魔法少女リリカルなのはvivid~過去と未来と現代の交差~   作:ガイル

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区切りがいいところで切ると、少し短くなってしまいました。

ですが、ここが多分一番良い区切りだと思います。

では、13話目入ります。


十三話“終わりと始まりの交差”

 合宿3日目。

前日が模擬戦三連戦という事もあったので午前中は訓練はオフのようだ。

 

「ガイさん、フリージアさん。早く来てくださ~い!!」

 

今はこの合宿に来ている無人世界カルナージの大自然を楽しむため、ヴィヴィオ達とノーヴェで昼食の入ったバスケットを持ってピクニックに行くようだ。俺とオリヴィエも一緒に行くことになった。

 

「元気だね~」

「年寄りの発言ですよ」

 

隣に居たオリヴィエが苦笑しながら俺の方を見る。会話をしながらも足は止めない。

 

「いや、ヴィヴィ達の元気さは他の子供たちとは違うなって思ってさ」

「確かに、あれほど活気溢れている子たちは滅多に居ませんね」

「ああ、あいつらは元気過ぎだ。まあ、それが良いところだけどな」

 

そんな世間話をオリヴィエとしていると皆が待っている場所までたどり着いた。

 

「ノーヴェさん。どのあたりに行くんですか?」

「そうだな。山の景色がよく見えるところがあるんだ。そこで昼食を取るとウマいぞ~」

「本当ですか!?」

 

リオは大喜びのようだ。

 

「うん、あそこの景色はとっても絶景なの。皆と見るとまた違うかもね」

 

ルーテシアも笑いながらノーヴェの意見に賛成した。

 

「俺は午後から訓練が始まるから、食事を取ったら戻らないとな」

「私も参加してみたいです」

 

近くに居たアインハルトが少し羨ましそうな瞳で見上げてきた。俺はそのアインハルトの頭に手を乗っけた。

 

「やめとけ。子供がいきなり出来るレベルじゃない。基礎をしっかりと叩きこまれた後なら大丈夫だが」

 

エリオやキャロは機動六課に所属していた時はたっぷりシゴかれたと聞いた。なのはさんの訓練は並大抵のものじゃないからな。

俺がなのはさんの訓練によくついて来れたなって時々思う時がある。

 

なのはさんの指導がウマいからかな。ヴィータさんの方がウマいって言ってたけど。

 

「……結局、一度もガイさんと対決していません」

 

昨日の模擬戦三連戦は最後の試合だけトレードをしたが、最後のチームもアインハルトと一緒だった。

アインハルトとの拳を交えることが昨日は無かったのだ。それが悔しいのかアインハルトは顔を伏せている。手元にあるバスケットを握っている手に力がこもり、ギュッとしているのが分かった。

訓練でもなんでもいいから俺ともう一度対決したいのだろう。そんなアインハルトを見て俺は軽くため息を吐いて笑みを作る。

 

「ま、後で対決してやるから。今はこの時間を楽しもうぜ」

 

そして、アインハルトの頭に乗せていた手で頭を撫でてやった。

 

「……また子供扱いですか」

 

口ではそんな事を言っているが俺の手を振り払う様子もないので嫌ではないようだ。

 

むしろ少しうっとりして俺を見上げてないか?バスケットを持った手も緩んでいるようだし。

 

「おやぁ?おやおやおやぁ~?」

 

そんな様子を見て、ルーテシアが意地悪な笑みを浮かべて近づいてきた。

 

「ん?どうしたルーテシア?」

「な、なんでしょうか?」

 

近づいてきたルーテシアは更に意地悪な笑みを重ねて口を開く。

 

「アインハルトはガイさんの事……」

「!?」

 

今、アインハルトの動作が全く見えなかった。目の前に居たアインハルトはいつの間にかルーテシアの口を右手で抑え込んでいるところだった。左手にはしっかりとバスケットを持っているあたりが凄い。

 

「んーんー!!」

「はぁはぁ……へ、変な事言わないでください」

 

ルーテシアから何を言いだそうとしたのかはわからないが必死な顔で真っ赤にしているアインハルトを見た限り、恥ずかしい事なのだろう。

俺は聞かない事にした。

 

「やっぱり……」

「アインハルトさんも……」

「はぁ……」

 

そんな様子を見てヴィヴィオ達は何やら真剣な面持ちだ。

 

「どうしたヴィヴィ達?」

「え!?あ、う、ううん。何でもないよ!」

「そう?ならいいが」

 

真剣な表情から一変、笑みを作って俺の方を向いた。俺は再びアインハルトの方を見る。

 

「大丈夫か?」

「はい、私は大丈夫ですので」

「いや、アインじゃなくてルーテシアの方」

「え?」

 

アインハルトは俺の言葉に気付いてルーテシアの方を見た。ずっと口と鼻を押さえられていたせいか息が出来ずに白眼になっていた。

 

口から、アインハルトの指と指の間から白い何かが出てるぞ。あれが魂か?

 

「あ、し、失礼しました!!」

 

アインハルトが急いで手を離すと、口から出ていた白い何かが口に入っていき、白眼から虹彩のある目に戻り、呼吸を始めた。

 

「はぁはぁ……危うく死ぬところだったわ……何か川が見えたし」

「それは危ねえな、お嬢」

 

ノーヴェはそう言いつつ笑っていた。まるでコントを見ている観客の人のような言い方だ。俺もそんな感じで答える。

 

「こんなところで死亡者が出なくて良かったな」

「まったくだ」

「ちょ、ちょっと、そこの2人!!言い方がおかしくないですか!?私たった今、死にかけていたのに!!」

 

こんな感じの流れで絶景がよく見える場所へたどり着いた。そこは丘の上で草原がそこだけ拓けている。

そこから見る山はもはや絶景としか言い表わせないような光景だ。山の圧倒的な存在感が真正面から味わえるとでも言うところか。

 

「……凄いな」

「ええ」

 

俺やオリヴィエは驚きの表情を隠せないでいた。こんな絶景は都会では見ることなんて皆無に等しい。

 

「うわ~、ここは初めて来たよ~凄い光景だね~」

「ええ、私のお気に入りの場所だもの。さ、お昼にしましょう」

 

そう言って、ルーテシアはレジャーシートを引き始める。

そして、中央にバスケットを置いてレジャーシートに皆座り、バスケットを開ける。

 

「おお、旨そうだな。作ったのはメガーヌさんだっけ?」

「メガーヌさんの手料理が不味いことなんてあったか?」

「ははっ、確かにな」

 

ノーヴェの意見には賛成だ。メガーヌさんの手料理が不味いと持った事はこの合宿中では一度もない。バスケットの中身は長方形型のサンドイッチがギッシリと詰まっていた。この人数なら丁度良いぐらいだ。

バリエーションが豊富な挟まっている具材をしっかりと見せることで食欲を引き立たせる。料理もそうだが相手の食欲を引き立たせる技術をメガーヌさんは持っている。ちょっと教わりたくなってきた。

 

「いただきま~す!!」

 

リオがもう待てないっていう雰囲気を晒し出して、バスケットからサンドイッチを1つ手に取り口に運んだ。

 

「美味しい!!」

 

リオは満面な笑みをして大喜びだ。

 

「まったく、リオは早いよ。まあ、いいわ。皆さんもいただきましょう」

「うん、いただきま~す」

 

皆も食事を取り始めた。俺も頂く事にした。

 

「旨いな~。この大自然の中だから更に美味しく感じるよ」

「そうですね。メガーヌの料理は美味しい」

「自慢の母ですから」

 

俺とオリヴィエがメガーヌさんを高評価してるのをルーテシアが自慢げな顔をした。

そして、皆は各々雑談を始めた。俺はサンドイッチが美味しくてついつい手が伸びてしまい、気付けば飲み物が欲しくなってきた。

 

「ガイさん、どうぞ」

 

隣に居たコロナがお茶の入ったコップを渡してきた。

 

「ありがと、コロ。ちょうど飲みたかった」

「いえいえ。そんなに食べていると飲み物が欲しそうだと思ったので」

 

俺が受け取るとコロナは満足げに微笑んでいた。俺はそのコップを一口飲む。さっぱりとしたお茶が渇いた喉を潤した。

 

「ふぅ」

 

俺はコップをレジャーシートに置いて、空を見上げた。雲1つない良い天気だ。

 

外で食べるご飯というのも開放感があっていい。皆と温かな食卓を取れる上にこの良い環境。俺にとっては贅沢すぎるな。

 

「そういえば、アイン」

「むぐっ!」

 

この環境に馴染みながらふと脳裏に浮かんだモノがあったので、俺はアインハルトの方を向いた。

アインハルトは食べている最中に声を掛けてしまったからか喉にサンドイッチを詰まらせていた。手で口元を押さえつつ、急いでコップに入っているお茶を飲んで息を落ち着かせた。

 

「あ、わ、悪い。食べてる時に声かけて」

「んっ……ふぅ。い、いえ。御気になさらずに。それで何でしょうか?」

 

少し頬が赤くなっているが聞く態勢に入ってくれたようだ。俺は先ほど思った事を口に出す。

 

「ああ、そう言えば朝方にはやてさんに新しいデバイスを頼んだんだよな」

「はい。八神はやて司令とは初めて映像通信でお会いして頼みました。八神はやて司令はさまざまな事件を解決に導いた歴戦の御方と聞いて、怖い人かと思いましたが、気さくでとても優しい御方でした」

 

はやてさんか。そう言えば俺も一度も会った事ないな。なのはさんやヴィータさんからはちょくちょく聞いた事はあるけど。俺も後で一度お会いしたいものだ。

 

「ふ~ん。ま、アインのデバイスがどんなモノになるのか楽しみだな」

「……はい」

 

嬉しいのか少し顔を伏せて答える。喜びの表情を皆に見られたくないのだろう。

 

「ところでよ、ガイ」

「ん?」

 

コロナの反対側に居たノーヴェが俺を呼んだので俺は返事をしてノーヴェの方を振り向き、再びコップのお茶を口に含む。表情はなぜか小悪魔な笑みを浮かべている。

 

「ガイはフェイトが好きなのか?」

「ぶっ!!」

 

飲んでいたお茶を思いっきり吹き出してしまった。それがノーヴェにかかる。

 

「あ、てめぇ!!きったねぇな!!」

「ゴホッゴホッ!!」

 

お茶が少し気管に入ってしまったようだ。息苦しく喉が痛い。

 

「だ、大丈夫ですか!ガイさん!?」

 

コロナが優しく背中を擦ってくれる。俺は何度か喉を鳴らして何とか落ち着かせる。

そして、コロナの方を見る。

 

「あ、ありがと、コロ」

「もう大丈夫ですか?」

「ああ」

 

俺はずっと背中を擦ってくれたコロナに礼を言った。コロナは心配そうな表情で見つめてきたが安心させるために笑顔を見せた。

 

「……あたしには何も言わねえのかよ?」

「ノーヴェが変な事を言うからだろ」

 

ノーヴェの方を向き直すと、ハンカチで俺の吹いたお茶を拭きながら少し怒ったような表情を見せる。

 

「ガ、ガイさん。フェイトさんの事が好きなんですか!?」

 

そこにノーヴェの話にリオが喰い付いてきた。他の子たちも何故か興味津々で俺を見てくる。

 

「え、え~と……」

 

視線が俺に集まり、言葉に詰まる。

 

俺がフェイトさんの事が好きかどうかをそんなに聞きたいのか?

 

俺は少し考えた。

そして、ある結論に達したので立ち上がる。

 

「ガイさん?」

 

ヴィヴィオが俺の行動にキョトンとした表情で首をかしげる。

 

「そろそろ訓練に戻らないと。それじゃ」

 

逃げる結論に達した。フェイトさんの事を恋い焦がれているかもしれない自分の気持ちを他の人に伝えるなんてことは恥ずかしくて言えない。

ビジッと聞こえてくるような素早い動作で肘から右手を上げて、俺は駆け足でその場を去った。駆け足の時に背中から何か聞こえたような気がするが振り向かず訓練へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ~あ、ガイさんに逃げられちゃった」

「ガイは純粋ですからね」

 

ガイさんの走り去った後を皆が困惑した様子で見送っていた。

 

「あれじゃ、フェイトの事を好きだと言っているようなもんなんだがな」

「や、やっぱり、ガイさんはフェイトさんの事が好きなんでしょうか?」

「う~ん、どうなんだろう?」

 

ああ、と言って少し凹むコロナさん。

 

「……でも、元気そうでなりよりです」

 

そう言いつつ私はオリヴィエの方を見る。

昨夜、ガイさんとなのはさんが外で話をしている所を聞いてしまった。何か大きな悩み事があり、それがオリヴィエとも関係しているらしい。

 

関係……しているのだろう。過去の人物が現代の世界に居る筈がない。それこそタイムマシンでも出来ない限り不可能に近いです。

 

「どうかしましたか、アインハルト?」

 

ずっとオリヴィエを見ていたからか、オリヴィエがこちらに声を掛けてきた。

 

「いえ、なんでもありません」

 

ガイさんがフェイトさんの事が好きなのかは気になりますが、元気そうでなによりです。

 

私は食事を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後の訓練はノーヴェに言われた事が原因で、フェイトさんばかり意識してしまった。おかげでちょっとミスが多かった。まあ、仕方ないと言えば仕方ないが。

 

「はぁ……」

 

俺はベッドに寝転がって天井を見た。蛍光灯と白い天井が視界に入る。

 

「まあ、こういう生活も悪くはないけどな」

 

ヴィヴィオ達と特訓して笑い合って、時には弄られて。部隊に入った時には思い描けなかった光景だ。

俺は右手を天井に伸ばす。その手の甲にはこれから起こる戦争から逃げることの出来ない証が刻まれている。何十回、何百回と“聖杯戦争”について考えた。

しかし、今の情報では決して答えに導く事が出来ない。その繰り返しで心に不安が、戦争というモノに恐怖が残っている。オリヴィエが居ることでそれも少しは解消できる。

 

でも、いざ始まるとなったら俺はやれるのだろうか?

 

「はぁ……」

 

先ほどのため息とは比べ物にならないくらいの重いため息を吐いた。

 

 ネガティブ思考に走ってるな。

 

「……眠いな。寝るか……ん?」

 

暗い考え事をして眠気が襲い始めた時、俺の耳にコンコンとドアの叩く音が聞こえた。

 

「……開いてるよ」

 

ドアを開けに行くのも面倒だったので相手に入ってきてもらうように催促して、ドアの方を見る。オリヴィエがまた何か話をしに来たのだろう。俺はそう思っていたが入ってきた人物が俺の想像していた人物と違っていた。

 

「ガイさん、こんばんは」

「こんばんは!!」

「こんばんは」

「……」

 

しかも、一人ではなく多数だ。ヴィヴィオにコロナにリオにアインハルト。初等科三人は挨拶をしてアインハルトはペコリと頭を下げている。

 

「ん?どうした?」

 

寝ているのも悪いので、俺は今考えていた思考を切り離して上半身を起こしてベッドに腰掛ける。ヴィヴィオが緊張した面持ちで言ってきた。

 

「きょ、今日、い、一緒に皆で寝てもいいですか?」

「……はい?」

 

良く見ると、コロナとリオは大きな枕を持っている。どうやら本気でここに寝るようだ。

 

「ここで寝たいのか?」

 

俺の言葉にコクコクとヴィヴィオ、コロナ、リオの三人は頷く。アインハルトは少し恥じらいながらも俺を見上げてくる。

そんな純粋な瞳で見られると断るに断りきれなくなる。俺は子供達から視線を外して答えた。

 

「……まあ、いいが」

 

そう言った瞬間、リオがやった~、と大喜びしてベッドへ飛び込んで横になった。

 

「あ、ずる~い」

「リオ、抜け駆けはだめだよ~」

 

ヴィヴィオとコロナもベッドに潜り込む。

 

「元気だね~」

「それは年寄りのセリフですよ」

 

アインハルトはゆっくりとこちらに歩いてベッドに腰掛ける。本日、二回目の指摘をされてしまった。俺は頭を掻いて片目を瞑る。

 

「……年かね~。まあ、いい。俺もそろそろ寝たいんだが」

 

俺はベッドを見た。ヴィヴィオ達に占領されてスペースがアインハルトが入るぐらいの大きさしか無い。俺が横になれる場所なんて無い。

 

「くっついて寝れば大丈夫だよ」

「うん」

「……」

 

まあ、確かに皆がくっ付いて寝れば俺一人分のスペースをとれると思うので寝れない事もない。だが、狭くないか?

 

「まあいいや。眠いし俺は寝るわ」

 

そう言ってベッドの隅で横になろうとした。

 

「違いますよ、ガイさん。ガイさんは真ん中です」

「ん?」

「ガイさんは真ん中ですよ」

 

笑顔で答えてくる子供たち。真ん中にスペースが出来ている。皆が少しずつ動いてくれたのだろう。俺はとりあえず真ん中で横になる事に。

 

「そ、それじゃあ失礼しますね」

「失礼します」

 

恥ずかしながらも子供たちが俺と同じ向きで横になる。いつの間にか川の字のようになっていた。

 

「……」

 

アインハルトはベッドの端でこちらに背を向けて眠っている。

 

「寝づらくないか?」

「ん~、そうでもないよ。よいっしょっと」

 

ヴィヴィオが掛け声で俺の肩を動かして、肩から下に入ってきて俺の腕を枕代わりにした。

 

「これでスペース確保しました」

 

にこやかに笑って俺を見てくる。そんなヴィヴィオの頭を撫でてやった。撫でたからか嬉しそうだ。

 

「わ、私もいいですか?」

「ああ。好きにしな。俺はそろそろ限界かも」

 

そう言って俺は目を閉じた。肩が動いているあたりコロナもヴィヴィオと同じことをしようとしているのだろう。

しかし、そこに睡魔が来て俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……さ……い」

 

暗闇の中、誰かが耳元で何かを呟いている気がした。

 

「……くださ……ガ……」

 

まただ。今度は軽く体を揺さぶられている。俺は目を開けるのも辛かったがこのまま体を揺さぶられて睡眠の妨げになるのは困るので静かに目を開けた。

 

「あ、起きましたか、ガイ」

「オリ……ヴィエ?」

 

深い眠りのレム睡眠の時に起こされたからか、体が異様に重い……と思ったが、違った。

 

「なんで俺に跨ってんだ、オリヴィエ?」

「いえ、耳元で囁こうと思ったのですが左右には子供たちが幸せそうに眠っていたもので、上に跨るしか届かないのです」

 

オリヴィエが俺の上に乗っていたのが体が重い原因なのだろう。しかも顔が近い。

 

「と、とりあえず降りろよ」

「ええ」

 

オリヴィエは俺の上から降りた。服装はなぜか浴衣ではなく上下の色が一緒の白いジャージ姿だ。

俺は静かに腕を動かして腕枕をしている子供たちを起こさないように抜いた。いつの間にかリオとアインハルトも俺の腕を使って眠っていたようだ。四人分の重さが両腕にのしかかったおかげで感覚が少し無い。

それにはあまり気にせず、とりあえずベッドから降りる。

 

「ガイ、まだ特訓が終わってませんよ」

「え?なのはさんの特訓は終わったはずだが」

 

そう言ったがすぐに合宿をすることをオリヴィエに言った日の事を思い出した。

“虐め”鍛える、と言っていた。そう言えばオリヴィエの訓練は未だに受けていない。

 

「明日には帰ってしまいますので、今しか時間はありません。やりましょう」

「……いきなりだな。でも、特訓はやろうか」

「では、外へ」

「ああ」

 

俺は一度、子供たちの寝顔を見る。確かにオリヴィエが言っていた通り幸せそうな表情だ。この表情を無くさないように頑張らないとな。

俺は寝巻きのTシャツとズボンのまま外へ移動した。オリヴィエも付いてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――森

 

「で、特訓ってのは?」

「ええ、簡単に説明しますね」

 

森の中のちょっと拓いている場所。昨日俺が座禅を組んだ場所だ。そこに俺とオリヴィエは対立して立っていた。

 

「まあ、単純な事なのですがひたすら私の攻撃を避け続けて下さい」

「オリヴィエの?」

 

俺の言葉にオリヴィエは頷く。

 

「死の恐怖を体に直に覚えさせた方がよろしいと思いまして。前もって感じていれば死の予感を感じた時に動けます」

「……まあ、確かに」

 

オリヴィエの口から死という言葉が出てきた瞬間、俺は一瞬だが体が竦んだのを覚えた。

やはり、戦争という未知のモノに足を突っ込むにはまだ覚悟が足りていないようだ。

 

「……ああ、頼むわ」

 

これではオリヴィエの足を引っ張ってしまう。そうならないためにも今から行う“虐め”の特訓はしっかりとやるべきだ。

 

「ガイは反撃しない避け続けて下さい。避ける事が無理だと悟ったらガードしてください。そこで一度ストップします」

「あぁ」

 

オリヴィエが静かに構える。俺もセットアップして立ち居合の構えに入る。この特訓では刀を抜く事は無さそうだ。

 

「っふ!!」

 

オリヴィエの一歩が互いの距離を一気に〇にした。そのまま右ストレートを放つ。早い踏み込みだ。だが、それ以上に……。

 

ガイ「!?」

 

背筋が一瞬凍った。オリヴィエから発せられる殺気が異常じゃないほど大きい。それで避ける一歩がコンマ一秒だけ遅れた。

 

「っく」

 

オリヴィエが放った右ストレートを何とか紙一重で右に避ける。

しかし、オリヴィエはすぐに体を捻って左足の蹴りが飛んでくる。

 

「っつ!?」

 

先ほどと同じ感覚が俺に襲いかかる。攻撃をするたびにオリヴィエから異常な殺気が飛んでくる。これが死への恐怖なのだろう。

その左足の蹴りは避ける事が叶わないと悟ったので鞘でガードすることに。

 

ものすごい衝撃だ。ガードしているのに手にしびれが伝わってきた。

 

「二撃でガードしましたか」

 

オリヴィエは一言そう言って、俺から離れた。

 

「どうですか?私から何か感じ取れましたか?」

「……ああ、十分というほどにな」

 

そう言いつつ、鞘を握っていた左手を振った。しびれが未だにとれない。

 

「オリヴィエから殺気がかなり感じられたよ。その恐怖から一瞬体を止めてしまった」

「ええ、ガイは殺し合いをしたことが無いので経験者からすれば格好の的になります。殺し合いに慣れる……とは言いませんが、殺気を放ち続ける私の攻撃を体を止めずに避け続けて下さい。きっとガイのためになりますから」

 

そう言って、再び構えるオリヴィエ。

 

オリヴィエは俺を生かすためにこのような特訓を行ってくれる。その事に感謝しないといけないな。

 

「ああ、ありがとなオリヴィエ」

 

オリヴィエに礼を言いつつ、俺も再び構える。オリヴィエは一度笑みを見せて再び真剣な表情に戻る。

そして、俺はいつもの口癖を言った。

 

「お手柔らかに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「朝……か」

「ええ、そのようです」

 

俺たちは木の根元に背中を預けて座り込んでいた。あれからどのくらい特訓したのかはわからない。だが、地平線から赤い日の光が現れ、木々の間から漏れてきたので夜も終わりの時間帯のようだ。

俺のバリアジャケットはオリヴィエの拳や蹴りでかなりボロボロだ。

 

「私の特訓はどうでしたか?」

「……虐められたわ。結局、多くても4撃までしか避けられなかったし」

 

そう言うと、オリヴィエは苦笑してこちらに顔を向けて、拳をこちらに出してきた。

 

「合宿も終わりです。“聖杯戦争”ももうすぐ始まると思います。気を引き締めていきましょう」

「……ああ、そうだな」

 

俺もその拳に自分の拳をぶつけた。

 

『マスター、非通知で秘匿レベルが最大状態の通信が来ました。普通の通信ではなく別ルートからの接触です』

「……」

 

拳をぶつけたと同時に、プリムラから秘匿通信が来たと知らせてきた。

この通信を行った人物は過去に一人しかいない。俺は一度オリヴィエを見た。その虹彩異色の瞳は戸惑う色をしてい無く、凛と強い意志を持っていた。

俺はそれを見て安心感を抱き頷いて、プリムラに通信を開くように命令した。目の前に真っ暗なモニターが現れる。

そして、そこから渋くて低い声が何の感情もなく言葉を発した。

 

『マスターの登録はすべて完了した』

 

一瞬、ドクンっと心臓が跳ねたような錯覚に陥った。これからあれが始まるのだ。願望をかなえるための戦いを……聖杯戦争を。

俺の日常は終わったのだと実感した。これから始まるのは非日常の世界だ。俺は胸に手を置く。心臓の音が少し五月蠅いぐらいに聞こえてくる。

そして、モニターの暗闇の中、管理者は開始の言葉を放った。逃れられない大きな戦争の開始の合図を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“これよりミッドチルダの聖杯戦争を始める”




始まってしまった、聖杯戦争。

日常編はこれで終了かな。

これからはダークな展開になるでしょうね。

自分の筆力でどこまで描けるか。

がんばって生きたいと思います。

何か一言ありますと物凄く嬉しいです。

では、また(・ω・)/
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