魔法少女リリカルなのはvivid~過去と未来と現代の交差~   作:ガイル

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あ~、オリヴィエってどんな人物なんだろうw?

vividの本で僅かにしか話さないからそこから性格をとらえるしかない。

では、二話目入ります。


二話“過去と絆の交差”

 ―――マンション

 

「ん~」

 

 俺は床に座って、テーブルを挟んで対面に座っている人物について考えていた。

 第一印象としては綺麗な女性。顔が整っており、その優しそうな瞳は虹彩異色であり、左眼が紅で、右眼が翠。

 背は低い方だが、先ほどは全体から漂うオーラを発しており、周りの空気を静まり返すほど張りつめていた。今はその矛も収まっている。

 服ではなく、白と青を強調した騎士甲冑を着けて、ライトブラウンの髪は後ろでシニヨンのように団子のように縛っている。

 目の前の人物が現れた場所には赤い魔法陣が残っていた。

 この日常に合わない騎士甲冑をつけた女性が何処から来て、なぜここに来たのかいくら考えても分からなかった。

 

「マスター」

 

 テーブルを挟んで座っていたオリヴィエと称している人物が凛とした声でマスターと発した。マスターは俺の事を言っているらしい。とりあえずオリヴィエとしておこう。

 

「ん?んん、なんだ?」

 

 俺はいろいろ考えていたことをやめてオリヴィエを見た。オリヴィエの瞳は揺るぎなくしっかりと俺の事を見ている。

 

「……ここは何処なのでしょうか?」

「え?」

 

 しかし、その揺るぎない瞳から一変、不安げな表情を見せる騎士甲冑の女性。まるで迷子の子供みたいな表情だ。騎士甲冑の豪傑な雰囲気さとは裏腹に今にも泣きそうである。

 

「……ここは、ミッドチルダだ」

「ミッドチルダ?」

 

 オリヴィエは首を傾げた。場所が分かっていないようだ。

 

「俺も聞いていいか?」

「はい。マスターの質疑にも答えるのがサーヴァントの使命でもあります」

 

 サーヴァント?まあ、今はいい。

 

 俺は先ほどの呆気な質問で冷静さを取り戻してきたので、気になる単語も出てきたがここで今一番気になることを聞いた。

 

「オリヴィエ・ゼーゲブレヒト。君は古代ベルカ諸王時代の戦乱の世の中で“聖王女”と呼ばれていたオリヴィエ・ゼーゲブレヒトで間違いないのか?」

 

 訓練校の頃に歴史の講義で出てきた記憶があった。戦乱の時代にその名前があった。それを思い出しながら目の前のオリヴィエと言ってくる女性に語る。オリヴィエは昔の人物だ。今の現代に現れるわけがない。

 だから、俺は目の前の人物はオリヴィエだと思わなかった。今は一応オリヴィエとして見てはいるが。

 オリヴィエの回顧録を読んで、オリヴィエに成りきる……コスプレをしている人ではないだろうかと考えてしまう。

 

「ええと、確かに“聖王女”と言われていた頃もありました」

 

 先ほどの不安げな様子とは打って変わり、笑顔で語り始める。コロコロ表情が変わる人物だなと思った。

 

「しかし、私は正統王女ではありましたが継承権は低かったので、ほんの一時期の間でしか言われません。それでも、後世にはそのように語り継がれていったのですね」

 

 オリヴィエは目を瞑って胸に手をあてた。その表情は清々しさが見受けられる。聖王女と言われて嬉しかったのだろうか。

 

 昔の事を思い出しているのだろうか?

 

「君がオリヴィエ・ゼーゲブレヒトだという証拠はあるのか?」

 

 だが、未だに一番の問題である目の前の人物がオリヴィエだとは信用できなかった。

 時間軸がもともと違うのだから、そこの理由が分からないと信用しようにも出来なかった。それに突然現れた説明も欲しい。

 それを聞いたオリヴィエは静かに目を開けて俺の事を見た。

 

「……“聖杯戦争”と言うのはご存知でしょうか?」

「聖……杯戦争?」

 

 オリヴィエの口から戦争と言う言葉が出てきて俺は歴史の講義の内容を思い出す。

 しかし、似たようなもので“聖王戦争”というのはあるが、聖杯と付いた戦争の名前は出てこなかった。

 俺は記憶ないと言うと、オリヴィエは笑みを零して静かに語り始める。

 

「聖杯は“万能の釜”または“願望機”とも呼ばれ、手にする者の望みを実現させる力を持った存在です。これを手に入れるための争いを聖杯戦争といいます。聖杯によって選ばれた七人のマスターが、私たちサーヴァントと呼ばれる聖杯戦争のための特殊な使い魔を使役して戦いあいます。」

 

 万能の釜?願望機?サーヴァント?まったく話が掴めないが。

 

 俺はオリヴィエが何個か発言した言葉の意味が理解できなかった。

 

「マスター。貴方には何か願望がありますか?」

 

 オリヴィエは一度この話を切って真面目な顔をして違う質問を困惑しかけている俺に問いかけてくる。何かを期待しているような表情でもある。

 

「願望……夢か……」

 

 俺は天井を見上げる。ダイニングを明るい光で包みこむ丸い蛍光灯がポツンと一つあるだけだ。あの時、決めていた夢がある。

 

「魔法で誰もが不幸にならない世界を作る……あの時そう決めた。それが俺の願望だな」

 

 俺は目を瞑った。脳裏に浮かんで来たのは4年前のJS事件によって11歳まで住んでいた孤児院が破壊され、園長や孤児たちは瓦礫の下に埋もれて、遺体となって現れた時の事だ。俺はその場で膝をついて号泣した。

 守ることが出来なかったからだ。育ってきた思い出の場所を。

 JS事件がなければよかった。あの事件があったからこそ、孤児院に居た孤児たちは何もしていないのに不幸の目に会った。

 

 あの出来事があったからこそ俺の夢は“魔法で誰もが不幸にならない世界を作る”と決めた。

 

「……そうですか。だから、私はあなたに召喚されたのですね」

 

 俺は目を開けてオリヴィエを見た。オリヴィエはにっこりと微笑んだ。

 

 冷静にオリヴィエを見ると、かなり美人だ。騎士甲冑を付けているが、それも着こなして様になっているのでオリヴィエ自身の魅力を引き立たせるアイテムにもなっている。

 

「……どういう事だ?」

 

 俺は今考えていた事は脳の隅に置いておいて、先ほどオリヴィエが言った事が気になった。

 

「誰もが不幸にならない世界……私も似たような世界を望んでいました。聖杯戦争はマスターとサーヴァントの願望が類似している場合、引きあいます。だからマスター、私は貴方にひかれて呼ばれたのでしょう」

「……」

 

 オリヴィエの言っている事が本当なのかどうかわからなかった。そもそも聖杯戦争と言う物自体が良く分からない。

 

「それに、聖遺物の品物が近くにあるとそれにひかれやすくもありますので」

「あっ……」

 

 それには思い当たる節があった。俺はテーブルの端に置いてあるヴィヴィオから貰ったブレスレッドを見た。プリムラからこのブレスレッドに未知の力が溢れてきたと言ってきた。

 

「これは元々は君のだったの?」

 

 俺はブレスレットを持ち上げて、オリヴィエに見せる。

 それを視界に入れたオリヴィエは喜んで、はいと答えた。要するに俺の願望とこの聖遺物の二つがあったのでオリヴィエが召喚されたと。

 

「それにマスターの証として、マスターの右の手の甲に紋章が浮かび上がりましたでしょう? それは私たちサーヴァントを使役するための制御みたいなものです。サーヴァントは歴代の英霊が具現化したものなので、マスターには絶対的な命令権がないとサーヴァント達は言う事を聞きません」

 

 ああ、確かに浮かんでいた。

 

 俺は右手の甲を見る。紋章が浮かんでいる。この紋章はヴィヴィオがくれたブレスレッドにレリーフされていたライオンの顔と同じ形をしていた。

 

「ん~、整理が追い付かなくなってきた」

 

 俺は頭を掻いた。なのはさんに頭が硬いと言われたが確かにそうかも知れない。こういう非日常な出来事に理解が追い付かない。

 

 先入観は捨てるべきだろうか?

 

 脳に入ってくる情報が未確認の物が多くて処理に追い付かない。プリムラが言っていた未知の力と言うのも気になる。

 

「……私の事信用できませんか?」

「あっ……」

 

 オリヴィエが悲しげな表情で上目使いで俺の事を見る。その虹彩異色の目を見ると昼間にヴィヴィオが上目使いをして見てきた光景と被った。

 ヴィヴィオはオリヴィエの複製体だ。もし、目の前の人物がオリヴィエ本人だとしたら、今さっきヴィヴィオの光景と被ったのは多少ながら説明が出来る。

 

「マスター?どうしました?」

 

 口を開けて、固まっていた俺の事を心配したのかオリヴィエが不安げに聞いてきた。

 

「……やはり君は本物のオリヴィエか?」

「はい!!私はオリヴィエ・ゼーゲブレヒトです!!」

 

 オリヴィエは理解して貰えそうなので喜びながら俺の言葉を肯定した。

 

 なんか、オリヴィエと話しているとヴィヴィオと話しているような感覚だな。

 

『マスター。通信が来ました』

「ひゃう!!」

 

 そこにデバイスのプリムラから通信が入ったと連絡を受ける。突然、別の音がしたからかオリヴィエはびっくりしていた。これで本当に聖王女が務まるのかと内心思った。

 

「相手は誰だ?」

『非通知で秘匿レベルが最大状態です。さらに普通の通信ではなく別ルートからの接触です。どうしますか?』

「非通知に秘匿レベルが最大……ね。大将以上のクラスにしか通信できないものだろ、それ」

 

 何となく嫌な予感がした。だが、出ない訳にもいかず俺はプリムラにモニターを開く様に指示した。

 そして、目の前にモニターが現れて俺は困惑した。

 

「……どちら様ですか?」

 

 映し出されたのは一面暗闇なモニターだったのだから。顔を出したくないのだろうか。

 

『……君がガイ・テスタロッサだな?』

 

 黒闇の中で何かが動くのが見えた。そこに人物はちゃんといるようだ。渋い声だと聞いて分かるので男だとわかる。

 その上から目線の態度に俺は少しムッとした。

 

「人の名前を聞く時はまずは自分の名前を名乗るのが常識だろう?」

『ふっ、これは失礼した。だが、生憎と私の名前は教える事が出来ん。強いて言うならば管理者とでも言っておこうか』

 

 管理者……ねえ、何の?と聞きたいがきっと教えてくれないだろう。

 

 こんな秘匿レベルが最大の通信だ。

 

 これは危険な橋を渡る前なのではないか?ここで橋を渡らず来た道を引き返してもいいんじゃないか?

 

 一瞬、俺の気持ちが揺らいだ。しかし、目の前のオリヴィエを見るとそんな気持ちもどっかにいってしまった。オリヴィエを見ていると不思議と心が落ち着く。

 それに、オリヴィエからいろいろ聞いたので、もう片足は橋を踏んでいる状態だ。なら、前に進むしかない。

 

「で、こんな足を残さないような通信をして何か俺に用なのか?」

 

 俺はこの管理者と言う奴の話を聞くことにした。

 

『ふっ、この通信も漏れないという保証はないから手短に話そう。ガイ・テスタロッサ。君は今回の聖杯戦争の最初のマスターだ。喜びたまえ』

 

 やはり、と俺は思った。このタイミングでこんな厳重な通信が入るのだ。サーヴァントがどこに現れたのか瞬時に調べたのだろう。

 

「プライベートの侵害だな」

『なに、これ以降は干渉せんよ。干渉する時だとすれば全てのマスターとサーヴァントが揃った時の聖杯戦争の始まりの合図ときだけだな』

 

 そうですか、と俺は簡易に答える。

 

「そもそも聖杯戦争と言うのは公の場には出来ない理由があるのか?英雄たちをサーヴァントとして戦わせる……今まで聞いたこともない話だし」

『ミッドチルダでは初めてだな。聞いた事はないだろう。この前は第五次聖杯戦争で管理外第97世界の地球のとある土地で行われたようだ。そして、聖堂教会に観測された第727個目の候補の聖杯がここミッドチルダに存在するとのこと。君がサーヴァントを召喚してくれたおかげで予想から確証へと変わったがね』

 

 聖堂教会?聖王教会ではないのか?

 

「俺とオリヴィエを含めた七人のマスターとサーヴァントが揃った時、聖杯戦争は始まるのか?」

 

 モニターの暗闇で管理者がフッと鼻で笑ったのがわかった。

 

『ああ、願望あるマスターやサーヴァントが戦い合い、最後の一組になった時に聖杯が手に入る』

「……殺し合いなのか?」

 

 最後の一組になる……それはつまり残りのマスターやサーヴァントは死ぬのだろう。

 

『ああ、これは“戦争”だ。魔法に非殺傷設定が義務付けられているのこの世界で育った君には理解しがたいと思うが、殺し合い、これが本来の“戦争”と言う意味なのだ』

「俺は時空管理局の航空部隊の一員だぞ。これを本局に連絡したとしたらどうする?」

 

 俺はカマをかけて見た。通信の秘匿レベルが最大なだけに本局の上層部が噛んでいる事がわかる。これで何か情報を聞き出せると良いのだが。

 

『無駄だ。本局に通報しても私はその情報を揉み消せる。それに、もしそんな事をしたら君の大切な人を人質に取らなければなるまい』

「くっ……」

 

 分かっていたが、カマかけは失敗しした。脳裏に浮かんで来たのはヴィヴィオ達の姿。

 あの子たちが不幸になってしまうのは防がなければならない。

 それに、この戦争に参加してしまった以上、拒否権は既に無くなっている。

 

「だが、都市内で殺し合いなんてものが起これば地上本部が黙って無いぞ」

『そこは安心するが良い。聖杯戦争は人が居ない場所で行われる。人前では決して戦わない。掟で決まっている』

 

 つまりは表舞台のない戦争なのか。管理者の説明で俺の頭の中にあった“聖杯戦争”に掛っていたモヤモヤとした霧みたいなモノは少しずつ晴れていった。

 

『ふむ、少し長く話してしまったな。では、失礼する。今度、連絡した時が聖杯戦争の始まりの合図だ。まあ、君が最初のマスターなのでマスターが7人そろうのはまだ先だと思うがね。それまでは準備を怠らないように』

 

 管理者はそう言って、一方的にモニターを切った。嵐が過ぎ去ったあとのように部屋の中が少しだけ静まり返った。

 

「プリムラ、逆探知できたか?」

『申し訳ありません、マスター。あと少しでしたが、相手にばれたようです。切られました』

 

 プリムラにこっそりと逆探知の命令をさせておいたが、やはり一筋縄では行かないようだ。随分と厄介な相手に絡まれてしまった。

 

「あ、あの~……」

 

 少し雰囲気が暗くなったこの部屋にオリヴィエが恐る恐る声を上げてきた。

 

「どうした?」

「マスターは不安ですか?」

 

 オリヴィエは先ほどの細々とした声では無く優しく相手を包み込むような声で聞いてくる。

 

「まあ、不安じゃないって言えば嘘になるが……」

 

 俺は一度目を閉じて、そして、再び目を開けてオリヴィエに笑みを浮かべながら見た。オリヴィエを見ていると安心感が芽生えてくる。笑みを浮かべながらも凛として、そして勇ましさや地震を伺えるその表情に安心できるのだろう。

 

「少なくともこの戦争を止めないと不幸になる奴が現れる。あの管理者の言葉を信じるなら聖杯戦争を止める事は出来ない。なら、始まったらすぐに戦争を終わらせる。被害が出る前に」

「ええ、そうですね。それに聖杯戦争に勝つことでマスターの願望も叶えることがで出来ます」

 

 願望……魔法で誰もが不幸にならないような世界……。

 

「願望か……叶うといいな、俺もおまえも」

「はい。そのためならばマスターの矛にもなり盾にもなります」

 

 オリヴィエは頭を下げて俺に忠誠を誓った。俺もオリヴィエの事を信用することにした。

 

「それに、悪かったな。最初のころはオリヴィエの事を疑って」

「いえ……何も知らなければ私の事を疑うのは当然の事です。ですからマスターは気にしないでください」

 

 オリヴィエは頭を上げて微笑んだ。笑顔がとても似合う女性と評しても間違いないくらいの温かさを分け与えてくれる笑顔だ。

 

 この人物は相棒として信頼できそうだ。

 

 俺は出会って間もない相手だというのに違和感なく信用できてしまった。本来なら警戒するのが当たり前なのだがあの笑顔に嘘はないと確信できる。

 

「ありがと、オリヴィエ」

 

 それに俺も笑って返した。

 

「うん、よし。まだ疑問がいくつか残ってはいるがとりあえず夕飯を作り直すか」

 

 俺は料理の作りかけが残っているキッチンに戻った。牛ステーキがちょうど自然解凍し終わっていた。

 

「オリヴィエ、夕飯食べるか?」

「はい、頂けるのなら。何か手伝いましょうかマスター?」

「ああ、いいよ。すぐに焼くから待ってな」

 

 俺は解凍したステーキを二分割した。孤児院以来、久々に人に料理を作るので腕がなった。

 疑問はすべて解決したわけではないが今考えていても解決する問題じゃない。だから、俺はその思考を一度切った。

 しばらくは聖杯戦争というのは始まらないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――???

 

「最初のマスターが君だったとはなガイ・テスタロッサ……やはりこれも運命か……今後が楽しめそうだ」

 

 暗黒の中で先ほどの管理者が笑っていた。

 

「そして、召喚されたサーヴァントのクラスは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ファイター?」

「はい。私のクラスはファイターとして召喚されました」

 

 俺は夕飯を並び終えた時にちょくちょくと聖杯戦争の事についてオリヴィエと話をしていた。

 因みに今のオリヴィエの姿は騎士甲冑を外している状態の姿であり、青と白の色を兼ね合わせたベルベット服だ。

 流石にずっと土足で部屋に立っていられるのも困ったので助かる。本人曰く、この体は霊体であり、甲冑も霊体化することが可能との事。

 それなので、しばらくは甲冑を着けさせないことにした。

 

「他にも、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー……例外もありますが、私のファイターのクラスは聖杯戦争では初めてのようです」

「ふ~ん、クラスねぇ」

 

 ファイターと言う事は拳で戦うのだろうか……まあ、ヴィヴィオもストライクアーツをしているのでオリヴィエのクラスもあながち間違っていない。

 

「接近戦ではセイバーが優秀と言われておりますが、私のクラス、ファイターも後れをとりません」

 

 オリヴィエはグッと拳を握り、俺の事を見る。確かに心強い。俺はオリヴィエにご飯を渡す。

 

「ああ、期待しているよ。オリヴィエ」

「はい。あ、では、いただきます」

「いただきます」

 

 オリヴィエは微笑んでご飯を食べ始める。ステーキを一口食べた。

 

「……凄いですマスター。これほどの美味な食事を作れるのですね!!」

「そ、そうか。そう言ってくれると嬉しいが」

 

 オリヴィエが無邪気な瞳で輝いていた。まるで子供みたいだ。聖王女である王族の人物オリヴィエから好評をいただいたので、少し嬉しかった。俺の料理の腕もそこそこあるようだ。

 そして、この温かい食卓。俺が憧れていたもの。

 今までの家は1人で食べていたが、オリヴィエが居るだけでも家の食卓はかなり変わった。オリヴィエの雰囲気がとても温かい。

 

「ありがとうな、オリヴィエ」

 

 温かい食卓が取れたことで俺は嬉しくなって、オリヴィエにお礼を言った。

 

「え?何にお礼を言っているのですかマスター?」

 

 オリヴィエは何のお礼を言われているのか分からなかった様子だがそれでもいい。俺は今この瞬間が本当に嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖杯戦争が終わるまでの間、オリヴィエは家に滞在することになった。しかし、オリヴィエの着る服が全くない。サーヴァントは姿を消せる霊体と聞いたが、俺の魔力が低すぎた原因と召喚時の不具合が原因で、霊体化することが出来ないようだ。

 何か申し訳ない気持ちだったので、オリヴィエが日常生活を出来るように服を買いに行くことにした。

 

 当然、俺の家に女性の衣服はない。よって服を買いに来たわけだが……。

 

「あ~……」

 

 周りからの視線が痛い。今いる店はランジェリー店。いわば下着売り場だ。

 

 もう一度言う。家には女性の衣服は何もない。下着ももちろんだ。服を買いに行こうとしたのだが……。

 

『まずは下着ですよマスター』

 

 と、オリヴィエがそう言いながら俺の手を引っ張って、ランジェリー店に強制的に入ることになった。

 

 オリヴィエは少し離れたところで下着を選んでいる。横顔を見ると嬉しそうな表情をしているのはいいが、周りを見ると男は俺だけだ。オリヴィエから離れているから視線が痛い。

 

「マスター、これなんてどうですか?」

 

 そこにオリヴィエが近づいて、下着を見せてくる。周りの客からは彼氏だと思った人も居るのか、視線の数は減った気がした。

 しかし、マスターという単語を聞いてしまった客や店員は未だに怪訝とした表情で視線を送ってくる。

 

「お、俺の事は気にしなくていいから、自分で好きな物を選びなよ」

 

 オリヴィエは恥じらうことなく手に持っている下着を見せてくる。俺はそれを直視することが出来ず、早口で喋り視線をそらした。

 因み色は白だった。

 

「こういう時は男性の方に聞くのが良いと聞きましたので」

 

 誰の入れ知恵だそれ?昔の人も変な事をオリヴィエに教えたものだ。

 

 オリヴィエ自身は箱入り娘……と言うわけではないが、時折、ズレている常識を持っているのがわかる。

 

「因みにマスターの好みの色は何ですか?」

「……っつ、お、俺はよく分からないから、気にいったものを買うといいよ」

「そうですか……」

 

 ストレートに投げてきたボールは素直に受け止めることが出来なかった。

 変な事を追及されそうになったので俺が軽くあしらうと、オリヴィエは寂しげな表情をして少し俯く。それを見てるとまるで俺が悪い事をしている感覚に陥る。

 でも、ここで妥協するわけにもいかない。

 

 ここはオリヴィエが近くに居てもあまり居心地のいい場所でもないな。当たり前だけど。

 

「俺はちょっと恥ずかしいから、外に居るぞ。財布は渡しておく」

「え?あ、マ、マスター」

 

 オリヴィエに財布を渡して、返事を待たずに俺は店の外へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……」

 

 俺は外に出て、夜空を見た。今日は雲1つもなく、大きな星が二つともくっきりと見える。

 その夜空に右手を軽く上げる。手の甲にはライオンの顔をした紋章が付いている。

 サーヴァントへの絶対的命令権。

 これがないとサーヴァントは命令を聞かない事が多いし、魔力供給も行えないという。

 

しかし、あのオリヴィエを見た限りだと、これが無くても一緒に戦ってくれそうな気がするんだけどな。

 

「んっ?」

 

 と、物思いに耽っていると本当に小さい音だが何かが地面に叩きつけられたような鈍い音がした気がした。

 

「……気のせいか?」

 

 俺は考える事をやめ、音のする方を見る。ビルとビルの間にある薄暗い通路だ。路地裏に繋がっている道だ。

 こんな路地裏では猫か何かがゴミ箱など倒した音なのだと思うのだか、近頃物騒になっているので気のせいで納得することができなかった。

 

「……プリムラ。いつでも動けるようにスタンバイしとけ」

『了解しました』

 

 俺は何かが起きていると考え、ネックレスで首にかけて持ち歩いているデバイス……プリムラにいつでも動ける状態にして、路地裏に入った。

 

 ビルが夜の光を遮るようにして立っているため、入口の光しか頼るモノがなく薄暗い。少し進むと、右に曲がる曲がり角にあたった。こういう場所では何かとぶつかる事こともあるので俺は壁沿いに寄った。

 そして、俺は壁に背をつけて、ゆっくりと曲がり角の先を見る。

 

「……っ」

 

 そこで見た光景に驚いた。

 

「いってぇ……」

 

 男が一人うつ伏せで倒れていたのだ。

 そして、その先にはその男を倒した張本人なのか後ろ姿で歩いていた。もうここに用はないのだろうか。倒れている男には見向きもしない。

 薄暗いので特徴的ななのは良く見えなかったが、あれは女性だろう。髪が腰まで伸びていたのが分かった。

 そして、その人物は曲がり角を曲がろうとした。

 

「まて!!」

 

 職務外ではあるがこれも治安維持の一つでありその人物をほっとくわけにはいかない。俺は曲がり角から飛び出して倒れている男の前まで動く。

 その人物は曲がろうとした道で止まり、こちらを向いた。薄暗いからあまり見えないが、先ほどより近づいたので全体像が見えた。

 

 背は高いが女性……と言うよりも幼げさが残っている少女に見える。碧銀の髪に顔を隠すためのバイザーか。

 

「あっ……」

 

 その人物は俺を見たとき、一瞬戸惑ったような声を漏らした。

 

「お前が噂の通り魔か?」

 

 俺はそれを気にせずプリムラに手を触れて、いつでも動ける状態に構える。

 しかし、あちらは何もせずただ茫然と立っていように見える。

 

「はい、それを否定する理由はありません」

 

 俺の質問に稟とした声で肯定する。先ほどの戸惑いとは違う。その声を聞いただけでもわかる。自分の道をまっすぐに貫く人物だと。言葉に迷いがない。

 

「こんな事して何になるんだ?」

「……」

 

 俺の質問には何も答えなかった。返事の代わりに静かに構えた。俺も最大限に警戒をしてその人物を凝視する。

 

「お手柔らかに」

 

 少しの間の静寂。そして、その人物は動きだした。

 

「はあああぁ!!」

「いっ!?」

 

 その人物は思いっきり拳を放った……地面に。その威力は凄まじく、コンクリートの地面を簡単に砕いて、砂埃をまき散らした。

 

「くっ……見えない」

『対象者、離れていきます』

 

 視界を遮られた俺はプリムラの言葉を聞いて、理解した。

 砂埃に紛れて逃げだしたのだ。俺はどうするか悩んだが、倒れている男をほっとく訳にもいかず、砂埃が晴れるまで動かないことにした。視界の悪い状態で追跡したら返り討ちにあう可能性もある。

 しばらくして、恐る恐る目を開けると砂埃は落ち着き、あの人物は居なくなっていた。

 

「あの拳を受けたらひとたまりもないな」

 

 魔法なのかはわからないが、簡単にコンクリートを叩き割ったのだ。地面は粉々に割れていた。生身の人間が喰らったら危険だろう。

 それを自分に例えると……一瞬だが体が震えあがった。

 

「通り魔……ね」

 

 俺は一先ず目先の事に思考を動かし、救急隊に連絡して男を路地裏から連れ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 表通りに戻ると救急隊が既に来ており、負傷した男を乗せて走り出した。俺は救急車を見送った後、上司に先ほどの事をモニター越しに説明した。

 しかし、そう言うのは地上本部に任せておけとの事。相変わらず空と地上は仲が悪い。

 

「マスター。何処に行っていたのですか?」

 

 いつの間にか隣にオリヴィエが居た。手には紙袋を持っている。下着を買ったのだろう。

 

「路地裏にな。最近ここら辺で連続傷害事件が起きてて、さっき連れて来た男も被害者だ」

「喧嘩ですか?」

「まあ、そんな所だろ。被害者も被害届を出さないから事件に繋がらないけどね」

 

 俺は先ほどの人物を思い出していた。あれは相当な実力者だろう。まともにやったら俺は勝てないかもしれない。

 

「まあ、この話は終わりな」

「そうですね。あまり明るい話ではありませんし」

 

 俺がオリヴィエの方を見ると、オリヴィエは笑みを見せて俺の意見にどういする。

 

「では、次は服ですね。買いに行きましょう♪あ、これは返しておきますね」

 

 オリヴィエは弾むような声でそう言って、俺に財布を返してきた。

 そして、俺の手を引っ張って歩き始める。

 

「そう言えば買い物の途中だったな」

「そうですよ。早く行きましょう」

 

 オリヴィエに引っ張られて俺は歩きだした。俺はふと片手で財布の中身を見てみると……。

 

「……おい、いくら使った?」

「……っ」

 

 オリヴィエは俺の言葉に体を一瞬ビクっと震わせて歩くのをやめた。

 

「え、え~と……可愛いものがいっぱいありましたので……ついっ……」

 

 オリヴィエはこちらを向かない。けど、ギュッと紙袋を強く握りしめるのが分かった。そのまま申し訳なさそうにボソボソと言ってきた。

 俺の財布の中の金額が半分近く無くなっていたのだから。使い過ぎと分かっているのなら買うのをやめてほしかった。下着だけでこんなに使われてしまうとは。

 

「使いすぎだろ」

「も、申し訳ありません……」

 

 後姿で謝るオリヴィエ。

 

 向きが違うぞ向きが。

 

「……はあ、まあいいけどさ。服は程々にしとけよ」

 

 俺はそれを見て、ため息をついてそう言うと、オリヴィエは振り向いて頭を下げた。

 

「はい、ありがとうございます!!」

 

 まあ、オリヴィエにお金なんて無いのだから仕方ないと言えば仕方ない。魔力の低すぎで霊体化出来ない俺が悪いのだから。

 それに女性は買い物が好きだと聞く。その喜びに水を差すわけにもいかない。

 

「とっとと、買いに行くか。お手柔らかに頼むぞ」

「はい!!」

 

 オリヴィエは頭を上げて満面の笑みを見せてきた。買い物が続けられて嬉しいのだろう。それにヴィヴィオと同じでオリヴィエも笑顔が良く似合う。その笑顔をあまり曇らせたくはない。

 オリヴィエの笑みを見て、俺も笑って買い物を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――マンション

 

 買い物は無事終わらせる事が出来た。代わりに財布の中身が全滅した。

 

「こんなに買うとは思わなかった」

「す、すいません、マスター」

 

 テーブルに買った物を置いた。紙袋が10個以上ある。オリヴィエが申し訳なさそうに言ってくる。

 流石は王族というか、買い方が豪快すぎた。オリヴィエは欲しい服をどんどん買物かごへ入れていき、しまいには二つのかごでも入りきらないぐらいの量となってしまった。

 それでも10着で下着の額と同じというのだから下着はかなり質のいいモノがあるわけだ。

 

 ちょっと気になるけど……そこは我慢だな。

 

「まあ、いいけどさ。明日は貯金下ろさないと」

 

 俺は明日仕事に行く前にお金を下ろす計画を脳内で立て始めた。

 

「あ、あの、開けてもよろしいですか?」

 

 その横でオリヴィエが恐る恐る聞いてくる。

 

「ああ、全部オリヴィエの物だから好きにしなよ。俺は明日早いしシャワー浴びて寝るわ」

 

 マンションに戻って来たのも夜遅い。明日の仕事に支障がないようにシャワーを浴びてすぐに寝ることにする。

 風呂場に行く時、ふと、オリヴィエを見る。洋服を紙袋から取り出して見て喜んでいるようだ。

 

 まあ、その笑顔を見れただけでも今日の買い物には意味があったかな。

 

「あ、ヴィヴィにメールしとくか。プリムラ」

『モニター開きます』

 

 俺の前にモニターが現れる。俺はメールの文章を書き込んだ。

 

To………高町ヴィヴィオ

件名………プレゼント

本文………ブレスレットのプレゼントありがとな。とても嬉しかったよ。ところで、あのブレスレットは何処で手に入れたんだ?

 

 俺はプリムラに送信しておくように命令した。夜遅いから帰ってくるのは次の日だろう。あのブレスレットがオリヴィエを呼び水にした聖遺物であることは間違いない。まあ、今考えても仕方ないので俺はシャワーを浴びた。

 シャワーを浴びて洗面所から出るとオリヴィエはまだ服を鏡の前で自分に合わせていた。

 ほどほどにしとけよ、と言って俺はベッドに入ろうと思ったけど新たな問題が浮上した。シングルベッドが一つしかない。こんな1人暮らしの所に泊まりがけで来る人物など居ないので来客用の布団は無い。なのでオリヴィエに譲り、ソファーで眠ることにした。

 

『私はマスターとご一緒に寝ても構いませんが?』

 

 と、オリヴィエは言ってきたので流石にそれはマズいだろうと考えて、ソファーで眠ることに。そんな行動を見てオリヴィエは可愛らしく首をかしげて理解不能と顔に書いてあったが、そのぐらいは察して欲しかった。

 ソファーで横になって目を瞑るとすぐに眠気が襲ってきた。今日1日が長かった。

 

 聖杯戦争というシステムに片足を入れてしまったが、まだしばらくは始まらない。それまでにやれることをやらないとな。オリヴィエが出てきた時の未知の力。見たことのない魔法陣。手の紋章。疑問も多いが、一つ一つ片付けて行こう。

 

 そう結論が出た時には俺の思考は闇に落ちて行った。




アインハルトが絡む予定だったけど、ちょっとしか出てこなかった。

オリヴィエと聖杯戦争の話でほぼ終わってしまったorz

次回こそアインハルトをちゃんと絡ませます。

オリヴィエの性格は実直で生真面目ではあるがどこかズレていて、感情的であり明るい性格。

マスターである、ガイが悲しんでいるとオリヴィエも悲しんでしまう。

こんな性格で多分大丈夫かなw?

何か一言感想があると嬉しいです。

では、また(・ω・)/
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