魔法少女リリカルなのはvivid~過去と未来と現代の交差~   作:ガイル

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こちらに移転して初の投稿です。

最後の投稿から一ヶ月以上経ってしまい申し訳ありませんm(_ _)m

待っていた方(居るかな?)お待たせしました。

二十七話目どうぞ。



二十七話“魔法と魔術の交差”

 ―――首都クラナガン 時空管理局地上本部敷地内 墓地

 

ここは地上・海・空の全ての管理局員が殉職した際にここに埋葬される巨大なスペースを持つ墓地。

 

1平方キロメートルもあるこの敷地内を事前の準備もなく目的の埋葬者の墓へ行こうとなると迷って半日はかかってしまうだろう。管理局員の総人口を考えると、もしすべての管理局員が殉職したとしても場所を持て余しそうな広さだ。まあ、現時点での管理局員の人口なので、これから入隊し、殉職する人数を考えていくとキリがないだろう。

 

出来ればここの敷地内が東洋風の長方形の頭が丸い墓石で覆い尽くされない事を願うばかりだ。

 

この敷地内は緑の芝生に敷き詰められ一定の間隔を挟んで殉職して行った管理局員の名前が刻んであるコンクリートの頭身が円形の半分の形になった墓石が並んでいる。ここには二階級特進で埋葬される。名誉・叙勲・その他の遺族に対する補償も特進した階級に基づきなされるようにだ。

 

そして今も……。

 

「アンノウン討伐による二階級特進殉職者、以上38名」

「……」

 

大将のお偉いさんがアンノウン討伐に参加し殉職していった人物の名前を1人1人告げ、亡くなった人数の数を最後に言って敬礼する。

 

その告げる人物達の名前の中に知っている人がいて胸を痛めつつ俺もそれを見て敬礼した。

 

敬礼している視線の先には38箱の棺桶。中身は遺体は無く殆ど空だ。入っているとしても体の部位の部分であり、それはあの惨劇の場所に散らばっていたモノでDNA鑑定をして討伐に参加していた人物を割り出し収めているだけ。人の原形を留めている遺体は一つもない。

これは形だけでも墓に入れようという措置だ。

 

昨日の出来事だと言うのにこの早さは異常だ。聖杯戦争のあの管理者が表沙汰にしない様に手早く手を引いているのだろうと考えてしまう。あれは聖杯戦争に関係ある事件だったのだから。

 

何処かの世界では七日ごとに仏事などを行い、それを七回、四十九日やるという話を聞いたことがある。

 

この世界ではどうなのだろう?

 

孤児院の葬式はショックが大きく出なかったので分からない。

 

「勇敢な戦士たちよ。ここに静かに眠れ」

 

そんな思考の渦の中で考えている内に大将のお偉いさんが敬礼を終え、一つ一つの棺桶が墓石の前にある穴に運ばれ土を掛けて埋めていく。

 

「……」

 

いくつかの墓石には良く見知っている人物の名前が刻まれている。俺はその知っている人物の墓の前に花を添えて行き、最後の墓石の前にしゃがみこんで持っていた花を添え、その墓石に刻まれている名前を見る。

 

部隊長の名前があった。俺がここら辺の墓石に花を添えたのは俺の部隊の人物たちの墓だ。

 

棺桶には勿論遺体など無いのでここに部隊の皆が眠っているわけではない。

 

ここには眠っているわけでは無いのに墓はある。その何とも言えないモヤモヤ感が胸を締め付ける。

 

部隊長の最後の表情……脳裏にこびり付くように新鮮に記憶に残っている。死ぬのが分かっても笑っていた。なのはさんを守ってやれといいながら。

 

「むしろ……なのはさんからすれば俺は守られる側……になっちまってんだけどな……あの時もっと早く“魔術回路”を展開できれば……」

 

あの時の事に “もし”という仮想の出来事を考えてしまう。あの時の選択が遅れてしまったからこの惨劇が起きてしまったとついつい考えてしまう。

 

俺は今、自分自身を責めていた。

 

「ガイ君……」

「……高町教導官。ヴィータ教導官」

 

覇気が無くあまり元気のない声が後ろから聞こえてきたので振り向くと、そこには眼を軽く伏せてはいるが少しだけ笑みを溢しているなのはさんが花を持って立っていた。その笑みは無理をしてしているとすぐに分かった。それはたぶん俺を励まそうと明るく接してくれるなのはさんの好意なのだろう。

 

このなのはさんは“現代”のなのはさんで間違いない。あの“未来”のなのはさんが近づいた時と雰囲気が違った。どちらも温かいが、あちらは少し違った違和感があった。今はその違和感がないので現代で間違いない。

 

隣にはヴィータさんも花を持っていつもの鋭い眼をしているが少し困惑の色を出している表情だった。

 

「御二人も部隊長に花を?」

「うん、お世話になったからね」

 

だけど、俺は笑みを返すことが出来なかった。なのはさんとヴィータさんはそれを気にせずに俺の隣にしゃがんで部隊長の墓に花を添えて手を添え眼を瞑った。

 

俺もまだやっていないのでなのはさん達と一緒に手を添え眼を瞑った。脳裏にはやはりあの時の部隊長の最後の姿が思い浮かぶ。

 

「……ガイ、お前寝てねぇだろ?」

「……はい」

 

眼を閉じて真っ暗な世界でヴィータさんの声が聞こえたので眼を開けて2人の方を見る。2人とも心配な色を浮かび上げて俺を見ていた。

 

「眼、真っ赤だね。眼の下のクマもあるし……」

「……」

「まあ、無理もねえけどさ……」

 

昨日の辛い出来事があってショックを受けながらも色々とオリヴィエと話をしているうちに一睡も出来ず朝を迎えてしまった。休みをいただいたので朝に寝るのもいいけど、地上本部からアンノウン討伐ででてしまった殉職者達の埋葬式を行うと今朝方に連絡が来たので寝ずにここまで足を運んできたのだ。

オリヴィエには朝まで付き合ってもらったので今は俺のベッドで寝ている。

 

「昨日の出来事のショックが大きくて……」

「ちゃんと寝なきゃダメだよ」

「……はい」

 

なのはさんの温かい言葉が沈んでいる心にゆっくりと染みこむ。なのはさんは本当に温かい人物だ。なのはさんの近くに居ると気が楽にはなる。けど、それに甘えていけない気がする。男として、大人として。

 

俺は2人から視線を離して立ち上がる。

 

いろいろと考えるのも疲れたし帰って少し寝よう。頭が重いし思考も働かなくなってきた。

 

「これから帰って寝ます」

「うん……送って行こうか?」

「……大丈夫です。ご心配をおかけしました」

 

色々と気を使っているなのはさんに一礼して背を向けその場を離れようとした。あまりなのはさんに無理をさせたくないという気持ちもあってこの場から離れたいのもある。

 

「ガイ」

「なんでしょうか、ヴィータ教導官」

 

しかし、ヴィータさんに引き留められる。

 

「っ!?」

 

2人の方へ振り向いたと同時に突然の頬へ何かが思いっきりかぶつかった様な激痛が走り、視界がブレた。

 

「ヴィータちゃん!!」

「たくっ、仲間を失う気持ちはあたしはよく知っている」

 

俺は頬を摩る。ヒリヒリとした感触で痛みが残っている。その痛みが夢うつつになりかけていた俺の思考が現実に戻るには十分な感触だった。ヴィータさんを見ると表情を険しくして右手は拳になっていた。その拳で殴ったのだろう。

 

「感傷に浸る時間はあってもいいがいつまでもクヨクヨしてんじゃねぇぞ。男だろ?」

「……」

 

ヴィータさんの言葉が深く胸に刺さる。ヴィータさんから見れば俺は落ち込んでいるのだろう。それを見たヴィータさんは喝を一発入れたわけだ。

 

「えぇ……分かっています……」

「ふん、ならいい……早く元気になれよ」

 

ヴィータさんは俺の返事を聞くと腕を組んで俺から視線を離して、俺に顔を見られない様にしながらボソリと言葉を呟く。ヴィータさんなりに俺の事を励ましてくれたのだろう。

 

ヴィータさんにも気を使ってくれて心が温まる感覚が胸の中から感じ取れた。重かった心が少しだけ軽くなった。

 

「……ありがとうございます。ヴィータさん」

「な、べ、別に心配してるわけじゃねぇからなっ!!そこんとこ勘違いすんなよ!!」

「はい、本当にありとうございます」

「……っ、いいから早く行け」

 

そのことに感謝してヴィータさんに一礼する。ヴィータさんはどうやら素直に感謝されるのが苦手なようだ。顔は背けているから分からないがきっと赤くなっていると思う。

そんな発見を見つけて少し笑い、そして今度こそ2人に背を向けてこの場を後にした。ひと先ずは体を休ませるために安息の場所であるマンションを目指して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――St.ヒルデ魔法学院

 

「ごきげんよう、ヴィヴィオ」

「おはよ~、ヴィヴィオ」

「あ、おはよ~、リオ、コロナ」

 

ヒルデ学院の門を潜ると、その先には見知った友達が居て挨拶して来てくれた。コロナとリオだ。私は小走りになって2人に近づいた。

 

「昨日は大雨で帰るの大変だったね~」

「うん、あの時はもうちょっとショッピングモールで時間を潰していれば良かったね」

「あの時に帰るのは間違いだったね」

 

昨日の事を歩きながら皆で話をして軽く溢し合う。

 

昨日はこのメンバーとアインハルトさんにフリージアさんとショッピングモールへ遊びに出かけた。いろいろと買い物をして途中でフリージアさんが急用でいなくなった後、たぶん雨は止まないだろうと思って皆で残りのお金を出し合い、大きめの傘を2本買って帰ったんだよね。

でも、帰り道には雨もやみ始めて家に着くころには傘が必要性が0になっちゃった。

 

ちょっとお金もったいなかったかな。でも、アインハルトさんとの相合い傘……楽しかったな。

 

「あ」

 

門を潜って、学園まで歩いていると目の前に頭の左側に大きな赤いリボンを付けた碧銀の髪を少し靡かせながら静かに優等生のような歩で歩いている中等科の学生の後ろ姿を見かけた。

 

噂をすればなんとやら……噂じゃなくて考え事ですけどね。

 

「アインハルトさんだ。アインハルトさ~んっ!!」

 

しかし、大きな声で発したつもりだったが気付いていないのか振り向かないまま先へと歩いて行く。

 

「あ、あれ?気づかなかったのかな?」

「結構大きな声だったのにね」

「もうちょっと近づいてみよう」

 

私達はその背中に向かって少し早歩きで近づく。そして、近距離に近づいて再び声をかける。

 

「アインハルトさんッ!!」

「っ!?」

 

私の声がやっと届いたのか、それでも一瞬体をビクッと震わせてこちらを向いた。

 

「「「わっ!!」」」

 

その表情を見た時、私たちの驚きの声はタイミングよく被さってしまった。左眼が薄蒼で右眼が紫をしたアインハルトさんが振り向くと思っていた。

 

しかし、今の眼は……、

 

「あ、ご、ごきげんよう、ヴィヴィオさん、リオさん、コロナさん」

「あ、え、えっとごきげんよう、アインハルトさん。眼が真っ赤ですね、大丈夫ですか?」

 

両方とも目が少し赤くなって、少し頬もやつれていた。明らかに不健康な顔をしている。昨日までは何ともなかったのでもしかしたら寝不足なのかもしれない。

 

そして、私たちを見た時、最初だけ怯えていたようにも見えた。しかし、それも一瞬ですぐに無表情な顔に戻っていた。

 

私も戸惑いながらも挨拶してきたアインハルトさんに挨拶を返す。

 

まるで何かに怯えていて塞ぎ込んでいるような……良く見るとあまりいい雰囲気をアインハルトさんから感じとれない。むしろ暗い……暗いですよ。

 

「ア、アインハルトさん、寝てないんですか?」

「……ええ。少し考え事がありまして」

「ダメですよ。しっかりと寝ないと」

 

コロナがアインハルトさんに気を使って優しく接してくる。コロナが微笑んで接してくると気持ちが明るくなる。私も励まされた事もあった。

 

しかし、それでもアインハルトさんの暗さはあまり拭いとれていない。

 

……そういえば、なのはママも似たような少し暗い雰囲気を昨日はしていた。もしかして……ガイさん絡みなのかな?

 

「……本当にどうしたんですか、アインハルトさん?」

「……いえ、なんでもありませんよ」

 

私は心配してアインハルトさんに単刀直入に聞いた。しかしアインハルトさんは眼を伏せて視線を逸らして何も言わなかった。

 

私悩んでいますよ~、的な態度が明らかに分かると聞いてあげたくなる。アインハルトさんだからかもしれない。

 

だから私は試しに引っ掛けてみようかなと思った。

 

「ガイさん絡みですか?」

「……っ!?」

 

表情がすぐに変わった。わかりやすい。

 

その表情は一瞬だけだけど最初に見た怯えている姿だった。すぐにクールな表情に戻る。

 

「す、すいません。今日は日直なのでこれで失礼します」

「あ、アインハルトさん」

 

アインハルトさんは顔を赤くして私たちから逃げるように素早く一礼して中等科の校舎へと走って行った。

 

ガイさんの名前を挙げると逃げるように走って行った。ガイさんと何かあったのは間違いないと思うんだけどな~。

 

「え、えっ?ガイさん絡みなの?」

「ん~、そんな感じがするね~」

「そうだね」

「もしかして、ガイさんがアインハルトさんに何かしたってことかな?」

「何かって何?」

「そ、それは、うん、何かだよ。リオ」

「コロナ。何かじゃ分かんないよ」

「私もその辺りは少し……」

 

リオとコロナがアインハルトさんの行動から様々な妄想を掻きたてていた。主にコロナが頬を少し赤くして頬に片手を当てながらも生き生きとしているようにも見える。

 

「まあ、後でガイさんにメールして聞いてみようか」

「うん、とっても気になるからしてみよう」

「そだね~」

 

私の提案に2人は頷く。そこに体の底を奮い立たせるような低い音響のチャイムの予鈴がスピーカーを通して学園内に響き渡った。

 

「あ、急がないと」

「うん」

 

予鈴の音を聞いて少し駆け足で初等科の校舎へ走り出す。そして、教室に入って私達は私が代表としてガイさんにメールを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――中等科

 

「はぁ……」

 

ヴィヴィオさん達には申し訳ない事をしてしまった。本当は校舎への道のりの間に会話をしたがっていそうな雰囲気だったけど、私自身がとても会話を出来るような状態では無かった。

 

ガイさんの名前を聞いただけでこんなにも心が乱れるなんて……落ち着かせる事がこれほどにも難しいものだとは思わなかったですね……。

 

急いで歩いてきて教室前に少し息を整えて入室したがクラスメートからの視線が痛かった。けど、それは仕方ないと考えて自分の席へ目指した。

 

眼が赤くなって少しやつれてますからね。朝、自分の姿を鏡で見た時は驚きましたから。まるでゾンビな……いえ、よく分からない例えです。

 

そして、途中に挨拶が聞こえたのでそれに挨拶を返しながら、そのまま自分の席について鞄を机の横に置き、先ほどの大きなため息をついて机に突っ伏していた。

 

目の前に暗闇が広がり脳が睡眠を欲しているからか物凄い勢いで眠気が押し寄せてくる。

 

昨日は一睡も出来なかくて眠いですし、涙を流し過ぎて眼が渇いて少し痛いです。昨日の出来事がとても辛かった。

少しでも気が緩んだら寝てしまいそうですね。ですが、学園で寝るわけにはいきません。勉強もしっかししないと。

 

そう考えるが、昨日の事を思い出すとその気力が削られてしまう。昨日の事だがついさっきの出来事だと錯覚してしまう。

 

ガイさんからの“否定”。

 

近づいただけで否定の色を表情に晒し出し、怯えた眼をしていた。

 

私、何かガイさんに悪い事をしたでしょうか?

 

この答えは昨夜にいくら考えても思い浮かばなかった。

 

ガイさんに対して悪い事はしていないと私は思っていた。でも、私の気づかない所でガイさんに悪い事をしてしまったのではないかとも考えられる。

 

それが原因で私を否定してして嫌われてしまった……ううっ、ネガティブな思考しか出来ません。ガイさんに嫌われたくないのですけど……もう少しポジティブに考えないと。

 

そうは思いつつもやはりガイさんに否定された事がどうしても頭から離れられない。そして、その現実が胸に突き刺がさり気力を失って寝不足も重なり、激しい眠気に襲われてしまう。

 

私は眠気に負けない様に何とか上半身を起して、目を瞑りながらも手を組んで軽く上へ突き上げる。

 

「ア、アインハルトさんっ!!」

「……はいっ?」

 

……ひゃぃっ!!

 

前から声がしたので目を開けると、視界に入ったのは数人の男子生徒。本当なら一番大きい黒板が視界に入り、雑談で話が弾んでいる生徒たちの居る朝の教室の風景が見えると思いましたけど、いつの間にか私の周りに男子生徒達が群がっていた。悲鳴は何とか抑える事は出来たが、内心ビクビクしていた。

 

正直、ちょっと怖いです……。

 

いきなり視界に大勢の人が現れたら誰だって驚くだろう。それもすべて私に向けられている。私の心の中に居る自分はすでに半泣き状態に近い。

 

「す、すごくやつれてますよ!!何かあったのですか!?」

「それに目も真っ赤ですっ!!昨日は寝てなかったのですか?」

「あ、え、えっと……」

 

しかし、心の中にあった恐怖に近い感情は、私の事を心配している男子生徒の表情を見て驚きへ変わった。

普段、私に声を掛けてくる男子生徒なんていなかったからだ。なのに心配をしてくれている。その事に驚きがあった。

このクラスも話をするのは数人の女子生徒だけだ。それぐらいの関わりしかないクラス。

だから、異性である男子生徒に心配されて声をかけられ、驚き戸惑ってしまう。

 

……私の事を心配してくれて声をかけて来たのですよね。その好意を無碍にしない様にどのように接するか考えましょう。

 

私は眠たい脳を必死に回転させ思考を巡らせた。そして、まとまったので口に出す。

 

「き、昨日はその……夜に兄さんと少し……やっていまして……」

「「「っ!!」」」

「えっ?」

 

私の言葉を聞いて心配の表情をしていた男子生徒達は一変して驚きと驚愕の表情に変貌した。

 

な、何か変なことを言ったでしょうか?昨日の出来事は必死に忘れるようにして、ガイさんとの特訓を夜遅くまでしてしまったという話を作り上げたのですが。

 

「ヤ、ヤっていたって?」

 

その1人が恐る恐る聞いてくる。私はそれに頷き話を続ける。

 

「激しく動きました。受けと攻めに転じる機敏な動きが重要だと昨日知りました。兄さんの指導はかなり宜しかったです。また、時間があればご指導をしてほしいですね」

「な、なっ……」

「マ、マジか……」

「あの男が」

「アインハルトさんに……」

「そんな事を教えていた……だと!?」

「あ、あれ?」

 

男子生徒たちの驚いていた雰囲気がどんどん黒くなっていき、しだいに険悪なムードが漂い始めていた。その険悪さが殺気にも感じとれる。

眼は血走り、ワナワナと震えている人もいれば目の前の絶望を目の当たりにしたように力なく抜けてしまった表情をしている人も居た。そんな抜けていしまった表情をしていても険悪さがその体から滲み出ているのが分かる。

 

周りで聞き耳を立てていたのか女子生徒たちからもキャーキャーという、悲鳴とは違い少し興奮気味な高い声が聞こえてくる。

 

「あ、あの……」

「アインハルトさんっ!!」

「は、はいっ!!」

 

皆さんどうなされたのですか、と聞こうとしたら大きな声で名前を呼ばれて思わず声を高らかに上げて恥ずかしかった。けど、そんな事は男子生徒達は気にもせず話を続けてきた。

 

「ど、どんな事をされたのですか?」

「え、ええと、主に受けの特訓です」

「受けえぇえぇぇっ!?と言う事は、アインハルトさんの兄は攻めっ!?なんて羨ましい!!」

「?」

「で、では、アインハルトさんは攻められまくってしまったのですか!?」

「え、ええ。兄さんの剣技はもはや達人レベルかと」

「お、おぉう。あの男のテクニックは達人並だと……」

「アレを受け止めるにはなかなか骨が折れました」

「そ、それはそうですよっ!!大人と子供では体格差に無理があるよっ!!」

「い、いや、むしろ嫌がるアインハルトさんを無理矢理……やばい、ちょっと興奮してきた。アインハルトさん、お兄さんの剣はそんなに大きいの?」

「大きい?いえ、あれは細い部類に入ると思いますけど。他の剣を見た限りだと兄さんの剣が一番細かったですね」

「大人なのに細い!?し、しかも他のモノも見ていた!!」

「ああ……俺の中の純潔なアインハルトさん像が崩れていく……」

「え、えっと?」

 

何故でしょうか?私と男子生徒達との会話にズレが生じているような気がする。普通に特訓の話をしているはずなのですが。

 

「と、時折、私も隙あらばソレを受け止めて攻めに転じていましたが」

「剣を包み込んだまま優位に立った!?ストラトスさんはなんて頑丈な……」

「え、あ、ありがとうございます……こう見えても鍛えてはいますので」

「あ、お、俺の剣技も味わってみませんか?」

「あ、ズルイぞ、てめぇえぇ!!抜け駆けすんなよ!!」

「うるせぇ!!こういうのは早い者勝ちなんだよっ!!アインハルトさんどうですが?」

「い、いえ、申し訳ありませんが、特訓と言うのなら私と対等かそれ以上の実力をお持ちの方でないと……」

「テクニックに自信ありっ!?お兄さんの教えって我々の想像を超えるもの……だと……!?」

「わ、私自身も向上していきたいものですから、まだまだ未熟者です」

「そして、向上心あり……その絶頂の先を求めているのですね!?」

「え、ええ。日々の向上心が大事ですから」

「日々っ!?って事は毎日行っているのですか?」

「はいっ」

「お兄さんは毎日、アインハルトさんの事を……あっちの教育している……」

「羨ましい……羨ましすぎるよ……」

「あ、あれっ?」

 

話しを続けていくと、男子生徒達のどす黒い険悪なムードが更に濃くなっていった。

 

ほ、本当に変なことを言いましたでしょうか?皆さんから感じ取れる殺気が先ほど以上に濃さを増して、この私の机周辺を混沌と化している。

 

「あのアインハルトさんが」

「お淑やかなイメージがあったけど」

「意外と積極的なのかしらね」

「でも、お相手はお兄様って事は禁断の恋ってこと?」

「親からは当然祝福してく訳もなく背徳と禁断の恋……」

「そして、親元から離れて2人で頑張って駆け落ち……」

「家族なんだから駆け落ちは無いんじゃない?」

「それなら同じ家から2人で抜け出すって表現の方がいいわね」

「キャー!!そういう展開いいわ!!」

「小説創作の意欲がわいたわ!!ちょっとこれから書いてみる!!」

「え?あなた、その小説ってもしかして……R指定入ってるモノ?」

「モチのロンよ!!アインハルトさんはMで書くわ!!」

「できたら私に読ませて!!」

「私もっ!!」

 

R指定?M?何ですかそれ?

 

周りからは女子生徒がキャー、とかアインハルトさんってお淑やかなイメージあったけど意外とテクありっ!!とか、黄色い声を出して盛り上がっている。

 

わ、私の話そんなにおかしなものでしたでしょうか?

 

私が振った話なのに皆私を置いて勝手に盛り上がっている。

男子生徒達は黒い雰囲気を出したり血の涙を流していたり両手両膝を床につけて垂れ落ちている男子生徒が。

女性生徒は声高い話声で盛り上がりに更に勢いがついている。

 

「HR始めますよ~。あら?皆さん、何に盛り上がっているかは知りませんが時間ですよ。席について下さい」

 

と、そこに担任のシスターが入ってきて、盛り上がるクラスに言葉を投げかける。盛り上がっていた生徒達も渋々とまだ語り足りなさそうな表情をして自分の席に着いた。

 

教室の騒動はひとまず収まり、シスターが連絡事項を述べていた。私はとりあえず騒動が収まってホッとし、窓の外を見る。日差しが私を照らして寝不足な私にとって少し眩しい。

 

今日は晴れていますね……ですけど私の心の中はやはりガイさんの否定でモヤモヤとした気持ち悪い感情が曇り空のように残っています。

ガイさんとの特訓という作り話はしょせん作り話。現実はやはり重く私に覆いかぶさってくる。

それが原因なのか心の底から何かがこみ上げてくる。

 

「はぁ~」

 

私は何処となくため息を吐いてしまう。

 

「ア、アインハルトさん!!どうしました?」

「えっ?」

 

シスターから声を掛けられたので前を向くとオロオロとして心配そう表情をして私に近づいてくる。

 

周りに居たクラスメイトも私の事を見て驚き、何と声をかければいいのか分からないような躊躇している表情を見せる。

 

「なぜ泣いているのですか?」

「……」

 

私は泣いていた。自分でも気づかないぐらいに自然に泣いていたのだ。いや、分かっていた。その原因は昨夜から起きている現象なのだから。ただ昨日は当たり前なくらいの現象だったので気にもしなかった。

私は涙を見られるのが恥ずかしくなって急いでハンカチで涙を拭きとる。

 

心の底からこみ上げてくるモノは寂しさだった。ガイさんの否定が心に引っ掛かってとても平常心を保つことが出来ない。

 

オリヴィエに欠けていた覇王の記憶を埋めてもらい安心感で心が満たされていると思いましたが、オリヴィエの寂しい表情にガイさんからの否定……どうしてこうも胸を締め付ける要因が二つもあるのか。ガイさんは何を言っても話してもらえないでしょうし、おそらくオリヴィエも……。

 

先ほどのクラスメイトとの会話は盛り上がりすぎて皆の態度に躊躇してしまったが実際に冷静になって昨日の物事を考えるととても寂しく心を冷やしてしまう。

 

「申し訳ありません。体調が優れませんので少し保健室へ行ってもよろしいですか?」

「「「っ!!」」」

「え、ええ。眼も真っ赤ですし少し保健室で横になるといいですわ」

「ありがとうございます、シスター」

 

私は拭き終えたハンカチをポケットにしまい立ちあがる。

 

「た、体調がすぐれないって……」

「も、もしかして妊……娠……!?」

「いえいえ、私達まだ中等科よ。そんなことあるわけが……」

「でも、連日連夜お兄さんとシてるって話……」

「俺の中のアインハルトさん像が~」

 

教室を出ていく時、こそこそ話が聞こえた気がしたが何を言っているのかうまく聞き取ることが出来なかった。

 

とりあえず、少し休みましょう。学業を疎かにするわけにもいきませんので一時間ぐらい睡眠をとって教室へ戻りましょう。

 

そして、私は教室から出る。

私が教室を出てた時、教室で何やら騒ぎだしたような気がしましたが、あまり気にしている余裕もなく保健室へと歩を進めた。

 

「うっ……」

 

ですが、歩きだすとふらっと視界が斜めに傾き始めた。膝から下からうまく力が入らないようだ。

 

私は必死に力を入れてどうにか倒れずに何とか壁に体を預けて体制を整える。

 

思った以上に寝不足で体が疲れていますね……早く保健室で休ませてもらいましょう。

 

少し早歩きで保健室へと目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ボロアパート

 

「……」

 

俺は困惑していた。あの埋葬式の後、俺は部屋に帰って少し眠ろうと思い帰路についたはずだ。

 

確かにここは部屋だと認識できる。しかし、馴染みのある俺の部屋では無い。

 

「貴方、砂糖は入れる?」

「……」

 

少し古びた部屋でそれでも手入れをして何とか居住空間に仕立て上げたような部屋と言える。壁の所々にヒビが入っているし傷の付いていない木造の柱なんて無い。1LDKの広さだ。

 

「貴方、聞いてるの?」

「……」

 

そして、さっき俺の名前を呼んだ人物に視線を向ける。

女性だ。黒い髪を黒いリボンでツインテールに縛り、翠の瞳。黒いニーソックスに黒く短いミニスカート。胸元に十字の紋章が付いている赤い服を着ている。

綺麗とも可愛いとも思えるこの美少女。凛。名前はそれしか知らない。そして、この目の前の人物は聖杯戦争の参加者でマスターである。俺は油断せずに相手を見据えた。

 

「そんな警戒しなくていいわよ。最初に言ったでしょ?話をしたいんだって。別にコーヒーに毒が入っているわけでもないから安心して。それに襲うのだったらここに入った瞬間から攻撃を始めているわ」

「……まあ、確かに」

 

薄く笑うその仕草も風流なモノで警戒をしていた俺も気を緩めそうになる。

 

「奏者よ。何故この男を捕まえるだけなのだ?倒さぬのか?」

「……っ!?」

 

しかし、凛の隣からアルトリアと同じ顔をした紅いドレスを着こなしているサーヴァントが突如に現れ、緩めようとした警戒心をMAXに戻した。

 

一度見たことあるから分かる。セイバーだ。

 

捻れた特徴的な赤い剣を持っていたことからクラスは割と簡単に判明できた。

 

そして、この凛って子がセイバーのマスターか……新しい情報だが……。

 

ここは生活感が漂っているのでおそらくこの凛達の寝床なのだろう。そして、今この同盟もしているわけではない凛の居住に俺が居る。更にはサーヴァントまで現れた。

 

警戒するなと言われても無理だ。

 

「別に捕まえていたわけじゃないわ。同意してここまで来てもらったのよ」

「まさか自分の居住に誘い込むとは思わなかったけどな。どこかの喫茶店でも入るかと思ってた」

「私にそんなお金ないわよ」

 

はぁ、っと思いっきりため息をつき微妙な表情をとる凛。表情から見るにあながちお金がないというのは嘘ではなさそうだ。

 

「でも、そんなふうに考えているのにここに入る時は警戒しなかったの?」

「……俺も君に話をしてみたかったのもある。君なら話を聞いてくれるマスターだと思ってな」

「……ふ~ん、随分と貴方の中で私はお人好しな存在ですこと。まあいいわ」

 

帰り道の途中、バッタリと出くわしてしまい戦闘を行うかと思い警戒したが、あちらから話があると言われて警戒心を保ったままこのボロアパートまでやってきた。入る時も警戒し入るかどうか躊躇したが、“魔術”という増えてしまった疑問を聞きたい事もあってここに入ることにした。

 

この子なら何か知っている。直感でそう思ったからだ。

 

後はいつ襲われても大丈夫なようにすぐにプリムラを起動できる状態にはしてある。

 

少しでもおかしな動きがあれば……。

 

「ふん、余はそこの者には興味など無い。凛よ、余は湯浴みするぞ。奏者も共に流そうぞ?」

「心より遠慮しとくわ」

「そう照れるでない。まあ、よい」

 

おかしな動きがあれば……。

 

「ちょ、セイバー!!ここで脱がなくてもいいでしょ!!」

「ん?別に良いではないか」

 

おかしな……。

 

「だー!!ここには男性が居るでしょうが!!」

「余も男装していたから問題ない」

「問題ありまくりよ!!ちょ、もうドレス脱いでるし!!レオタードも脱ぎかかってる!!」

「ふふんっ、早脱ぎは得意ぞ。湯浴みが早くしたくてついた技だ」

 

お……。

 

「そんな技らいらないわ!!ああ、もう何も着ていない状態に!!」

「では、余はこれから湯浴みするぞ。奏者も気が変わったらいつでも来るといい」

「い・い・か・ら、さっさとバスルームへ行けぇええぇぇえ!!」

 

……。

 

「はぁはぁはぁ……ようやくバスルームへ行ったわね……貴方視た?」

「……いや」

 

あのセイバーがレオタード姿になったあたりから男の欲求から何とか視線を逸らすことが出来たが、夫婦漫才(?)をしている2人の話を聞いていると脳内ではセイバーが何も着ていない状態で凛がわーわー、喚いているような光景が妄想として浮かび上がってしまう。

 

「……苦労してんだな」

「……この気持ちが分かっているような言葉ね」

「うちのサーヴァントも羞恥心が無くて、な」

「なるほどね。私は同性で大丈夫だけど貴方の場合は異性よね」

 

この子と変な所で共通点があった。お互いにサーヴァントの羞恥心の無さに苦労をかけられているようだ。

そして、先ほどの流れで俺の警戒心は薄れていき眼の前のマスターと普通に会話をしてしまった。ハッと我に返ったが戦う気は本当に無いらしく、先ほどのやり取りを視た後だと警戒しているのがバカらしくもなった。

 

「まあ、別にどうでもいい事だわ。それじゃ本題に入るわよ」

 

まあ、まともに凛という子と話が出来るようになったのもセイバーのおかげ(?)でもあるのでそこだけは感謝しよう。

 

「とりあえず、自己紹介しましょうか」

「ああ。そうだな。俺はガイ・テスタロッサ」

「私は遠坂凛」

 

俺たちは自己紹介に盛り付けをすること無く簡潔に済ませた。俺たちは敵同士。それぐらいでちょうど良いのだ。

 

テーブルを挟んでの会話。テーブルの上にはコーヒーと紅茶が置かれており先ほど入れたばかりなのか湯気が立ちほのかに苦味のあるコーヒー豆の匂いと甘みのある紅茶の匂いが入り混じる。

 

凛は居住スペースだからか座布団の上で両膝をおり両足を右側に出す横座りで寛ぐ座り方をして、紅茶を一口飲んだ。

 

……優雅だね。

 

そんな姿を見て思った一言が優雅だった。先ほどの夫婦漫才の時とは違い、落ち着いている時の姿は優雅そのモノだった。

 

俺もつられてコーヒーを一口飲む。砂糖なしで苦みが口に広がり、寝不足な脳には丁度良い眠気覚ましの刺激になる。それに美味い。お金が無いとか言いつつも上質な素材を買っているようだ。

 

凛がティーカップを専用皿の上に置き口を開いた。

 

「で、私が聞きたいのは貴方、何?」

「抽象的で言葉の範囲が広すぎて答えられん」

 

いきなり、何と言われてもそれに答えられる人物などそうはいない。

 

「貴方に会うたびに不思議な感覚や違和感を覚えるのよね。貴方、何か特別な力でもあるの?」

「特別な……ねぇ」

「何か心あたりがありそうね」

 

それに思い当たる節があるとすれば“魔術”だ。“魔術”を発動するたびに自分の中に違和感が存在していた。それは自分の肉体変化によるものだと昨日判別できたが未だに謎多い分野ではある。

 

「遠坂は魔術を扱えるのか?」

「……扱えるわ……私が感じている貴方のその不思議な感覚や違和感ってのは魔術なのかしら?」

 

俺の聞きたかったモノが真っ直ぐに返ってきた。

 

「ああ」

「なんて言う魔術なの?」

 

肘をテーブルに付けて手に顎を載せながらも遠坂の眼は真剣に俺を貫いてくる。興味津々なようだ。

 

「……」

 

俺はこれを話していいのか迷った。相手が俺と同じくらいの年の女の子だとしても聖杯戦争では敵同士なのだ。

 

オリヴィエにも言われたとうり戦争とは情報戦でもある。こちらの情報が敵に漏れるとそこの弱点を突かれてしまう。

 

情報は命よりも重いという話を聞いたことはあるが……強ち嘘じゃないんだよな。

 

「……予測思考。俺はそう呼んでいる」

「予測思考……」

 

だが、ここで情報を提供しなかったらこちらの状況は前に進まないと思い、カードを切ることにした。

 

「この魔術を展開すると妙に頭の中がすっきりとして入ってくる情報を瞬時に理解できるようになった。それに何パターンもの戦略をすぐに作り上げられる」

「だから予測思考ね……ふむ……」

 

簡単に説明すると凛は少し考える素振りを見せて口を開く。

 

「アトラス院の錬金術師が使っている“分割思考”の魔術派生かしらね……」

「分割思考?」

「ええ。思考中枢を仮想的に複数に分割して行う思考法よ。複数の思考を同時に処理できるって聞いたわね。貴方のも分野は違えど思考の派生と考えればいいかな」

「その思考は凄いな」

 

分割思考……例えば三つの計算式を置かれてそれを解くとする。それを同じ時間で同時に解けてしまうのが分割思考。同時に処理する。ただ単純に凄いと思えた。

 

なのはさんも分割思考な魔術を持っていたりして……な。

 

なのはさんと日常生活での出来事を思い出す。あっちで会話をしていても念話で俺との会話をしていた時があった。

 

「でも、それだけだと貴方の違和感は拭えないわね。他に何かあるのかしら?」

 

でも、そんな事は大した事もなさげな口調で横に置き話を進める。

 

「……黒い粒子」

「……え?」

 

これも魔術回路を展開させた時に出てくるヤツだ。少なくとも魔術と関連性があるのは間違いない。

 

「魔術回路を展開した時に体内から出てくる黒い粒子。名は無いよ。一応それを操れるし固める事も出来る」

「……」

 

凛は笑みを無くし鋭くした視線を俺に向けてくる。僅かながら雰囲気が固くなったようにも思える。俺はそれに気にしない様にして話を続ける。

 

「心臓を貫くイメージをすると魔術回路が展開できる。何故だかは知らないけどさ」

「魔術回路があってスイッチも既にできているわけね……ねぇ聞いてもいい?」

 

俺は稟の言葉に肯定の意味で頷く。

 

「キャスターとはどのような関係なの?」

「え?」

 

一瞬言葉に詰まった。いきなりキャスター……親父の事が話に出てきたからだ。言葉詰る俺を尻目に凛は話を続ける。しかし、その眼は相手を逃がすまいとする狩人のような威圧感が放たれてこの部屋に張り詰められた。

 

「キャスターも似たようなモノを持っていた。貴方とキャスターは似ているわ」

「……」

 

なんて答えよう……少なからずともセイバーとキャスターはあまり良好的では無かったハズだ。

 

そのマスターがキャスターとの関連性を解いだしている。下手な回答をしたらここで争う事もありえる。

 

それは避けたい。けど……。

 

「俺の親父だ。親父が俺に魔術回路をくれた」

「……お父様」

 

その真実は本当だと示すために俺は正直に答える。そうしないと親父との繋がりが出来ないような気がして。

 

そして凛はお父様と呟き、素直に俺の言葉に耳を傾けてくれ、放たれていた威圧感も緩んだ。

 

「結局、親父とは相容れぬ存在となってしまったけどな」

「お父様でも殺しあう必要があったの?」

「……知ってんだな。あの公民館での出来事を」

「あれだけ大きな結界を張り巡らされたらね。まあ、強力すぎて入ることが出来なかったけどね」

 

やはりあの公民館の結界は聖杯戦争参加者にとっては分かりやすい目印だったようだ。

 

「俺も親父と分かった時、殺し合いなんてしたくなかったさ。でも、親父はワザと俺に倒されるように計画していたんだ……自分は永劫の時を彷徨う事になるってのにな」

 

俺はテーブルの下でグッと拳を握る。親父と解り合いたかったけど今はそれは敵わない。この世界のどこかにも親父は居るが“現代”の親父に会うと俺が“死ぬ”という世界が決めた“因果律”が発生してしまう。

 

それを防ぐためにマスターとサーヴァントを同一人物にして何度も同じ時を繰り返してきたのだ。

 

「いいお父様ね」

「……ああ」

 

先ほどまでキャスターの事を懸念していた態度とは一変、本当に羨ましそうな表情で呟いていたので俺は同意した。

 

「俺からも質問いいか?」

「ええ。ごめんなさいね、私ばかり質問して」

「気にしないさ。で、だ……」

 

俺は一口コーヒーを飲んで喉を潤す。間を作るにも丁度良い動作だ。

 

「“魔術”って何?」

「……抽象的で言葉の範囲が広すぎて答えられないわ」

「むっ……」

 

先ほど俺が返した言葉がそっくり返ってきた。確かに魔術って何?は貴方って何?と同じランクの問いかけだ。言ってから気付いて凛の言葉に返せなかった。

 

「まあ、貴方は魔術では素人っぽいからそこからよね」

「ああ、すまん。魔術について教えてくれ」

「いいわ。基礎ぐらいしか教えてあげられないけど」

「大丈夫だ。しかし、いいのか。本来俺たちは敵同士だろ?こんなにお互いの情報を提供していいのか?」

「等価交換。貴方はここの世界の住人でしょ?私も“魔術”の基礎を教えるから貴方も私に“魔法”の基礎というのを教えなさい」

「……なるほどな。やはり遠坂はこの世界の外から来たって訳か」

「あら、言ってなかったかしら」

 

管理者も言っていた管理外第97世界の地球のとある土地で行われていた前回の聖杯戦争。それに凛もやはり参加していたようだ。

今の話で消化できなかった疑問は確信へと変わった。

 

そして、俺も凛も不透明な出来事があり、その鍵を握っているのがお互いに握ってある情報だ。

 

凛は妥協してある程度の情報を提供するのでこちらもそれ相応の情報を提供しろと言っているのだ。

 

その提案を俺はどうするか悩んだ。凛の出す情報は嘘かも知れない。

 

「私の提供する情報は信じていいかどうか悩んでいるわね?」

「まあ、な」

「私は魔法の情報が切実に欲しいわ。その為の必要な魔術の情報は提供する。嘘はつかない」

「……」

 

俺は凛の表情を改めて見る。その綺麗な容姿でジッと俺を見る。お互いに逸らす事は無かった。

 

けど、その嘘偽りのない真っ直ぐな瞳に真っ直ぐな言葉は俺の中で、この人物は嘘はつかないと確信できた。

 

「……いいよ。遠坂の言葉を信じる」

「信じてくれて嬉しいわ」

 

真面目な表情を崩して軟らかい笑みを浮かべてニッコリとする。

 

凛は黒い縁の丸い眼鏡をかけて魔術について語り始めた。

 

“魔術”とは魔力を用いて人為的に神秘・奇跡を再現する術の総称。神秘と奇跡を編み出す“魔法”を人為的に目指すために作られたもの。

“その現代の文明の力で再現できる奇跡かどうか”で魔術と魔法に区分されてしまう。

 

昔なら魔法と言われていたモノも現代だとその文明の力で奇跡を起こせる事が可能になっていたりするのでその区分は難しくなっている。

 

「“魔術”は“魔法”の神秘を人為的に行うために作られたモノと考えればいいのか?」

「ええ」

 

俺はその話を聞いて疑問がいくつか浮かんだ。

 

「この現代で使われている魔法……俺たち局員は魔導として扱っている。だが、この聖杯戦争で魔術に初めて触れることになったが、魔術が魔法や魔導より劣っているとは思えない。むしろ俺の方が追い詰められていた」

 

親父の魔術で使われた“世界の実在外(アウト・オブ・ザ・ワールド)”。あれは俺たち管理局が扱う魔導では到底敵う事が出来ないモノだった。

俺も魔術回路を開いた事により抵抗することが出来た。凛の話だと魔法>魔術の方程式だが、魔法<魔術の方程式の方がしっくりと来る。

 

「この世界の文明は随分と魔法に特化している。でも、ほとんど手付かずの魔力(マナ)が大気中にあるわ。貴方達の扱う魔法……まあ、魔導ね。それは魔力(マナ)を消費するって私達魔術師の考えなんだけどそれは少し違うようね」

「魔導はデバイスによって自分の中にあるリンカーコアから出てくる魔力を変換させてその力を魔導の原動力としている」

「……アーチャーから聞いたとうり、やはり外から使うわけじゃないのね。“概念”という概念は無さそうね」

「概念?」

 

凛から聞く魔術師視点からの話は半分ぐらいしか理解できない。これが魔導と魔術の観点の違いなのだろう。そして、アーチャーの単語が聞こえた時、凛とアーチャーのマスター、衛宮士朗はおそらく良友な関係であり、おそらく協力し合っているのかも知れない。

 

「“概念”は大気中にある魔力(マナ)と同じ意味なんだけどね。うん、少し理解した。やはり私の魔術からの観点の魔法の知識はこの世界では意味ないわね。でも……」

「何か疑問があるのか?」

 

凛が何かを懸念したようにグイッとテーブル越しから顔を近づけて俺を真っ直ぐに見つめてくる。その瞳には何か納得のいかない色がまじっているように見えた。

 

「ええ。貴方は魔導も魔術も扱っている。それで暴走しないのはおかしいと思うの。分を超えた魔術は身を滅ぼす。魔術だけでその分を超えなくても魔導を追加したら確実に許容範囲を超えて暴走すると考えているわ」

「……そうだな」

 

暴走。

 

その言葉は確かに心当たりがあった。魔術回路を展開した時に魔弾を作成しようとしたら激痛が体中に走った。

その時は暴走し始めたのだろう。

 

「暴走はしかけた。けど、それは同時に使わなければ暴走はしない事が分かった。どっちかを展開しているともう1つの方は使う事は出来ない」

「ふ~ん、なるほどね~。二つ発動していると術者の容量の限界を超えてしまい暴走が起きてしまうわけね」

「へぇ~、そう言う原理があるわけか」

「憶測だけどね」

 

クスッと笑う凛。その仕草は美少女が行うとドキッとする。俺は何とか平常心を保ち考える。

 

あの痛みは体の許容の限界を超えてしまい壊れるのを防ぐために脳が痛みを発したというわけだ。

二つの力は同時に使うと一人分の許容の限界を超えてしまうようだ。

 

「まあ、少しは魔導と言う魔法の理論が分かったわ」

「俺も少しは魔術の事をり……」

 

俺も理解したと言いかけて思考が止まり言葉に詰まった。

 

「凛よ、かなりいい湯浴みだったぞ。そなたも一緒に入れば良かったモノを」

「ちょ!!素っ裸のまま出てくんなっ!!」

 

先ほど風呂場に入って行ったセイバーが生まれたままの姿で首にタオルを下げ、ほのかに体から湯気を出して現れたからだ。

 

俺は視界をセイバーから瞬時に離す。

 

「む、まだ居たのか」

「あ、ああ。遠坂と少し話をしていた」

 

敵のサーヴァントなら注視して警戒するのだがこの状況ではまともに見ることが出来ない。それでもセイバーは俺の心境を無視して気楽な口調で話を続ける。

 

「しかし、敵同士だと言うのに話し合うと言うのもまた一興。うむ、余も参加しようではないか」

「アンタはまず服を着なさいっ!!」

「余はこのままでも構わぬが……仕方あるまい」

 

そう言いながらこちらに近づいてくるセイバー。

 

「ちょ、なんでこっち来るの!?」

「着替えはそなた達の後ろにあるのだ」

「私が取るから脱衣所に戻ってなさい!!」

「また戻るのも面倒くさいではないか……あっ」

「うわっ!!」

 

セイバーが少し間の抜けた声を発した。それと同時に何かに押し倒されるかのように俺は倒れた。

 

そちらに視野を向けていなかったので何が来たのか分からなかった。

 

「いててっ……んっ?」

「まったく、狭い部屋だから何かを踏んで倒れてしまったではないか」

 

俺は倒れて後頭部への痛みに耐えるために目を瞑っていたが、やたらとセイバーの声が近いので眼を開けてみると……。

 

「……っ!!」

 

俺は今の状況に絶句してしまった。

 

生まれたままの姿であるセイバーが俺を押し倒すかのように覆いかぶさっていたからだ。

 

視界にはその整った顔が目の前に来てこちらを見ている。その容姿端麗な顔をマジかで見て俺の心臓は脈を打つのが早くなる。

 

アルトリアと同じ容姿でスタイルもそのまま。いや、胸だけがアルトリアと違い大きい気がする。

 

そんな金髪美人が俺を押し倒すかのように倒れている。その金髪美人の胸が自分の身体に密着して、その弾力さが伝わってくる。

 

近すぎて見えはしないが見えない分、更に男の性欲を刺激させる。

 

「なんだ、余のことをじろじろ見て。むっ、お主。さては黄金劇場に招かれたいのか?よいぞ。たとえ敵でも美学の理が分かるものなら来るといい」

 

しかし、そんな状態でも目の前のセイバーは恥じらう事なく少し期待を持った表情を向けて笑みを溢して真っ直ぐに自分を見てくる。

 

こ、こんな状況……お、男してはマズイ。男の性欲がふつふつと下半身に……。

 

「いいかげんに退きなさいっ!!」

「むっ!?小娘かと思っていたマスターだが、意外にも力があるではないか!!」

 

こんな状況を見かねた凛はセイバーの両脇から腕を入れてセイバーを俺から離す。

 

「……っ」

 

そのおかげで感触だけ分かっていた胸が今、目の前にはっきりと形となって視界に入ってしまった。形が引き締まった美乳というに相応しい形。

 

そして、凛はそれに気付かないまま後ろからセイバーを両腕で羽交い締めにする。そして、俺を見る。

 

「まったくもう……ん?ガイ?どうした……の……」

 

主に見ている場所は俺の性欲で反応したテントのようになった下半身。それを見て、凛が少しだけ頬を赤くして視線を逸らす。

 

俺の反応した下半身を見てのその仕草は美少女がやるとグッとくる。それが更に反応し始めている下半身に……。

 

「ご、ごめん、俺はもう帰る!!」

「あ、ちょっと!!話はまだ終わってないわよ!!」

「この空気は耐えきれない!!」

 

凛の引き止める言葉を振り払って羞恥心に耐えきれずに俺は凄まじい勢いでこの部屋を出て行った。

 

帰る途中でも俺はしばらく前かがみ気味に走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――マンション

 

「はぁはぁはぁ……」

 

俺は五月中旬なこの暑い時期に照りつく熱を肌で感じて汗だくになりながらもマンション前まで走ってきて、今、息を整えていた。

 

途中から気付いた事だが、何も道中は走る必要はなかったのではないかと思った。

 

けど、あそこから一秒でも早く退散したかったからか心理的には家まで走るという安直な考えに何も疑問を持たず、ここまで走ってきてしまったのかもしれない。

 

男のあの現象を女性の前で見られるのは羞恥心のゲージがMAXを突破する勢いだ。

 

あそこから撤退したいという気持ちは抑えられないと思う。

 

「はぁはぁ……ふぅ……」

 

と、変な事を考えているうちに息も落ち着いてきた。

 

『マスター。メールです』

「ん?メール?」

 

落ち着いてきた所でプリムラからメールを受信したと知らせてきたので目の前にモニターを表示させるように指示する。

 

差出人………高町ヴィヴィオ

件名………アインハルトさんにつきまして

本文………こんにちは、ガイさん。ヴィヴィオです。実はガイさんに聞きたい事がるんです。今朝、学院でアインハルトさんに挨拶をしましたら、上の空な感じで少し様子がおかしかったんです。それでガイさんの話になったらアインハルトさんは急にその場から逃げるように私達から離れていきました。ガイさん、アインハルトさんと何かありましたか?

 

「……」

 

ヴィヴィオからのメールだ。アインハルトの様子がおかしくて俺の話になった途端に逃げ出してしまったという内容。

 

俺は昨日の夜のことを思い出す。アサシンの正体が未来のアインハルトで、そのアインハルトが俺の部隊を全滅させてしまった事。それが原因で現代のアインハルトに顔を合わせにくくなってしまった。アインハルトを見るたびに昨日のあの状況が蘇ってしまう。

 

「……どのように返すかな」

 

忙しくて返せないのようにしようかと思ったけど、ヴィヴィオ達はアインハルトのことを心配しているようだし返事をしようとメールを書き出しながらマンションの階段を上っていく。

 

件名………Re:アインハルトについて

本文………こんにちは、ヴィヴィ。アインの事だが、心配はいらないよ。俺とアインとの間でちょっとした揉め事があってギクシャクしちゃってるだけだ。今日俺がアインに謝るy……。

 

「……」

 

そして、自分の部屋の前に着いた時、ここまで書いたメールをとりあえず下書き保存してモニターを閉じた。

 

「会った所でマトモに顔を見れないよな……」

 

最後の一文が心に引っ掛かり送るのを取りやめた。ヴィヴィオ達には申し訳ないけどメールはもう少ししてから送ろう。嘘をついてまで誤魔化したくはない。

 

「ただいま」

 

そして、ただいまと言いながら自分の部屋のドアを開ける。中から返事は無い。まだオリヴィエは寝ているのだろう。今の時間はお昼前。今朝方まで聖杯戦争の事について話し合っていたから仕方ないと言えば仕方ない。

 

お帰りって中からオリヴィエが言ってくれるとちょっと期待しちゃったけどね……。

 

「やっぱり寝てるね~」

 

エアコンで涼しい気温を保っている部屋に上がってベッドを見ると、薄いタオルケットを掛けて静かに寝息を立てているオリヴィエを見つけた。

 

おそらく俺のパジャマを着ていると思っていたが、どう見てもタオルケットからはみ出ている肩が肌色なのでおそらく下着姿。

 

「……」

 

先ほど男の性欲があったからか、今のオリヴィエが非常に魅惑的な姿に見えてきてしまう。ここで込み上げてくる欲求に従ったらとか考えてしまい、思わず無意識に喉を鳴らしてしまった。

 

『マスター。間違った事はしないように』

「……ああ。少し余裕を持っていなかった」

 

プリムラに釘を刺され我に帰る。

流石にそんな事は出来ない。オリヴィエにはクラウスという伴侶がいるし、そんな事をしてオリヴィエからの信頼を失うわけにはいかない。

何度も助けられたのにそれを仇で返すような事になる。

 

「……眠るか」

 

俺は自分を何とか納得してソファーに横たわり眼を瞑る。流石に徹夜した体だと眼を瞑った瞬間から眠気が襲いかかってくる。

 

昨日から色々ありすぎて体が追いついていないのがわかる。部隊の全滅。アサシンの正体。埋葬式の参加。魔術の話など。一番大きかった出来事は部隊の全滅だ。その原因となったのはアサシンである……アインハルト……。

 

「……ガ……イ……」

 

落ちる瞬間に俺を呼ぶ声がしたような気がしたが、眠気に勝てずそのまま睡魔に身を任せて俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ガイ」

 

眼を覚ますと人の気配がしたのでベッドから起き上がるとガイがソファーで眼を瞑って眠っていた。

 

「お疲れ様です、ガイ」

 

私は下着姿のままベッドから降りて私の使っていたタオルケットをガイに掛ける。ガイは私と徹夜で聖杯戦争の話をして朝方、寝ずに埋葬式に参加するために行くために部屋を出て行った。相当疲れがたまっているのだろう。

 

「……」

 

その聖杯戦争を思い出す。

 

アサシンは未来のアインハルト。そのアインハルトがガイの部隊を壊滅に追いやったと聞いた。そのおかげでガイは現代のアインハルトをマトモに見ることが出来なくなった。昨日アインハルトと会った時のギクシャクしていたのはそれが原因だったと知った。

 

「ガイ……貴方はこの状況をどのように突破しますか?」

 

眠っているので返事は無いがその答えをどのように出すのか気になってしまった。

 

ガイとアインハルトは出来れば良い関係で居てもらいたい。更にはアインハルトは私にではなくガイに気持ちを向けてほしい。それが今の私の気持ちだ。

今のままでは私はとても心配だ。

 

それでもガイなら何とかしてくれる。そう思ってしまう。

 

「信じていますよ、ガイ」

 

私は笑みを溢してガイの頭に手を乗せて軽く撫でた。

 

ガイならこの状況も突破し聖杯戦争も勝ち抜いてくれる。それも信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――夕方 中等科

 

「あまり無理なさらないでね」

「はい、ご迷惑をおかけしました」

 

私は保健室の先生にお礼をして、保健室から出た。

先生の話だと疲労の溜まりすぎらしく気づいたら今の時間まで保健室のベッドで眠ってしまった。

 

昼休みに初等科の人が心配してきたと言っていましたが多分ヴィヴィオさんたちでしょうね。後でお礼をしませんと。

 

お陰様で疲れも取れて朝の気だるさは無くなって体はだいぶ軽くなった。

 

今日の授業分が遅れてしまいました。これも後で取り戻さないといけませんね。

 

そう考えつつ、校舎を抜けヒルデ魔法学院を後にする。

 

夕日のオレンジの光が道路やビルを鮮やかに照らして今日一日の終わりを告げるような人の心をホッとさせる色に見える。

 

「あっ……」

 

そこに、その色に近い薄い赤髪をしている男性と会った。

 

「衛宮……さんでしたっけ?」

「ああ、アインハルトか」

 

ちゃんとした自己紹介はしていないがお互いに名前だけは分かっていた。オリヴィエが言っていた。確か衛宮士郎。

 

この前知り合ったので衛宮さんは笑みを溢す。その優しげな表情は話し相手を落ち着かせてくれる。

 

「アインハルトは学校が終わってこれから帰りか?」

「はい。帰りにスポーツジムで軽くトレーニングをしていきます」

「向上心があっていいな」

「いえ、それほどでも。衛宮さんはこれからどちらに?」

 

私の質問に衛宮さんは少し困った表情をして視線を逸らす。

 

「え~と、少しこの学院に用事があってな」

「あ、よろしければご案内しましょうか?」

「いや、大丈夫。気持ちだけ受け取っとくよ。それじゃまたな」

 

衛宮さんは困った表情をしつつもやんわりと断って、衛宮さんは学院内へと入って行った。

 

ご用事とは何でしょうか?

 

そう思いつつも日課であるトレーニングをするためにスポーツジムへと向かった。

 

ガイさんの事を考え過ぎたこともあるので一度リフレッシュするにも必要な時間かも知れません。気を紛らわせるためにも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――夜 St.ヒルデ魔法学院

 

『まさか帰宅時間を過ぎている時にアインハルトちゃんに会うとは思わなかったね』

『まあ、何か学院で用事があったんだろう』

 

ここに来た時にアインハルトに会った事をアーチャーと念話をしていた。夕方ごろに学院に潜入して、誰も居なくなった夜にグラウンドに出た。

そこには対峙する相手が立っているからだ。

 

「きゃはは、少しカッコいいお兄さんだけど綺麗に殺してあげるねん♪」

 

残忍な声に聞こえたが見た目は身長160センチぐらいでブラウン色でセミショートという小柄な身体。瞳は薄汚れているような黄色で残忍な笑みとぴったり似合っていた。

 

服装はピンクと白のアオザイを着ている。顔も整っているので残忍な笑みが無ければそのアオザイはその少女を引き立たせて美少女になるアイテムになっただろう。

 

バーサーカーのマスターだ。

 

俺はこのマスターに魔術の伝言で呼ばれてこの時間帯にここを訪れた。

 

この子も魔術を扱えることが出来るようだ。

 

「君みたいな少女がなんでこの戦いに参加したんだ?」

「さてね、それを教えるわけにはいかないでしょ」

「っ!!」

 

その少女の隣に実体化した白色の全身プレートアーマーの甲冑姿の人物、バーサーカーが立っていた。

 

話し合う気は無いって事かっ!!

 

俺も瞬時に隣にアーチャーを実体化させる。そのアーチャーはバーサーカーを凝視する。

 

「……何の特徴も見つけられないね」

「未来から来たアーチャーでも分からないか」

「うん、私はアサシンとガイ君しか分からないの。すいませんマスター」

「いや大丈夫だ。バーサーカーはどの聖杯戦争でも難敵さ」

 

俺もバーサーカーを見据える。何の特徴的なモノもなく外見からでは何もわからない。俺は夫婦剣をトレースさせ構える。アーチャーも盾三枚を前に突き出して構える。

 

「きゃはは、バーサーカーやっちまいな」

「Aaa……Aaaaaaaaaaa!!」

 

そして、何の呼び動作もなくバーサーカーは突進してくる。それに合わせるようにアーチャーの盾が突進して激しくぶつかった。

 

夜の学院のグラウンドで聖杯戦争は静かに、そして激しくぶつかり始めた。




今月はコミケがあるからネタを探しにまた行きます。

仕事後に徹夜で並ぶ……熱中症にならないといいけどw

今回はvividの本もそれなりにあるのでいいかなと。

何か一言ありますと嬉しいです。

では、また(・ω・)/
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