは徒労に終わる。

 セイバーが笑いながら言う。

 

「と、言うよりもね。既に敵の手の内みたいだ」

 

 弾かれた様に、アルファが周囲を見渡す。正に、その通りだった。

 街灯の明りも疎らな夜のシャッター街。そこに一切の人影は無い。

 余りにも、人気が無さ過ぎる!!

 

「セイバー、何時から!?」

 

 弾かれた様に視線を上げて、アルファは周囲を見回す。澱んだ魔力に拠る檻。何故、気付かなかったのか、彼らのいる商店街の一角を包み込む様に、すっぽりと辺り一円が魔術結界によって覆われている。

 アルファは、確かに今聖杯戦争における最高の戦闘能力を誇るマスターである。しかし、それはあくまでカタログスペックだけの話だ。創造されたばかりのホムンクルスである彼女には、吸収し、植えつけられた知識は在っても、経験は存在し得ない。ましてそれが他の魔術系統による物であれば尚更である。

 絶対的な魔術戦の経験不足。

 それこそが彼女の如何ともし難い弱点であり、彼女が結界に気付かなかった理由である。

 

「心配しなくて良い。何も問題は無いよ」

 

 緊張に身を固くするアルファに、セイバーは普段通りの優しい微笑みを向け、その頭をくしゃくしゃと撫でた。その笑顔を受けて、アルファの脳裏にある予感が過ぎる。彼女は即座に何事か説得を試み様とした。しかし、口から出たのは短い悲鳴だった。

 

「ヒッ――」

 

 突如、空気が変質した。

 セイバーがその魔力と闘気を周囲へと発したのである。

 剣の英霊の臨戦態勢。その恐るべき剣気による圧迫感は、戦闘特化ホムンクルスであるアルファにすら死というものを理解させるに余りあった。

 気圧されたアルファが一歩飛び退く。そして、セイバーに動きが無い事に気付き、自らの胴が繋がっている事を確認すると同時に、彼女のその身体から汗が噴出した。

 

「な、何を――」

 

 アルファが抗議の声を上げ、セイバーが遮る。

 

「静かに」

 

 その気当てに反応したのはアルファだけでは無かった。

 

「反応、二つ――見ィつけた」

 

 セイバーは後方に振り返り、不敵に笑う。

 

「敵だ、マスター。先に行く」

 

 言葉と同時に霊体化したセイバーの姿が掻き消える。彼の眼は既に追跡者の影を捉えていた。敵へと向ったセイバーの魔力を追って、直ぐにアルファも走り出す。

 ここに聖杯戦争、緒戦の火蓋が切って落とされようとしていた。

 

 

  #####

 

 

「ふうむ、空気が変わったな。何とも心地良い闘気を放つものよ。成る程、狙われておると見て、受けて立つ腹積もりか。あの英霊、相当な自信家らしい」

 

 同刻、セイバー達の遥か上空、神威の車輪上に仁王立ちし、ライダーは腕を組んでそうごちた。傍らに立つ彼のマスター、マドカは目を凝らして地上を見つつ、自らのサーヴァントに問いかける。

 

「こちらには気付いたかしら?」

「さて、どうであろうな? 既に、何人か、集っておるようだからのぅ!!」

 

 答えるライダーは心底愉快そうな笑みを浮かべ、遥か眼下を見下ろしていた。これから始まるであろう激闘の予感に高揚しているのに違いない。

 

「ラドクリフが偵察用の使い魔を始末したのは裏目に出たみたいね。ラドクリフが動くとみて直接様子を見に来た連中が他にもいるみたい。どうするの、ライダー?」

「仕掛ける――と、言いたい所ではあるが、ふむ、幾人か出揃うまで、もう少しばかり様子を見るか。もっと面白い事態になるやも知れぬ」

「ふぅん、仕掛けるのね」

 

 そう呟いたマドカの顔を見てライダーは怪訝な顔をする。

 

「おい、嬢ちゃん、そりゃあ――」

 

 マドカの左目が燃えていた。比喩ではない。確かに彼女の左目が青白い炎に包まれているのだ。マドカが続ける。

 

「敵は四人。五騎結集って事かしら」

「ほう、分かるのか?」

 

 マドカの索敵能力に感心し、嬉しそうに笑うライダーの顔はどこか餓えた獣を思わせる剣呑な雰囲気を纏っていた。腰の剣に廻した指に力が込められているのが見て取れる。マドカは釘を刺す。

 

「ええ、見える。ライダー、私達は負けられない。分かってるわよね」

「フン、誰に向って言っておる。無論であろう」

「オーケー、気張るわよ」

 

 にやりと笑うライダーに、微笑を返すマドカ。彼女は足元のトランクケースを開くと、人形を取り出した。カラベラ人形と呼ばれるそれは、メキシコで死者の日に飾る子供大の髑髏の人形だ。それぞれが色の違う服を着飾り、その手に武器を持っている。

 

「何だそれは?」

「私の、戦闘用魔術礼装」

 

 その言葉と同時に、彼等しゃれこうべの顎がカタカタと音を立ててさざめき始めた。

 






本格的に戦闘開始。
もうちょっと導入部は続きます。
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