魔法少女リリカルなのはvivid~過去と未来と現代の交差~ 作:ガイル
では、十九話目どぞ~。
―――聖王教会 執務室
「それで話というのは」
「ええ、御二人を呼んだのには訳があります」
私は騎士カリムからお話があるとの事でフェイトちゃんと聖王教会に訪れた。
来る途中の教会内でフリージアさんに会ったのも驚いた。
それに歩きで来たって言ってたし。今度フリージアさんがここに来るとなったらフェイトちゃんの車に乗せていこう。
でも、フリージアさんはよく異性であるガイ君の部屋にホームステイしようと思ったんだろう?もしかして、ガイ君に好意を持っているとか?
そうなるとガイ君、モテモテだね~。家のヴィヴィオもガイ君に好意を持っているし。
「……なのは、聞いてる?」
「ふぇ?」
フェイトちゃんから声をかけられて、自分でもなんて間の抜けた声を出してしまったのだろうと思った。
フリージアさんやガイ君の事を考えていたらいつの間にか周りが見えなかったようだ。心配そうな表情のフェイトちゃんと、笑みを崩さないまま気品を保ち静かに見つめてくる騎士カリムの2人の視線が私に集まっていたようだ。
「あ、す、すいません」
「いえいえ。なのはさんもお疲れなのでしょう」
「あ、い、いえ……」
騎士カリムの話を聞き洩らしていた事に申し訳なくなって頭を下げる。
この人はカリム・グラシア。
“古代ベルカ式魔法”の継承者で、聖王教会・教会騎士団所属の騎士。管理局にも少将として籍を置いている。
はやてちゃんが“機動六課”を設立する際には尽力し、後見役を務めてくれた。
また希少技能“予言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)”という詩文形式の予言能力を持ち、そのため滅多に教会の外に出ることがない。
予言は難解な古代ベルカ語であるが故に様々な解釈が可能で、その的中率は騎士カリム曰く
『よく当たる占い程度』
らしい。
「では、もう一度言いますね」
こほん、と咳を1つ吐いて騎士カリムは話を始める。
「私の“予言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)”に新たなページが刻まれました。予言の中身も古代ベルカ語で解釈で意味が変わる難解な文章。世界に起こる事件をランダムに書き出すだけですが、ここ数年は同じ内容と思われるものがストーリーのように刻まれていくのです」
「どんな内容なんですか?」
フェイトちゃんが聞いてみた。さっきはここまで話をしていたのだろう。騎士カリムは目を閉じて思い出すように語り始める。
「過去より死せる王達。未来より戻りし超人達。異の国よりし猛者達。大地の方の塔の黒人達。それら交わりし地にて静かなる聖の戦が起こり、大地の法の塔の地は混沌と化す。真か虚か、聖の戦は世の理を変える源を持ちえる。その先に待ちうけうるは……」
「「……」」
私とフェイトちゃんは固唾を飲んで、騎士カリムの次の言葉を待っていた。大地の法の塔とはここミットチルダにある中央管理局地上本部の事だ。機動六課の時に起きた事件もここの場所が現れていた。
しかし、カリムは目を瞑り軽く首を振った。
「すいません、ここから先はまだ表されていません」
「……また、このミットチルダで何かが起きるってこと?」
「かも……しれないね」
その内容を簡単に要約すると、人が集まり戦いが始まってミットチルダは混乱を招くことになるという。
「ミットチルダで戦いが始まるような内容です。そして、その先にあるモノが何なのかもわかりません」
「人が集まって戦いが始まるんですね」
私の言葉に騎士カリムは頷く。
「過去からは王達が……未来から戻ってくる人もいるし、別世界からも強い人が集まって来るんだね」
「ヴィヴィオやアインハルトちゃんとの関係性は?」
「……今のところは何とも言えません」
過去の王達は聖王家のクローンであるヴィヴィオや、覇王家の正統血統のアインハルトちゃんも含まれている可能性がある。
親としては娘であるヴィヴィオやその友達のアインハルトちゃんがかなり心配だ。
私は何とも言えない表情を浮かべて困惑した。
「なのは……」
フェイトちゃんがまた心配そうな表情を私に向けてきた。
「ヴィヴィオやアインハルトにも関係があるかもしれないので今回はヴィヴィオの保護者である御二人をお呼びしました。聖王教会で眠っていますイクスヴェリア殿下にも関係しているかも知れませんが今は手探り状態です。何が起こっているのかはわかりませんが十分に注意して下さい」
「わかりました」
「はやてにも伝えておきました。もし、ミットチルダに何かありましたら随時私に連絡を下さい」
そして、お話は解散となった。
―――結界内
騎士カリムの予言は正しくその通りだった。ミットチルダで聖の戦いが起きている。“聖杯戦争”。まさしくその名の通りだ。
「アーチャー?大丈夫か?」
「いえ、何でもないです、マスター。ちょっと昔の事を思い出しただけですから」
私の隣にいたマスターである薄い赤のかかった短髪に薄い黄色い眼が特徴的な衛宮君が盾の上に座って心配そうに私を見上げてくる。
「アーチャーの昔って、今のこの世界の事か?」
マスターの言葉に私は頷く。この戦いの場所を基準とすれば私は未来から来た人物になる。
“未来から戻りし超人達”とは私の事も含むのだろう。“達”だから私以外にも未来から来た人がいるはずだ。
「ガイの事か?」
「……ううん、ガイ君は関係ないよ」
この戦いにはガイ君が参戦している。そのサーヴァントはフリージアさんだと言うのことも。それは知っていた。この時代の私がこの戦いに足を踏み入れて知りえる知識だ。それはまだもう少し先の事だが。
「この戦いにガイ君は参戦してほしくなかったな」
「だから、フリージアやガイの事を助けているんだな?」
「……うん」
フリージアさんがキャスターに倒されそうだった時、先ほどガイ君がバーサーカーに倒されそうだった時、私は盾を差し込んでそれらの攻撃を受け止めた。
知り合いが危なくなったら助けたくなる。それは人間としては当たり前の感情ではないだろうか?それがたとえ敵だとしても。
「ごめんなさい、マスター。私は甘い感情でこの戦いに臨んでいるのかも知れません」
「いや、俺もおとぎ話のような夢を持って進んでいるから、お前と大差変わらないさ」
「……ふふっ、マスターは優しいんですね」
私は笑って衛宮君を見ると、顔を少し赤くして視線を逸らした。
「と、とりあえず、俺は下に降りて凛達の所に行ってくる。俺の知り合いだからな」
「わかりました。私はここで他のサーヴァントの視察をしています。マスターが危なくなったらすぐに駆けつけますので」
衛宮君の知り合いがどうやらここに2人来ているようだ。“異の国よりし猛者達”とは衛宮君たちなのだろう。
衛宮君も私と同じで地球から来たらしい。経緯は“穴”に巻き込まれてこちらに来たとか言っていた。
「ああ。アーチャーも気をつけろよ」
「はい」
そして、衛宮君の乗っけた盾を地面へと降下させていった。1人になった私は一度空を見上げた。
時間帯は昼なのだが、結界内という事なので紫色が一面に広がっているため空の色が変化しているが、昼間からでも見える大きな星二つはいつの時代も変わっていなかった。
「ガイ君、フリージアさん……そして……」
私はもう1人の名前を呟いたが、それは突然の突風で声の音がかき消された。
―――結界内
今、俺の目の前にはキャスターがその冷たい瞳で俺の事を途方もない量の殺気を含めて見据えていた。
その殺気は背筋に冷や汗が流れるくらいに気持ちが悪くなる。
「ガイ……大丈夫ですか?」
「……ああ」
俺に向けられている殺気を経験したことのあるオリヴィエは隣で心配そうに俺を見つめてくる。ゼストにバーサーカーを任せて、俺とオリヴィエはキャスターを追いかけた。6対1で戦えると思っていたが、状況がかなり変動した。
偶然なのか必然なのか全てのサーヴァントがこの結界内に集結したのだ。バトルロワイヤルな状況である。
キャスターの見た目は4~50歳ぐらいの少し年配の掛った男性。セミショートの黒い髪にも少し白髪が混じって入るがそれをオールバックにしているため年配という感じがしない。服装もバリアジャケットで黒いズボンに黒いインナーを着て黒いロングコート。ロングコートには僅かに装飾品が付いている。
キャスターの周りには黒い霧を纏っている。あの黒い霧は黒い武器に瞬時に変わるという凶器の霧だ。おまけに何もなくとも飛ばせるという。
そして、右手にはそれを操っているだろう宝具であろうデバイスである杖が握られている。一度技を展開した時にデバイス名を言っていた。
確か、“ジャッカル”と。
「お前の相手は余ぞ。黒霧の使い手よ」
俺とキャスターが対峙していると真横から先ほどまで武器を交えていた紅いドレスを纏った金色の少女(女性?)、セイバーが弾丸のように飛び出てキャスターに捻れた特徴的な赤い剣を縦切りに振っていた。
セイバーは俺ではなくキャスターと対峙したいようだ。
「……」
キャスターはそれを難なく杖で受け止める。
「ふん、割り込んできたあのマスターばかり見て、余の事は無視か」
「今は貴様に用はない。暴君の姫君よ」
「……お主、奏者の名前を知っているだけではなく、余の真名までも知っておるのか?」
疑問と困惑の色がセイバーの表情に浮かび上がる。キャスターは答えるかわりに周りの黒い霧が様々な武器となってその矛先をセイバーに向けていた。
「ぬるい!“燃え盛る聖者の泉(トレ・フォンターネ・アーデント)”集え、炎の泉よ!!」
セイバーは疑問の色を消して表情を険しくして、キャスターの杖をはじき返し、向けられている武器を剣の一振りで吹き飛ばす。
その剣に何かが宿っていたかのように思えた。
そして、弾き飛ばしたキャスターに向かって剣を振るう。
「ゆくぞ!“童女謳う華の帝政(ラウス・セント・クラウディウス)”!!」
傍から見ても分かる。とても重い衝撃をもった威圧感のある剣技だ。一振り振るごとに大気に風の切る音が轟音となり周囲に凄まじい衝撃をまき散らす。それがキャスターに襲いかかる。
「暴君といわれるだけの事はあるな。剣技が暴力だ」
だが、キャスターは驚愕の表情に変わること事なく、それを何の動作もなく紙一重で避け続けた。
「……ん?」
その戦いを見ていたが違和感をキャスターから感じた。だが、それをどう言葉に表現したらいいか分からない。
分からないが違和感だと言う事は頭の中で分かっていた。
「ぬぐぅ!!」
少し考え事をしていたらガラスが割れる音とセイバーの声が聞こえた。
キャスターの攻撃で飛ばされて、セイバーはビルの二階の窓ガラスを割りながらビル内へ突っ込んだようだ。
あれほどの強烈な連撃を避けた上に返しに攻撃を加えてきたキャスター。やはり只者ではない。
その冷たい瞳がこちらに向けられる。その眼を見ただけでも身震いを覚える。殺気の量が半端ない。
「次は貴様達だ」
「……」
俺は静かにプリムラを握り立ち居合で構える。オリヴィエも手甲を握りしめて構える。
出来ればあのセイバーと協力関係でキャスターを迎撃したかったが、あのセイバーはキャスターと決着をつけたがっている。きっと1人で戦うつもりなのだろう。
その意志に俺もオリヴィエも意見を横入れする気はなかった。それもあのセイバーの生き様なのだから。
先ほどはアルトリアとゼストが居たが今度は俺とオリヴィエだ。
「ファイター、行くよ」
「ええ、ガイ」
一時の静寂。そこに一陣の突風が巻き起こる。
それが合図で俺たちは走り出した。
「凛!!何故ここに!?」
「あ~、私にも分からないんだけどね」
凛がここにいるのには驚きを隠せないでいた。ガイと同盟を組んでキャスターと対峙していたが、そこからさまざまな人たちが乱入してきた。
その中に凛とシロウが居た。私は少しの間、バーサーカーをゼストに任せて凛と話をするべく移動した。
「もしかして、凛も“管理者”に会いましたか?」
「ええ、モニター越しでね」
凛は片目を瞑りながら頷く。
「お~い、凛とセイバー」
「シロウ」
「結局あんたもこの戦いに参戦していたのね」
そこに、盾に乗ったシロウが私たちの所まで来て笑顔を私に向けてきた。
「まさか、セイバーに会えるとは思わなかった」
「私もここの世界で凛とシロウに会えるとは思いませんでした」
冬木の聖杯戦争では私は聖杯を破壊して消えた。あの後はどうなったか気になる。
ですが、今再び凛とシロウに会えてたことの嬉しさの方が疑問よりも勝っていた。
「冬木の聖杯ではなくここにも聖杯が存在しているらしいわね」
「ええ。だから、サーヴァント達が現世で実体化をする事が出来るわけですね」
聖杯はこの世界にも存在している。管理者から聞いた話だ。
「でも、そうなると聖堂教会がこちらの世界にも干渉しているというわけなのよね」
そう、聖杯は聖堂教会が監督を行っている。この世界にも聖杯があったという事がどのようにして分かったのかはわからない。私と同じで、“ワームホール理論”でこちらに来たのだろうか?
「それにしても、セイバーは今回はマスターなんだ」
「ええ。サーヴァントがマスターになれたという事例はありませんから私自身もそこは驚いています」
凛は私の中に魔術回路が埋め込められているのに気付いたのか私を見据えていた。
「え?セイバーがマスターなのか?」
「ぬぐぅ!!」
シロウも私に疑問をぶつけようとしたその時、バリンとガラスの割れる音と声が耳に響いた。割れる音の方を見ると、今度は壁を突き破る低い破壊音と再びガラスの割れる軽い音が聞こえてきた。
「セイバー!!」
セイバー?私……ではないですね。凛の新しいサーヴァントでしょうか?私と瓜二つの顔を持っていた人物。
凛が声を高くして叫ぶ。窓ガラスの破片と共に赤いドレスを纏った金色の髪の少女(女性?)が落ちてきて、何とか着地したが片膝をついた。
やはり私と瓜二つですね。
「え?セ、セイバー?」
シロウは初見で見る赤いドレスの少女(女性?)に驚きを隠せないでいた。私は二度目なのでそれほど驚く事は無かった。しかし、やはり気になる。あの私と瓜二つの人物は誰なのだろうと。
「くっ、油断したのぅ。キャスターの威力が強すぎて余自身がビルを突き抜けるとは」
赤いセイバーは特徴的な剣を地面に刺して、それを杖代わりにして何とか立ち上がる。
「たく、無茶しないでよね」
「あのキャスター、やはり只者ではないようだの」
杖代わりにしていた剣を引き抜き、一度振って剣についた埃などを掃い捨てる。
「ん?」
そして、赤いセイバーは初めてこちらに視線を移した。そして、表情を驚きに変えて、わなわなと震え始める。
「な、何故余がもう1人そこにいるのじゃ!?」
ビシッと聞こえてきそうな音を決めて、人差し指を私に指した。
「いえ、私も聞きたいぐらいです」
何故私と瓜二つの人物が、しかも“セイバー”として召喚されているのかが気になる。ですが、なぜか一つだけ納得いかない部分があった。それは……
「ふむ、確かに余に似ておるが胸は随分と主張しないのだな」
赤いセイバーが私の胸をマジマジと見ながら語る。
そう、私と赤いセイバーの外見が全く似ていようとも胸だけはなぜか大きさが違う。しかも、相手の方がでかい。
「……凛、この者に挑んでもよろしいですか?」
「い、いや、落ち着きなさいよ、セイバー」
「ん?奏者よ。余を呼んだか?」
「あ、あ~、もう、紛らわしい!!」
凛は私の事を言ってきたと思いますが、“セイバー”の単語は赤いセイバーも反応した。そう言えば、凛には私の真名を教えていませんでしたね。
「ええい、余の容姿が美学というのなら愛でても良いが偽物は流石に要らぬ!!」
そう言って、特徴的な剣の切っ先を私に向ける。
「……それは宣戦布告という意味を表している行動と受け取っても?」
「うむ、構わぬぞ。フェイカーよ」
「……」
流石に胸が主張しないだのフェイカーだの言われて我慢が出来なかった。私も風王結界を纏った約束された勝利の剣(エクスカリバー)の切っ先を相手に向ける。
「ふ、2人ともやめなさいよ!!」
「止めるな奏者よ。このフェイカーは余の美学に反する」
「ええ、凛。この者とはケリをつけなければなりません」
凛の停止に私も相手も聞く耳を持たない状態だ。お互いにお互いの事を許す気は無いのですから。
「セ、セイバー。ここは剣を納めて……」
「「シロウ(おぬし)は黙って下さい(おれ)!!」」
「うっ……」
私たちの無駄に息のあった発言にシロウは何も言い返せなかった。
「……令呪使うわよ?」
凛が声を低くして赤いセイバーを見ながら腕まくりして腕を見せてくる。そこには令呪が刻まれていた。
「マスターよ。それはもしもの時にとっておくモノだぞ」
「今が“もしも”の時じゃない?」
ニコッと小悪魔な笑みを浮かべながら赤いセイバーに何も言わせないような覇気を飛ばしている。
「し、しかしだな……」
「使うわよ?」
「う、うぬ……し、仕方あるまい。美少女であるマスターに嫌われるのも困る」
「へ、変な事言わないで!!」
凛は顔を真っ赤にしてそっぽを向く。赤いセイバーは剣を下ろして、私に敵意が無いことを示す。納得いかない表情をしていたが。
「凛……口を挟まないで下さい。侮辱された数々。ここでキッチリと清算してもらう」
ですが、私は剣を下ろす気はなくそのまま赤いセイバーに突っ込んで剣を振り下ろした。
「ふむ、不可視の剣とは面白いな。武器は余のフェイクではないようだな」
だが、それは簡単に受け止められた。表情は何やら輝いている。
「凛よ。挑発は乗るぞ。たとえ令呪を使われても余は剣を振る」
「……はぁ。もう勝手にしなさい」
「ははっ、凛も大変なんだな」
もう手に負えないと思ったのか凛は止めることを飽きられたようだ。シロウもそれに同情した。
赤いセイバーは私の剣を弾いて距離を置いた。表情は好奇心旺盛な少年みたいだ。
「ゆくぞ、フェイカーよ」
「それは貴方ではないのですか?」
私達は再び得物を構えた。
「攻め立てる!!」
赤いセイバーが何の前触れもなく私に向かって直進して剣を振り下ろした。
「甘い!!」
「ぬぅ!!」
それを私は下から吸い上げるようにして弾き返した。その反動でやや後ろに下がった赤セイバーに私は追い打ちを仕掛けるように剣の連撃を繰り出す。
「不可視の剣とは何とやりずらい」
赤いセイバーはそう言いつつも私の剣の軌道を読んでいるのか本能的な感なのか私の攻撃を受け流している。
受け流された剣圧はそのまま人工物の建物であるビルなどにブツかり破壊音を立てながら半壊していく。
そして、次の攻撃は受け流すことなく、それを紅い剣で受け止め鍔迫り合いのような状態になった。
「ですが、私の攻撃が通りませんね」
「ふふん、余を誰だと思っておる♪」
赤いセイバーは楽しいのか声が弾んで嬉しそうだ。
「しかし、フェイカーと言えどもなかなかの剣の腕を持っておる。褒美を与えようぞ」
「いえ、貴方もなかなかの腕をお持ちだ」
私も声が弾んでいるのが分かった。風王結界を付けている剣を見切れる上に剣の腕もかなりの使い手だ。
この聖杯戦争で未だに剣の使い手と交えていなかったこともあってか、この者と武器を交え武勇を競い合う事に心が躍る。
動機は不純なものもありましたが真っ向勝負を受け入れてくれるこの人物には感謝を送りたい。ファイターも真っ向勝負をしてくれましたし。今回の聖杯戦争は騎士道的な意味で喜びを覚える。
「ふんっ!!」
そして、赤いセイバーが私の剣を弾き一度距離を置いた。そのまま視線を凛に移す。
「マスターよ。少し魔力を使わせてもらうぞ」
「あんまり無駄遣いしないでよね。それと程々にしておきなさい。周りは敵だらけなんだから」
私たちの戦いを止める事を諦めていた凛は半ば投げやりのように言葉を放つ。シロウは苦笑いをしていた。
「うぬ、贅沢に使うぞ。余は倹約は嫌いだからな」
「ちょ、人の話聞いてた!?」
マスターである凛から魔力の許可(?)が下りたので紅いセイバーは笑みを零して再び私の方を見据える。
「この余の剣は“彼の円卓の騎士ガウェイン卿”に匹敵する武器なり。それに伴い、その剣の技量をも匹敵しよう」
「!?」
赤いセイバーが言葉を発した瞬間、雰囲気が変わった。
赤いセイバーが剣を構える。その構え方も先ほどとは変わっていた。
その構えは昔の頃の記憶を思い出させる。
「ガウェ……イン?」
円卓の騎士の1人、ガウェイン卿の構え姿だ。忠勇を誓ってくれたガヴェイン。
私の剣、“勝利された約束の剣(エクスカリバー)”の姉妹剣である武器、“転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)”を所持していた。
「“皇帝特権”だ。ゆくぞ!!」
その構えから赤いセイバーは走り出した。私は昔の事を思い出していたので反応が遅れてしまい、その剣を受け止める。反応が一瞬遅れてしまったため、そのまま防戦の剣戟が始まった。剣戟の最中といえど赤いセイバーは私に声をかける。
「ふん、考え事か?」
「何故、ガウェインの剣技を使えるのです?」
「何を戯けたことを。“皇帝特権”に決まっておろう。余に出来ぬことなど無い」
さも当たり前のように答える赤いセイバー。
皇帝特権……マスターである私の知識に新しく刻まれた。
クラス……セイバー
マスター……遠坂凛
真名……???
固有スキル
皇帝特権:EX
本来持ちえないスキルも、本人が主張することで短時間だけ獲得できる。
該当するスキルは騎乗、剣術、芸術、カリスマ、軍略、等。
ランクがAランク以上の場合、肉体面での負荷(神性など)すら獲得する。
「何だこれ?強すぎるスキルじゃないか?」
「私も初めて見たわ。これが“皇帝特権”」
同じマスターであるシロウと凛も驚きを隠せないでいた。
本人が主張することで獲得できる。
だから、先ほど“彼の円卓の騎士ガウェイン卿に匹敵する武器”と主張したことによってガウェインの武器にもなり、“それに伴い、その剣の技量をも匹敵しよう”と付け加えたのでガウェインの剣術をも獲得しているのだ。
「これは忠義を貫いた者の剣技だ。特と味わうが良い」
その言葉を最後に私の剣を弾く。その威力は“転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)”に匹敵するほど重く、私は体のバランスを崩してしまった。
その間に赤いセイバーは剣を構える。
その構えは……。
「全ては我が王の為に“忠義の剣閃”!!」
片手持ちで剣に太陽の灼熱を具現するぐらいの高温の炎を纏わせてそれを振り下ろす。太陽の聖剣だ。その灼熱で相手を燃やしつくすイメージが紅黒くなった剣から連想される。
この技はまさしくガウェインの技そのものだ。この技で何度も助けられた事か。
しかし、この赤いセイバーはそこまで使う事が出来るとは、なんて強いスキルなのだろう。だが、このままでは私がその剣で燃やしつくされてしまう。
「くっ、風王結界よ!!」
私は急いで風王結界を解いた。
その解いた時に、聖なる宝剣を守っていた超高圧縮の気圧の束が、不可視の帳という縛りから解き放たれて、この周囲の大気に拡散された。
狙いを定めていなかった為、辺り一面にその強力な風圧が暴れるかのように縦横無尽に駆け巡る。
「なぬ!?」
振り下ろしていた赤いセイバーも突然の風圧に剣の軌跡がブレ、更に小柄な体格だったのでその風圧で軽く飛ばされた。
かくいう私も急いで解いたので踏みとどまるための準備もしていなく、風王結界によって軽く飛ばされた。
「ぬっとと……」
赤いセイバーは何とか着地をして息を吐いて私の方を見る。私も着地して赤いセイバーを見た。
「そんな隠し玉を持っていたとは……それにしても、その輝きの剣、何と美しいモノだ!!」
赤いセイバーは再び好奇心に捕らわれていたのか眼を輝かせて私の剣を見る。今は風王結界を解き放ったので黄金に輝く剣がこれでもかと眩い光を主張してくる。
「ふむ、しかし、そうか。“英霊の座”にまで招かれた者ならば、その黄金の宝剣を見間違えはせぬな。おぬし、かの名高き騎士王であるか。となると、ガウェイン卿の技で戦いを仕掛けたことに関しては無礼を申そう」
そう言って、赤いセイバーは申し訳ないような表情をした。我儘な姫君なのかと思ったが、意外と律儀な一面を見せてきたので私はあまり気にしないことにした。
「いえ、お気になさらずに。ですが、そう言う貴方は剣からでは人物像が全く想定できませんね」
ひとたび英霊として時間列から隔離された者たちは歴史の前後は関係ない。自分自身より後世の英雄についても聖杯のバックアップによって知識を持ち合わせることが出来る。
あの者が私からして過去なのか未来なのかはわかりませんが。
しかし、あの剣は確かに特徴的な剣ではあるが、あれからの人物像が出てこない。
「余の事はよいではないか。しかし、おぬし、マスターではないのか?何故に古き王がマスターとしてこの戦いに参戦しておるのじゃ?」
「……いろいろありまして。一言で語るには時間が足りない」
「ふむ、まあよい。今この武を交える喜びを分かち合おうぞ」
そう言って再び剣を構える。先ほどのガウェインの構えとは違い、最初に交えた時の構え方だ。私もそれにこたえようと剣を構えようとした。
「はい、そこまで!!」
パンと軽い音がして凛の声が聞こえた。凛の方を見ると手を叩いて私たちを先ほど以上の小悪魔的な笑みを見せてきた。隣にいるシロウが冷や汗をかいているのが分かる。
「これ以上、やると共倒れになるわよ?」
「い、いや、しかしだな……」
「敵は周りに“も”いるんだからね」
「う、うむ……」
“も”って所を思いっきり主張して赤いセイバーを黙らせる。
「セイバーもセイバーよ。何で挑発に乗るような事をしたの?」
そのセイバーはたぶん私の事を言っているのだろう。
「屈辱を重ねたこの者を許せませんでしたので」
「確かに騎士王とはわかったが何ゆえに余と同じ容姿なのじゃ!?これではフェイカーといっても仕方あるまい」
「いえ、あなたが何者かは分かりませんがフェイカーとはあなたの……」
「ええい、うるさいうるさ~い!!」
「あはは……」
稟の言葉がこの辺り一面に響き渡った。
「とにかく、セイバー達は戦う事は禁止だからね」
「……で、ですが」
「私と共同関係を築こう事は出来なくなるわよ」
「そ、それは困る」
凛と組めるとなると聖杯戦争は大いに有利に傾く。凛の魔術師としての知識はかなり役立つ。凛と組むことが聖杯戦争に勝ち残りやすいのだ。
「し、仕方ありません。不本意ではありますが、今までの侮辱は忘れましょう」
「なんじゃ。おぬし、余との対決をつけないまま終わらせるのか」
「今はその時ではありませんから」
私は剣を霊体化させた。赤いセイバーも何故か納得のいかないような表情をしつつも同じく剣を霊体化させた。
「士朗。アンタももちろん組んでもらうわよ」
「ああ。わかってる」
赤いセイバーとはケリを付けずに凛達と同盟を結ぶことにした。
「あ~、骨折り損だったのぅ。余は物足りぬ」
赤いセイバーは不機嫌な表情を隠すことなく晒し出していた。そして何かを思い出したような表情をして踵を翻した。
「忘れておった。キャスターとの対決を付けてこなければならぬ。行くぞ凛よ」
「え、ちょ、ちょっと待ちなさいよ。セイバー!!」
マスターである凛の許可を待つことなく歩き出す赤いセイバー。それについて行く凛。
「凛も大変なんですね」
「ほんとだな」
あの赤いセイバーは縦横無尽の我儘で唯我独尊な性格だとこの短い時間で分かった。あれを相手にするのは大変だとわかる。
凛……頑張ってください。
私は心の中で凛を応援して、私は凛達とは反対方向へ向いた。
「私は一度ランサーの所へ戻ります」
「俺も付いて行くよ」
「わ、わかったわ。また後で合流しましょう……って、待ちなさ~い!!」
「奏者よ。早よせぬか」
そして、凛と赤いセイバーと別れて私はシロウと一緒にバーサーカーに立ち向かっているゼストの応援に行くために反対方向へ歩き出した。
アルトリアが戻るまで時間を稼ぐ。
私は心の中でそう決めていた。今、バーサーカーと剣戟を繰り広げていた……私が防戦一方の剣戟だが。
目の前のバーサーカーの力は強力だ。一撃一撃が強力で単純な力押しなら直ぐに負けてしまう。
アルトリアが戻るまで時間を稼げるか分からなくなってきた。
「きゃはは、おっさん。早く死んじゃいなよ♪」
バーサーカーの後ろにはトレディという少女でありバーサーカーのマスターが残忍な笑みを浮かべながら俺とバーサーカーの戦いを見ていた。
アルトリアが離れてから随分と経った。アルトリアが戻るまで体力を温存させておくべくバーサーカーの攻撃に防戦一方でいた。
アルトリアと2人で攻めた時も苦戦していたというのに1人ではかなり厳しい。機会を窺って反撃をするのもいいが1人だとリスクも伴う。
やはり、アルトリアが戻るまでは防戦一方で守るしかない。
「バーサーカーに1人で立ち向かっても死ぬだけだよ。きゃははは!!まあ、ガイには不意打ちを撃たれたし邪魔者入ったから生き残ったけど次は無いよねん~」
やたらと頭に響くトレディの高い声が不愉快と感じつつもそれを無視してバーサーカーと対峙する。
「ふんっ!!」
振りかぶってきたバーサーカーの右拳を私は槍の刃を上に向けて振り上げた。その刃は相手の厚い手甲によって止められてしまうだろう。
「“流星”!!」
『ドライブ・スタート』
だが、デバイスも分かっていたのか私が一言呟いただけで瞬時に槍に魔力を込めてバーサーカーを空中に吹き飛ばすぐらいの勢いをつけて手甲ブツけた。
「……へぇ~、おっさん。やるわねん~♪」
「Aaaaaaaa!!」
バーサーカーの拳を受け止め、そのまま思いっきり空中へと受け飛ばした。バーサーカーの枯れた声が少しずつ遠くなる。
私は追撃を行わずにトレディへと加速した。
「きゃは、私を狙うのねん♪おっさんなんかにモテても嬉しくないわねん♪」
トレディの戯言は聞かず、加速したまま刃を横にして突きのモーションでトレディを貫こうとした。
「!?」
「一応~私も武の嗜み程度は受けているから~それを受け止めるのも楽よ~」
その突きを行った槍はトレディの肘と膝に挟まれて威力を殺されていた。
「殺りな、バーサーカー」
「むっ!!」
いつの間にか飛ばしたはずのバーサーカーがすきだらけになった私の上から右足を振り下ろしていた。自重の力も相まってかそれを喰らったらただでは済まない事は分かっていた。
「ランサー!!」
だが、それはアルトリアが私の後ろに駆けつけて来てくれてエクスカリバーでその攻撃を受け止めてくれた。
「来たか」
「遅くなりまして申し訳ありません、ランサー」
そう言いつつ、受け止めていたバーサーカーを弾き飛ばす。
「ふんっ、逃げたと思ったけど戻ってきたんだ~」
少し不機嫌になったトレディは私の槍を離して距離を置いた。
「……見ない顔が居るな」
「彼は衛宮士郎。仲間です。それよりも……」
アルトリアが何かを言おうとしたとき、ドンっと、地面が一度大きく揺れた。その後、すぐに激しい揺れが後になってやってきた。
「な、なんだ?」
衛宮士朗が困惑した表情を顔に表す。アルトリアも同じ表情だ。
「きゃはは、何が起きても楽しめて濡れちゃいそ~♪」
そんな中、トレディのやたらと高い声だけは楽しそうだった。
違和感。
キャスターを始めて見た時に感じたモノ。その違和感が何なのか分からないまま、俺はオリヴィエとともにキャスターと戦いをしていた。
「はあっ!!」
俺は鞘から鞘走りをして抜いた刀をキャスターに放つ。
「……」
だが、それも杖で何なく受け止められてしまう。
「“聖連拳”!!」
オリヴィエも俺とは逆の位置からキャスターを狙ってはいるが、それも黒い霧に遮られてキャスターに届く事が無い。
「……時間か」
「何のことだ?」
キャスターがボソッと呟いたのを俺は聞き逃さなかった。
「ふんっ」
「「!?」」
キャスターはくいっと首を軽く振った。ただそれだけで、キャスターの周りを纏っていた黒い霧が幾つもの武器となって矛先を俺とオリヴィエに向ける。
そして、何の予備動作もなくそれが俺たちに向かって飛んでくる。
それも、事前に分かっていた事だったので、何とか避ける。オリヴィエもこういう攻撃だと分かっていたのか飛ばせるという知識が無くとも避けていた。
全くもって英霊って凄いモノだ。
「……おまえは……」
「……」
だが、俺たちが避けている間にキャスターの懐にフードを深くかぶったパーカー姿のアサシン?が居て拳をアッパー気味に振り上げた。
キャスターも最初だけは驚いていたが、そのアッパー気味の拳を冷静に避けた。
「ぐっ!?」
だが、アサシン?はアッパー気味に上げた拳の勢いに任せて体を少し浮かせて、膝蹴りをキャスターの顔面にクリーンヒットさせた。
始めからアッパーの拳は囮だったのだ。避けられると分かってそれを組み込んで次の攻撃をしたのだ。
予想外の攻撃方法にキャスターは顔面を片手で押えながら、少し後退しつつ黒い霧を武器に変えてアサシン?に飛ばした。
だが、それをアサシン?はキャスターの激しい武器の雨を紙一重で避けつつ距離を縮めていた。
「貴様……」
「……」
3対1でも対等か負けているぐらいに強かったキャスターが明からに顔の色を変えていた。焦りの色だ。どんな武器を作ろうが、どんなに刃の面積が大きい武器を作ろうがそれはアサシン?の前では簡単に避けられてしまう。
セイバーの時も弾かれていたりしたがここまで焦りの色を見せたキャスターは初めて見た。セイバーと何かが違うのだろうか?
「あれは誰なんだ?」
「わかりません。ですが、この場合だと味方だと思ってもよさそうですね」
オリヴィエは俺の隣に来て、その戦いを見ていた。
アサシン?は顔こそ見えないが余裕を持って避けているのが見て分かる。ちゃんと見てはいなかったが、アサシン?の格好は今見ると異様とも言えた。
膝まであるニーソックスにアサシン?よりも一回りも二回りも大きいパーカー。それなので晒し出している太ももの先は直にパーカーの裾になっている。絶対領域というものだろうか?
しかし、裾からもチラチラと衣服見たいのが見えたりするので、あのパーカーは顔を隠すために来ているだけなのだろう。
「あれは女性……か?」
「おそらく」
オリヴィエも女性だと言う事に否定は無いようだ。
ニーソックスを履いた男性なんて想像したくないしな。
「……イレギュラーか……それに時間か」
「……」
キャスターが何かを呟いていた。それでもアサシン?の行動は変わることなく、キャスターに近づく。
「……煌きの型“楼蘭”」
アサシン?の両手を開いて合わせて指先を左右に開けるような形の掌停を作り、右足を思いっきり踏み込んでそれをキャスターの胸に向かって放った。
「ぐっ!!」
その掌底がキャスターの胸に当たった時、周囲に凄まじいほどの衝撃が一度だけ伝わった。核爆弾が爆発したのではないかと言うぐらいの破壊音と衝撃。
威力は凄まじいモノものだとキャスターの苦痛の表情から読み取れた。
そして、キャスターは口から血反吐を吐いた。
「ごふっ!!強……烈な一撃だ」
「……」
アサシン?は何も言わず、右手で上げて手刀の形にしてそれを振り下ろした。それが止めを刺す死神の鎌なのだろう。
だが、目の前に自分に振り下ろされるであろう死神の鎌が迫っていようともキャスターは笑っていた。
「タイム……リミットだ」
『タイマー式ゲート、開きます』
「!!」
アサシン?は何かを感じ取ったのか、手刀を振り下ろすのをやめその場からジャンプして大きく後退した。
それと同時にキャスターの目の前に何かが現れた。いや、現れたと言うのもおかしい。
あれは空間を割いて“開いた”というべきか。黒い“穴”があった。
その穴の大気と周囲の大気が絡み合う事が出来ないのか、バチバチと音を立てて周囲の大気を少しずつそれは侵食していく。
その振動は凄まじく、この結界内では地面を激しく揺さぶる縦揺れの大規模な地震が起きているのではないかと錯覚してしまうほどだ。
ちょっとでも油断してしまうと地面からの激しい震動で空中に投げ飛ばされそうだ。
「ファイター!!」
「ガイ、空へ!!」
俺は地面に立っているのが困難だとわかり、オリヴィエの肩に手を回して空へと飛んだ。
そして、その異質な穴は人が一人入れるぐらいの大きさになって浸食をやめた。
そこにキャスターは入ろうとして、一度俺の方を見上げてきた。
「お前は……」
最初の部分だけは聞き取れたが最後の方は何を言っていたのか分からなかった。口は動いていたが、生憎と口先の動きだけでは何を言っているのかは読み取れない。
そして、言うだけ言ったのかキャスターはその穴に入った。
次の瞬間、その穴は瞬時に閉じて、張っていた結界は無くなり周りからは活気の溢れる音が聞こえ始めてた。
「そう言えば、この結界はキャスターが張ったんだったな」
俺はそう言いつつ、地上に降りてオリヴィエを下ろした。いつの間にかオリヴィエは私服姿に戻っていた事に驚きはしたが、日常に戻って来たのなら丁度良い。
俺もバリアジャケットを解いて授業参観で着ていた背広を着込んだ。
「大きな地震みたいのがあったと思ったら、いきなり元の世界に戻されちゃったわね。それにキャスターもロストしたし」
「ん?」
そこに、黒い髪を黒いリボンでツインテールに縛り、翠の瞳の少女……確か凛と言っていたな。
その子がやって来た。
黒いニーソックスに黒く短いミニスカート。胸元に十字の紋章が付いている赤い服を着ている。
綺麗とも可愛いとも思えるこの美少女もこの聖杯戦争の参加者なのだ。俺は油断せずに相手を見据えた。
「ああ、別に今からあんた達と戦おうって気はないから安心して」
ニコッと笑う凛。
……そういう風に笑うととても可愛いんだが。
「ガイ……あまり油断しないで下さい」
「あ、ああ。す、すまん」
何やら不機嫌そうなオリヴィエの声を聞いて、今の考えていたものを忘れようとした。
気を緩めないつもりが無意識に緩んでいたようだ。美少女って恐ろしい。
「まあ、キャスターが居なくなったのならここには用はないわね」
「なあ、凛って言ったか?聞きたい事がある」
「ん?なに?」
足を翻して来た道を戻ろうとした凛を俺は呼び止めた。
「君はなんでこの聖杯戦争に参戦したんだ?」
「う~ん、何でって言われてもね~」
凛はこちらに振り向いて視線を右下に向けて考えるポーズを取った。
そして、意外と簡単な一言が飛んできた。
「家系の悲願だから……かな。この聖杯戦争でも私たちの求め来た聖杯と同じだと思うし、この聖杯も悲願よね」
この?求めてきた聖杯と同じ?
その単語から推測するに他にも聖杯戦争というのはあったという事になる。そう言えば、管理者も言っていた。
前は第五次聖杯戦争で管理外第97世界の地球のとある土地で行われていた、と。
どのような気持ちを持ってこの戦いに参戦したのか聞いてみたかったが、このマスターはどうやら前回の聖杯戦争からの参戦者という事になる。
その時から家系の悲願というモノが心に決まっていたようだ。
「話は終わり?それじゃあ、私は行くわよ。また戦場で会いましょう。貴方とは敵同士なのだから」
「あ、ああ」
そう言って、凛は何の未練もなくその場から離れて人混みの雑踏の中へ消えて行った。
「……家系の悲願か。凛って子も凄いな」
「代々の悲願ですか。まるでアインハルトみたいですね」
「だな」
あの凛は何となく覇王の悲願の為に一生懸命になっているアインハルトと被って見えた。被らせるのもおかしい話だが、それでもアインハルトと似ていると思うと口元が緩んで笑ってしまう。
「そういえば、あのフードを被った人物が居なくなりましたね」
「確かに」
俺たちはきょろきょろと周りを見渡した。突然現れたあのアサシン?はこれまた突然に姿を消したようだ。
「あれはアサシンのクラスのサーヴァントって事でいいのかな?」
「消極法で行けばライダーかアサシンですが、あれはアサシンで間違いないかと思います。乗り物もありませんでしたし、気配をあまり感じませんでしから」
「だな」
この戦いで得た情報もかなりあった。後で整理をしなければならない。アルトリア達とも一度会っておきたかったが、今は夕刻時。
部屋に戻って、体を休めたい。
「とりあえず、帰るか。アインも呼んで三人で夕食を食べるか」
「ええ、その方がアインハルトも喜ぶかと」
そして、俺たちは帰路に沿って歩き出した。
「なあ、フリー」
「はい、なんでしょう?」
歩きながら俺はオリヴィエに声をかけた。
「昨日から元気は無かったけど、今はそうでもないみたいだな。何かあったのか?」
「いえ、それほど重大な問題ではないので気にしないで下さい。このモヤモヤ感を取り払うために一度、思い出のある聖王教会へ赴きました」
「へえ、あそこに行ったんだ。後で一緒に行こうと言ってたけどなかなか時間が取れなくて悪かったな」
昔の思い出に親しんで辛い思いを消し去ったのだろうか?まあ、オリヴィエは普通に強いからそのくらい訳がないか。
「いえ、また後でガイと行ってみたいです。歩きで行くのも大変でしたから、ガイに紋章で呼ばれた時は移動が楽でしたね」
「……はい?歩きで?」
思わぬ単語に俺は驚きを隠せなかった。
そんな何でもないような話を続けながら俺たちは日常の一環であるマンションへと帰って行った。
今回はセイバーと赤セイバーの対決を主にしています。
この二人の対決を一度、書いてみたかったw
同じ容姿をしたセイバーですからね、書いてて楽しかった。
しかし、今度、FATE/EXTRA CCC と言うものが出るらしいね。
今度は白セイバーか……セイバー商法やめろしw
いや、セイバーはカッコいいからいいけどねw
番外編で白セイバー出そうかな~とか思ってみたり。
何か一言感想がありますと幸いです。
では、また(・ω・)/