魔法少女リリカルなのはvivid~過去と未来と現代の交差~   作:ガイル

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聖杯戦争編始まりました。

この編に入ったので文法を変えて行きます。

こちらの文法と日常編の文法はどちらが良いか、感想で教えてくれると嬉しいです。

では、14話目入ります。


聖杯戦争編
十四話“日常と非日常の交差”


 ―――ミッドチルダ 首都次元港

 

おかしい。

 

私はガイさんを見て何か違和感を感じていた。昨日はガイさんの部屋に皆で行って寝たけど、翌日に起きた時はガイさんはベッドに居なかった。早朝訓練でもしているのかなと思っていた。

そして、皆が目を覚まして少しするとガイさんは戻ってきた。訓練の後なのか服が少しボロボロだった。

だけど、その時に見たガイさんの雰囲気が違っていた。

 

刺々しいというか、殺伐しているというか、何かに対して強い思い入れをしているような印象。

 

フリージアさんとも会ったが何か雰囲気が変わっていた気がする。常に周りを警戒しているように気を研ぎ澄ませている様だった。

 

無限書庫に行った時の私達とは一歩下がって離れている、まるで他人のような感じにも似ていたが、今回はそれ以上に離れているような感じがする。

 

普通の会話でも上の空であまり聞いていない様子だし。私はどうしたの?と聞いてみたが、ガイさんからは何でもないと笑顔で返されてしまい深く追求できなかった。

 

少し寂しげな瞳で笑顔で何でもないと言われても、何かあると思っちゃうよ。

 

「ミッドチルダ到着ー♪」

「車まわしてくるからちょっと待っててねー」

「「「はーい」」」

 

なのはママとフェイトママは車を動かしてくるから皆と離れ、外に出た。私はもう一度ガイさんを見る。隣にはフリージアさんが居た。

しかし、ガイさんは何かを考えているのか少し顔を下げている。フリージアさんも常にガイさんの近くに居る気がする。

 

……ちょっと嫉妬しちゃったりもします。

 

あの2人は周りの雰囲気からかけ離れて、まるで別次元に居るように思えた。それが違和感に繋がっているのだろう。

このモヤモヤ感はこの雰囲気が消えない限り、消えることはない。

 

「でも皆明日からまた忙しくなるねぇ」

「インターミドルに向けてばっちりトレーニングしなきゃ」

「はいっ!でも大丈夫です!」

「うちの師匠がトレーニングメニュー作ってくれますから!」

 

ティアナさんとスバルさんの話に私とコロナが笑顔で答える。そこにノーヴェも会話に入ってくる。

 

「ま、しっかり鍛えていこうぜ」

「「「はいっ!」」」

 

師匠のノーヴェが作ったトレーニングメニューだから私たちは安心して鍛えられる。その信頼の証が先ほどの返事に繋がる。

 

「あ、そう言えば写真の交換しとかない?今朝取った奴、結構あるんんだ」

「あ。欲しいです!」

「私もー!」

 

スバルさんは今朝、ティアナさんと山頂に行って色々な自然を写真に収めていたのを知っていたので、私達はそれが欲しかったのを主張する。スバルさんは笑顔でデバイスを出してきたので私達もデバイスを出して写真を交換した。

そして、もう一度ガイさんの方を見る。私たちが雑談して楽しんでいるのにガイさんはやっぱり考え事をして、視線を少し下げていた。

 

……何か深い悩み事があるんだ。

 

そんな様子を見て私は悲痛な気持ちになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ガイは話に参加しないのですか?」

「ん?俺か?」

 

俺とオリヴィエは皆の輪から少し離れた所で立っていた。皆はなのはさんとフェイトさんが車を取りに行った後、雑談を始めていた。

俺はその雑談に入る気分になれなかった。理由は昨夜……というよりも早朝に管理者から“聖杯戦争”の開始の狼煙が言いわたされたからだ。

その瞬間から皆のいた時間が眩しく感じ始めた。

 

これは生きる保証の時に感じたモノと一緒だと思う。

 

オリヴィエと拳をブツけて気を引き締めたつもりだが、臨行次元船の移動時間は四時間。その間に“聖杯戦争”について色々と試行錯誤していたので、気持ちは少しネガティブになっていた。

 

「皆、ガイのこと心配していますよ。ガイは表情に出やすいですからね」

「……そうなのか」

 

オリヴィエが微笑しながら俺の顔を覗き込む。オリヴィエから指摘されて初めて分かった。俺はどうやらポーカーフェイスをするのが無理らしい。“聖杯戦争”への不安が表情に出ているようだ。きっとヴィヴィオ達にも心配をかけてしまったのだろう。

 

「俺の今の表情はどんな感じだ?」

「いろいろと思考しているように見えて、ですが、その思考中にも不安な表情を隠しきれずに出ていますね」

「……的確で」

 

やはり俺にはポーカーフェイスをする事は不可能だな。

 

オリヴィエに正確に当てられた。様々な事を考えていたのも事実だ。その思考の先にあるのはやはり“聖杯戦争”の不安だ。

 

気を引き締めたつもりなんだがな。

 

「ヴィヴィオ達と会話をした方が良いと思いますよ。開始の合図を言われてからガイは皆との会話中でも上の空ですからヴィヴィオ達が心配しています。“聖杯戦争”の事を考えずに皆と話した方が良いです」

「……かもな」

「大丈夫です。ガイが狙われても私がしっかりと守りますから」

 

オリヴィエは右手をグッと握って自信のある笑みを浮かべる。それを見ていると不安な気持ちが少しは薄らいだ。

 

「心強い事で」

 

俺は頭を掻きながらオリヴィエの意見に頷いた。

そして、俺とオリヴィエは皆の所へ近寄った。

 

「あ、ガイとフリージアさん。私の取った写真が有るけどいる?」

「ええ、下さい」

 

皆の輪に入るきっかけはスバルさんの撮った写真を頂く事で難なく終えた。その時、ヴィヴィオ達を見たが、少し暗く悲しい表情をして俺の事を見ていた。特にヴィヴィオ。

 

……皆には迷惑かけたな。この子たちには笑顔でいてもらいたい。

 

俺の事を心配してくれているのは凄く嬉しい。けど、俺がもっと嬉しいのはこの子達が笑顔でいる事だ。

 

「でもインターミドルってかなり沢山の子が出場するんでしょ?予選会とかあるんだっけ?」

「あ、ええと…確か地区選考会というのがあって」

 

ティアナさんがインターミドルの事についての疑問をアインハルトに投げかけた。アインハルトもうろ覚え気味でうまく答えられていないようだ。

 

「そーです!選考会では健康チェックと体力テスト。後は簡単なスパーリング実技があって」

「選考会の結果で予選の組み合わせが決まるんです」

 

そこにヴィヴィオとリオがフォローを入れ始めた。

 

「普通の人は“ノービスクラス”。選考会で優秀だったり、過去で入賞歴があったりする人は“エリートクラス”から地区予選がスタートします」

 

コロナも説明を始める。このインターミドルの話を始めることでヴィヴィオ達は笑顔になり始めた。そこの事に俺はホッとした。

 

「勝ち抜き戦で地区代表が決まるまで戦い続けて……そうしてミッドチルダ中央部17区から20人の代表と前回の都市本戦優勝者が集まって……その21人でいよいよ夢の舞台、都市本戦です!」

「ここでミッドチルダ中央部のナンバーワンが決まるんですよ」

「TV中継も入ります!」

 

皆、説明をするにつれてどんどんテンションが上がっていき、ティアナさんとスバルさんはちょっと引きつっている。

 

「まあ、流石に私たちのレベルだと…」

「本戦入賞とかは夢のまた夢なので」

「“都市本戦出場”を最高目標にしてるんですけど」

 

しかし、夢と現実は違う事を知っていた三人はテンションが一気に下がって、気持ちが沈んでいた。

 

「その…都市本戦で優勝したら終わりですか?」

「もしろんその上もありますよ。“都市選抜”で世界代表を決めて、選抜優勝者同士で“世界代表戦”です」

 

今度はアインハルトの疑問にコロナが答える。もはや、ティアナさんの事は関係ないようだ。

 

「そこまで行って優勝できれば……文句無しに“次元世界最強の10代女子”だな」

 

そう言いながら後ろからアインハルトの両肩に両手を乗っけるノーヴェ。そう言われた時にアインハルトの表情が一瞬、輝いていたような気がした。

 

最強という言葉に魅かれたか。

 

俺はアインハルトのその表情を見て笑っていた。表情から読み取りやすい。

 

「でもそんなのは私たちにとっては遥か先の夢……」

「狙うなら10年計画で頑張らないと!」

「でもいつかきっとー!」

 

でも、ヴィヴィオ達の3人はそのかけ離れ過ぎた現実に先ほど以上にテンションが下がる。

 

「ノーヴェさん、率直な感想を伺いたいんですが。今の私たちはどこまで行けると思われますか?」

「もともとミッド中央は激戦区なんだDSAAルールの選手として能力以上に先鋭化してる奴も多い。その上での話として聞けよ」

 

今の自分の実力がどの位まで行けるのか気になったのか、アインハルトはノーヴェに聞いた。ノーヴェは片目を閉じて答える。

 

「ヴィヴィオ達3人は地区予選前半まで。ノービスクラスならまだしもエリートクラス相手ならまず手も足も出ねー。アインハルトもいいとこ地区予選の真ん中へんまで。エリートクラスで勝ち抜くのは難しいだろうな」

 

ノーヴェから見れば行けても地区予選の真ん中らへんか。模擬戦の時は皆、凄い実力を持っていると思っていたけどな。

 

ノーヴェから見ればこの子達はまだまだなのだろう。

 

「ついでにガイ。もしお前が参加しても地区予選1回戦で落ちると思うぞ」

「……辛口だな」

「今のガイの実力から推測したものだ」

 

妥当だと思うけどな。でも、俺は参加はしないし。

 

「……でも!!」

 

しかし、ヴィヴィオは声を張りつめてノーヴェの言葉に自分の意見をぶつける。

 

「まだ二ヶ月あるよね!?その間、全力で鍛えたら?」

「ま、どうなるかはわかんねーな。あたしも勝つための練習を用意する。頑張ってあたしの予想なんかひっくり返してみせろ」

「「「はいっ!」」」

 

皆、明るい表情で良い目をしている。大会を勝ち抜きたい気持ちが溢れて、それが表情に出ているのだろう。

 

「頑張れよ。俺も応援しているから」

「私も応援していますね」

 

俺とオリヴィエも皆に応援の言葉を掛ける。

 

「「「はいっ!」」」

 

皆、嬉しそうでなによりだ。この子たちはやはり笑顔が似合う。

 

「んでな、まずは基礎メニューを作ってみたんだ。デバイスを出せ送るから」

「さ、流石ノーヴェッ!」

「仕事早ッ!」

 

ノーヴェの仕事の速さに皆、驚きを隠せないでいる。

 

「……ほんとノーヴェはコーチに向いてるな」

「うっせぇ」

 

俺が片目をつぶって褒めるとノーヴェは口で否定しながらも表情は嬉しそうだった。

 

「で、だ。基礎トレは今まで以上にしっかりやる。その上で……」

 

ノーヴェは子供たちに振り向く。

 

「コロナはゴーレム召喚と操作の精度向上」

「はいっ」

「リオは春光拳と炎雷魔法の徹底強化。武器戦闘もやってくぞ」

「はいっ!」

「ヴィヴィオは格闘戦技全体のスキルアップとカウンターブローの秘密特訓!」

「はいっ!」

 

そして、最後のアインハルトには一度、呼吸を置いて言葉を発言する。

 

「で、アインハルトは……あたしが変に口を出して覇王流のスタイルを崩してもなんだ。かわりに公式試合経験のあるスパー相手を山ほど探してきてやろう。お前は戦いの中で必要なものを見つけて掴む。それが一番かと思うんだが……どうだ?」

「ありがとうございます!」

 

アインハルトは表情を輝かせて勢いよく頭を下げた。

 

「えー?私もいろんな人とスパーやりたい!」

「やりたいですー」

 

アインハルトの周りにヴィヴィオ達が囲んで駄々をこね始めた。

 

「お前らは順番があるの!コーチの言う事ちゃんと聞け!」

「「「はーいっ」」」

 

もちろんそれは冗談だが、場はかなり和んでいる。俺はノーヴェに声をかけた。

 

「ノーヴェもコーチとして頑張れよ」

「はっ?ガイ、なに他人事のようにしてんだ?お前にもトレーニングメニュー作ってあんだからやっておけよ」

『ジェットエッジからトレーニングメニューを貰いました』

 

プリムラにトレーニングメニューが転送されたらしい。

 

「……俺は出れないって」

「お前も参加資格はあるんだ。今の用事を終えて、大会に出ようと思った時でいいから、それやっとけよ。ガイ、お前は反射神経も動体視力は並外れている。けど、やはり魔力値の低さがそれらを引っ張っている。そのせいでいろいろと行動に制限が掛っているだろ?」

「……まぁな」

 

紛れもない事実に俺は頷くしかない。なのはさんもノーヴェも相手の状態を見る洞察力は桁違いだ。俺は魔力の低さで戦闘では色々と制限が付いてきてしまう。

 

「そのトレーニングメニューは魔力値を増幅させる事の出来るメニューだ。もし、大会に出れ無くてもお前のためになるだろ。しっかりやっとけ」

「……」

 

……ノーヴェはコーチが天職なんじゃないか?

 

俺はそう思ってしまう。弱点を見つけてそれをしっかりと補強するトレーニングメニューを作り出す。ノーヴェも戦技官に向いている素質を持っている。なのはさんもそう思っているのではないだろうか。

 

「……ま、時間が空いたらやっておくよ」

「本当だろうな?」

 

ノーヴェがジト眼で俺の顔を覗き込んでくる。

 

「ああ、ノーヴェのトレーニングメニューを信じてやってみるさ」

「そ、そうか。信じてくれんならいいけどよ」

 

やらないと思っていたのか、俺がやると言ったらノーヴェはちょっと照れくさそうだった。

 

「おまたせー」

 

そこに車を取ってきたなのはさんが戻ってきた。フェイトさんは車で待機しているのだろう。

 

「それじゃ、帰ろっか」

「「「はいっ」」」

 

皆が頷きなのはさんの後について行った。

 

「……ガイさん」

「ん?」

 

歩きながら近くに居たアインハルトが俺に声を掛けてきたのでアインハルトの方を見る。その表情は皆の輪に入った時に見た寂しげな表情と一緒だった。

 

「大丈夫ですか?」

「……ああ、大丈夫だ」

 

何が大丈夫なのかは言ってこない。だが、アインハルトにも心配をかけている事が今の会話だけで分かった。

 

……迷惑かけ過ぎたな。

 

俺は心の中に罪悪感が残ったのを感じた。皆には言えないモノが周りからは心配かけてしまう理由なのだから。

 

俺の周りに居る人達はお人好しすぎるんだよな。

 

「……そうですか」

 

アインハルトは顔を下げて、表情を曇らせてしまった。前にもこのような事があった気がする。アインハルトも俺を心配してくれているから嬉しい。

 

「……もし、困ったことになったらアインに相談するかもしれないから」

 

俺の言った言葉にアインハルトは期待と驚きの表情をしながら見上げてきた。

 

そ、そんなに驚くことか?

 

逆に俺がびっくりしていた。

 

「はい、私の力で出来る事がありましたら何でもします」

「そ、そうか。ありがとな」

 

ぽんぽんとアインの頭に手を乗っけて軽く叩く。ちょっと嬉しそうな表情をしていた……ような気がした。

 

「アインハルトとガイは仲が良いですよね。まるで恋人のようです」

 

そこにオリヴィエが会話に入ってくる。

 

「こ、こここ、恋人!?い、いぇ、た、確かに私たちは仲が良いとは思いますが……」

「何慌ててんだ、アイン?」

 

アインハルトが顔を真っ赤にして慌てていた。

 

俺たちはそんな風に見えていたのか?普通に会話しているだけなんだがな。

 

「ガ、ガイさん!アインハルトさんと恋人だったのですか!?」

「そうなんですか!?」

「ものすごく気になります!」

 

そこにヴィヴィオ、コロナ、リオが驚愕の表情で俺に近づいてきた。先ほどの会話が皆の耳に入っていたようだ。

 

「い、いや、フリーがそう見えるだけだと言ってきただけだ」

「そ、そうなんですか?」

 

ヴィヴィオがオリヴィエに聞いてくる。オリヴィエはええ、と特に戸惑う事なく答える。

 

『ガイ君、ちょっと騒がしいよ。ここは公共の場なんだからもう少し静かにね』

『は、はい。す、すいません』

 

念話でなのはさんに注意されてしまった。

 

『で、ガイ君はアインハルトちゃんの事、好きなのかな?』

『なのはさん……貴方もですか』

 

目の前の騒動と念話からの会話で俺は二重の意味でため息をついた。

 

しかし、俺がアインハルトと付き合ったら……ねぇ。ロリコン扱いは免れないな。まあ、確かにアインハルトは可愛いけどさ……フェイトさんが気になるのも事実だし。

 

「ガイさん?」

 

俺が変な思考の渦に入って考え込んでいたからか、アインハルトから顔を覗きこまれるように見上げて声を掛けられてた事に気づくのが遅れた。

 

「あ、い、いや、何でもない」

 

今考えていたこととアインハルトが目の前に居るという現実に俺は視線を逸らした。

 

やばいやばい、心頭滅却だ。変な事を考えるな。

 

俺は頭を振って、歩きだす。ここは公共の場だ。立ち止まっていたら周りに迷惑だ。

皆もそれが分かっていたからか変な騒動は何とか収まって歩きだした。

 

でも、こうして皆と会話している日常は無くしたくないな。

 

俺は必然的にそう思ってしまった。これから始まる戦争で無くさないために。こうして強化合宿は幕を閉じた。

そして、新しい舞台である“聖杯戦争”の幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――マンション

 

皆と別れて、俺とオリヴィエは部屋に居た。アインハルトは自分の部屋戻った。長旅の疲れが出ていると思うので、多分もう眠っているだろう。

無人世界カルナージから首都次元港まで約4時間。更に時差も7時間あるので、朝にカルナージから出発してミッドチルダに戻ってくるとすでに日が沈み深夜に近い時間帯だ。

アインハルトがオリヴィエと会話をせずにすぐに部屋に戻ったのも頷ける。

 

「ガイ」

「ん?」

 

テーブルの前に座っていたオリヴィエが対面に座っている俺に声をかけた。

 

「気づいていましたか?車を降りてから私たちを見ていた人物がいたことに」

「……マジか?」

 

ええ、とオリヴィエは答える。

 

「まあ、しばらく動いているとその視線も無くなったので、その人物はあそこで挑発してあからさまに気配を放っている、と言ったところでしょうか」

「……釣りってやつか。これ見よがしに気配を振りまいて、近づいてくる相手を誘い出す……真っ向勝負をしたいサーヴァントってところか」

「そのようですね」

 

そして、少しの沈黙が流れた。俺もオリヴィエも考え事をしている。

 

「どうしますか、ガイ?」

 

その沈黙をオリヴィエが破った。その瞳には揺るぎのない自信がみなぎっているのがわかる。

俺はその瞳を見て決意を固めた。

 

「……お招きにあうとするか。この戦争は早めに終わらせたい」

 

それに他のマスターもどのような気持ちで参加しているのかも聞けたら聞いてみたい。

 

「はい、ガイのお役にたてるように努力します」

 

オリヴィエは立ち上がって、悠然と自信の足取りで玄関へと歩き出した。その自信に充ち溢れた歩き方は安心感を得ることのできる動きだ。

 

「プリムラ、よろしくな」

『はい、マスターのお役にたてるように努力します』

 

プリムラはオリヴィエの言葉を真似て言ってきた。それを聞いて俺は笑みを浮かべながらオリヴィエの後について部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――アラル港湾埠頭 廃棄倉庫区画

 

オリヴィエに付いて来て、たどり着いた場所は少し前にヴィヴィオとアインハルトが対決をした場所だ。

今は夜なのでヴィヴィオ達の対決の時の風景とはまた違う。無味乾燥なプレハブ倉庫が延々と連なる倉庫街ではあるが、廃棄倉庫区画なので夜ともなれば人通りも絶え、まばらな街灯が無益にアスファルトの路面を照らしている様が、よりいっそう景観を空虚にしている。

 

人目を忍んで行われるサーヴァント同士の対決には、なるほど、うってつけの場所だ。

 

辺りには一般人は居ない。

しかし、ヴィヴィオ達が対決した大きな広場の中央には明らかに一般人でない人物がこちらを向いて静かに立っていた。身長は150センチぐらいで、翡翠色の瞳に結い上げていてもなお軽さと柔らかさが見て取れる美しい金髪の人物だ。服装は濃紺のドレスシャツにネクタイ、フレンチ・コンチネンタル風のダークスーツを着込んでいる。

その服装が凛とした硬質の雰囲気で引きしめられているのが第三者からでもわかる。あれはもはや浮世離れした絶世の美少年だろう。

 

「前にやられたやり方をしましたが、今日一日、この街を練り歩いて過ごしてみても、どのマスターも穴熊を決め込んで攻めてきません。私の誘いに応じた猛者は、貴方達だけです」

 

だが、その発した言葉はガラス玉のようにとても透き通っている綺麗な声であり、それであの人物は男性ではなく女性だと分かった。

 

「じょ、女性なのか?」

 

俺は外見と中身のギャップの激しさに戸惑いを隠せずに呟いてしまった。女性なのに何故男装しているのか?と疑問符が思考の中で付いてくる。

しかし、それでいてもその服装を着こなして絶景の美少年(美少女?)になっている様は神様が与えてくれたモノだと思い込んでしまう。

 

「女であることはあの時に捨てました。今ここに居るのはただの一騎士」

 

その人物の瑠璃色の瞳がより一段と凛として俺たちを見据えた。その圧倒的な威圧感に俺は冷や汗を垂らし、喉を鳴らして唾をのみ込む。

 

「その清澄な闘気……セイバーと見受けますが、如何に?」

 

だが、その圧倒的な威圧感に動じることなくオリヴィエは静かに問答する。これが戦場の経験者と未経験者の差なのだろう。

 

「……いえ、私はマスターです」

 

少し向こうの人物は戸惑いながらも、そう言って右手の甲をみせてくる。そこには俺の手の甲とは紋章が違うが赤く紋章が浮かび上がっている。

 

「ランサー」

 

彼女が七つのクラスの一つであるランサーを発言した。すると、彼女の隣から1人の巨躯の男性が何処となく現れた。

 

……英霊を霊体化から実体化したのか。初めて見た。

 

ランサーは黒い髪に青い瞳。その瞳は据わっていて、俺たちを静かに見つめている。ちょっとした事では動じないのだろう。服装は放浪していたような薄汚いコートを羽織っているが、もともとが巨躯な体なのでそれが逆にその男の存在感がさらに大きくなり、ゾクリと背中に冷たい汗が流れる。このような巨漢の男が敵として現れた事に畏怖を感じる。

しかし、その人物を見た時に俺は何処かで見たことがるような気がした。

 

「見たところ、少し幼げさが残るマスターだが」

 

その大男が俺を見て、図太い声で俺を分析し始めた。

 

「……まだ、二十歳過ぎてないんでな」

「そうか。そんな年でこの戦いに参加したのならそれなりに理由があるのか?」

 

このサーヴァントは敵である俺に対して親身に話を掛けてきている。その真意が分からず疑問が浮かぶ。

 

「なぜ、敵である俺にそんな親身になる?」

 

俺はその疑問をランサーにぶつけてみた。ランサーは少し言いにくそうに視線を逸らす。

 

「俺はこのミッドチルダの……」

「ダメです、ランサー!!」

 

隣に居た金髪の女性がすぐにランサーの言葉をかき消した。

 

「敵に真名をバラすつもりですか?それではこの戦いは勝ちぬけていけません」

「……すまん、相手のマスターがミッドチルダの出身だと見て分かったので少し話をしたくてな」

 

俺がミッドチルダの出身だから話をしたい?となるとここ最近の人物か。

 

俺はあの巨躯の人物を後で調べてみようと考える。あのような特徴的な人物なら見つけやすいだろう。

 

「ランサーのマスター。1つ聞きたい事がある。質疑しても良いか?」

「何でしょう?」

 

金髪のマスターは瑠璃色の瞳をこちらに向ける。その容姿は美しく、普通に街中で出会ったら、一目惚れしてしまうぐらいだろう。

しかし、今は戦争の敵同士。そんな事を考えている暇はない。このマスターは人の話を聞いてくれる用だ。マスターの中にもこのように話せる人物がいて俺はちょっとホッとした。

そして、俺が最も聞きたかった事を会話に入れた。

 

「君はなぜこの“聖杯戦争”に参加したんだ?」

「知れたこと。私には叶えるべき願望がある。それを叶える為に私は参加した」

 

さも当たり前のように答えるランサーのマスター。確かに参加するのだから叶えたい願望が皆にはある。

だが、俺が聞きたいのはそんな事ではない。

 

「それは殺し合いをしてでも叶えたいものなのか?」

「……質疑の真相の意味が理解できない。貴方は迷っているのか?」

 

一瞬だが、マスターから威圧感が無くなった気がした。

 

「……かもな」

「でしたら、この戦いから身を引いて安全な場所で戦いが終わるまで隠れているべきだ」

「……」

 

痛いところを突かれた。質疑していたのにいつの間にか逆の立場になって答えていた。確かに“聖杯戦争”に参加することは恐怖や不安がある。

しかし、その戦争のせいで不幸な奴らが現れる可能性だってある。それを食い止めるために俺は立ち上がった。

なら、俺が取る道は最初から1つだ。

 

「忠告ありがと。でも、俺も叶えたい願望がある。だから、身を引く事は出来ない」

「……そうですか」

 

あの女性は何を思ったのだろう。凛とした表情が少し崩れ、困惑したような僅かに眉間を寄せた硬い表情ではあるが、それが全く彼女の美貌を損なわってはいないのはやはり天からの賜物なのだろう。

そして、その彼女はオリヴィエの方にその瑠璃色の瞳を向けた。

 

「この静寂なる闘志……あなたのクラスはこれまで呼ばれたことのない規格外のクラスですか?」

「えぇ、私のクラスはファイターです。聖杯戦争では初のクラスでしょう」

 

相手のクラスも教えたのでこちらのクラスもオリヴィエは静かな微笑を浮かび上げてクラスを曝け出す。

 

しかし、あの圧倒的な威圧感を持っているのがマスターか。隣の巨躯の男はサーヴァントだからこの存在感はわかるが、あっちのマスターもあのランサーと同等の実力を持っていそうな雰囲気を出してるな。

 

俺は2人を分析し始めた。金髪の女性は何故かサーヴァントと同等の力があると直感で感じだ。正直、俺でもオリヴィエでも勝てるのか分からなく不安を隠しきれない。

 

「ガイ、そんな不安がらなくても。私はランサーと武器を交えます。貴方はランサーのマスターを狙ってください。あのマスターもきっと白兵戦を主とする人物でしょう。ですが、あれは只のマスターではないと本能で感じます。気をつけて」

「……ファイターもな」

 

この戦いで敵と交戦するときはフリージアではなくクラス名で言う事にした。偽名でもそこからいろいろと調べられてしまう可能性がある。

そして、オリヴィエもどうやらあちらのマスターに対して何かを感じているようだ。あのマスターは要注意だ。オリヴィエは少し前に出て右手を構えた。

 

「武装形態」

 

そう言った瞬間、オリヴィエの体を白い光で包まれて一瞬にして騎士甲冑の姿に変わった。その姿は初めてオリヴィエと出会った時の白と青を強調した騎士甲冑だ。一つ違うのはその鉄製の手甲だ。ぱっと見でも5cmくらいあり、かなり厚い。模擬戦の時はその手甲はめていなかった。それを維持するのも魔力が必要なのだろう。

だから、このような戦いの時にしか使わない。

 

「セットアップだ、プリムラ」

『了解です、マスター』

 

俺もプリムラに命令して、一瞬にしてバリアジャケットの魔法服に切り替わり、左手に鞘に収まっている刀を握る。

相手のマスターは魔力なのか竜巻のように渦を巻いてダークスーツを着ている自分自身を包み込み、次の瞬間、女性は白銀と紺碧に輝く甲冑に身を包んでいた。

 

「……バリアジャケットじゃない?」

 

俺は先入観にとらわれていたので目の前の真実に目を疑った。マスターならデバイスでバリアジャケットになると思っていた。

しかし、あのマスターは神々しい甲冑を付けている。あれは明らかにバリアジャケットとは比ではない。あれこそ規格外のモノだろう。

 

「セットアップ」

 

あの巨躯の男はセットアップした。見た目は少しだけ変わり、両足と左手に装甲を装着している。やはり、ミッドガル出身なのは間違いないようだ。

 

おそらく空戦魔導師。と、なると対戦のカードは少し変えないといけない。

 

「ファイター。俺がランサーと戦う。見たところ空戦魔導師のようだ。ファイターは空中戦を行えないだろ」

「で、ですが……」

 

サーヴァントは英雄であり、彼らは基本的に人間がまともに戦って敵うような相手ではない。多分あれの魔力値はオーバーSランク。俺のようなC-クラスでは足元にも及ばないだろう。だが、空戦を行えないオリヴィエの足を引っ張るわけにもいかない。

 

「行きます」

 

相手のマスターが一言、言った。俺とオリヴィエが会話している途中で不意打ちをしてこなかったので、このマスターもやはり最初の狙い通り正々堂々と戦いたいのだろう。その言葉で俺たちは構える。相手側も構えた。

しかし、相手のマスターはどんな武器を持っているのか分からなかった。何かを手に掴んで左に体を捻って構えているが、その武器が見えない。あの巨躯の男は青龍円月刀のような槍を構えてはいるがあのマスターの武器は何なのかもわからない。

一瞬の静寂。そして、四つの影はほぼ同時に動き出した。その影がぶつかり合った時、周囲に大きな衝撃と爆音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は目の前に居る金髪の女性と拳と剣で交えていた。

否、それが剣かどうかも分からない。それは肉眼では認識できない不可視の剣。何合交えただろう。超高速の剣戟を繰り広げていた。私は構えからそれを剣と判断して、相手の挙動から太刀筋を読み取っていた。

しかし、刀身の長さが分からないので間合いを取るのが難しい。風が唸る。この世界の物理法則に有るまじき狼藉に、大気がヒステリーをおこして絶叫している。魔力同士がぶつかり合い、荒れ狂うハリケーンの直中にあるかのように、ここの廃墟の倉庫街は容赦なく蹂躙され、破壊されつつある。

そして、最後の一撃を放った私の拳はその不可視の武器で受け止められたのか、相手の体まで届く事が無く、何もないと思われる大気に受け止められて、私は大きく後ろへと下がった。

剣戟を行っていた時は倉庫の外装から引き剥がされたトタン材が、まるでアルミホイルの一片のように異様な形に歪んで軽々と宙を舞っていた。今は舞っていたのが嘘のように地面に叩きつかれてただの瓦礫と化している。あれはこの金髪の女性の剣と思われる武器で擦過したのだろう。

しかし、気になる事があった。

 

「貴方はマスターではないですね」

「……」

 

私のを捕えていた瑠璃色の瞳を離して、空を見上げる。私もガイが気になったので空を見上げた。そこには人を包み込むぐらいの大きさのオレンジ色と黒色の魔力の色がぶつかり合っていた。剣と槍がぶつかり合うたびに周りには轟が走る。

先ほどまで宙を舞って飛ばされていた地面に落ちているトタン材が、その二つの魔力がぶつかる度にカタカタといっている。

そして、二つの色は中央でぶつかり合って鍔迫り合いを始めた。だが、誰が見てもわかる。明からかに黒の方が押されている。魔力の差が歴然としている結果が今の鍔迫り合いに表されている。本来なら数合打ちあえばガイは落とされてしまうだろう。

ここまできて未だに何合も打ちあっているのは、ガイの並ならぬ反射神経と動体視力が相手のクリーンヒットを防いでいる。

しかし、それも時間の問題だ。ここからでも確認できる。ガイの表情が険しくなってきて、冷や汗をかいている。助けに行きたいが空中戦だと私は手出しが出来ない。

 

「……ガイ」

 

その事実に私は悲痛な気持ちになって、敵が目の前に居るというのに悲しい表情をしてしまった。

 

「……貴方はあのマスターをどのように思う?」

「え?」

 

相手の質問の真意が分からない質疑に私は少し戸惑った。敵であるガイが気になっているようだ。その表情は何か懐かしさを感じているように思えた。

 

「あのようにサーヴァントに立ち向かうマスターを見たのはこれで三度目だ。あの人たちのようにあのマスターにもどんな状況でもあきらめない諦めない心を持っている」

「何が言いたいのですか?」

 

やはりその質問の真意が分からない。私は戸惑いを隠せないまま相手を促せた。ランサーのマスターはその容姿にあった絶世の笑みを浮かべながらこう答えた。

 

「私がサーヴァントでいた頃に巡り合った良いマスターに似ている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一合目の競り合いで黒い刃にひびが入り、二合目の競り合いの受けで鞘にひびが入った。それを受けただけで分かる。この人物と競り合うのは危険だと。魔力の差が大きすぎる。その後の数合のうち合いはこちらの武器に損傷が無いように衝撃の薄い部分で相手の攻撃を受け止めていたが、かなりキツい。俺は一度大きく離れた。

しかし、相手は追ってこないので向き合う形で空中で立つ事になった。俺は荒くなった息を整え始める。

 

「くっ……無事かプリムラ?」

『外部に損傷あり。ですが動かすことには問題ないです』

「そうか」

 

俺は抜刀している刀を鞘に納めて、相手を見る。相手は呼吸が乱れることもなく、汗一つ掻いていない。

 

最初の数合で……いや、最初から分かっていた事だがこの人物に勝つなんてことは無理に近い。

 

息が上がっている俺に対して相手は全く乱れていない。それだけでもわかりきっている事だ。

 

……ここで負けたら死ぬのかな。それはやっぱり嫌だな。ヴィヴィ達と会話をしたい。

 

戦争という現実を目の当たりにして俺の思考はネガティブになり始めた。脳裏には走馬灯のように日常の中でのヴィヴィオ達との会話が思い浮かぶ。

 

……現実逃避をするのは止めよう。

 

俺は今考えている思考を停止して、対立している大男を見る。

そして、その巨躯な容姿はやはりどこかで見たことがある。

 

「良い兵士だ」

「え?」

 

相手は矛先をこちらに向けていた武器を下げて頑な表情はそのままで、しかし、相手から発せられていた雰囲気は少し暖かくなった。

そして、視線を下に向ける。俺もつられて下を見た。そこではハリケーンのような嵐の風がオリヴィエとこの巨躯の男のマスターが中心となって発生していた。2人のぶつかり合う魔力の量が桁違いだ。そのぶつかり合う余波で廃墟の倉庫街は容赦なく蹂躙され、破壊されつつある。

大気が悲鳴を上げている。その余波も少なからず俺らの戦場にも届いてピリピリと肌を刺激させる。

 

「あのサーヴァントも良い騎士だ。お前たちは巡りに巡り合う存在なのかもしれんな」

「……何故この戦いの最中でも相手の事ばかり考えている?」

 

この巨躯の男の考えている事が分からなかった。常に相手を見て、相手の良いところを見つけ出そうとしている。

 

「……私は夢を描いて未来を見つめていた」

「未来?」

 

俺の言葉に巨躯な男は頷く。

 

「俺の世代では築きあげることが無理だったものだ。俺はいつも遅すぎた。俺の居た部隊は敵の罠に合い全滅……大切な部下も私も死んだが二度目の生を受けた。だが、今度は親友を守ること出来なかった。そして、再び死が訪れようとしたとき、後輩に全てを託した」

 

そう言いながら、悲痛な表情で自分の持っている得物に目を向ける。その刃にはたくさんの返り血が付いていたのではないだろうか。

 

……英霊となるぐらいなのだからそのぐらいの事はしたんだろうな。

 

「そして、再びこの現世に舞い戻された。再び戻って来たのなら俺は描いた夢を突き進みたい」

「……なるほどな」

 

この男の考えている事は分かった。未来をいつも案じてより良い未来を築く為に今の生きている俺たちにしっかりと未来を築いてもらいたいのだ。

それが、行動に表れて、いつの間にか相手の長所を見つけるようになっていったのだろう。

 

あぁ、この男はこんなにも未来の事に対して夢や思いを描いているんだな。

 

あって間もないが、この男には好意を持てた。この人物の理想、あり方。その全てが素晴らしいと思ってしまう。

 

「俺にも夢はある」

「……どんな夢だ?」

 

このサーヴァントもマスターと同じで敵である俺との会話を止めようとはしないようだ。

 

「“魔法で誰もが不幸にならないような世界”そんな世界を望んでいる」

「大変だぞ。その夢は」

「ああ、分かっている。だから俺はこの願望を望んでいる」

「ふっ、そうか」

 

そう言って、その巨躯な体は槍を構えた。

 

「お互いの貫き通す理想があるなら、後はぶつかり合うしかない」

「……出来ればあんたとはぶつかり合いたくなかった」

 

そう言いながらも俺は立ち居合で構える。

 

お互いが理想がぶつかり合う時もある。それが戦争というモノだ。理解した。

 

俺とその巨躯な男は飛行して再びぶつかり合った。二合三合と回数を増やすにつれ、刀身と鞘にひびの亀裂が大きくなっていく。俺はその大きな衝撃をヴィヴィオの砲撃の時のように刃を一番鋭い斬撃の垂直角度からズラすように手首を捻って、出来る限り外へと受け流してはいるが、無理をしすぎて手首に激痛が走る。

しかし、こうでもしないと今頃は俺は現世に居ないだろう。

ゾクリと背筋が凍るような感覚もこのぶつかり合いで何度も味わった。オリヴィエとの訓練が幸いしたからか、その感覚が着た瞬間でも俺は即座に体を動かせるようになっていた……のだが、未だにこの感覚は馴れていない。一歩でも間違えれば即死だ。

そして、俺と巨躯の男は次の合で鍔迫り合いとなって、周囲に魔力の余波がはじけ飛ぶ。相手の衝撃を真正面から、鞘から刀を半分抜いている状態の刃の部分でマトモに受け止めている。ここで問題になっているのは魔力値の差だ。ぶつかり合いでなら技量で何とかごまかせてきたが、単純な力比べなら魔力値が高い方が圧倒的に有利だ。

その結果が俺とこの巨躯の男と鍔迫り合いだ。圧倒的な魔力量によって俺が押され始めている。

 

「くっ!!」

「お前の夢はこんなものか?」

「な、なにぉ……」

 

ギシギシと刃と刃がぶつかり合って火花が発する。だが、プリムラの方が限界に近い。亀裂がまた一段と大きくなった。

 

「その夢もお前が弱ければ叶う事など出来ん!!」

「ぐっ!!」

 

巨躯の男はそのままその押し出す威力のベクトルを下へと向けた。

 

「はあぁあああぁぁぁ!!」

 

気合いの篭ったかけ声。その異常なベクトルの量にプリムラの刀身は真っ二つにされてしまい、俺は成すすべもなく地面へと垂直落下していった。

 

飛行、間に合うか!?

 

俺は飛行するために魔力を込めた。

そして、背中から地面に叩きつかれてしまった。

 

「がはっ!!」

 

地面には俺を中心としたクォーターが出来て、血反吐を吐いた。飛行するために自由落下に抵抗した分、即死を免れる事は出来たが体全体に鈍器で殴られたような激痛が走り、肺の空気が放出されて息が出来ない。

 

「ガイ!!」

 

近くに居たオリヴィエが俺の方へ近づいて俺の上半身を起こす。

 

「ゴホッゴホッ……はぁはぁ」

 

俺は何とか咽ながらも呼吸をする事が出来た。

しかし、体中に激痛が走って思考がうまくまとめられない。ここは戦場。ちょっとした隙を見せるだけで命を落とす。それが今だ。

だが、相手からの攻撃はやって追ってこなかった。あの巨躯の男は相手のマスターの隣に着地したようだ。そのマスターも俺たちを見据えてはいるが攻撃を行おうとはしなかった。

理由は明らかだった。突然、ドンッと腹の底に響くような爆音が今の路面のアスファルトを畑の畝のように掘り返されている戦場に響き渡ったからだ。その正体は俺たちと相手側の間に突然、全身を白いプレートアーマーで包み込んでいる人物が飛び降りて来たからだ。今は飛び降りた衝撃を逃がすために両手を地面につけて着地し、片膝をついている。

 

何処から来たのかもわからない。だが、一般人で無い事はその繕っている魔力が桁違いなのがわかる。

 

「……禍々しい魔力を発しているな」

「ええ。このような魔力を持ち得ているのは……“バーサーカー”か」

 

あちら側は突然現れた乱入者を分析し始めている。こんな状態だというのに俺は体を動かす事が出来ずにオリヴィエに支えられている。

そして、全身プレートアーマーの……“バーサーカー”はゆっくりと立ち上がる。振り向いた方角はランサー達の方だ。

 

「ガイ、ここはいったん引いた方が良いです」

「あ、あぁ……頼む」

 

オリヴィエは俺の肩を担いで立ちあがる。その動いた時の衝撃が体全体に痛み走る。それを何とか堪えてオリヴィエに体重を預ける。オリヴィエは足に魔力が収縮していた。一気に飛ぼうとしているのだろう。

 

俺は何とか戦場に居たランサーのマスターを見た。その瑠璃色の瞳と目が合った。どうやら見逃してくれるようだ。早く行けと目で言っている。

そして、オリヴィエの魔力を込めたジャンプで戦場を一気に離脱した。俺はその衝撃で激痛が走り気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あのマスターはまだ若い」

「ですが、また会う時が楽しみです」

 

目の前に禍々しい魔力を発している全身プレートアーマーのサーヴァントは無視して、私達は先ほどの人物を評価していた。

 

確かに荒削りな部分も多いが、あれはきっと実戦で成長するタイプだと私は思いますね。次に合う時にどれほど強くなっているのか楽しみです。

 

私は先ほどの敵への思考を終わらせてようやく目の前の全身プレートアーマーの“バーサーカー”と思われるサーヴァントを見る。

白色の甲冑は、何の特徴もない没個性で、装着者の素性を物語るような手掛かりは一切ない。ひとたび英霊と契約しマスターとなった者ならば、他のサーヴァントのステータスを“読み取る”ための透視力を授けられる。英霊を招いた聖杯から与えられる、マスターならではの特殊能力だ。

 

私も正規のマスターとなったので視る事は出来ると思ったのですが……。

 

視えなかった。ステータスも何も読めない。わかる事だとしたらクラスの“バーサーカー”だけだ。

 

「……そう言えば、あの時もライダーのマスターがバーサーカーのステータスを視れないと言ってましたね」

 

前々回の第四次聖杯戦争でバトルロワイヤルの時にバーサーカーのステータスを視ようとしたが無理だと言っていた。その正体は……私が信頼していた円卓の騎士の1人、湖の騎士と言われたサー・ランスロット。私に憎悪の恨みを持ってバーサーカーとして私の前に現れた。

そして、その最後は私の剣で胸を貫いた。

 

今回のバーサーカーも誰かに復讐や憎悪を持って現れたのだろうか?

 

バーサーカーが突然、こちらに向かって走り出した。助走もせずにいきなりのトップスピードで私たちの目の前に一瞬にして到着して右拳を放った。

しかし、それはゼストの槍で受け止められていた。ゼストほどの大きさではないがそれでも成人男性の基準値ぐらいの高さなので私だと見上げるような形になる。

そして、ゼストが受け止めているので、私は風王結界を纏っているエクスカリバーで縦斬りをする。それをプレートアーマーをまとった左手の籠手で難なく受け止めた。

 

初見でありながらこの不可視の剣を受け止めましたか。

 

そのまま力の押し合いになった。が、バーサーカーは全く怯むことなくむしろ私たちを押し始めている。

 

「む、2対1で押されるか」

「ち、力が異常ですね」

 

私は冷や汗を掻いたのが分かった。

そして、どちらが……誰が押した力なのか分からないがお互いに弾き擦り下がった。

 

「いっきに片をつけるか?」

「えぇ。この正体のわからないサーヴァントには早めのご退場を願いたいですね」

 

私とゼストは再び武器を構える。だが相手の行動は私が予想を超えた行動をしてきた。何の武器も持たずに中距離で構えてきた。何をしてくるのか全く分からない。

そして、拳を右拳を回転するように放った。

 

「アルトリア!!」

「えぇ、分かっています!!」

 

ゼストが私の前に動き、プロテクションというオレンジのバリアを張ってくれる。張った瞬間、あのバーサーカーからあり得ない量の真空刃が飛んできた。私はその間に剣先が背後に来るほどに大きく振りかぶった構えを取った。

そして、嵐のような斬撃の真空刃が止んだ瞬間、私は風王結界を解いた。その解いた時に、聖なる宝剣を守っていた超高圧縮の気圧の束が、不可視の帳という縛りから解き放たれて、私はゼストの真横からバーサーカーに向かって走り出す。

否、走り出すというよりかは弾丸のように相手に向かって飛んでいく。

 

いつもの踏み込みよりも三倍に達している。解放された超高圧縮の気圧の風を足で踏んで一気に跳んだのだ。

 

「はあぁぁぁ!!」

 

私の風王結界を解き放ったエクスカリバーで振り下ろす。瞬きを一回した時には10メートル以上離れていた距離を一気に0に出来る速度だ。反応できるのは皆無に等しい。

しかし、あのバーサーカーは反応した。相手を真っ二つにする私の太刀筋に反応して無理やり左に動いた。それでもやはり高速の私の太刀筋を避けきれずに右肩を少し抉った。

 

「Aa……Aaaaaaaa!!」

 

バーサーカーからは初めての声を聞いた。とてもこの世とは思えないほどの枯れきった声を発して、左手で右肩を押さえる。

 

どうやら痛覚は存在するようですね。

 

私は一度離れて、解き放たれたエクスカリバーを構える。後ろに居たゼストも私の隣まで来て構える。

 

「Aaa……laa……aaa!!」

 

バーサーカーの雄叫びは廃虚と化した倉庫街に響き渡った。一般人が聞いたら驚愕して失神してしまうほど禍々しい雄叫びだ。私達はその悲痛な雄叫びを聞き更に表情を頑なにする。

そして、バーサーカーの足に魔力が収束し始めたのがわかる。

 

一気に突進してくるのでしょうか?

 

私はバーサーカーの行動に十分注意を払って凝視していた。ドンっという大きな音がバーサーカーから聞こえてくる。足に収縮した魔力が解放されたのだろう。

しかし、バーサーカーがこちらに飛んでくる事は無かった。バーサーカーは上に飛んだのだ。

そして、そのまま霊体化したのか姿を消した。

 

「……目標が消えましたね」

「そのようだな」

 

突然現れた乱入者。その素性も正体も不明なバーサーカーは今後、私たちにどのような影響を及ぼすのか分からなかった。この戦場も最初の時とは比べ物にならないくらいに損傷していた。こんな大きな音をたてても一般人が来るような気配はない。

 

管理者かバーサーカーのマスターが何か結界を張っているのでしょうか?私達が張ったわけでもないですし。

 

「一度戻るか」

「……そうですね」

 

私は騎士甲冑の姿からダークスーツに外装を戻し、ゼストは霊体化した。

 

「今回の“聖杯戦争”も一筋縄には行かない……ですね。ですが、あのファイターのマスターは……」

 

私はその変わり果てた戦場を後にして歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――マンション

 

「んっ……」

 

気づいたら俺はベッドで横になっていたようだ。

そして、うっすらとした感覚から覚醒し始めた瞬間……。

 

「っつ……」

 

痛みが体中に走った。俺は腹を押さえて何とかその痛みに耐える。

 

「ガイ、やっと起きましたか」

 

オリヴィエがキッチンから顔を覗きこんできた。今は私服姿で何かを作っている。

 

「あ、オ、オリヴィエ……」

 

痛みは少しだけ薄らいだので俺は壁に掛けてある時計を見る。今の時間帯は真夜中のようだ。

 

「簡単な治癒魔法しか出来ませんでしたが、なんとかガイの重傷だった部分は完治したと思います。けどまだ無理はしないで下さいね」

「あ、ああ、ありがと。治癒魔法が有ると無いじゃ随分違うからな」

 

俺は自分の体を見た。至る所に包帯を巻かれている。その上で何故か青い縦縞のパジャマ姿だ。何故パジャマ服なのか。一瞬、分からなかったがこのように着替えさせれることが出来るのは目の前の人物しか居ない。

 

「……な、なあ、オリヴィエ。俺が気絶していた間に、そ、その、俺の服を脱がしたのか?」

「ええ、ガイが気を失った後はバリアジャケットが解かれて私服姿だったのですが、出血していましたので私が着替えさせてもらいました」

「……ま、まあ、ありがとうと言っておくべきか」

 

裸を見られてしまって、ちょっと恥ずかしかったがオリヴィエが居なかったら多分ここには俺はいないのだろうと思うと羞恥心よりも感謝の方が強かった。俺はベッドに腰掛けてオリヴィエに語る。

 

「今回は俺が弱すぎてすまなかったな」

「いえ、今回の相手は強すぎました。ガイのレベルではまだ渡り合うには無理だと思います」

「……そうだな」

 

レベルが違う。これは確かに紛れもない事実だ。今回の戦いで分かった。

次元が違うとも天と地の差があるとも言える。俺は“聖杯戦争”を甘く見ていたのかもしれない。

ふと、テーブルにあるデバイスのプリムラを見る。待機モードに戻って入るが所々に亀裂が走って、核にも亀裂が見て分かる。

 

「……大丈夫か、プリムラ?」

『今は自己修理中です。翌朝までには直ります』

 

核を点滅させて応答しているが、ちょっと辛そうな印象が感じ取れた。

 

「無理するなよ」

『ありがとうございます、マスター』

 

そして、オリヴィエがキッチンから何か料理を作ってオリヴィエがテーブルに置いた。

 

「お粥なんですけど、食べますか?」

「……ん、後で食べる。今はちょっと1人になりたいんだ」

 

そう言って、俺は立ち上がってベランダへと足を運んだ。オリヴィエは食事を受け付けてくれなかったからか少し寂しげな表情をして顔を伏せてしまった。

俺はごめんね、とオリヴィエに一言、言って窓を開けて外に出た。オリヴィエが止めに入らないので俺の気持ちを察してくれたのだろう。

俺はベランダの手すりに手をつけた。夜中となれば外気の温度も少し下がって肌に程良い夜風が当たる。

 

「……はぁ」

 

今回の戦いで俺は自分が無力だという事が分かった。あの巨躯の男に対して何もできなかった。体の激痛は残っているが特に痛むのが無理をしすぎた右手首だ。こうでもしないとまともに剣戟を行えなかった。

 

「その夢もお前が弱ければ叶う事など出来ん……か」

 

あの男の言葉が耳に残る。その紛れもない事実に俺は胸を痛めるしかない。全くその通りだった。

あの男と対峙した時、オリヴィエと特訓をした成果もあって、殺気をまともに受けてもすぐに動かせる事が出来た。

だが、きっといつもよりも動きが鈍っていたのだろう。命の削り合い。それを目の当たりにした時に足が竦んでいたのも事実。

 

「……なっさけね~」

 

俺はもう一度ため息を吐いた。こんな気持ちではこの戦争に生きていけないのは事実だ。どうにか気持ちを落ち着かせないといけない。

そこに、ガララッと隣の窓が開いた音がした。

そして、誰かがベランダに出てきた気配がした。

 

まあ、隣の住人が誰かなんてわかりきっていることなんだが。

 

「……ガイさん?」

 

その澄んでいる声を聞いて、俺は心に温かいモノを感じた。日常に戻ってきた気がしたからだろう。

 

「ああ、アインか。どうしたんだこんな真夜中に?」

 

今の俺は包帯を体中に巻いている。その姿はベランダ越しでは見られることはないのでこのマンションの構築に感謝してホッとした。俺の方に覗きこまれたら困るけど、そのような事をはしてこなかった。寝起きで身支度が整っていないから見られたくないのだろう。

 

「いえ、何か胸騒ぎがしたので星を眺めたくなったのですが、ガイさんが起きているとは思いませんでした」

「……俺もちょっと星を眺めたくなってな」

 

戦いの時は夜空なんて全く見ている暇はなかったが今夜の空は快晴のようだ。星がよく見える。

 

「……ガイさん、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。でも、今は少しアインと会話をしたい気分……かな」

 

アインハルトと話をしているとあの“聖杯戦争”は嘘だったんじゃないかって思う。

しかし、日常の世界と非日常の世界。この二つの世界がいまこのミッドチルダで入り混ざっているのだ。アインハルトと話をしていると日常に居る感じがするから今はそれに縋りたかった。

 

「か、会話ですか……え、ええと……」

「そんな慌てなくてもいいから」

 

顔は見れないが慌てている姿のアインハルトが脳裏に浮かんで苦笑した。

そして、しばらくアインハルトと何気ない会話をして楽しんだ。

 

非日常の世界に居たから分かる。こんなにも日常の世界は素晴らしいモノだったんだな。

 

何気ない日常の有難みは離れてから分かる事が多い。何時もの食事。何時もの訓練。何時もの遊び。何時ものお風呂。何時もの会話。何時もの就寝。

日常には有難みがありすぎて人は感じなくなっている。それはかけ離れた時に改めてありがたいと感じる事が出来る。人間というのはそう言うところが図太いのだ。

 

「ありがとな、アイン。アインと話をしていて楽しかったよ」

「お、お役に立てて良かったです」

 

壁越しから聞こえる声は嬉しそうだった。

 

「……ですが、ガイさんの本当に困っているモノに力になれませんでしょうか?」

「ん、困っていることもあるけど、アインとこうして話をしてくれるだけでも俺は嬉しいよ」

「……そ、そうですか」

 

今のアインハルトはどんな表情をしているのか壁越しではわからなかった。

 

「す、すいません、私、そろそろ寝ますね。もっと話をしたかったですけど」

「ああ、また明日でも話できるしな。おやすみ」

「おやすみなさい、ガイさん」

 

その言葉を聞いて、扉が閉まった音がした。部屋に戻ったのだろう。

 

少し夜風に当たりすぎたかな。

 

体が冷え込んでしまったので俺も部屋に戻った。オリヴィエはどうやらソファーで眠っているようだ。規則正しい静かな寝息を立てている。

今日は俺がベッドで寝る。

 

オリヴィエが寝ぼけて入ってこないといいけどな。

 

俺はそう思いながらテーブルにある、お粥の入った鍋を開ける。少し冷めてしまったが、とても美味しそうだ。

オリヴィエもどうやら料理が出来るらしい。その事にちょっと驚きを隠せない。王族育ちなのだからそのような事柄には無縁だと思っていた。

 

まあ、オリヴィエは要領がよいので、洗濯物の洗い方を一回教えただけすぐにマスターしたほどだしな。

 

オリヴィエの素晴らしいスキルを認識した所で、俺はお粥を一口食べた。

 

「……あま」

 

だが、要領がいいと言っても料理はいつ誰が教えたのだろうか。誰も教えていないだろう。生前の時もきっと料理などしていないはずだ。

オリヴィエは塩と砂糖を間違えたようだ。それにお粥にしては少しご飯も固かった。

 

「でも、気持ちは篭ってて嬉しいかな」

 

俺はその甘いお粥を残さずに食べた。オリヴィエが俺の為に作ったものなのだから残さずに食べないと失礼だ。

 

『マスター』

「ん?」

 

食べ終えてコップの水を飲んでいた俺にテーブルの端でプリムラが俺を呼んだ。

 

『今回は私が弱くて申し訳ありませんでした』

「いや、プリムラは弱くないさ。よく頑張ってくれた。むしろ俺がもっとプリムラをちゃんと使えればよかったんだ」

『……マスターは優しいですね』

「プリムラ?」

 

プリムラからいつもの機械的な音声と違ったような気がした。本当に感情のこもっているような音声。そのように聞こえた。

 

『覚えていますか、マスター。マスターの魔力がBランクになれば私の新しい力を使えることを?』

「ああ、覚えているよ」

 

俺がなかなかBランクにならないから、プリムラがC-のランクでもその力を使えるように調整すると言ってきた。俺の魔力の低さでオリヴィエだけでは無くプリムラにも迷惑をかけているとその時に思った。

 

『調整が終わりました。今は修復中なので使えませんが、明日から新しい力を使う事が出来ます』

「……本当か?」

『ええ』

 

プリムラはどうやら調整が終わったようだ。俺に新しいモードを教えてくれるようだ。

 

「その力も使いこなせるようにしないとな」

『精一杯、調整しますね』

「ありがとな、プリムラ」

 

俺は待機モードになっているプリムラの十字架の核を撫でてやった。このデバイスには色々と助けられている。

今回の戦争は認識の甘さが原因だった。四年前のJS事件から何も変わっていなかった。認識の甘さ。それが今の俺の弱点だ。

 

「わかったなら直さないとな」

 

俺は食器を持って立ちあがり、食器を水を浸した。予想通り、キッチンは先の戦場のような光景が広がっていたのは分かっていた。

今はベッドで横になりたかったので、その後片づけは明日することにして、俺はベッドに行って横になった。

 

「殺し合いに慣れないと生き残れない……な」

 

聖杯戦争の初戦。俺は学ぶべきものを多く学んだ。それを次に生かさないと、死だ。

そうして、いろいろ考えているうちに思考が闇に沈んで行って、意識を手放した。




変更点

・台詞のときのキャラの名前を消去
・///の消去
・……や!!の統一化

・そのうち三人称入ります(かもw

あんまり変わっていない気がしたw

この編の最初の感想をいただけると有難いです。

では、また(・ω・)/
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