魔法少女リリカルなのはvivid~過去と未来と現代の交差~   作:ガイル

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仕事が忙しくて時間がなかなか取れないです。

学生の頃の有り余る時間をもう少し有効活用できたらと思いました。

楽しみにしていてくれ居る方、お待たせしました。

え?居ない?さいですかw

では、15話目入ります。


十五話“魔術師と魔術師の交差”

 ―――マンション

 

「いててっ……」

 

俺はテーブルの前に座って、包帯を巻いてある腹部を擦っていた。

昨日の一件で俺は高度20メートル以上の位置から急行落下して地面に激突した。落下速度に抵抗して飛行を行ったので即死は免れたが、痛みはまだ体に残っている。

内臓は破裂していないようだ。五臓六腑とも正常に機能している、と、プリムラは言っていた。オリヴィエの治癒魔法が良かったのだろう。

 

「今日は仕事に行くのですか?」

 

対面に姿勢良く正座して座っていたオリヴィエが声を掛ける。

 

「……ちと、辛いから、休ませてもらおうかな」

 

俺は苦笑しながらオリヴィエに答えて、798航空隊へ連絡するためにモニターを目の前に出して操作する。少しして部隊長に繋がった。

 

『おお、ガイか。どうした?』

 

見た目は30歳前後の部隊長にしては若い年齢層だ。長い青を一つに繕った髪に青い瞳。右頬には刀の傷跡がクロスする様に傷ついている。

 

「おはようございます、隊長。今日は体調が優れないのでお休みをいただきたいのですが」

『合宿で鍛えられすぎたか?』

「……少し体を酷使したようです」

 

パッと思い浮かべた嘘で誤魔化す。それを聞いた部隊長は小悪魔のような笑みを浮かべて、しかし、鋭く真剣な目をして俺を見る。

 

『まあ、いい。なのはさんとのイチャイチャ旅行をして疲れたから休みを下さいと言ってきたら、容赦なくお前のマンションの一室を砲撃で殲滅していたところだ』

「……ははっ」

 

俺は苦笑いするしかなかった。目が本気だ。この部隊長はなのはさんが好きらしい。798航空隊から強化合宿に俺だけが呼ばれて、とても悔しそうな表情をして俺にしがみ付いてきた事もあった。

 

この人に温泉でなのはさんとバッタリ会ったなんて言ったら、リアルにこの部屋を砲撃で攻撃してきそうで怖い。

 

『……お前、ほんとに大丈夫か?』

 

しかし、そんな会話の中で何かに気付いたのか部隊長の少しふざけた(?)口調から一変、少し控え目な声で、それでも相手を心配しているような雰囲気を醸し出す。

 

「えぇ、大丈夫です。少し体を酷使しすぎただけですので」

『……そうか、そうならいいが』

 

画面には少し悲しげな表情をして俺を見つめてくる。

だが、それも少しの間だけで部隊長は表情を明るくして笑顔になる。

 

『今日はゆっくり休め。次の日からみっちり鍛えるからな』

「心遣い感謝します」

 

俺はモニター越しで敬礼した。なんだかんだ言ってもこの人は俺の上司。軍隊の礼儀は必要だ。それを見て部隊長も満足げな表情から、にやにやと笑みをこぼし始めた。

 

「どうしました?隊長」

 

そんな不審な様子を見た俺はその理由を聞いてみた。

 

『……なあ、ガイ。ガイのデバイスになのはさんのポロリな映像とか保存s……』

 

俺は部隊長の戯言を聞き終える前にモニターを閉じた。部隊長はなのはさんに対しては変態行為も行いそうで危ない。

時々、部隊長がなのはさんの訓練前に、部下になのはさんをローアングルから盗撮してくれってお願い(命令)している場面を見たことがある。

その部下がやんわりと断った時の部隊長の目から血の涙を流していたのを覚えている。目から血が出るって本当だったんだと確信した時でもある。

結論としてこの人はなのはさん絡みになると暴走を始めてしまうとんでもない人物だ。

 

いつか、俺の居る部隊からわいせつ行為で逮捕者が出るんじゃないか?

 

「……たくっ、あの隊長は」

 

俺が軽く愚痴を零すとそれを見ていたオリヴィエが静かに笑った。

 

「楽しい人ですね」

「まあ、な。悪い人じゃないんだがな。なのはさんに好意を寄せているらしい」

 

俺はオリヴィエに適当にそう言いつつ、俺は普段あまりつけることのない液晶モニターのテレビにリモコンで電源を入れる。画面に映し出されたのは報道ニュースで、女性のニュースキャスターが解説して右上に映像が流れ、下部にはテロップが右から左へ流れていた。

左上には“アラル港湾埠頭廃棄倉庫区画に突然の嵐!?”と報道され、アラル港湾埠頭の荒れた映像が流されていた。

 

『昨夜、アラル港湾埠頭の廃棄倉庫区画に突然の小型のハリケーンが発生しました。滞在時間は5分前後であると分かり、その影響で倉庫の外装から引き剥がされたトタン材が辺り一面に散らばり、現在撤去作業を行っております。この異常現象を専門家の……』

 

ニュースは昨日マスターとサーヴァントがぶつかり合った変わり果てたアラル港湾埠頭の報道が流れていた。

 

「……隠蔽や情報操作されているとしか考えられないな。昨日は明らかにハリケーンとは違う大きな騒音と衝撃があったというのに周りはその事に気にする素振りを見せない」

「そうですね。あの管理者が何かこの世界の人たちでも気づけない結界でも張ったのでしょうか?」

 

俺たちは互いを見ないでモニターを観て話をしていた。専門家の偉い人は、最近の気圧の変化が著しく変化しているのでその影響ではないかと説明している。

 

「まあ、仮に管理者が元帥レベルだとしたら可能だろうな」

「もし、その管理者がマスターとして参戦してきたら辛い戦いになりますね」

 

ニュースキャスターの女性は、今後もこのように突発性のハリケーンが海岸付近に発生しやすいのですね、と結論付ける。その言葉に専門家は頷く。

 

「管理者が参加することは可能なのか?」

「可能性はあると思います。昨夜の私が戦ったランサーのマスターはどうやら、元はサーヴァントだったようです。生存している人物でなくてもマスターになるのですから、生存している管理者がマスターになるのはおかしくはありません」

「……マジか?」

「ええ」

 

『皆さんも海岸付近は十分に注意をしてください。それでは次のニュースです……』

 

「少し話がずれるがランサー組は2人のサーヴァントという事になるのか?」

「そうなります。ランサー組はかなり強敵だと認識してください」

 

ニュースはアラル港湾埠頭の報道を終了して、次にテーマパークの入場者数を去年との比べ合いの結果を報道していた。

 

「……他の組達に引けを取らないように死への耐性……をつけないとな」

「特訓あるのみですね。後は実戦で慣れるしかないです」

 

オリヴィエと話し込んでしまったのでニュースの内容があまり頭に入っていなかった。なのでテレビのほうに注意を向ける。

モニターはいつの間にかテーマパークの家族連れの入場者にインタビューをしている場面だ。左下には入場者数を去年との比べ合いの結果が出ている。今年の方が入場者数が多いようだ。

 

「……世界は平和なんだな」

 

平和的なニュースを見ていると、無意識にそのような言葉が出た。

 

「この世界は平和に近いと思います。確かに犯罪事件が絶えたわけではありませんが、私の時代、古代ベルカ諸王時代で様々な国が入り混じった酷い戦争のようなものが無い分、かなり良い方だと思います」

「……戦場は怖かった」

「ガイ……」

 

俺はテレビからオリヴィエの方を向いて本音を重く吐いた。本当の戦争だともっと人が入り混じって殺し合いをするのだが、昨夜の一騎打ちだって殺し合いであるには変わらない。命の取り合いはやはり怖いモノだった。

俺の重い本音にオリヴィエは表情を曇らせて困惑して、俺から視線を離した。

 

「でも、俺は自分の願望を叶えたい、叶えたいんだ。“魔法で誰もが不幸にならないような世界”そのためにも死に慣れてこの戦いを勝ち抜く」

 

だが、俺は視線を逸らしたオリヴィエの両肩を掴んで必死に俺の想いをぶつけた。“聖杯戦争”に向けて何度も覚悟を決めたつもりだった。

だが、実際に昨夜の戦いでその覚悟は幻想で何の意味もない事が分かった。聞くのと見るのでは全く違う。実戦した内容も含めて、改めて覚悟を決める必要がある。

 

もう迷いたくない覚悟を持ちたい。

 

俺はその覚悟をパートナーであるオリヴィエに聞いてほしかったのだ。オリヴィエはその覚悟を持った俺の目を見て、驚きの表情をしていた。

 

多分、今の俺の目には揺るぎない灯が映っているのだと思う。

 

「怖くはないんですか?」

「怖いさ。怖いモノは怖い。でも、いつまでも怖がっていたら俺は……成長できない。前に進めない。だがら、オリヴィエ。君の力を貸してくれ」

 

俺はオリヴィエの両肩から手を離してテーブルに頭がぶつがるすれすれの所まで頭を下げた。

 

「……頭を上げてください、ガイ」

 

耳に透き通った声が聞こえたので俺は頭を上げる。そこには先ほどまで困惑した様子ではなく、優しく微笑んでいるオリヴィエが居た。

 

「私がガイに召喚された時からこの拳はガイの勝利のために振ると忠誠を誓っています。ですから、そのような当たり前な事に頭を下げないでください」

「……オリヴィエ」

 

オリヴィエは当たり前の事を聞くなといった態度を取って、テーブルにある湯呑を持って中に入っているお茶を飲む。

 

「ありがとな」

「……何のことでしょうか?」

 

オリヴィエは湯呑から口を離して俺を見て、ワザとらしく明るい声で首を傾げて微笑みながら言った。

そして、湯呑を置いて、絵に描いたような天使のような笑みを浮かべて……。

 

「もう少ししたら、訓練を行いましょう」

 

病み上がりな俺に対して悪魔な意見を言ってきた。

 

「……傷がまだ痛むんだが」

「ですが、ガイの傷の治り方が早いですね。私の治癒魔法もいらないくらいですよ」

「え?」

 

俺はオリヴィエの言った言葉に疑問が残った。この体中に付いた傷ははっきり言って動けないほどの重傷だ。

しかし、今は簡単に体を動かせるほどに回復している。オリヴィエが治癒魔法を行ってくれたからだと思った。

だが、当の本人は自分の治癒魔法はいらないくらいだと言っている。俺は先ほど痛みが残っていた腹部を軽く押してみる。

 

「……あまり痛くない?」

 

完全に痛みが消えたわけではないが先ほどよりかは痛みが和らいでいる。

 

「ガイの自己治癒力が比較的高いのではないのでしょうか?」

「大怪我を負った事はあの対戦をするまでは無かったから分からなかったが、そうなの……かな」

 

俺も自分の体がよく分からなかった。だが、治癒力が高いのなら良いに越したことはないのだろう。

 

「ですので、午前はゆっくり休んで午後から特訓しましょう」

「……ははっ」

 

目の前の人物にはニッコリと笑って脅迫的な事を言ってしまう原因にもなってしまうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――St.ヒルデ魔法学院中等科 昼休み

 

「……ふぅ」

 

私の席は窓際なので机に右ひじをつけて、右手で右頬を支えるように右に体重を傾け、窓の外を見ている。それは見ているというよりただ視界に入れているという表現の方が正しい。

事実、考え事をして外を眺めているのだ。外の光景などほとんど脳に入ってこない。

 

昨夜のベランダ越しの会話は楽しかった。寝るときは下着姿の上にTシャツを着た姿だったのでベランダ越しからガイさんに覗かれたらどうしようとか少し慌ててしまいましたが、終始覗かれること無く何とか平常心を保って会話することが出来ました。ですが、昨夜の会話ではガイさんは少し元気が無さそうでした。それだけではなく合宿の四日目からガイさんらしい感じがしなかった。常に周りを警戒しているような雰囲気を纏っていた。やはりオリヴィエ関係でしょうか?

 

「……はぁ」

 

そして、私は何処となくため息が漏れていた。ガイさんのために何もできない自分に苛立ちを覚える。

私は机の中から一冊のノートを取り出しパラパラと捲る。最後のページにたどりついたとき、その行動をやめて机に広げた。その最後のページ、そこにはトレーニングメニューがみっちりと書かれていた。基礎トレーニングから魔法応用のトレーニングまで。

 

ガイさんに見られそうになった時はこんな筋トレや魔法トレばかりしている人だとは思われたくなくて、必死になってガイさんからノートを取ったこともありましたね。

 

その内容を見ながら、先日の勉強会の日の事を思い出した。

 

あの時のピアノの演奏……また聞いてみたいです。

 

勉強会は私にとってとて有意義なモノだった。ガイさんの弾いたピアノの音は聞いててとても気持ち良かったし、ガイさんの事がいろいろと分かって嬉しかったという感情もあった。

 

だから私は困っているガイさんの手助けをしてあげたい。自然とそう思うようになりました。

 

「ん?映像通信?」

 

考え事をしていた私の目の前にモニターが表示された。掛けてきた人物はヴィヴィオさんだ。私は出ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――マンション 昼過ぎ

 

『今日はお休みなんだ』

「ええ、少し体調がすぐれないので」

 

お昼過ぎになのはさんから映像通信があった。どうやら今日出勤していない事に心配をかけられてしまったようだ。

 

『私の訓練はそんなに辛かったかな?』

「ええ、訓練に一生懸命励もうと思いましたが、体は正直なモノでついていけませんでした」

 

なのはさんまで嘘をついてしまった。

 

『……本当に“大丈夫”?』

「……えぇ」

 

だが、最後の部分が強調されたかのように最後の“大丈夫”にひと間、置いて聞かれた。やはりなのはさんに隠し事をするのは難しい。

でも、これだけは隠さないと不味い。

 

『あ~、イチャイチャな会話中わりぃが……』

 

そこになのはさんの隣からヴィータさんも映り込んできた。なのはさんは少し驚いた表情をしてヴィータさんの方を向いて声をかけた。

 

『……そんな風に見えてた?』

『あぁ。あそこの部隊長見てみな。目から血の涙だけじゃなく、壁に藁人形を釘で打ちつけて“ガイめ~、いつかあのマンションの一室を砲撃で破壊してやる”とか言って、念を込めてるぞ』

「……怖いですね」

 

リアルにそう思った。なのはさんと普通の会話をしているだけでも部隊長から呪い殺されてしまいそうだ。今までなのはさんと接した時もあんな風に俺の事を呪い殺そうとしていたのだろうか。今朝のモニターでは心配してくれてたというのに。

 

本当の事を聞きたいが、聞くのが怖くて聞けねぇ。

 

“聖杯戦争”ではない所で命の危険性を感じた瞬間だった。

 

『で、ヴィータちゃん、どうしたの?』

『別に大したことじゃねぇよ』

 

そう言って、なのはさんの方を向いていたヴィータさんはモニター越しの俺にその凛とした蒼い目つきを向けてくる。

 

『ガイ、疲れてんならしっかりと休んで疲れを取れよ』

 

どうやらヴィータさんにも俺の事を心配してくれているようだ。その事に少し嬉しさを感じた。

 

『へぇ~、ヴィータちゃんもガイ君のこと心配しているの?』

 

ヴィータさんの後ろに居たなのはさんは口元を軽く緩めてニヤニヤと笑っていた。

 

『あったりめぇだろ。ガイのような腐った根性を持っている奴なんかは徹底的に叩き潰さねぇと直らねえからな。とっとと、疲れを取って訓練に出て来いよ』

「……」

 

前言撤回。この人はあまり俺の事を心配してくれて無さそうだ。

 

それにしても俺は腐った根性を持ってるのか?

 

『ヴィータちゃんは本当に戦技教導官に向いてるよね。部下思いでいい子だよ』

『そんなんじゃねえよ!それに、いちいち子供扱いすんじゃねぇよ!!』

 

なのはさんが左手でヴィータさんの頭を子供を甘やかすように優しく撫でている。そんな事をされてヴィータさんは顔を赤くしながら抵抗している。こうして見てみると何とも微笑ましい風景の1枚だ。

 

『……なのはさんと仲の良いガイを呪ってやる』

 

なのはさん達の背後に居た、壁に藁人形を釘で叩きつけている部隊長の風景を切り取ればの話だが。

 

「……話が変わりますが御二人に聞きたい事がるのですが聞いてもいいですか?」

『ん?聞きたい事?』

『何だ?言ってみろ』

 

2人は微笑ましい風景の光景を終わりにして俺の写っているモニターに顔を向けてきた。

 

「男性でオーバーSランクの空戦魔導師の槍使いの人物ってどんな人がいましたか?」

 

俺は過去形で聞いてみた。昨日のランサーはこのように言っていたからだ。

 

“俺の世代では築きあげることが無理だったものだ。俺はいつも遅すぎた。俺の居た部隊は敵の罠に合い全滅……大切な部下も私も死んだが二度目の生を受けた。だが、今度は親友を守ること出来なかった。そして、再び死が訪れようとしたとき、後輩に全てを託した”

 

何処かの部隊長だったのだろう。更に原因は分からないが二度目の生を受けていると。そんな事が果たして可能なのだろうか。

 

『オーバーSランク……う~ん』

『……空戦魔導師……槍使い……』

 

なのはさんは首をかしげて該当している人物を思い浮かべようとしている様子だが、なかなかヒットしていないようだ。

しかし、ヴィータさんは何か思い当たったように顔を下げて地面をじっと見てぶつぶつと言っている。

 

「ヴィータさん、知っているのですか?」

『……まぁ、一応な。JS事件の時に居た人物だ』

 

JS事件。その言葉を聞いた時に俺は自分の心臓が跳ね上がったのが分かるくらいにびっくりしていた。俺が積み上げてきたモノが崩れてしまった事件。

何かがこみ上げてきそうな感覚が襲ってくる。

 

「……どんな人だったのですか?」

 

それを何とか抑えて表情に出さずに冷静さを保って、俺はヴィータさんに追求した。モニター越しのヴィータさんは地面から俺の方へと視線を移す。

 

『名前はゼスト・グランガイツ。空戦航空隊のオーバーSランクの槍使いだ。あたしも一度武器を交えた事がある。あの時は負けちまったけどな』

「ヴィータさんが負け……る?」

 

正直、想像出来ない。俺たちが束になっても敵う事が出来ないヴィータさんが負けたことがあるなんて。

 

『ヴィータちゃん。JS事件は極秘情報なんだからそれ以上は……』

『分かってるよ。まぁ、でもあいつはそれほど悪い奴じゃねぇってことは分かったけどな。で、なんでガイはそんな事を調べてんだ?』

「いえ、模擬戦の時にエリオの槍が凄まじかったので、管理局にも同等かそれ以上の人物がいれば参考になればと思いまして」

 

前もって考えていた嘘を2人に語る。

 

『でも、なんで過去形で聞いたの?』

 

しかし、なのはさんは過去形で聞いたことを見逃さなかったようだ。的確に俺の矛盾をついてきた。

 

「……すいません、言葉のあやです。気にしないで下さい」

 

俺は頭を下げて謝罪した。

 

『……まあ、いいけど……ガイ君。無理しないでね』

「……心遣い感謝します」

 

俺は頭を上げてモニターを見る。なのはさんが相手の事を思っている様な寂しげな表情をしていた。

 

やはり、なのはさんには迷惑をかけ過ぎるな。

 

『ガイ、早く戻ってこいよ。お前がいねぇとここじゃ、叩きがいのある奴がいねぇんだからよ』

「……はい。ありがとうございます。それではそろそろ失礼しますね」

『うん、ちゃんと休むんだよ』

 

なのはさんの心配しそうな声を聞いて俺は笑みを浮かべてモニターを切った。

 

「……ゼスト・グランガイツ……ね」

 

モニターを切って俺は笑みが消えて真剣な表情に変わった。

 

その人物について後で調べる必要がある。それに……。

 

「あのマスターについても素性を知っておいた方がいい……か」

 

元サーヴァントだったマスターだ。実力もかなりある。なので弱点を突く為に素性を知る必要性がある。

 

「ガイ、そろそろ行きましょう」

「……ん、そうだな」

 

今まで沈黙を保ってくれてくれたオリヴィエが声を掛けてきた。

 

「隊長やなのはさんにはちゃんと休んでくれと言われてんだけどな」

「ですが、一度ガイを鍛え直さないといけませんし、そのデバイスの新しい力も試したいのでしょう?」

「まあ、ね」

 

俺はそう言いつつ立ち上がる。オリヴィエも立ち上がった。

 

「行くか」

「はい」

 

俺たちはマンションを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――公共魔法練習場

 

「はぁはぁ」

 

俺はオリヴィエとここで特訓を行っていた。俺の息が上がっているのにオリヴィエは涼しそうな顔をして息1つ乱れていない。

 

「少し休憩しましょう。ガイは病み上がりなのですから」

「はぁはぁ……頼む」

 

俺はバリアジャケットを解除して元の私服姿に戻った。オリヴィエも騎士甲冑から元の私服姿に戻る。

 

「何か飲み物を買ってきます。ガイは木陰で休んでいてください」

「はぁ……あぁ」

 

何とか息を整えて俺はオリヴィエに小銭を渡して木蔭へと移動した。オリヴィエは少し離れた所にある自動販売機へと王族らしい優雅な歩き方で向かって行った。

 

「ふぅ……」

 

俺は木に背中を預けて座り込んだ。体全体に疲労が溜まっているからか座った瞬間に体が重くなった。

 

「フリーの訓練はキツいわ」

 

オリヴィエの特訓は合宿の時と同じで殺気の篭った攻撃をひたすら避ける特訓だ。最初のころと比べれば大分体を動かせるようになってきた。

それでも5~6撃あたりでガードしないと無理なのだが。

 

『私のセカンドモードはどうですか?』

 

首に下げている待機状態のデバイス……プリムラから音声が聞こえてきた。

 

「あぁ、いい感じだった。ただ、あれは空中戦でしか使えないな」

『マスターは空戦魔導師ですからそれでいいと思います』

「だな」

 

先ほどの特訓の時にプリムラのセカンドモードを試してみた。それは空中戦でないと使えない事が分かった。

それなのでオリヴィエとの特訓の時は普通のモードで行っていた。

 

「ま、後は俺が調整しないとな。あれも頑張れば地上戦でも使えるかもしれないし」

『その時もサポートします』

「あぁ、頼むよ」

 

俺は心強いデバイスのサポートがあると分かって、安心感を得ていた。

 

「……ガイさん」

「ん?」

 

そこに後ろから透き通ったような女性の声が俺の名前を呼んできた。俺は座っているので見上げながら右後ろへと首を向けた。

そこにはアインハルトが黒いバイザーを付けて顔だけを木から俺を覗き込むように見ていた。

 

背が高いな。おそらく武装形態の姿か。

 

「アインか」

「わ、わかりますか?」

「その長い碧銀の髪は目立つしな。それにその大きな赤いリボンも」

 

特徴的な事を言うと、アインハルトは俺の前に出てきた。やはり武装形態の服装だ。はやてさんから新しくしてもらったのだろうか。合宿の時に見た姿より少し変わっている。髪型も少し変り、武装形態の時でもその特徴的な大きな赤いリボンが付いている。

しかし、アインハルト自体、何処となくいつもの雰囲気ではないような気がした。バイザーを付けているから表情が読み取れない。

 

少し殺伐としているというか。初めてオリヴィエを見た時の雰囲気に似ているな。

 

「どうしたんだ、アイン。今は学園に居るんじゃないのか?」

「……えぇ」

 

アインハルトは静かに答える。その殺伐とした雰囲気を隠さずに。

 

「ガイさんに一度お会いしたくなりまして」

「……拳を交えたいのか?」

 

そう言ったが、アインハルトは首を横に振った。覇王の悲願を受け止めてくれるのは俺だと思って、拳を交えるために学園を抜け出したなんて言ったら少し怒ろうと思ったが違ったようだ。

 

……と、なると理由は何だ?

 

俺は首を傾げた。

 

「……ただ、ガイさんにお会いしたかったけです」

「……」

 

今一度アインハルトから同じ言葉を言ってきた。そう言われて嫌な気持ちにはならないが、アインハルトから出ている殺伐とした雰囲気が嬉しい気持ちになれずにいる。

 

「それではまた会いましょう。失礼します」

「あ、お、おい」

 

アインハルトは一度頭を下げて、俺の返事を待たずに後ろへと走って行った。俺も立ち上がって後ろを振り向いたが、そこにはもうアインハルトは居なかった。アインハルトは確かに突撃が早い。すぐ居なくなるのも説明が付く。

 

「……なんだったんだ?」

 

今の俺の頭の上には?マークが三つぐらい出ているだろう。

 

「ガイ?もう動けるのですか?」

「ん?フリーか」

 

そこにまた後ろから声が聞こえたので振り向くと缶ジュースを二つ手に持っているオリヴィエが立っていた。

 

「さっきまでアインが居てな。ただ俺に会いたかっただけと言って、すぐ居なくなったんだよ」

「……??……アインハルトにしては良く分からない行動ですね」

 

そう言いつつ、俺に缶ジュースを1つ渡してくる。俺はまったくだ、と言ってそれを受け取り一口飲む。

 

「それはさておいて、動けるのならこの後の訓練もみっちりやりましょう」

「……」

 

天使のような笑みを浮かべながらその言葉を言っているのを聞いて、飲んでいるジュースが気管に入りそうになった。

そして、缶ジュースから口を離す。

 

「……お手柔らかに」

 

今後の訓練も大変な事になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――マンション 夕方

 

俺とオリヴィエはテーブルを囲んで座っていた。

 

「疲れた……」

「まあ、病み上がりにしては上出来かと」

 

俺は満身創痍な状態で後ろに手を置いて天井を見上げるように体重を後ろに下げて明らかにダルそうな態勢をしているが、オリヴィエは正座をして何ともないかのように静かに紅茶を飲んでいる。

 

「……ま、オリヴィエに勝つのが無理って話か」

「ん?何か言いましたか、ガイ?」

 

小さく呟いた言葉にオリヴィエは耳を傾けていなかったようだ。俺は首を振って、なんでもない、と言い返す。

 

「さて、晩飯を作らないとな」

 

俺は重くなっている体を起こそうと片膝をついて立ち上がろうとした。

そこに、ピンポーンと質素な呼び鈴が部屋に鳴り響く。

 

「誰でしょうか?」

「見てくるよ」

 

立ったついでに玄関に足を進めて、ドアを開けた。

 

「「「こんばんは~」」」

「……こんばんは」

 

そこにはヴィヴィオ達が制服姿で立っていた。俺はドアノブを握ったまま脳が停止した。何故こんな時間帯にヴィヴィオ達が来るのか分からなかったからだ。

 

「……どうした、こんな時間に?」

 

ようやく思考が動き出して何とか言葉を絞り出す。

 

「あのね、ガイさん。ガイさんはまだご飯食べてないですか?」

 

ヴィヴィオが笑顔で首を軽く傾げながら聞いてくる。

 

「これから作ろうと思っていた」

「も、もし、良かったら私たちが作りますよ?」

 

コロナが少し緊張気味な表情で言ってきた。コロナとリオの手にはいろいろな食材が入ってるのか膨らんだビニール袋が一つずつ持っている。

 

「どうしたんだ急に?」

 

俺は軽く笑って聞き返してみた。

 

「ガイさんが体調がすぐれないとなのはさんから聞いたので私たちで料理を作ってあげようと思ったんです!!」

 

リオが八重歯をチラチラと見せながら笑って元気な声で答える。

 

ああ、そう言えばなのはさんにそう言っていたんだった。それをヴィヴィ達が聞いて来たというわけか。

 

食材まで買っているのに何もさせずに帰すのは気が引ける。

 

「事前に連絡しておいた方が良かったでしょうか?」

 

アインハルトが心配そうに不安げな表情で片手を胸の前に置いて聞いてくる。

 

「いや、別に大丈夫だよ。んじゃ、お言葉に甘えようかな」

 

俺が了承するとヴィヴィオ達は嬉しいのか明るい笑顔を向けてきた。アインハルトは相変わらず笑顔の表情を見せてこないが。

 

「「「おじゃましま~す」」」

「失礼します」

 

俺は最後に玄関の鍵を閉めるためにヴィヴィオ達を先に入れた。

 

「おや、ヴィヴィオ達ですか」

「こんばんは、フリージアさん」

 

オリヴィエとヴィヴィオ達も挨拶を交わすのが聞こえた。玄関の鍵を閉めて俺も部屋に戻った。

そして、最初に見たのはアインハルトだ。今の雰囲気は特に何ともなく、アインハルトの独特的な雰囲気のままだ。昼間に合った時の殺伐とした雰囲気はない。

そんな事を考えているとアインハルトと目が合った。

 

「どうしました、ガイさん?」

 

視線に気づき、首を傾げてキョトンとした表情で声を掛けてきた。

 

「……いや、なんでもないよ」

 

アインハルトはきっと大会に向けて秘密の特訓でもしているのだろう。だから、あの殺伐とした雰囲気を持っていたと。

俺はそう結論付けて昼間の事は聞かない事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――廃棄都市区画 市街地

 

「さて、と」

 

私はビルの屋上から人が使う事が無くなったコンクリートの塊であるビルが軍隊のように列を連ねている廃棄都市を見下ろしていた。

ここは魔導士たちがランクを上げるために行われる試験会場に使われていたりもする。今は夜なので廃棄都市なので街灯などの光は無く、照らされているのは遠くにあるミッドチルダ首都からの光と星の光だけだ。それだけでは薄暗く、この廃棄都市は不気味な雰囲気を漂わせている。

そして、私の視界には1人の人物が映っていた。閉鎖され、所々にコンクリートのヒビや穴がある高速道路の中央線に人がいる。あちらも見上げるようにしてこちらを見ている。

遠くからでは特徴的なモノが分からない。

 

『奏者よ、あれはキャスターだな』

「ええ、私のマスターの力でもキャスターってことは分かるわ」

 

頭に響いたセイバーの声に私も賛同する。

 

私は状況視察にここら一帯を散策していた。自分たちが戦うのに最もよい地域を探すためだ。

しかし、この地域に入ってから視線が私を貫いていた。殺気が異様に籠った視線。常人の人間ならこの背筋が凍るような視線を1分でも感じていたら失神してしまうぐらいのモノだろう。

しかし、私はセイバーも居るからその視線を無視して散策を続けていた。いつ襲ってくるかはわからなかったが、いつでもセイバーを実体化出来るようにはしておいた。この地域を散策して30分くらい経っただろうか。私は廃ビルの屋上に立っていた。殺気の籠った視線は無くなり、先ほど代わりに高速道路にその人物が現れたのだ。

 

「あの異様な殺気はアイツから放たれていたって事で間違いないわね。常人な人物ではないわね。それにマスターの姿が居ない。どこかに隠れて様子見かしらね」

『うむ、十分に注意するのだぞマスター』

 

わかってるわ、と私は霊体化しているセイバーに返答して、靡いている髪を片手で押さえる。今は軽く風が吹いているようだ。ビルの屋上なのでその影響を髪がもろに受けているようだ。

 

「!?」

 

そこにドンっと何かがあの人物から放たれた。

 

超圧縮された魔力の球!!しかもデカイし速い!!

 

私は自分自身の危機を感じて廃ビルから飛び降りた。その瞬間、私が立っていた後ろのビルは黒い魔力の球を受けて、ビルの半分から上が粉々になり破片が私にも飛んできた。

この廃ビルと廃棄高速道路の距離は200メートル弱。それを一瞬で飛んできたのだ。

 

「セイバー!!」

「心得ておる」

 

私がセイバーと叫ぶと同時に金髪の髪に翠の瞳、鮮やかな赤のドレスを着ているセイバーが実体化して、私に向かって飛んできた破片を左手に握っている赤と黒のラインの捻れた特徴的な剣で薙ぎ払う。

 

「余に掴まっておれ。一気に行くぞ」

「えぇ」

 

私はセイバーの腰に手をまわした。セイバーは後ろのビルに足をつけて落ちながら壁走りをして、最後の一歩を思いっきり踏んで高速道路側へと跳んだ。

その最後の一歩の威力は凄まじく、その威力に耐えきれなかったビルは半壊から全壊へと変えざる負えなかった。

そして、高速道路に立っている人物から先ほどの超圧縮された高速の黒い魔弾が撃たれた。先ほどより近づいたから分かるが、どうやら杖みたいなモノから魔弾を放出しているようだ。

 

あれが“デバイス”というモノなのかしらね?

 

そんな思考を頭の隅に置いておいて、目の前には黒い魔弾が迫ってきていた。その黒い魔弾の速度は常人では決して反応できない速度だ。私も200メートル離れている所から反応するのが精一杯だった。

更に今は止まっているわけではなく相手に向かって跳んでいる。迎撃されている状態なので更に速く感じるのだろう。ここまで来るともはや反応できるのが無理に近い。

 

「ふん、温いぞ」

 

しかし、私のサーヴァントはそれに反応して見切り、左手に持っている剣でそれを一太刀で切り捨てる。

ズドンと大気中に圧縮された黒い魔力が霧となる音がして拡散されていく。

 

「なっ!?」

 

だが、その霧が刀や槍、剣とさまざまな武器の形になって矛先をこちらに向けて再び襲いかかってくる。

 

再構築に遠隔操作!!“デバイス”ってそんなことも可能なの!?

 

「慌てるでない、奏者よ」

 

襲ってくる武器の嵐に慌てている私に対して、セイバーはいつもの冷静なセイバーだ。そして何かを呟いた。

 

「“時を纏う聖者の泉(トレ・フォンターネ・テンプスティス)”罪科の剣よ、ここに!!」

 

外見は何も変わっているようには見えないが、セイバーの特徴的な剣に何かが宿ったのが分かった。その剣を襲ってくる武器に対して受け止めるための構えに入る。

 

「ちょ、ちょっと迎撃しなさいよ!!」

 

何かが宿ったので攻撃にするのかと思った私の考えが崩れて、文句をセイバーに投げつけた。

 

「これで良いのだ」

 

帰ってきたのは自信満々な表情を横顔からでも分かるくらいに浮かべているセイバーからの言葉だった。

そして、最初の武器である矛先が防御の姿勢でいるセイバーの剣に触れた瞬間、全ての武器が止まった。

 

「え?」

「……!?」

 

私は戸惑いながらも驚いていた。相手も驚いているようだ。いや、相手は驚いているというよりも僅かだが痺れたと言った感じだ。

 

いったいどういった原理で止まったのかしら。後で聞く必要があるわね。

 

そのまま止まっていた武器は霧へと戻った。

 

その間に私たちは廃棄高速道路へ跳び下りて、私はセイバーから離れ、パンパンとスカートについている埃を叩きながら相手を見た。

見た目は4~50歳ぐらいの少し年配の掛った黒い瞳の男性だ。セミショートの黒い髪にも少し白髪が混じって入るがそれをオールバックにしているため年配という感じがしない。服装もバリアジャケットというモノなのか、黒いズボンに黒いインナーを着て黒いロングコート。ロングコートには僅かに装飾品が付いている。その全ては武装型のような服装だ。

そして、右手には先ほどの超圧縮された魔弾を放った杖を握っている。

 

「……やはり、視るのと実戦では違うな。セイバーの技に反応できなかった」

「……何を言ってるの?」

 

相手が呟いていた言葉を私は拾って聞き返す。その人物はどんな感情が込められているのか分からない目をこちらに向けてくる。

 

「遠坂凛だな」

「……へぇ~、敵の情報は調査済みってわけ?」

 

この世界の住人ではない私の名前をどうやって調べたのかはわからないがこちらの事は調べられているようだ。

 

「君は“力の転換”によって宝石などに魔力を貯めこんだり一気に開放したりすることのできる魔術師だからな。それに相手を指差すことで人を呪う北欧の魔術“ガンド”を得意としている」

「!?」

 

私の魔術がバレている。一体どうやって?

 

私は心の中で驚いていた。遠坂家の魔術は秘匿されていて決して人前に出る事はないモノのはずだ。

 

「あなたもキャスターなのだから魔術師なのかしら?それとも魔法師か魔導師?」

 

私は驚きを何とか表に出さずに相手に聞き返す。魔術を知っているのなら魔術師という可能性が高い。魔法や魔導はまだ分からない部分が多いから魔法師や魔導師でも“聖杯戦争”に参戦出来るのかもしれないが私の中ではその可能性は低いと考えている。

 

「あぁ、そうだ。私は魔術師だ」

 

相手は隠す素振りを見せずに魔術師だと肯定した。やはり魔術師だったようだ。

しかし、疑問が残る。先ほどの魔弾は明らかに“魔術”のモノではない。“魔法”なのか“魔導”なのかはまだ分からないが、魔術とは扱うチャンネルが違うから両方使える人物はたぶん存在しないと前に考えていた。1つの入れモノにそれと同じ質量で異なるチャンネルが2つあっても、2つは入らない。両方使えたら化け物かもしれないが“魔術”が暴走する。魔術を使って更に魔法を行うためにの“概念”としている魔力(マナ)を大気から取り込んだら、魔術と併用して集め過ぎて自滅するからだ。

 

何にしても目の前の人物に関してはまだ情報が少なすぎるわね。私の求めているモノは“魔術”と“魔法”もしくは“魔導”の併用が出来るか出来ないか、それを知ること。魔法はその時代の科学力で再現できない未知数のモノとしてまだ考えていた方が良さそうね。まあ、ここの世界の科学では私たちの今の科学の力では証明できないモノの定義をしている魔法を再現できそうだけど。

 

「それって“デバイス”よね?」

 

私は今、考えていた思考を停止して最も聞きたかった事を相手の杖に指を指して聞く。その返事の代わりにその人物は静かに構える。

 

「教えてくれないの?」

 

ニッコリと悪戯な頬笑みを向けながら相手の行動を伺う。

 

「教えるメリットもない」

 

その人物が言葉を発した瞬間、その人物から凄まじい殺気が放たれた。最初の時に背筋が凍るような殺気だ。

 

「マスターよ、下がっておれ」

 

それに臆することなく、セイバーは前に出て剣を構える。

 

「負けんじゃないわよ」

「わかっておる」

 

私の喝の言葉にセイバーは振り向かずとも頷いたのが分かった。

そして、ダンッとセイバーが地面を蹴った事で乾いた音が響き、一直線にキャスターに向かって走りだしたことが戦闘の開始の合図だった。

距離は10メートル弱。それをセイバーは一気に突き進み、気がつくと既に剣を振り下ろしている場面だった。キャスターはそれを杖で難なく受け止める。そのまま鍔迫り合いの力の押し合いとなる。

 

「むっ、力は余と同じだと」

「……」

 

私はじっと相手の行動を観察していた。少しするとじりじりとセイバーが押され始めた。

そして、キンッと武器を弾く音がしてセイバーはキャスターから大きく離れ私の前まで下がる。

 

「殺れ、ジャッカル」

『了解した、マスター』

 

その間にキャスターはあの杖に命令を下して魔弾のチャージを完了していた。あたり一面に魔弾が現れる。先ほどの魔弾よりかなり小さいが今度は数が多い。

 

「……多いどころじゃないわね」

 

私はその数を見て愕然とした。半径50メートル前後だろうか。魔弾で空が覆いつくされ、私たちをシェルターのように囲んでしまうほど展開されている。黒い魔弾なので高速道路を照らしていた僅かな光がさらに薄くなり、ほぼ暗黒な世界に変わった。

バチバチと魔弾の魔力が唸りを上げて、その影響を受けて大気も悲鳴を上げている音を全方位から聞くと神経がおかしくなりそうだ。

 

「そなたの技はあまり美しくないな」

「馬鹿ッ!!そんな事言っている場合じゃないわよ!!」

 

視界が暗くなっている中、悠長な事を言っているセイバーに私は身の危険を感じながらも怒鳴った。

 

「さっきの技は!?」

「あちらも馬鹿ではないようだぞ。さっきの技を使っても意味がない」

 

先ほどの魔力で作られた武器の矛先がセイバーの剣に当たった瞬間に周りの武器が霧に戻った。カウンター的な技なら止められると思ったが、今回はそうはいかないようだ。理由は分からないけど。

正直、私の今の手の内だとこの魔弾の弾幕を回避する手はない。持ってきた宝石は9個。今のこの状況では無意味だ。

 

「そう案ずるな、マスターよ」

「……ッ!!」

 

敵を見ていたセイバーは振り向いてにっこりと笑う。私は一瞬、ここが戦場だという事を忘れて、薄暗い中でもその笑みに魅入られたかのように見惚れてしまった。

そして、再び前を向いて剣を構えて呟く。

 

「“燃え盛る聖者の泉(トレ・フォンターネ・アーデント)”集え、炎の泉よ!!」

 

またセイバーの剣に何かが宿った。それは先ほどのモノとは質が違って違うモノだと分かった。

 

「伏せておれ、奏者よ!!」

「えっ?きゃあ!!」

 

セイバーが言葉を発した瞬間、周りの魔弾は一斉に私たちを貫く為に襲いかかってきた。光を遮るように並んでいた魔弾が動き出したので光が漏れ始めてキャスターを確認しようとしたが、身の危険が迫っているので私はセイバーに言われた通り身を低くするために伏せる。

セイバーは全方向から襲ってくる魔弾に対してその場で一回転して回転切りをした。その剣から放たれる剣圧は凄まじく、セイバーを中心にハリケーンのような大気の渦が発生し、襲ってきた全ての魔弾はその大気の壁を超す事が出来ずにブツかって霧状になっていった。

 

「……ほう」

 

キャスターは自分の魔弾が相手に届かなかった事に対して何かに感心していた。

セイバーは息を切らさず再びキャスターに向かって走り出して、走りながら剣を横切りの態勢へと変えた。

 

「天幕よ、落ちよ!! 花散る天幕(ロサ・イクトゥス)!!」

 

キャスターはガードの態勢に入ったが、セイバーはそのまま両手持ちで横切りを行い、居合抜きのように剣を振り抜き、キャスターのすぐ横を通り抜けた。

 

「……くっ!?」

 

セイバーの切り抜けた後にとても重い斬撃が飛んで来たのか、それを受け止めていたキャスターの表情が歪み、右肩が斬れたのか右肩から血が吹き出ていた。

 

「な、なかなかだな。流石はセイバーと言うだけの事はある」

「ほう、敵から賛美を受け取れるとは思わなかったぞ。だが、そなたもやりおる。首を刎ねたつもりで振り切ったのだがな」

 

セイバーは振り向いてニヤリと笑った笑みと剣先をキャスターに向けた。キャスターは特に右肩に手を抑えようとせず、傷をほったらかしにしてセイバーを見る。

 

「……だが、やはり運命は変わっていないのだな」

「何を言っておる?」

 

その言葉を言った時、キャスターから発せられていた凄まじい殺気が消えていた。

 

「悪いがこれ以上は戦う理由はない。失礼する」

「逃がすと思うか!!」

 

セイバーはキャスターが逃げると分かったのか走り出して、大上段構えでキャスターを真っ二つにするために振り下ろした。

だが、その攻撃は大気を切っただけにすぎなかった。すでに、そこにはキャスターという人物は居なかった。私は伏せている体を起して立ち上がった。

その時、頭にキャスターの声が響いた。

 

『お前たちは定められた運命を変えられるか?』

「……何を言っているの?」

『……いや、愚問だった。失礼する』

 

その言葉を最後にキャスターの声は聞こえなくなり気配も消えた。私は左手を腰に付けて、はあ、と肺に溜まった熱い息を噴き出した。

 

「目標ロスト……ね」

「ふん、舞台に上がるにはキャスターはまだ役不足だ」

 

セイバーはそう言いながら特徴的な剣を一度振って、霊体化させた。

 

「いえ、あれは間違いなく強敵よ」

 

私はセイバーに近づいて、セイバーの言葉を拾って否定した。

 

「むっ、そのようには見えなかったが本気ではなかったと申すのか?」

「ええ。一度キャスターと鍔迫り合いをしたでしょ?その時にキャスターの事をよく観察してみたんだけど、何か“魔術”を使っていたわ。外見から見ても特に変化が無かったから多分、身体的な何かを上げることのできる部類だと思うわ。だから、キャスターとの力比べでセイバーが押されていた」

「確かにあの時のキャスターの力は並大抵のものではなかった」

 

セイバーは先ほどまで剣を持っていた左手を見る。鍔迫り合いの時にキャスターの力が大きかったことを思い出しているのだろう。

 

「あの魔弾は“魔法”ね。いえ、“魔導”かしらね。あの杖が“デバイス”だとしたら魔導でしょうし。ああ、でもこの理論はまだ固まってないし……」

 

私は口に手を添えてキャスターの攻撃してきたいろいろなパターンを分析する。

 

「ブツブツと考えるものではないぞ。次からはあのような小細工をしてきても余の敵ではない。大船に乗った気でいると良いぞ」

 

セイバーが大きな顔をして笑顔で私の事を見ている気がしたが、思考の渦から抜けていない私は見ている暇が無かった。

 

「……はぁ、余のマスターはもう少し融通かきけば美しいモノなのだがな」

 

セイバーは頭に手を添えて今の私を見て、ため息を漏らしていたように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――マンション

 

ヴィヴィオ達が訪れて料理を作ってもらい、それを皆で食べた。料理はカレーとコーンポタージュのようだ。皆で食べる時には丁度良い。

 

「美味しかったよ、ごちそうさま」

 

俺は机で食べていたカレーとスープを平らげてスプーンを置いて手を合わせた。

 

「お粗末さまです」

 

食器を水に浸しておくために持って立ちあがり、振り向くと喜んでいるのかテーブルの前で元気な笑みを浮かべているヴィヴィオ達。

 

確かに料理は食べてくれる人が美味しいって言ってくれるのが作る側としては一番嬉しい事だからな。

 

皆はまだカレーを食べているようだ。俺が食べるのが早かったからか皆はまだ半分も平らげていない。

 

「これは美味しいです。ヴィヴィオ達はきっと良いお嫁さんになりますね」

 

オリヴィエは口の端の方にご飯粒を付けながらヴィヴィオ達の事を褒めている。

 

「えっ!!」

「お、お嫁さんですか!?」

「そ、それは……」

「……」

 

何故かオリヴィエの言葉に子供たちは顔を真っ赤にさせて、それぞれ様々な反応をしている。

ヴィヴィオはスプーンの端を咥えながらカレーを見つめているし、コロナは両頬を両手で押さえている。リオは必死に目を瞑って目の前に手を出して振っている。アインハルトはチラチラとこちらを見ながらカレーを食べている。

 

「フリー、口にご飯粒が付いてるぞ」

「えっ、あ、ホントですね」

 

オリヴィエは口の端を手で触りご飯粒が付いていたのがわかり、それを取り口に入れた。

俺はキッチンへ行って食器を水に浸した。

 

「うわああぁぁ!!」

「リ、リオ!何やってるの!!」

 

そして、何やら部屋からリオの慌てた声と食器が粉々に割れるような高い音がキッチンに響いてきた。俺が部屋に戻るとテーブルが倒れており床はカレーとご飯とコーンポタージュ、割れた皿で汚れてしまい、皆がカレーやコーンポタージュなどを服や髪についてしまっている。

 

「だ、大丈夫か?」

「ご、ごめんなさ~い!!」

 

服や顔にカレーが付いているリオが俺を見た瞬間、真っ先に謝って来た。

 

「ううっ……髪の毛がベトベトする」

「ちょっと、気持ち悪いね」

 

ヴィヴィオとコロナは髪にカレーが付いて服にはコーンポタージュが付いてハンカチで取ろうとしながら苦笑いしている。

 

「……」

 

アインハルトも髪にコーンポタージュが付いているが、態度に出ないようにグッと堪えて体をふるふると震えさせている。

 

「皆のご飯が台無しですね」

 

オリヴィエは服にカレーが付いてしまっているが何とも思っていないのか、服よりもご飯が無くなってしまった事にショックを受けているようだ。

 

「と、とりあえず、皆が拭くモノ持ってくるよ」

 

俺は脱衣所から数枚タオルを取ってくる。それを皆に一枚ずづ渡し、余ったタオルで床に散っている食器の破片を集める。

 

「どうしてこんな事になったんだ?」

 

その作業をしつつ皆に聞いてみた。

 

「ゴメンなさい、ガイさん。私が無我夢中で手を振っていたらいつの間にかテーブルに体重を乗せていました。それでテーブルが倒れてちゃって……本当にゴメンなさい」

 

シュンと申し訳なさそうな表情をして頭を下げるリオ。確かにリオの力は強い。何か考えていたリオが興奮してリオらしくない行動を力で示したようだ。

そんなリオに俺はリオの頭に手を置いて軽く撫でる。

 

「ま、気にしてないさ。次からは気を付けろよ」

「は、はい。本当にごめんなさい」

「でも、リオは何を考えていたんだい?こんな行動を起こすまで考えていたものだろ?」

「そ、それは!?……言えません」

 

最初はビックリして俺を見て大きな声だったが、次の言葉は頬を赤く染めて少し俯きながら俺から視線を離して、聞き取るのがやっとの小さな声だった。

 

「まあ、いいけど……どうする?風呂でも入っていくか?」

「え、お、お風呂!?」

 

今度はヴィヴィオがビックリしている。コロナも同じ表情だ。

 

何故そんなに驚く?

 

それにアインハルトが瞳孔を大きくさせて俺を見ている。アインハルトも別の意味で驚いているのだろうか。

 

「髪がそんなにベトベトだと気持ち悪いだろ。飯を食べた後に風呂オに入ろうと思ったから既にお湯は沸いているよ。男の俺の風呂が嫌だったら女の子のアインの部屋の風呂の方が……」

「う、ううん。せ、せっかくだしガイさん家のお風呂に。そ、それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

「そ、そうだね」

 

ヴィヴィオとコロナは何故か嬉しそうだ。俺は皿の欠片を集めたタオルを持って、ゴミ箱へ欠片を叩き落とす。

 

「服はどうする?洗濯機は貸すけど」

「ノーヴェの特訓で使った体操服があるから一先ずそれに着替えようかなと考えてるよ」

「でも、制服はどうする?」

「そうなんだよね。明日も学校あるし」

 

ヴィヴィオは困ったように首を傾げる。

 

「あ、あの、私の所には乾燥機がありますのでもしよろしかったらお使いになりますか?」

 

今まで沈黙を保ってきたアインハルトから言葉が出てきた。

 

「乾燥機?そりゃまた随分と豪勢だな」

「練習ばかりしていると服が足りなくなる時がたまにありますので」

「……それは練習のしすぎじゃないのか?」

 

Tシャツが汗でびしょびしょになるほど練習をして、それでも他のTシャツも足りなく程まで汗をかいて練習をしているなんてな。

 

口ではああ言ったが、実際はアインハルトはものすごい努力家だってことはよく分かっているので凄いと思っている。

 

「まるで私が練習バカみたいだと思ってませんか?」

「練習量が増えるのはいい事だと思うよ。ただ、体調管理は気を付けておけよ」

「……ええ、分かっています。心配してくださいましてありがとうございます」

 

アインハルトは俺から視線を離してペコリと頭を下げた。俺はそれを見て微笑む。

何か随分と話が逸れた気がした。話を戻すとアインハルトは乾燥機を貸してくれるとの事。

 

「俺の風呂に入るなら入る時に洗濯機を回すといいよ。止まったらアインの部屋にある乾燥機に入れておくけど」

 

そう言うと、なぜか子供たちは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「いえ、ガイ。それは私がやっておきます」

 

原因が分からないままだったが、そこにオリヴィエがその役を買って出た。

 

「ヴィヴィオ達も女の子です。男であるガイに自分が着ていた服が洗われている事に恥ずかしいのでしょう」

「……フリーのおかげでその事に疎くなりつつあったな」

 

オリヴィエの羞恥心の無い行動が女性に対しての接し方を少し忘れてしまっていたかもしれない。でも、相手はまだ子供だ。そんな事を気にするのはまだ早いと思っていたが。

 

「女性は常に乙女心を持っているのですよ」

「フリーからそんな言葉を聞くとは思わなかったわ~」

 

オリヴィエに一番似合わなそうな言葉が出てきて軽く笑ってしまった。

 

「まあ、私は……女であることをあの時に捨てましたし」

 

ボソッとオリヴィエが俯いて何か言った気がした。誰もそれに気付いていない様子だ。俺だけ何かを言っていたのが分かったようだ。

 

「あ、それじゃあ、フリージアさん。洗濯物をお願いしてもよろしいですか?」

「え、ええ、わかりました。脱いだ服は洗濯機に入れておいてください」

「それじゃあ、皆で入ろうか」

 

皆で!?っと、アインハルトはびっくりして高い声を上げていた。

 

そう言えば合宿のときも川遊びのときに水着!?と大声を上げていたな。

 

アインハルトは少し恥ずかしがり屋だ。

 

「……そんなに広くないぞ。まあ、子供4人なら何とか入るか」

「それじゃあ、いっちば~ん!!」

「あ、リオずるーい」

「では、失礼します」

「……」

 

ヴィヴィオ達が脱衣所に入っていった。アインハルトは何かもじもじしながらも入って行ったが。

 

「まあいいや。オリヴィエ、洗濯物任せるよ。俺はこの部屋を掃除しないと」

 

カレーやコーンポタージュによって床が2種類の色によって汚されている。幸いにもフローリングの所だけに零れていたから、拭き取るのは容易いだろう。

 

「ええ、では頼みます」

 

オリヴィエはそう言って、脱衣所へ入って洗濯物を洗濯機に入れ始めたようだ。風呂場からはヴィヴィオ達のじゃれ合うような声が聞こえてくる。

 

『アインハルトさんの胸、やっぱり大きいですね。温泉の時に見惚れてました』

『え、あ、あんまり見ないで下さい』

『アインハルトさんの凄いです』

『~~ッ』

『アインハルトさんの髪、綺麗』

 

主にアインハルトがヴィヴィオ達に弄ばれているようだ。脳裏にはアインハルトが皆からいろいろと責められているような光景が思い浮かんだ。まあ、初等科のヴィヴィオ達に比べれば中等科のアインハルトは皆と比べて色々と育っているのだろう。

 

「……さて、軽く片付けますか」

 

俺は今考えていた事を強制終了して掃除を始める事にした。アインハルトの裸体を想像してしまって何か罪悪感を感じたから。でも、最後に一つ思った事があった。

 

アインハルトは自分の部屋にある風呂を使った方が良かったんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「「「本当にすみませんでした」」」」

「え、えーと、どうした?」

 

風呂から上がってきた子供たちが俺の前で横一列に並んで正座して真剣な表情をして頭を下げていた。部屋はカレーとコーンポタージュの色が無くなって元に戻り、子供たちは体操服であるスパッツ姿だ。

オリヴィエは今、アインハルトの部屋に行って乾燥機を回しているのだろう。

 

「お風呂の中で皆で話していたんですが、今日はガイさんのお見舞いに来たはずなのに逆にご迷惑ばかりかけてしまっているねって」

「気にするな。こういうのも何だかんだで面白かったし」

「で、でも、やっぱり私たちが一度謝らないとダメだと思うのです」

 

ヴィヴィオを労うように気にするなと言ったのだが、コロナはやはりケジメをつけた方がいいと思ってるようだ。俺は少し考えて片目をつぶりながら頭を掻いた。

 

「それじゃ、気持ちだけ貰っておくよ。次からは気をつけろよ。しかし、お見舞いに来てくれたのは凄く嬉しいし、料理も作ってくれた。それだけでも十分さ。まあ、最後は確かに部屋を汚してしまったけど、その分を差し引いても十分プラスさ」

「……ガイさんがそう言うのでしたら」

 

しぶしぶと言いながらもアインハルトは頷いてくれた。

 

「ただいま戻りました」

 

そこに、皆の乾いた洗濯物を持ってきたオリヴィエが戻ってきた。今の乾燥機は早いようだ。服が戻って来たことに子供たちは真剣な表情から喜びの笑みへと変わった。アインハルトは笑みを零さなかったが。

 

「ありがとうございます、フリージアさん」

 

ヴィヴィオが代表して受け取った。

そして、頬を少し赤くしながらチラチラと俺を見る。

 

「ん?着替えたいのか?なら、外に出てるよ」

「あ、ありがとうございます」

 

ぺこりと頭を下げるヴィヴィオ。俺は皆の表情がすぐ変わるのが面白くて笑みをこぼした。

そして、俺は一度部屋から外に出た。夜ともなると外気の空気は少しひんやりしている。それが皮膚に刺さって冷たく感じる。

 

こうして“日常”を堪能できるのはヴィヴィオ達のおかげだよな。そのことには感謝しないと。

 

少しして、制服姿に戻ったリオが玄関から出てきて入ってもいいと言われたので部屋に戻る事に。どうやら皆、制服姿に戻ったようだ。テーブルにはコロナが皆の分のお茶を出してあったので、それを一口飲んで一息つける。

そして、皆で雑談を始めた。その一つ一つが他愛のない事ばかりだ。今日の学園での出来事、ノーヴェの特訓の話など。

だが、たとえその一つ一つが他愛のない事だとしても今は“非日常”に居る俺にとってその“日常”な話はとても心が休まるように感じた。

 

「ところで、ガイさん」

「ん?」

 

俺はヴィヴィオに呼ばれたのでヴィヴィオの方を見る。その真剣な虹彩異色の目で見られていたので只事ではないと直感で思った。

 

「何か困ってる事があるのですか?」

「……っ!?」

 

驚いた事を何とか表情に出さずに押さえつけた。なのはさんやアインハルトだけでは無くてヴィヴィオにも隠し事があるって分かってしまった。いや、空港に着いた時から子供たちの様子も少し変だったので子供たちの中にも俺への疑問が生まれていたのだろう。

 

ほんと、俺はポーカーフェイスが出来ないな。

 

コロナもリオも話し込んでいた内容を止めて、ヴィヴィオの言葉に頷きながら俺を見る。オリヴィエは心配そうな表情をして俺を見てくる。ここでどのように答えるのか気になっているようだ。

ここで中途半端に答えてもヴィヴィオ達が余計に心配してしまうだろう。だから、安心する言葉をかけることにした。

 

「困っている事はある。でも、それは自分でやらなければならなく、それもなかなか解決できないモノなんだ。だから、俺がやり続けて本当に手探り状態までになったらヴィヴィ達に相談に乗るよ」

 

自分でも分かっていた。ヴィヴィオ達に相談することは今後一切ないと。前にアインハルトにも言った気がする。アインハルトは少しだがこちらの事情を知っている為、もしかしたら相談に乗ってほしい時があるかもしれない。

だが、ヴィヴィオ達は全く知らない。だから、嘘をつくしかなかった。

俺の言葉にヴィヴィオ達は強い笑みを浮かべて笑う。嘘をついた事に胸にチクリと痛みが残ったが日常に居るヴィヴィオ達を非日常に連れていかせるわけにはいかない。

 

「本当に困った事があったら言ってくださいね」

「あぁ」

 

上辺面だけで俺は頷く。

 

「あっ、ヴィヴィオ、リオ。そろそろ帰らないと」

「もうこんな時間なんだ」

 

コロナが腕時計の時間を見てヴィヴィオとリオに帰るように促す。時間は夜の八時過ぎ。そろそろ帰らないと不味いだろう。

 

「送って行こうか?」

「いえ、大丈夫です。ガイさんはゆっくり休んでいてくださいね」

 

コロナが笑みを浮かべてやんわりと否定する。

そして、初等科組は帰宅準備を終わらせた。とは言っても食材の分が無いので来た時よりかは軽くなっている。

 

「それじゃあ、またね~、ガイさん、アインハルトさん、フリージアさん」

「失礼します」

「お邪魔しました」

「ああ、またな」

「また会いましょう」

「お疲れ様です」

 

初等科組が帰り、残ったのは俺とオリヴィエとアインハルト。

しかし、アインハルトは何故か不機嫌な表情をしていた。

 

「どうした、アイン?」

「……私だけに相談に乗ってほしかったです」

「皆で相談にのった方が解決できるものもあるからな」

「そう言う意味ではないのですが……」

 

はぁ、とアインハルトは疲れたような表情をしながらため息をついて立ち上がる。

 

「私もそろそろ失礼します」

「ああ、またな」

 

ぺこりと頭を下げてアインハルトも部屋から出て行った。部屋には俺とオリヴィエだけとなった。先ほどの騒がしさが無くなり部屋は静かになった。

 

「……嘘をつくのは辛いですか?」

「まあ、な」

 

片目を瞑ってオリヴィエを見る。そこには不安と心配の色が表情に表れているオリヴィエが俺を見ていた。

 

「大丈夫ですか?」

「もう何度心配された事か」

 

俺は何度も心配されている事実に苦笑した。

 

「あぁ。戦場というモノを肌で感じたからな。覚悟は出来てる」

「……今のガイは強い目をしています」

 

俺の強い意志を持った言葉にオリヴィエは不安と心配の色が消えて優しく微笑んだ。

 

「ああ、よろしく頼む」

「お任せください。この拳、ガイのために」

 

オリヴィエが忠誠を再び誓ってくれた。

 

俺もそれに答えるように頑張らないとな。

 

俺はオリヴィエの忠誠に強く頷いた。




セイバーの技を少しアレンジしています。

・時を纏う聖者の泉(トレ・フォンターネ・テンプスティス)
ガードして攻撃を与えると相手を痺れさせる効果を付加した技でしたが、今回はガードしただけで相手を痺れさせられるというちょっと優れものに。

切継の攻撃の技を防御に回した技って感じでしょうか。まあ、切継の場合は相手の魔術回路をずたずたに引き裂くけどw

・燃え盛る聖者の泉(トレ・フォンターネ・アーデント)
単純に攻撃力を上げる技でしたが、今回は剣の表面に大気中の窒素を集めて固めることによって剣を重くし、それを素早く振ることでかまいたちにもハリケーンにもなり得る技。

ゲーム中のステータスアップの技を小説で書くのって難しいですよね。考えた技なんか殆ど原作技と関係ないしw

こんな感じです。

後、キャスターや部隊長はオリキャラですが皆さんの脳裏にはそのキャラがちゃんと描かれていますかね?

自分の想像しているキャラと読者が想像しているキャラがズレているようだと、自分の筆力はまだまだって事ですかね~。

何か一言ありますととても嬉しいです。

では、また(・ω・)/
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