魔法少女リリカルなのはvivid~過去と未来と現代の交差~   作:ガイル

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アインハルトって一人暮らしだと勝手に予測している。

だって、親が出てこないんだものw

だが、漫画の中の一コマに一軒家が写っていたようなw

気のせいかな……。

最後のほうは二人称が少し増えます。

誰が主観なのかを確認して読むと良いかと。

では、3話目はいります。


三話“過去と現代の交差”

 

 ―――???

 

「……ここは?」

 

 俺は荒野に立っていた。辺り一面が焼け野原で近くにあった建物には空いて破壊され黒い煙を出しながら燃えている。その建物は少し原形を留めていた。それは今の建造物では無いのが分かる。

 そして、燃えた建物の煙と炎で空は赤黒く、焦げくさい臭いが……。

 

「……しない?」

 

 俺は今の状況に困惑した。これほど近くで燃えているというのに焦げ臭さはおろか暑さも感じない。ここはいったい何処なのだろうか。

 昨日はオリヴィエと買い物をして疲れて直ぐに寝てしまった。こんな荒野に立った記憶など無い。

 ともかく今の状況が分からないので判断材料を探すべく周りを見渡して歩きだした。どこまで見ても一面の焼け野原。建物はミッドチルダにあるビルとは程遠く電気に頼らない昔の時代の面影を残すような構造物ばかりだ。

 

 ……戦争の後……か?

 

 考え事をしていたが視界に人物が入り込んだ。2人いた。1人は見ただけで分かった。オリヴィエだ。

 初めて会った時の青と白を強調している騎士甲冑を着けているが所々ボロボロになっている。

 そして、もう1人は膝をついて左腕を怪我しているのか右手で掴んでオリヴィエを見上げていた。男性だ。碧銀の髪のショートヘアで左眼が薄蒼で右眼が紫の虹彩異色。

 オリヴィエみたいな騎士甲冑は付けてなく、羽織る形の服装を着て、それをベルトで縛った格好だ。たぶんマントも付いていたのだが焼け焦げて無くなったのだろう。

 それにオリヴィエと同じく所々ボロボロだった。

 

「オリヴィエ!!」

 

 俺は彼女の名前を叫んだ。

 しかし、聞こえた素振りを見せない。

 

 ……どういう事だ?2人とも俺が近くに居て大きな声を出しているのに気付いていない。

 

 俺の困惑を余所にオリヴィエの口が静かに動き出した。

 

「クラウス、今まで本当にありがとう。だけど私は行きます」

 

 オリヴィエは優しい笑みをクラウスという人物に向ける。クラウスという人物はその笑顔に悲痛の表情を浮かべる。

 

 これは……夢?そして、この光景はオリヴィエの記憶……なのか?

 

 俺はとある仮説を立てる。夢は記憶の整理を行うために見る現象。オリヴィエとは少なからず魔力で繋がっているはずだ。

 

 その影響でオリヴィエの記憶に飛んだ……?

 

「待ってくださいオリヴィエ!!勝負はまだ……!!」

 

 俺が根拠のない考えをしていても話は進んでいく。俺はひとまず考える事をやめて2人の話に耳を傾けることにした。オリヴィエはクラウスの言葉途中で止め、目を瞑って首を横に振り、右手を自分の胸に当てる。

 

「あなたはどうか良き王となって国民とともに生きて下さい。この大地がもう戦で枯れ果てぬよう青空と綺麗な花がいつでも見られるようなそんな国を……」

 

 オリヴィエは目を開けて、踵を翻し歩きだした。

 

「待ってください!!まだです!!ゆりかごには僕が!!」

 

 クラウスが必死に叫ぶがオリヴィエの足は止まらない。代わりに右手を上げてそれに答えた。

 

「オリヴィエ!!僕は……!!」

 

 クラウスの最後の方の言葉が聞こえなくなった。この世界が一変して暗黒の世界となったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――マンション

 

「んっ……」

 

 俺は目を開けた。窓からの朝日の光が俺の体に当たり寝汗をかいていたようだ。ベッドは光が当たらない所に置いておいたはずだが、なぜ光が体に当たるのだろうか。

 それに、いつも起きる時に見る天井の蛍光灯が微妙にズレている。

 

「……ああ、そっか」

 

 だんだんと脳が活性化していき昨日の出来事が蘇ってくる。ベッドにオリヴィエを譲って俺はソファーで寝たのだ。

 俺はソファーから身を起こした。いつものベッドに寝ずに慣れていないソファーで眠ったせいか体の節々が痛む。たまにソファーで寝ることがあったが寝るように設計してたわけでは無いので少し疲労感が残っているのがわかる。

 俺は腕をクロスしたりして、筋肉の緊張を解す。何か夢を見ていた気がするが思い出せない。

 

「……何の夢を見てたっけ?」

 

 夢というのは覚えていない方が疲れはとれると聞く。眠っている間にも脳が活性化してしまっては疲れが完全にとれるのは難しいらしい。

 しかし、夢を見た覚えはあるがそれを思い出せないとなると心の中にモヤモヤ感が残ってスッキリしない。俺はそのモヤモヤ感を取り除くために思い出す努力をするがなかなか思い出す事が出来ない。

 ふと、ベッドを方を見る。そこにはオリヴィエが毛布を被り髪を解いて規則正しく寝息を立てて眠っていた。

 

「あっ……」

 

 そうだ、思い出した。

 

 オリヴィエを見ていると脳裏に浮かんで来たのは辺り一面の焼け野原の光景。その荒野に俺は立っていた。

 

「あれは夢だったのか……」

 

 思い出せないモヤモヤ感は晴れることが出来た。

 しかし、別の疑問が浮かび上がった。夢の中で2人が話した言葉を思い出す。オリヴィエは確かこう言っていた。

 

“この大地がもう戦で枯れ果てぬよう青空と綺麗な花がいつでも見られるようなそんな国”

 

 これがオリヴィエの願望なのだろうか?しかし、俺の“魔法で誰もが不幸にならない世界”の願望に類似したとは思えない。オリヴィエにはもっと違う願望があるのか?

 

「ん、んん……」

 

 俺が夢の考え事をしているとオリヴィエの規則正しい寝息が乱れたのが聞こえた。俺は考えていた事を中断してオリヴィエを見た。背が低いからか幼さが伺える寝顔だ。

 

 多分俺より年上だとは思うけど。

 

「まあ、オリヴィエにも叶えたい願望があるんだろうな。それは無理して聞く事じゃないか」

 

 俺は結論してソファーから起き上がって机の上にあるプリムラを取りに行こうと動き出す。

 

「んん……」

 

 オリヴィエは寝苦しいのか寝返りを打った。

 

「あっ……」

 

 そこで全ての思考が停止した。寝返りでオリヴィエをかけていた1枚だけの毛布がベッドから落ちたのだ。それだけなら思考は停止しないだろう。

 しかし、問題なのは……。

 

「なんで、下着姿なんだ……」

 

 オリヴィエは白い下着姿だった。下着にはレースの飾りが付いており、明るい性格のオリヴィエに白はピッタシだ。昨日オリヴィエが見せてきたあの白い下着だ。相当な値段のモノなのだろう。

 俺はダメだと思いつつも下着に釘づけになる。

 

『マスター、視姦はよろしくないですよ』

「……はっ!!」

 

 俺は取りに言うこうとしていたプリムラから痛い言葉を貰い我に帰った。止まってしまった思考が動き出す。

 昨夜、俺はオリヴィエよりも先に寝ていた。昨日はいろいろあったからすぐに眠気が来たのが分かった。

 そして、記憶が途切れる前にオリヴィエを見ると服を自分の体に合わせて鏡の前で見比べていた。

 

 あの後オリヴィエがどうしていたかは知らないが、まさかこんなおいし……こんな格好をして寝ていたとは。

 

「と、とりあえず毛布をかけ直さないとな……」

 

 俺はなるべくオリヴィエを見ないように体に触れない様にそっと毛布をかけ直す。俺にはこの刺激が強すぎる。

 そして、ベッドから離れ机の前に移動する。

 

「それにプリムラ。あれは視姦じゃない」

『視姦……視姦する人間自体は相手に直接手は出さず、言葉などで命令して相手を辱めて性的興奮を煽る。今の行為と類似していると思いませんか?』

「まったく類似していないよ!!」

『“相手に直接手は出さず”の所はあっていませんか?』

「……」

 

 どこでそんな言葉をインプットしたのだろうか。少なくとも俺の記憶の中には無い。後で技術者に問いかける必要があるようだ。

 

「んんっ……」

「あっ……」

 

 またオリヴィエの寝苦しい寝息を立てた。俺の怒鳴った声が五月蠅かったからだろうか。

 そして、背後でゆっくりと起き上がる気配を感じた。俺は恐る恐る振り向く。

 

「ん、おはよう……ございましゅ……ましゅたぁああぁ……」

「っ!!」

 

 少し寝ぼけている表情のオリヴィエ。上半身を起こしているため、毛布のかかっていない場所……騎士甲冑を着込んでいるとは思えない程の体のラインが細く白い肌が括れから見え、白いブラを付けているだけの状態だった。

 俺は急いで机の方へ向きなおった。

 

「な、なあ、オリヴィエ。寝る時はその……下着だけで寝ていたのか?」

「え、ええ。そうですよ~」

「オ、オリヴィエには羞恥心ってのは無いのか?」

「え?羞恥心ですか……あ~、なるほど。マスターは私の今の姿に欲情してしまったのですか~?」

 

 背中越しからオリヴィエの間の抜けた声がする。まだ、脳が活性化していないのだろう。恥ずかしいことも平気で言ってくる。

 いや、たぶん脳が活性化しても恥ずかしい事は平気で言ってきそうだ。昨日の買い物のように自分が買う下着を平気で異性の俺に見せてくるのだから。

 

「と、とりあえず、俺は朝飯作るから!!オ、オリヴィエ。ちゃんと着替えろよ」

 

 俺は恥ずかしくなって、キッチンへ逃げるように駆け込んだ。

 

「んん、いい天気ですねマスター」

 

 そんな俺の心境も知らず、視界の端にはオリヴィエが腕を思いっきり伸ばしたのが分かった。寝ぼけていた脳も少しずづ覚醒はしているのか呂律がしっかりと回っている。

 

『刺激的でいいのでは?』

「少し黙っててくれ」

 

 俺はオリヴィエが着替え終わるまでキッチンから出る事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の朝食は食パンにスクランブルエッグ、ウインナーとサラダの盛り合わせにスープ。

 簡単に作れるので朝はこの献立が多い。

 

「食欲がそそられますね」

 

 オリヴィエは半袖の白いブラウスに黒いロングスカートに着替えていた。

 細かい所に装飾が付いており、元が良いからかオリヴィエ自身の魅力を引き立たせる服だ。流石は王族と言うべきか、服のセンスが素人の俺でもわかる。

 

「いただきます」

「いただきます」

 

 俺らは食事をとり始めた。オリヴィエがフォークにスクランブルエッグを乗せて口に運ぶ。

 

「はむ……美味しいです。マスター。やはり料理が得意なのですね」

「……そりゃあ、どうも」

 

 一口食べて、頬笑みをこちらに向けてくる。オリヴィエは感情的だ。昨日一日、オリヴィエと話していて分かった。

 だから表情がコロコロ変わるのだ。見ていて飽きることはない。

 そして、俺は昨日から言われている言葉を直そうかと思ってオリヴィエに口を開く。

 

「あ~、流石にマスターと言うのはやめないか?俺はオリヴィエに対してマスター的な事は何もしていないし」

「そうですか?」

 

 オリヴィエが小さな口でパンを一口食べながら、微笑みを浮かべ首を傾げる。

 

「まあ、マスターがそう言うのでしたら、名称を変えて言ってもかまいません。それにマスターも私の事はオリヴィエと言うのは止めておいた方がよろしいかと」

「え?なんで?」

 

 マスターの名称を変えてくれと言ったのだが、オリヴィエと言う名称も変えた方が良いとオリヴィエが言ってきた。

 

「戦争と言うのは情報戦でもあるのです。相手の情報を知ることでそこから弱点などを調べてそこを突く。戦争では当たり前のことです。ですので、私の事をオリヴィエと言い続けるのもよろしくないです。私がオリヴィエとバレてしまいますので。何処から情報が漏れるか分かりません」

「……なるほどな」

 

 戦う時にオリヴィエと分かっていたら対策を取られてしまう。オリヴィエは武技において最強を誇っていた。それなら、武技での戦いを仕掛けず遠距離からの戦いをした方がいい。

 俺にはオリヴィエの弱点は分からないが知っている奴ならそこを狙ってくるのだろう。オリヴィエの言いたい事は分かった。

 

「んじゃ、名称を互いに変えるか。オリヴィエは俺の事を普通にガイやテスタロッサと言っても構わないだろ?」

「そうですね。戦争への影響はないかと。では、ガイと呼ばせてもらいます」

 

 オリヴィエが俺に言う名称は決まった。後は俺がオリヴィエの事をなんて言うかだ。

 ファイターでいいのではないかと思ったが、買い物の時のように街に出かけることもあるので街中で女性の事をファイターと言うのはでは何か変だ。

 ふと、俺は夢で見たあの焼け野原の光景を思い出した。

 

「リコリス……」

「え?今何と言いましたか?」

 

 俺は小さく呟いた。リコリスの花言葉には悲しき思い出と言うのがある。あの焼け野原は悲しき思い出にピッタシだ。だが……。

 

「今のは無し」

 

 オリヴィエに対して不謹慎だ。オリヴィエはそんなに気にもしないと思うが。

 

 俺は再び考えた。

 

「……フリージアってのはどうだ?」

「フリージア……花の名前ですか?」

「ああ。花言葉は純潔と言われているからオリヴィエにピッタシかなと思って」

 

 フリージア、とオリヴィエは短く言って、目線を下げて少し考え込む。オリヴィエは純粋というか純情すぎるというかともかく汚れが無い感じ女性と思える……度が過ぎて羞恥心無いけど。

 そして、オリヴィエは視線を上げて俺を見る。

 

「フリージア……いい名前です」

 

 オリヴィエは俺の事を見て微笑んだ。気にいってくれたようだ。俺も笑みを返す。

 

「んじゃ、苗字も少し変えてフリージア・ブレヒトでいいか?」

「はい、構いません」

「なら……フリー、よろしくな」

「はい、ガイ」

 

 俺が省略した名前に笑顔で返事をして、俺たちは残りの朝食を食べ終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は食事の後片づけに洗濯物を干し終えて、798航空隊に行く支度を終えて靴を履いていた。

 オリヴィエの洗濯物はまだないので俺がやったが今後は話し合う必要がある。多分、オリヴィエに洗濯を任せるしかないだろう。俺がオリヴィエの下着を洗うのは気が引ける……というか、いつまで理性が持つか分からない。

 オリヴィエは少しズレている所はあるが美人であることには間違いない。その美人の履いていた下着を洗濯するのは……。

 

「……」

 

 俺は男の本能について考えいたがそれは強制的に終わりにして靴を履き終えて立ちあがる。右手には昨日買った黒い指なし手袋をつけた。

 これで手の紋章が人前に出る事はない。

 

「んじゃ、798航空隊に行ってくるから。お昼ご飯はラップしてある皿が冷蔵庫に入っているからレンジでチンしていつでも食べな。家から出てもいいけど、その場合は予備のカギでドアを閉めて行けよ」

「はい、わかりました。あ、それとガイ。歴史の本などはありませんか?」

「歴史?」

「ええ、私が戦場を駆け抜けていた頃の資料があれば少し読んでみたいと思いまして」

 

 確かに自分の刻んだ歴史に興味を示すのは分かる気がする。アルバムを捲るような感じだろう……それがいい思い出かは別として。

 俺は何処にしまったか思い出す。

 

「ああ、一番下の本棚に何冊かある。ベルカ諸王時代の物はあったかはちょっと記憶にないが」

「いえ、あるだけでも十分です。もし、私の時代の本が無ければ後で歴史の本を持って来てもらってもよろしいですか?」

 

 よほど自分の歴史に興味があるのだろう。少し積極的だ。俺はその気持ちに応えるべく肯定する。

 

「ああ、知人に本に詳しい奴がいる。そいつに頼むから大丈夫だと思う」

 

 俺は本に詳しいヴィヴィオを思い浮かべた。オリヴィエに頼まれたモノをヴィヴィオに調べてもらう。

 

 何ともおかしな光景だ。王族であるオリヴィエが一般人のヴィヴィオにお願いする。

 

 同じ遺伝子を持っている2人のそんな光景を思い浮かべて俺は小さく笑った。

 

「聖杯戦争はまだ始まっていませんが気をつけてくださいね、ガイ」

 

 俺はああ、と言ってドアを開けた。今から行っても十分に間に合う時間だ。

 今日は少し早めに行って、お金を下ろさなければならない。昨日は思わぬ出費が出てきて所持金が空だ。

 

 まさか、今月の生活費が無くなるとは思わなかった。

 

 今の月も中旬。後半分の生活費が空だと何もできない。それに人が一人増えたので食費もかさむし光熱費も上がるのは間違いない。それを踏まえて下ろす金額は俺一人分の生活費では無くオリヴィエの生活費の分も下ろさねばらない。

 出費は増えていくばかりだが心の中ではなぜか喜びの気持ちがあふれかえっていた。

 

 ……1人暮らしてからは心のどこかで人肌が恋しかったのかも知れないな。プリムラが居てくれたけどやっぱり生身の人間だと温もりが違う……魔力で出来た仮の肉体であるオリヴィエに生身というのも変だけど。

 

 俺はドアを閉めて空を見上げた。雲は少しあるぐらいだが晴れだ。洗濯物を干すのにもちょうど良い。

 

 今日はよく乾きそうだ。

 

 気分も軽いので、さあ張りきっていくかと心の中で思っていると隣からドアを開く音がした。

 そこから現れたのは碧銀の髪を特徴的なツインテールに結い虹彩異色で左眼が薄蒼で右眼が紫、左の大きな赤いリボンが印象的な少女、アインハルトだった。

 

「よう、アイン。おはよう」

「あ、ガ、ガイさん……お、おはようございます」

 

 アインハルトは俺を見た時、一瞬戸惑った表情を見せた気がした。

 しかし、俺は特に気には止めず会話を続けた。

 

「これから学園か?」

「は、はい」

 

 アインハルトの服はSt.ヒルデ魔法学院の中等科の制服だ。首周りに赤いリボンを付けて白い半そでのYシャツに胸近くまである緑のロングスカート。

 ヴィヴィオ達も同じ学園に行っているが、ヴィヴィオ達は初等科。制服がまた違う。

 

「あ、あの、ガイさん!!」

 

 控えめな性格のアインハルトが声を張って俺の名前を呼んだ。表情は何か申し訳なさそうに見えるが。

 

「ん?なんだ?」

「あ、あの、その、昨日、お、お怪我とかしませんでしたか?」

「え?怪我?」

 

 いきなり何を言っているのだろうか?昨日はアインハルトと出会った記憶はない。なのに何故怪我の心配をするのだろうか?

 

「ん、ああ。昨日は特に怪我はしてないけど」

「そ、そうですか……」

 

 アインハルトはホッと一息ついて、いつものクールな表情に戻った。

 

「……?まあいいや。俺もこれから仕事に行くしそこまで一緒に行くか?」

「は、はい。よろしくお願いします」

 

 アインハルトはぺこりと頭を下げる。実によく出来ている子だ。

 俺はそう思っている。ちょっと内気な性格でもあるが基本的にいい子だ。アインハルトは俺の隣の部屋に住んでいる女の子。

 隣に住んでいると言う事なのでちょくちょく話をするし、アドレスも交換してあるのでたまにメールもする。理由は知らないがアインハルトも一人暮らしをしている。そこはプライベートに関わると思うので無理して聞くべきじゃないと思っている。

 俺たちは歩きだした。

 

「学園は楽しいか?」

「はい、勉強する内容も今後の経験になっていきますので。この学園に満足しています」

「ふっ、そうか」

 

 控え目に話すアインハルト。その姿を見ているのも面白いけど……。

 

「アインはもうちょっと自分を出すといいぞ」

 

 俺はそんなアインハルトの頭手を置いて撫でながら言った。アインハルトは控えめというか冷静沈着だ。もう少し自分を出していった方がいいと思う。

 頭に手を乗っけたからか、アインハルトの体が一瞬ビクッと震えた。

 

「あ、あの……」

 

 アインハルトは恥ずかしそうな表情で俺の事を見上げる。この状況をどうすればいいか分からない様子だ。

 それを見ているとなんか面白い。

 

「ま、アインの性格だし俺が云々言う立場じゃないか」

 

 そう言って、頭に乗っけた手を離す。アインハルトは頬を少し赤くして俺が手を乗せた場所に自分の手を当てる。

 

「ガイさんは私の事を子供扱いしすぎです……」

 

 むう、と言いながら俺に抗議してくる。

 

「俺より年下だし当たり前だろ。たしか12だったよな?」

「それはそうですけど……」

 

 俺の正論になんて答えたらいいか分からなそうなアインハルト。様々な表情を変えて戸惑うアインハルトを見ると面白くて退屈しない。

 隣どうしで半年近くの付き合いなのに退屈しないというのも何か変だが、特に深くは考えていない。

 

 アインは控え目の妹的な感じなんだよな。

 

「とっ、俺はこっちだ」

 

 話をしているといつの間にか航空隊へ行くルートと学園へ行くルートへの分かれ道に指しかかっていた。

 

「まだ話は終わっていませんよ」

「それはまた後でな。メールでも話をしてやるさ。じゃ、行ってらっしゃい」

「……行ってきます」

 

 アインハルトが抗議をしてくるが、俺が送り言葉を送るとアインハルトはしぶしぶ返し言葉を返して頭を一回下げて踵を翻して学園への道を歩き出した。アインハルトもヴィヴィオ達と同じでいい子だ。

 しかし、半年近く会ってはいるが笑顔を一度も見たことが無い。いつか、アインハルトの笑顔が見れる日が来るのだろうか。

 

『マスター、メールです』

 

 考え事をしながらアインハルトとは違う道を進み始めたところでプリムラからメールが届く。

 俺は、開いてくれと命令した。目の前にモニターが現れる。

 

差出人………高町ヴィヴィオ

件名………Re:プレゼント

本文………おはようございます。プレゼントのブレスレッドを気に入って下さいましてありがとうございます!!送った私も嬉しいです!!で、あのブレスレッドの詳細ですが聖王教会のカリムさんから頂きました。私の複製母体である“聖王女”オリヴィエ・ゼーゲブレヒトの付けていた物らしいです。遺伝子情報などの血痕などは付いていないという事なので、私が持っていた方が良いと言われて渡されましたが、ガイさんに付けていてもらった方が私より似合うと思いまして渡しました。こんな横流しのプレゼントだったので喜んでくれるか不安でしたが喜んでくれてとても嬉しかったです!!

 

「……やはり、オリヴィエの聖遺物か」

 

 あのブレスレッドはオリヴィエが所持していた物であると。それなら、オリヴィエが言っていた召喚の呼び水になるには十分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――798航空隊 練習場

 

 俺は仕事前にお金をおろして隊舎に入り、今日も管理局航空戦技教導隊のなのはさんの戦技訓練が行われるので練習場に移動した。

 今回はヴィータ教導官も指導に当たるようだ。ヴィータ教導官は見た目がヴィヴィオと同じぐらいの背丈だが、幼げさは残っておらず、蒼い瞳で鋭い目つきが印象的で紅い髪を三つ編みにしている。

 

「よし、前回、あたしは用事があって抜けて高町一等空尉だけで指導をしていたが今回はあたしも加わる。テメエら、気合い入れて行けよ!!」

「「「はい!!よろしくお願いします!!」」」

 

 ヴィータ教導官も居ると隊員たちも気合が入る。ヴィータ教導官の訓練メニューは厳しい。弱音を吐いている暇があれば訓練1つでもやって力をつけろと言う。

 スパルタ教官としても有名だ。

 

「うん、それではまずは……」

 

 今日はなのはさんとヴィータ教導官の2人で訓練が行われるのだ。厳しいトレーニングになる事は必然だろう。

 しかし、なのはさんの指導もウマいことながら、ヴィータ教導官も厳しいながらも教え方が上手で部隊の1人1人のケアもしっかりと行ってくれる。

 オーバロードさせないように怪我させないようにと訓練中は細心の注意をはらっているのが訓練されている側でもわかる。

 なのはさん曰く。

 

『ヴィータちゃんは教導官に向いているんだけど、本人が気づいていなくてね、無理やりに戦技教導隊に入隊させたの。最初は嫌がっていたけど、少しずつ教えていくことの楽しさを覚えてね。今では立派な教導官だよ。人をしっかりと育て上げる。たぶん私よりも教え方がウマいかもね』

 

 と、にっこりと笑って語っていた。

 確かにヴィータ教導官なら安心して訓練を受けられる。なのはさんも例外ではないが、ヴィータ教導官の方が教え方はウマいのは確かだ。

 

「おい、ガイ。今日はその軟弱な精神を鍛え直してやるから本気でこい」

 

 ……口は悪いけどな。

 

 訓練初日になのはさんとヴィータ教導官が部隊全員と模擬戦を行い、俺が最後の1人になって、2人のプロテクションに一太刀を与えた。それ以降、ヴィータ教導官はこの部隊に来るたびに俺に挑発するような発言をしてくる。

 だから、俺の返す言葉はいつも1つ。

 

「お手柔らかにお願いします」

「はっ、お手柔らかにやるかよ」

 

 いつもの口癖を返すだけだ。いつも言っているのでヴィータ教導官もニヤリと笑みを溢してハンマーを担ぐ。

 

『ガイ君がこの部隊の中で一番伸びる子だから、あんなに構っているんだと思うよ。私もガイ君が一番伸びると思ってるし』

 

 と、なのはさんは言っていた。

 

 まあ、現実はなのはさんとヴィータ教導官の魔弾を避けるので精一杯ですけど。初日に一太刀入れれた事が奇跡に等しい。

 そして、厳しい訓練は開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――798航空隊 校舎

 

 お昼休み。

 俺はいつもの日の当たるベンチに座って、紙コップに入ったコーヒーを飲んで一息ついていた。

 

「いてて……」

 

 俺は脇腹を押さえた。

 今日の午前の訓練はやはり厳しいものだった。俺たち部隊全員でなのはさんとヴィータ教導官と模擬戦と言う初日にやったものではあったが結果は惨敗。

 最後まで立ちあがっていたのは俺だったが今回は2人に近づく事が出来なかった。見事な一撃を貰ってしまった。

 

 やはりオーバーSランク2人の実力は流石としか言いようがない。最初に近づけたのは本当に奇跡だよな……。

 

 俺は先ほどの訓練の模擬戦を思い浮かべながら空を見上げる。

 今日の天気は雲があるが晴れが無くなることはない。干した洗濯物は乾くだろう。

 

 オリヴィエは何をしているのだろうか?部屋で寝ている?何処かに出かけた?予備の鍵は渡しておいたから出かけられると思うが。

 

 どこかズレてはいるがそこまで箱入り娘ではないし大丈夫だろう。

 ふと、右手を空に上げる。指なしの手袋を着けているが、この下にはライオンの顔の紋章が浮かんでいる。マスターの証ではあるが、正式な名前も分かっていない。

 

「はぁ……」

 

 俺は大きなため息をついた。

 昨日から分かったことと言えば、あのブレスレッドはオリヴィエの聖遺物だったと言うだけだ。未だに聖杯戦争という全貌を理解することが出来ない。準備も出来ない戦争に足を突っ込むのは不安でしかない。

 俺はこれからどうするか考えた。

 

「無限書庫……か」

 

 脳裏に浮かんで来たのは無限書庫という単語。確かに、“無限の知識の倉庫”と言われている無限書庫なら何らかの情報がありそうだ。

 

「プリムラ、ヴィヴィにメールしたい。開いてくれ」

『了解しました』

 

 行くと決めた俺はさっそく行動に出た。目の前にモニターが開き、俺は文章を作成した。

 

To………高町ヴィヴィオ

件名………無限書庫の事について

本文………ヴィヴィ、確か無限書庫の司書免許持っていたよな?今度時間が空いたらでいいから俺を無限書庫に連れて行って探し方を教えてくれないか?後でお礼はする。

 

 送信してくれ、と俺はプリムラに命令して、モニターを消した。

 無限書庫には一度も言った事が無かったので司書免許を持っているヴィヴィオに同行をお願いすることにした。

 ヴィヴィオは本が大の好きで初等科三年生には司書の免許を取ってしまうほどだ。

 

「何か情報が眠っていればいいんだがな」

 

 俺は一口、コーヒーを飲んだ。冷え始めているせいで苦みが口の中に広がった。聖杯戦争の事について時間を忘れるぐらい考えていたのだろう。

 

『マスター、メールです』

「お、意外と早いな。モニターを開いてくれ」

 

 あれから10秒も経ってないだろう。俺は軽く驚きながら再び目の前にモニターが現れる。

 

「あ~、そういえば……」

 

 しかし、思っていた人物とは違い俺は差出人を見たとき苦笑してしまった。

 

差出人………アインハルト・ストラトス

件名………今朝の話について

本文………こんにちは、アインハルトです。今朝の話の続きをと思いましてメールをしました。私は確かにガイさんより年齢も幼いし背も低いです。そして、私とガイさんは同じ時間の中を同じスピードで歩いています。背は追いつくかもしれませんが年齢はガイさんより上になる事はありません。ですが、だからと言っていつまでも年下と言う理由で私を子供扱いするのはどうかと思います。

 

 差出人がアインハルトだからだ。今朝の話をまだ根に持っていたようだ。背伸びしたい年頃なのだろう。

 アインハルトの意見は確かに正論と言えば正論なのだが読んでいると思わず笑ってしまう。

 

「あ~、なんて返すか」

 

 俺はモニターを操作して返信の文章を考えながら打ち込む。

 

To………アインハルト・ストラトス

件名………Re:今朝の話について

本文………俺たちは同じ時間軸を同じスピードで進んでいるからな。アインが俺より年上になる事はまずあり得ない。アインの論理だと俺が26になって、アインが20になっても子供扱いをすることになるからな、確かに変だ。朝の事は訂正するよ。

 

 俺は謝るようなメールを作成して送信してモニターを消した。これでどんなメールが返ってくるか少し楽しみだ。

 俺は再び冷え始めたコーヒーを飲む。先ほどよりも苦味が増していた。

 

 無限書庫からの情報収集それに聖王教会にも足を運んでみる必要性もあるな。いろいろやることが多い。

 

「はあ……」

 

 今宵2回目のため息が漏れた。ため息も癖になりつつある。意識して訂正しないとマズイ。

 

「このベンチで、またそんな大きなため息……どうしたの?」

 

 そこに後ろから優しく労わるような女性の声がした。その声に俺の脳裏に1人の人物が思い浮かぶ。それを確かめるために振りかえる。

 

「あ、高町ky……」

「い・ま・は・お昼休みだよ♪」

 

 脳裏に浮かんできた人物と一致した。

 俺は高町教導官と言いそうになったところをなのはさんが笑顔で止めに入った。一昨日にも言われたが昼休みまで言う必要はないようだ。

 

「はい、なのはさん」

 

 それでも仕事場では上司であることは間違いない。俺は立ち上がった。

 

「あたしもいるぞ」

「ヴィータ教導官まで」

 

 なのはさんの後ろにはヴィータ教導官までいた。

 

「ほ~う、なのはは“なのはさん”であたしは“ヴィータ教導官”か。訓練の時は“高町教導官”とか言っていたのにな」

 

 ヴィータが意地悪そうな笑みを浮かべて俺を見上げてくる。背が小さいから俺を見上げる形になるのだ。

 

「……変ですか?」

「ま、別に変じゃねえよ。あたしも訓練の時は“高町教導官”とか“高町一等空尉”とか言ってるが今は“なのは”って言うしな」

 

 ヴィータ教導官はなのはさんに何かを理解したような小悪魔な笑みを向けて話を続ける。

 

「そこまで2人が仲がいいとは思って無かったけどな」

「ヴィヴィオもお世話になってるからね~。私とガイ君は結構仲良しだよ♪名前で呼んでも別にいいんじゃないかな」

「……へいへい、そうですか」

 

 ヴィータ教導官は俺と同じくため息をついて、ヴィータ教導官は俺の座っていたベンチにドカッと擬音語が聞こえるような豪快な座り方で座って足を組む。なのはさんもヴィータ教導官の隣に座る。

 

「ガイ君も座わりなよ」

「あ、はい」

 

 俺も先ほど座っていた場所に座った。なのはさんの隣だ。2人を見ると黒い液体の入った紙コップを持っていた。おそらく俺と同じコーヒーだろう。

 そして、2人は一口飲んだ。

 

「ふ~、ようやく一息つけたね~」

「そだな~」

 

 2人の表情が少し緩んだのがわかる。

 

「……何故でしょうか?デジャブみたいのを感じます」

 

 気のせいだよ、となのはさんは笑みをこちらに向けながら言った。つい2日前にもヴィータ教導官は居なかったが同じことが起こったような気がした。

 

「おい、ガイ。今は昼休みなんだしあたしの事は“ヴィータ様”でいいぜ」

「……わかりました、“ヴィータさん”」

 

 ヴィータ教導官が冗談っぽく笑って変な事を言ったので、俺は普通にヴィータさんと呼ぶことにした。

 

「……ま、別にそれでもいいけどな」

 

 ヴィータさんは片目を閉じて何か納得のいかない表情をしているがこの名称をしぶしぶ了承した。

 そして、ヴィータさんは模擬戦の話に切り替えた。

 

「今日の訓練はダメだな。みんな少し鈍っていやがる。おい、なのは。昨日は少し甘やかしていたんじゃねえのか?」

「え?そんなことないと思うよ、ヴィータちゃん」

「いいや、ダメだな」

 

 ヴィータさんが今日の訓練についてダメ出しをしてきた。

 

 なのはさんだけでもかなりキツかったけどあれでもダメなのか。

 

「皆の連携が少しだがズレていた。ガイは一生懸命連携を取ろうと必死だったのは分かったが他がそれに追いついていない」

「ん~、ならもうちょっと厳しくしてみる?」

「い、いや、流石にこれ以上厳しくすると部隊への士気に影響が出てしまいます」

 

 なのはさんがサラッと練習量を増やそうとしていたので俺はそうならない様になのはさんの意見を押さえる。

 そうか?とヴィータさんが俺の意見に疑問視を投げ掛けてくるが無視する。

 

 あれより更に厳しく訓練されると流石に皆が持たないんじゃないかな。

 

 今でも皆はかなりボロボロにされている。これ以上練習量を増やしたら俺を含め皆が追い付けないと思う。

 俺は心の中でため息をついた。

 

「で、話を戻すけど何か困っていることがあるのかな?そんな大きなため息をついて」

「……」

 

 なのはさんはコーヒーを一口飲んで話を先ほどの俺のため息へ戻した。

 俺はなのはさんから視線を逸らした。なのはさんに今悩んでいる事を話せるわけがなかった。

 地上本部をも手篭めに出来る人物が表舞台のない戦争を望んでいるのだ。それは他言無用と言う事を暗黙の了承としている。

 誰かに話をしたらきっとヴィヴィオ達に不幸な出来事が起きるだろう。それは止める必要がある。

 

「……言えない事なの?」

 

 俺がどのように答えようかと考えていると、なのはさんが俺の態度を悟ったのか落ち着きのある声で言ってきた。俺はなのはさんの方を向く。

 

「……はい、申し訳ありませんがこの問題は話す事が出来ないです」

 

 俺は申し訳なさそうに謝って頭を下げた。なのはさんの方を向いた時に悲しそうな表情をしていたからだ。

 俺のためにここまで思っていてくれるのに何も言えない自分に自己嫌悪したからだ。

 

「ガイ、お前が何をやるのかは聞かねえ」

 

 と、なのはさんの後ろからヴィータさんの声が聞こえた。俺は頭を上げる。ヴィータさんはなのはさんの横から顔をひょっこりとだしている。不機嫌な表情でムスッとしているが。

 

「それはお前自身が解決しなけりゃならねえ問題なんだろ?だから相談できねえ。それらな仕方ねえ。でもな、一つだけ約束しろよ」

 

 ヴィータさんはベンチから立ち上がって俺の前に仁王立ちするように立った。

 

「なのはを悲しませるような事はするな。それにヴィヴィオ達もだ。あいつらもお前の事を慕っているんだ。だから、悲しませるな。悲しませたらあたしが許さねえからな」

 

 ヴィータさんは真面目な表情をして拳を握って俺に見せてくる。真剣に俺やなのはさん、ヴィヴィオ達の事を考えているのだ。

 

「……はい、肝に銘じておきます。ありがとうございます」

 

 俺はヴィータさんの言った言葉を胸の奥にしまってヴィータさんをしっかりと見た。今の俺を見たヴィータさんは軽く笑みを溢して腕を伸ばす。

 

「うっし、午後の訓練は基礎強化訓練だな。部隊全員が鈍っている印象があったからな。徹底的に叩き直さねえと。行くぜ、なのは、ガイ」

 

 そろそろ昼休みも終わるようだ。俺は残っているコーヒーを飲み干す。

 

 ……冷たい。

 

 コーヒーは冷めきっていた。なのはさんもコーヒーを飲み干したが少し苦い表情をした。温くなってコーヒーの苦みが強くなったのだろう。

 そして、立ちあがる。

 

「ガイ君。徹底的に鍛えるよ~」

「お手柔らかにお願いしますよ、なのはさん、ヴィータさん」

 

 俺の言葉に2人は笑みを零して練習場へ歩き出した。俺も後を付いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 訓練は基礎強化だけだったのでいつもよりも早く終わった。

 今日はデスクワークがなく訓練だけだったのでここに居る理由はすでに無くなっていた。なのはさん達も教導隊に戻って行ったようだ。

 俺は校舎のロビーの来客用のソファーに座って一息ついていた。

 

「ん、メール来てるのか?」

『はい、少し多いですよ』

 

 プリムラはコアを小刻みに光らせながらそう告げて俺の前にモニターを開く。

 

差出人………高町ヴィヴィオ

件名………Re:Re:無限書庫の事について

本文………はい!!ガイさんの役に立てるなら喜んでついて行きます!!だだ、私は休日にしか行けませんのでそれでよろしければですが……。

 

差出人………アインハルト・ストラトス

件名………Re:Re:今朝の話について

本文………分かっていただけて何よりです。でも、もし時を超える事が出来たとしたら……いえ、なんでもありません。

 

差出人………ノーヴェ・ナカジマ

件名………今日のストライクアーツ

本文………今日は中央公民館に来るのか?ヴィヴィオ達は皆来る予定だぞ?

 

差出人………リオ・ウェズリー

件名………ノーヴェさんについて

本文………こんにちは、ガイさん。今日はヴィヴィオ達とストライクアーツをします。よかったら来ませんか?それとノーヴェさんとは今日初めて会うのですがどんな人でしょうか?ヴィヴィオとコロナの先生とも聞きましたが。ノーヴェさんに会うのに少し緊張してしまってヴィヴィオとコロナに相談するのも恥ずかしいのでガイさんに聞きました。ご迷惑でしたら謝ります。

 

「こりゃまた少し多いな」

 

 計四つのメールが訓練中に来ていた。少し大変だが俺は一つ一つ返事を書くことにした。

 

To………高町ヴィヴィオ

件名………Re:Re:Re:無限書庫の事について

本文………ああ、行けるだけでも助かる。それじゃあ、次の休日に行こう。時間はヴィヴィに合わせるよ。

 

To………アインハルト・ストラトス

件名………Re:Re:Re:今朝の話について

本文………時を越えて俺より年上の大人のアインに会ったらちょっとビックリするけどね。

 

To………ノーヴェ・ナカジマ

件名………Re:今日のストライクアーツ

本文………悪い。今日はこれから他に用事があるんだ。ノーヴェと久々に組手やりたいがまた今度だな。

 

To………リオ・ウェズリー

件名………Re:ノーヴェさんについて

本文………ごめんね。今日はこれから用事があるから行けそうもないや。それとノーヴェだが、ヴィヴィ達の先生なのは間違いじゃない。先生であることは否定しているが根はヴィヴィ達の事を思っているいい人だ。ま、実際会ってみればそこの良さは分かるよ。

 

「プリムラ、送信してくれ」

『了解しました』

 

 プリムラにこれらのメールを一斉送信させるように命令する。4通もの返信に少し時間がかかってしまった。時間で言うと10分ぐらいだろうか。それでも返信に満足した俺はモニターを閉じる。

 しかし、一つ気になる文章があった。

 

『でも、もし時を超える事が出来たとしたら……いえ、なんでもありません』

 

 アインハルトの文章にあったこの一文だ。ここに何か引っかかるものを感じた。

 

「もし、時を超える事が出来たら……か」

 

 それを行った人物が俺の身近に1人いる。オリヴィエだ。

 大昔のベルカ諸王時代の乱世の中で命を落としてしまったが聖杯戦争のシステムでこの現世に蘇った。これは時を越えたと言ってもいいのではないだろうか。

 

「聖杯戦争……分からない品物だ」

 

 俺は聖杯戦争のシステムの底が全く見えない事に戸惑いと不安を隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ミッドチルダ南部 抜刀術天瞳流 第4道場

 

 俺は798航空隊校舎を後にしてこの道場に足を運んだ。ここは抜刀術天瞳流の道場。ここで居合の稽古をしてもらっている。

 プリムラのデバイスは使う時になると刀と鞘の二つで一つのデバイスになる。それなので必然的に抜刀術で戦う事が多くなる。定期的にここに足を運んで抜刀術を鍛えることにしている。

 俺は道場の端で正座をして静かに目を閉じてた。隣にはデバイスであるプリムラが紅い鞘に鍔のない刀を納めている状態で置かれていた。

 因みに俺が着ているのは袴だ。

 

「さて、今日もやるか」

 

 そこに、暗闇の中で凛とした女性の声が聞こえた。俺は静かに目を開ける。

 視界に入ったのは道場の真ん中に女袴を着た女性。プリムラと同じ鍔の付いていない刀を鞘に納めて左手に持ってこちらを見て立っていた。

 

「はい、師範代。今日もお願いします」

 

 女性は静かに頷いた。青く長い後ろ髪は一つに縛って下ろし、鋭い目つきをしている。表情は笑っているが体全体から出ている何者も寄せ付けないオーラは只者ではない事を示す。

 女性の名前はミカヤ・シェベル。俺と同じ歳で18。この若さにしてこの抜刀術天瞳流の師範代を務めるほどの実力者だ。

 

「……そうだな、もう師範代と言わなくても良い。貴殿はここの弟子ではないのだからな。それに同じ年だ。敬語もいらないだろ?貴殿はここに通い詰めているのだ。同世代の人物なのだからそんな堅苦しい事も止めようでは無いか?」

「では、名前で呼んでも?」

 

 構わない、と師範代は言う。それならばこれからは師範代の事をミカヤと言わせてもらう。

 

「では、よろしく。ミカヤ」

「うむ、私はガイと言わせてもらうぞ」

 

 ミカヤは少し表情を崩して笑みを溢す。笑みを溢していても張り付いた雰囲気はそう簡単に柔らかくはならない。常に油断せず気を張っているのだろう。

 

 しかし、今日は呼び名を変えることが多いな。フリー、ヴィータさん、ミカヤ、と。

 

「だが、私よりも……ガイの方がもはや実力は上だと思うのだが」

「抜刀術は奥深いものだ。鞘走りから最大限に加速して放つ刀は人によって違う。ミカヤの抜刀術と俺の抜刀術は全く違う」

 

 俺は刀になっているプリムラを掴んで立ち上がる。俺は師弟の関係である仲を止めて同世代と同じように軽い気持ちで話していた。それほど違和感もなくすんなりと喋れる。

 ミカヤも同じことを思っているのだろう。笑みの表情が崩れていない。

 

「だが、ガイの抜刀術の流派は何処だと聞いた事があったが、まさか我流だとはな。我流で私の流派以上。代々受け継がれてきたこの流派が我流に負けてしまうのは軽くショックを受けてしまったよ」

 

 ミカヤはそう言いながら、静かに左手で鞘を持ち右手で柄に触れ、半歩下がり静かに居合の構えに入る。帯刀はしていない。

 

「すべてはプリムラと試行錯誤して考えたモノさ」

 

 俺もミカヤと同じ動きをして静かに居合の構えに入る。ミカヤと同じく帯刀はしていない。この部分は2人とも共通していた。居合の基本、立ち居合の構えだ。違いなどほとんどない。

 

「では、始めよう」

「お手柔らかに」

 

 一瞬の静寂。

 

「天瞳流抜刀居合“水月”!!」

 

 そして、ミカヤが一歩で間合いに入り、刀を抜いて俺に迫った。俺は刀を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「刀を抜かずして勝つとはな」

「いや、最後だけ一度抜いたさ」

 

 俺とミカヤは立って互いを見ていた。お互いの刀は鞘に収まっている。そして一礼をして体勢を崩す。

 俺は先ほどの試合に勝った。

 居合を始めた理由はデバイスの形にも関係していたが、一番の目的は反射神経や動体視力を高めることである。

 俺の魔力ランクはC-。他で補うしかない。それが居合だと俺は思って続けている。反射神経に動体視力、間合いの空間把握力も養える。あんな思いを二度としないために自分を鍛えてきた。

 俺はミカヤの抜刀術を避け続け、時には鞘で受け止めた。帯刀しない理由は鞘で攻撃を受け止めるためだ。

 そして、一瞬の隙を突いてただの一度だけ抜刀した。

 

「言葉が足りなかったな。打ち合いの中で只の一度も抜かなかったな。一度だけ……本当に必殺の一撃だよ」

 

 ミカヤの胸元の女袴には一閃の傷が残って切れてサラシがチラリと見える。もちろん非殺傷設定なので人体に影響はない。無ければミカヤは死んでいた。

 

「“鞘の中の勝”と言うことわざが何処かの世界の言葉にあったな。確か殺人剣としてではなく磨き上げた百錬不屈の心魂をもってすれば自然と敵を威圧出来る。これ即ち活人剣と」

「活人剣……か。俺にも使えるといいな」

「ああ、意外とガイには素質があるかもしれんぞ」

 

 ミカヤは口に手を軽く添えて笑った。始める前の時のオーラも無く年相当の笑みを浮かべている。それを見て俺も笑った。

 

「静は動へ動は静へ……その円の繰り返しが居合の基礎だ。俺はこれを忘れない」

「そうだな。私も一度初心に戻るのも良いかもな」

 

 ミカヤは自分の納刀している刀を見た。その表情は少し暗い。

 

 ……何を思っているのだろうか?その表情からでは読み取ることは出来ないな。

 

「……稽古を続けようか」

「……ああ。まるでガイが師範代みたいだな」

 

 俺は景気づけるために稽古の続きを促した。ミカヤは俺に視線を移し暗い表情をやめて微笑み、柄に手を添えて構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「買い物も済ませたし後は帰るだけだな」

 

 俺は道場の後、食料を買いに食料店に足を運んだ。これからしばらくはオリヴィエと2人で暮らすのだ。いつまでも一人分だけの買い物と言うわけにはいかなくなった。ビニール袋が二つ左手にぶら下がっていた。

 

 少し買いすぎたかな?

 

 食料の重さが握っている左手の肉を食いこませている。家に帰って離したときにはきっと真っ赤だろう。

 

『2通のメールです、マスター』

「ああ、開いてくれ」

 

 そんなどうでもいい事を考えているとプリムラがメール受信を教えてくれたので両手が塞がっている俺は目の前にモニターを出すように命令する。モニターが現れて二通のメールを見た。

 

差出人………コロナ・ティミル

件名………ストライクアーツ

文章………こんばんば、ガイさん。今日はヴィヴィオとリオとノーヴェさんとウェンディさんが公民館に集まりました。ガイさんも来てくれると嬉しかったのですが、ノーヴェさんが『たぶん、居合の稽古でミカヤちゃんのところだから仕方ねえよ』と言っていたので来れないのは仕方ないですね。それと、大人モードのヴィヴィオとノーヴェさんが組手をしまして皆から注目が集まりました。あの2人は凄いですよね。私なんかじゃまだまだ追い付けないぐらいに。追いつくためにもまた今度ガイさんと組手をお願いしたいです。ガイさんとの組手が一番練習になります。

 

「大人モードのヴィヴィオとノーヴェは確かに凄いからな」

 

 あの2人と俺の誰かが対戦すると周りに人が集まる。そんな見せるほどの物ではないのだが。

 俺は軽く笑みを溢してもう1通を見る。

 

差出人………高町ヴィヴィオ

件名………Re:Re:Re:Re:無限書庫の事について

文章………私は休日は午前中に特訓するから午後からなら予定は空いています。楽しみしていますね♪あ、それと今日はイクスに会いました。私の故郷に咲いていた花と綺麗な写真を持って行いきました。

 

 ヴィヴィオからのメールだ。

 イクス。本当の名前はイクスヴェリア。古代ベルカ、ガレア王国の王。現在はいつ目覚めるかはわからない深い眠りについている。2年前に起きたマリアージュ事件に関与していたらしいが詳しい事は知らない。今も聖王教会の一室で眠り続けていると聞いた。

 “王”の繋がりだからか、ヴィヴィオはたまにイクスのお見舞いに行くことがある。今日行って来たのだろう。イクスが起きていた時はモニター越しでしか会った事が無いと言っていたがヴィヴィオにとってはやはり放っておけないのかも知れない。

 なにあともあれ、これで休日の午後の予定は埋まった。俺は返信する文章を作成するため一度買い物袋を下ろした。

 

To………コロナ・ティミル

件名………Re:ストライクアーツ

本文………こんばんはコロ。今日は行けなくてごめんね。あの2人は凄いからね。今度練習する時は組手をやろうか。

 

To………高町ヴィヴィオ

件名………Re:Re:Re:Re:Re無限書庫の事について

文章………ああ、よろしく頼むな。それにヴィヴィが会う事でイクスもきっと喜んでいるよ。

 

 二つのメールを送信してモニターを閉じて再び買い物袋を持つ。

 

「さて、帰るか。オリv……フリーが待ってる」

 

 オリヴィエの名前は迂闊に出すものではない。今朝オリヴィエに言われたので俺は外出している時は極力使わないようにした。まだ慣れていないが。

 

 言葉を慣らすのは少し難しいな。ミカヤやヴィータさんの時はすんなりいったんだけどな。

 

 俺はそう考えつつ帰路を歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――夜の街頭

 

 あたしは救助隊の整備調整に呼ばれたのでヴィヴィオ達の送りを妹のウェンディに任せて救助隊の校舎に向かうため歩いていた。

 

「あ~、ガイが居ればもっと特訓になったんだがな」

『あの人は反射神経に動体視力が並の人間ではありませんからね。あの人と組手をする時はいい特訓になりますよ。まあ、今日は居合の稽古でしたけど』

 

 機械的な言葉を言って来ているのは私のデバイス・ジェットエッジ。クリスタルの形をしている。ポケットに入れているがあたしの言葉に反応して答えてくれた。そして、モニターを見せてくる。

 

差出人………ガイ・テスタロッサ

件名………Re:今日のストライクアーツ

本文………悪い。今日はこれから他に用事があるんだ。ノーヴェと久々に組手やりたいがまた今度だな。

 

「たくっ、ミカヤちゃんの所に行くならそう書けっての。ミカヤちゃんからのメールがあってわかったけどさ。しかし、確かに居合をしているからかあいつの反応は異常じゃねえよ。魔力ランクC-だと言っても侮れないぜ。もし本気の勝負をしても勝てないんじゃないか?」

『かも知れませんね』

「……そこは嘘でもいいから勝てますとか言ってくれると良かったんだけどな」

 

 嘘をつかないデバイスのジェットエッジの態度にあたしは笑みを溢した。本気でガイと勝負しても勝てるのか自分でも分からないのだ。自分でも分からないのにジェットエッジが勝てないかもと発言してくるのは当たり前だ。

 

「ストライクアーツ有段者、ノーヴェ・ナカジマさんとお見受けします」

「!!」

 

 誰もいない街灯道。そこに何処からともなく“不意”に声が聞こえた。

 あたしは周りを見渡す。そして、街灯の上に一人立っているのが分かった。あたしは見上げる。そいつが先ほどの言葉を言ってきたのだろう。パッと見るに女性だ。

 

「貴方にいくつか伺いたいことと確かめたい事が」

「質問すんならバイザーを外して名を名乗れ」

「……失礼しました」

 

 どうやら素直にこちらの話は聞くようだ。話を聞かない奴ではなさそうだ。そいつは静かにバイザーを外した。

 

「カイザーアーツ正統、ハイディ・E・S・イングヴァルド。『覇王』と名乗らせて頂きます」

 

 そいつは街灯から飛び降りた。碧銀の髪を軽くツインテールに結い、残りを下ろす……ツーサイドアップの髪形をして虹彩異色で左眼が薄蒼で右眼が紫。女性と言うよりもまだ幼さが残っている少女だ。

 そして、“覇王”と名乗られ最近この地域で騒いでいる事件を思い出す。

 

「噂の通り魔か」

「否定はしません」

 

 その問いに覇王と名乗る幼さを残す少女は静かに肯定した。そして、意見を問いかけてくる。

 

「伺いたいのはあなたの知己である“王”達についてです。聖王オリヴィエの複製体と冥府の炎王イクスヴェリアです」

「……」

 

 あたしは今の言葉を聞いてイラついたのが分かった。

 

 あいつ等はただの子供だ。“王”だの何だのなんてのは関係ねえ。

 

「あなたはその両方の所在を知っていると……」

「知らねえな」

 

 あたしはきっぱりとそいつの言っている言葉を止めた。それ以上その話を続けたくなかったからだ。

 

「聖王のクローンだの冥王陛下だのなんて連中と知り合いになった覚えはねえ」

 

 あたしは左手を胸に当て必死に語った。

 

「あたしが知ってんのは、一生懸命生きているだけの普通の子供たちだ!!」

「……理解できました。その件については他を当たるとします」

 

 あたしが必死に語っているのにそいつは特に動じることなく静かにあたしを見ていた。

 

 あたしは半歩下がった。いつでも動ける状態にするためだ。変な動きをしたら対応するために。

 

「ではもう1つ確かめたい事はあなたの拳と私の拳、いったいどちらが強いのかです」

 

 覇王は右拳をぐっと握ってあたしを見定めるかのように目に力が入っている。その言葉を聞き、その目を見ただけで分かった。対決を望んでいる、と。

 あたしは気軽に動けるように鞄を地面に放り投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――数分前 同場所

 

「……変なメール」

 

 私はモニターでガイさんからの返信メールを見直していた。

 

差出人………ガイ・テスタロッサ

件名………Re:Re:Re:今朝の話について

本文………時を越えて俺より年上の大人のアインに会ったらちょっとビックリするけどね。

 

 そんな事ないのに。時を越えることなんてありえない。もし、そんな事が出来るとしたら……。

 

「私は過去に行って、“王”達と戦うのかな」

 

 今はどの“王”よりも誰よりも強くなることの悲願のためにこうして街中をうろついている。しかし、この世界にはぶつける相手が居ないのかもしれない。最近そう考えるようになってきた。

 私はモニターを操作した。モニターには1人の女性が写される。

 ノーヴェ・ナカジマ。薄赤い髪と少年的な容姿をした少女。ストライクアーツの有段者であり、聖王オリヴィエの複製体と冥府の炎王イクスヴェリアの事を知っている人物。彼女が次に拳をぶつける相手だ。

 彼女のスケジュールだとこの時間帯はストライクアーツを終わっている頃。先ほど救助隊で部隊集合が掛けられたのを聞いたので、市民公民館から救助隊へと通るこの道を進むだろう。

 

「私の拳とどちらが強いですか……」

 

 私はモニターを切って目を瞑り集中した。

 

「武装形態」

 

 そして、一言喋るとリンカーコアから膨大な魔力が溢れ出すのがわかる。それを術式に浸透させると私は一瞬にして大人モードになる。

 背も高くなる。お気に入りの赤いリボンは邪魔なのでこのモードでは付けない。

 

「……これなら、ガイさんの背より高いかも」

 

 歳の差はあれど背は近づく事は出来る。と、この場に合わないどうでもいい事を考えつつバイザーを付ける。

 

「悲願のため……オリヴィエを守れなかった償い。アインハルト・ストラトス参ります」

 

 私は物陰に隠れながらノーヴェ・ナカジマが通るのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――1時間前 マンション

 

「この本はなかなか面白いですね」

 

 私はガイの言っていた本棚から歴史の本を探した。確かにガイの言っていた通り一番下の本棚に何冊かあった。

 手に取ってタイトルを見ると、“新暦の全て”“伝説の三提督武勇伝”“ミッドチルダが出来るまで”などと近代時代の歴史の本ばかりだった。目的のモノとは違えどパラパラと捲ってみると面白くて読みふけてしまった。

 

「もう少し前の時代の本が欲しいのですけどね。帰ってきましたら頼みましょう」

 

 そして、読んでいた最後の本を読み終えた。今の時間はちょうど日が落ちたの時間。

 因みにお昼の食事は難なく食べる事が出来た。少し振りかえってみると、冷蔵庫というモノに食事が入っていたので、それを恐る恐る開けてみた。中はひんやりとした空気が漂ってあり肌に触れてびっくりしたが、これが現代の食料を冷却する装置だと分かった。

 私が居た時代は魔法を駆使して冷凍していたというのに現代の技術は素晴らしいものになったものだ。私はラップしている皿を取りレンジと言う物を見る。

 あの小さな箱にも驚かされた。ガイは簡単に説明していたのでそれを思い出しながら皿を中に入れてレンジを操作する。するとどうだろう。床が回り始めて中が赤くなったではないか。

 そして、しばらくするとチンと言う音がしたのでレンジを開けてみる。皿に乗っていた料理が暖かくなっていた。

 今の現代は冷却と加熱を簡単に行える装置が出来たのだな、とお昼の食事の時に実感した。

 

「あれには驚かされました」

 

 お昼の食事を振り返ってみたがやはり驚きを隠せない。現代の技術を侮れない。この世界を探索するとまだまだ驚かせる技術があるのかも知れない。

 

 それを探ってみるのもいいのですが今は歴史の本。こちらの問題ですね。

 

「さて、これからどうすればいいですかね……」

 

 少し考えて図書館にと言う所に行ってみようと結論にいたる。本が豊富にあるとガイの持っていた本に書いてあった。歴史を調べるのなら本が一番。場所も気になっていたので調べてある。行こうと思えば行ける所にあるので行けなくはない。

 

「図書館に行きますか」

 

 私は行くと決めて、予備の鍵を使ってドアを閉めて夜の街へと歩き出した。人気も少ない裏道を通っているので静寂が周りを包み込んでいる。

 

「……ん?何事でしょうか?」

 

 そして、しばらく歩くと2人の女性が道の真ん中で対峙していた。人気が完全に消えて二人だけだった。

 

 ガイの言っていた連続傷害事件の容疑者でしょうか?

 

 私は少し遠くから2人の容姿を調べた。1人は薄赤い髪と少年的な容姿をした女性。一瞬、少年かと思ったが女性だ。

 そして、もう1人は碧銀の髪を軽くツインテールに結い、残りを下ろし、虹彩異色で左眼が薄蒼で右眼が紫の……。

 

「……え……うそ……」

 

 その特徴だけで分かった。その現実に触れ私は鼓動が速くなり壁に身を寄せて隠れた。

 

「クラウスと……同じ……」

 

 碧銀の髪、虹彩異色の目。私は驚きを隠せず壁越しから2人の会話を聞いた。

 

「伺いたいのはあなたの知己である“王”達についてです。聖王オリヴィエの複製体と冥府の炎王イクスヴェリアです」

「……」

 

 私の複製体?どういう事でしょうか?それに冥府の炎王もこの世界に居る?聖杯戦争で呼ばれた?

 

 私の思考がフル回転しているのがわかる。あの碧銀の少女を見てからは一刻も早く真実にたどり着きたい感情が湧きあがっているのだから。

 

 それでも私はその感情を必死に抑えて2人の成り行きを物陰から様子見で見ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「防護服と武装をお願いします」

「いらねえよ」

「そうですか」

 

 あたしは覇王と名乗る幼げさが残っている女性を見る。

 

「よく見りゃ、まだガキじゃねーか。なんでこんな事をしてる?」

「……強さを知りたいんです」

 

 なんだ、只の喧嘩をしたいだけのバカか。

 

 あたしは軽く構えて左足に力を込める。

 

「ハッ!馬鹿馬鹿しい」

「っ!!」

 

 あたしは不意打ち気味に左足を思いっきり踏み込んだ。一瞬にして覇王に近づき、その勢いで左足の膝蹴りをかます。

 しかし、それは最初こそ驚きはしたが覇王の右腕でがっちりとガードされた。あたしは続けざまに右手に魔力を込めたスタンエッジをぶつける。

 騒音が鳴り響く。それでも覇王は両腕でがっちりとガードして擦り下がる。そして、涼しげな表情をこちらに向ける。

 

 ガードの上からとはいえ、不意打ちとスタンショットをマトモに受けきった。言うだけの事ぁあるってか。

 

 あたしはポケットからデバイス、ジェットエッジを取り出す。

 

『セットアップ』

 

 あたしの体が赤く包まれ一瞬にしてバリアジャケットに変わる。動きやすくするために体に密着した服であり、固有武装である手甲のガンナックルとローラースケートの形をしているジェットエッジ、そしてウィングロードに酷似した能力“エアライナー”の三種を統合した、蹴りを主体とする格闘技術を行うためのバリアジャケット。

 

「ありがとうございます」

 

 覇王から礼を言われた。本気を出した私の事に敬意を表するように。

 

「強さを知りたいって正気かよ?」

「正気です。そして、今よりもっと強くなりたい」

 

 なら、こんなことする意味はねえだろ。何を考えていやがる。

 

「ならこんな事してねーで、真面目に練習するなりプロ格闘家目指すなりしろよ!!単なる喧嘩バカならここでやめておけ。ジムなり道場なりいい所紹介してやっからよ」

 

 あたしは必死に説得するが覇王は首を縦に振ることはなかった。

 

「ご厚意痛み入ります。ですが、私の確かめたい強さは……生きる意味は……」

 

 そう言いながら、右拳を下げて左手を前に出し静かに構える。なめらかに動き隙が全くないことが分かる。

 

「表舞台にはないんです」

 

 構えた、この距離で?あたしとの距離はざっと10m弱。この距離で構えるとなると空戦?射砲撃?

 

 あたしは様々なシュミレーションをした。しかし、結果は予想外な攻撃だった。

 

「……って!!」

 

 覇王は一瞬にして詰めて右拳を放ってきた。なめらかな動作から一変して鋭い速さを見せてきた。

 

 突撃か?

 

 それをギリギリで避けたが覇王のその後の動きが速かった。瞬時に次の動きへ行動をしていた。

 

 速い?違う歩法か。

 

「っち!!」

 

 反応が遅れたあたしは覇王を懐に入られてしまい重たい拳があたしの腹にクリーンヒットする。

 

「がっ……!!」

 

 人の体を拳で持ち上げるほどの力を放ってきた。バリアジャケットを装着していなかったら内臓が破壊されていたと思うぐらいの破壊力だ。

 あたしはその勢いを利用して放物線を描くように大きく下がり距離を取った。腹の痛みが体全体に響く。

 

「列強の王達を全て斃し、ベルカの天地に覇を成すこと。それが私の成すべき事です」

 

 左手を自分の胸の前に置きあくまでも静かに語る覇王。

 

「寝ぼけた事抜かしてんじゃねェえよッ!!」

 

 腹の痛みは残っているがあたしは攻めることにした。ジェットエッジで覇王に駆け寄せて、ガンナックルの拳を放ち続ける。覇王はそれを難なくガードする。何合も拳を交え続けた。

 

「昔の王様なんざみんな死んでる!!生き残りや末裔たちだってみんな普通に生きてんだ!!」

 

 あたしは必死に覇王に語りづけた。こいつは聖王オリヴィエの複製体と冥府の炎王イクスヴェリアを探している……ヴィヴィオやイクスを探している。

 そして、最後の拳を放ち一度下がる。

 

「弱い王ならこの手でただ屠るまで」

「……ギリッ」

 

 あたしの脳裏に浮かんで来たのは眠っているイクスの傍らにヴィヴィオが手を取って話し続けていた光景。

 

 その光景を壊すだと?

 

「この……バカったれが!!」

 

 あたしの怒りの感情でミッド式の魔法陣を最大限に展開させた。腹の痛みも忘れるほどに。足元から魔法で作られた道“エアライナー”が放物線を描き、覇王の前に降りる形に作られた。

 

「ベルかの戦乱も聖王戦争もッ!!」

「!!」

 

 “エアライナー”と同時に覇王の両足をバインドで動けなくした。あたしはそのまま“エアライナー”に乗り、覇王の元まで駆ける。

 

「ベルカって国そのものも!!もうとっくに終わってんだよッ!!」

 

 そのままの勢いでジャンプして覇王の顔面へ蹴りを入れる。

 

「リボルバー・スパイク!!」

 

 最大限の魔力を足に集中させ蹴りをかました。これなら相手は倒れるはずだ。そして、そのまま重力で地面に降りる……。

 

「!?」

 

 はずだった。だが、突然体が空中で止まる。

 

「まだ終わっていないです」

 

 覇王は口から血を垂らしていた。しかし、それでもあたしの足を掴んでいた。最大限の“リボルバー・スパイク”は命中したのだろう。当たった実感はあった。

 

 だが、なぜ気を失わずにあたしの足が掴まれている?

 

 そして、いつの間にかチェーン状のバインドが足に絡みついていた。

 

 カウンターバインド!?

 

 理解した時はもう遅かった。体にもバインドが絡みついていた。どうかしている。覇王は防御を捨てて反撃準備をしていたのだ。覇王は静かに右手に魔力を込めて拳を握る。

 

「私にとってはまだ何も」

 

 そして、この対決の終りとなる拳をノーヴェの背中に放つ。

 

「覇王断空拳」

 

 あたしはその攻撃を受けて一度、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「弱さは罪です……弱い拳では……誰の事も守れないから」

 

 終わった。結局、この人も私の拳を受け止めてくれなかった。

 

 私はその事実に少し悲しんで口から垂れている血を拭き、その場を離れた。

 

「……ガイさん、あなたなら私の拳を受け止めてくれますか?」

 

 歩きながらモニターを開ける。そこには私が調べた限りの情報だがガイさんのプロフィールが現れた。

 ガイ・テスタロッサ。798航空隊所属、魔力ランクC-。しかし、ストライクアーツの有段者でもあり居合道場では師範代も一目を置いているとの事。戦闘スタイルは抜刀術。動体視力や反射神経が並の人間ではないので状況判断にかけている。

 

「ガイさん……」

 

 私は一言、隣どうしで住んでいる人物の名前をあげる。この人ならもしかして……。

 

アインハルト「……っつ!!」

 

 古びたコインロッカー室に入ったとき、体に痛みが走った。ロッカーに体を預けるような形で息を何とか整える。

 

 彼女の一撃、凄い打撃だった。危なかった。この体は間違いなく強いのに。

 

「武装形態……解除……」

 

 私の心が弱いから。

 

 そして、全身に駆け巡っていた魔力が収まっていくのを感じて、私はいつもの姿に戻った。お気に入りの赤いリボンは付いている。今は胸元が開いて布がクロスして肩まで覆っている白いワンピース姿だ。

 

 帰ったら少しだけ休もう。目が覚めたらまた……。

 

 そう考えて、ポケットに入っていたコインロッカーの鍵を取り出して荷物を取ろうとした。

 

「あっ!?」

 

 が、再び体全身に駆け巡った。その痛みのせいで立っていられなくなる。その時に鍵を手放してしまった。

 

 だめ、こんなところで倒れたら……。

 

 何とか意識を保とうとするが瞼が落ちていき暗い闇が広がりそこで意識が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「もう少しで家か」

『後、1キロもありませんよ』

 

 俺は見慣れている帰路を歩いていた。街灯とビルの放つ光で夜道もそれほど暗くはない。ここら辺は少し過疎っている場所だがそれでも明るい。

 

「ん?」

 

 俺はふと古びているコインロッカー室を見た。外からでも軽く中が見えるような入口の大きい構造のコインロッカー室だったので中のモノに目が留まった。

 

「誰か倒れてる?それにあの碧銀……」

 

 髪を見てハッとなった。脳裏には1人の人物がヒットした。俺は急いでその倒れている人物に駆け寄る。

 

「アイン!!」

 

 うつ伏せに倒れていたのはマンションの隣人に住んでいるアインハルトだった。意識が無いが呼吸はしている。

 

「救急隊に連絡しないと!!」

『いえ、待ってください』

 

 俺が急いで救急隊に連絡しようとしたところをプリムラに止められた。プリムラのコアが点滅しているのが分かった。

 

「……スキャンしているのか?」

『はい。この子の体に問題はないようです。バイタルも安定しています。ただの疲労でしょう』

 

 しかし、それはプリムラがスキャンしたことにより行わなかった。プリムラは魔力の状態、人体の症状などの簡単な診断は行えることが出来る。症状が早く分かれば分かるほど対処が行えるのでこの機能はかなり重宝している。

 

「……疲労?」

『はい、魔力の循環にも問題ありませんし。救急隊を呼ぶまでには至らないかと』

 

 その診察結果はただの疲労だと出たのでそうか、と俺は言って少しホッとした。

 

「でも、流石にここで横になっていたら風邪引くぞ」

『家まで運ぶのがよろしいかと』

「……マジか?」

 

 俺はアインハルトを見た。見た目は少女に見えるが、それでも30キロ前後はあるだろう。そして、買い物をしたビニール袋も二つ持っている。

 

『マスター、ここの鍵でしょうか。落ちています』

「……ここの鍵だな」

 

 アインハルトの近くには鍵が落ちていた。番号が付いている。俺はそれを拾ってその番号のロッカーを開けた。

 中には鞄とSt.魔法学園の制服が畳んで入っていた。明らかにアインハルトの私物だ。

 

「……計、何キロよ?」

 

 軽く頭の中で計算してみた。辛い計算結果がすぐに出てきた。俺の体重までにはいかないがかなり辛い。

 

『頑張るしかないです。と、それとこの子の体をスキャンしたのですが首元に発信機が付いています』

「ん、マジか。何かあったのか?」

 

 俺はアインハルトの首周りを見てみる。ああ、確かに小さな発信機が付いていた。俺はそれを取って握りつぶした。

 

「ま、これは後で聞く必要があるが……とりあえずは……」

 

 俺は深いため息をついた。これから重労働が待っているのだ。ため息もつきたくもなる。しかし、ため息をついていても仕方ないのでアインハルトとその荷物を運ぶことにした。

 少ししわくちゃになるが鞄にアインハルトの制服を入れて、ビニール袋二つを左手に、鞄を右手に持ち、アインハルトを背負った。背中越しにアインハルトの柔らかな肌が当たっているが今はそれを感じている余裕もない。

 

『これはなんてプレイですか?』

「少し黙っててくれ」

 

 うん、後でプリムラの開発者に絶対に会う必要がある。プリムラの発言を受け流して、俺は帰路を歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……」

 

 私は先ほどの対戦を見ていた。結果は碧銀の少女が防御を捨てて反撃に全てを注いで勝った。

 しかし、その一つ一つの動きはまさしく……。

 

「クラウス……」

 

 生前、最も親しかった人物の動き……覇王流そのものだった。真実を知るためにあの碧銀の少女を追う必要がある。

 そう思ったが倒れている薄赤の女性の事がほっとくわけにはなかった。

 

「あの大丈夫ですか?」

 

 私は薄赤の女性に近づいて声をかけた。表情はかなり疲労の色を晒し出している。“覇王断空拳”は威力が凄まじい。それを受けたこの人物が苦い表情をするのは当たり前だろう。

 

「あ、ああ。何とかな。悪いちょっと動けねえや」

「あ、待っててください。今、治癒魔法をかけますね」

 

 私は目を瞑り静かに詠唱を唱えた。女性の体は少しずつだが活性化を取り戻してきている。

 

「終わりました」

「ああ、助かっ……た……」

 

 私はニコッと笑って薄赤の女性に微笑んで見せた。薄赤の女性も笑みを返してくれるだろうと思っていた。

 しかし、薄赤の女性は私の事を見て驚いた表情をしていた。

 

「な、なあ、あんたのその目って……」

 

 私はその言葉で気づいた。

 この虹彩異色は聖王家でしか見られないモノ。無闇に見せるものではない。私の事を世間に知られてしまうのは不味い。敵に情報が回ると困る。

 

「い、いえ特に変わった目ではありません……それでは私は急いでいますので、これで失礼します」

「あ、お、おい」

 

 私はその場を離れて、薄赤の女性の返事を待たずにガイのマンションに急いで戻りだした。

 薄赤の女性を助けようとしたがこの姿だと外部との接触はあまりよろしくない。姿と変えないと不味い。

 

 一応あの女性は動かせるぐらいまでは回復できたはず。深く検索される前にこの場から離脱を。

 

 私は走ってその場を去りながら今後の課題が出てきたので帰ってガイと相談することに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――マンション

 

 俺は自分の部屋に居る。3階と言う事もあったのでアインハルト+荷物+食料はかなり辛かったが何とか運ぶことが出来た。

 そして、アインハルトのドアの前に着いたはいいが、無暗にアインハルトの荷物を開ける訳にもいかないし、このままほっとくことも出来なかったので俺の部屋にアインハルトを入れて今は俺のベッドで静かに寝息を立てている。よほど疲れが溜まっていたのか道中は全く起きることが無かった。

 

「腕がパンパンだ」

『訓練不足では?』

「……足りないのかな」

 

 なのはさんとヴィータさんの訓練やストライクアーツに居合をしてまだ足りないというのなら、後は何をすればいいのだろうか?

 

「……飯を作っとくかな」

 

 俺はソファーで体を休めて溜まっている乳酸を取りながら今後の訓練量アップの事を考えてはいたが、面倒になって考えるのをやめてアインハルトのために夕飯を用意することにした。制服があったので多分学校帰りだと思うから夕飯はまだなのだろう。

 俺はキッチンに立った。

 

「オリヴィエは何処に行ったんだ?」

 

 家には当然オリヴィエが居ると思っていた。どこかに出かけるにもこんな遅くまで出ていると心配になってくる。まさか、聖杯戦争の関係者に巻き込まれたのではないかと。

 しかし、手がかりが何もないのですれ違いになるのも困るので部屋で待つことにした。

 

 アインハルトもほっとけないしな。

 

 俺は料理を始めた。

 

「はあはあ、た、ただいま戻りました」

 

 しばらく料理をしていると、オリヴィエが帰ってきた。

慌てているような声が玄関から聞こえたが、その声を聞いただけで俺は安心した。聖杯戦争に巻き込まれていたわけではない様子だから。聖杯戦争に巻き込まれていたらもっと慌てているだろう。

 そして、すぐにオリヴィエが視界に入る。走って来たのか少し息が上がっている。

 

「お帰り、フリー。心配したぞ、何処行ってたんだ?」

「は、はい。私は図書館に行こうとしたのですが……」

「んんっ……」

 

 と、そこでベッドで眠っていたアインハルトが目を開けた。オリヴィエは発言することをやめて、ベッドの方に顔を向けた。

 

「こ、ここは……」

 

 アインハルトは起き上がり俺たちの方へ視線を向ける。

 

「あっ……」

「おう、起きたか」

 

 俺はアインハルトが目が覚めたことにホッとしてオリヴィエはアインハルトを見て驚きの表情を浮かべていた。

 

 アインハルトの目を見て驚いているのだろうか?まあ、オッドアイなんて珍しいしな。

 

「えっ……」

 

 しかし、アインハルトもオリヴィエの事を見て驚いていた。

 

「オ……リヴィエ?」

「っ!?」

「え?」

 

 アインハルトは不安げな表情でオリヴィエの名前を呟く。

 

 何故、アインハルトはオリヴィエの名前を知っている?情報が漏れた?どこからその名前が出てきた?いったいどういう……。

 

「……あっ……」

 

 俺が無駄に頭の回転のギアを上げてアインハルトがオリヴィエの事を知っている事について考えていたが、アインハルトのオッドアイの目を見て確信した。

 

 アインハルトがオリヴィエの名前を知っていた……そう言う事か。

 

 今朝、見た夢。

 クラウスも碧銀の髪に虹彩異色で左眼が薄蒼で右眼が紫だったではないか。ヴィヴィオもオリヴィエも虹彩異色の色は同じで左眼が紅く右眼が翠。

 なら、アインハルトもクラウスの複製体の可能性がある。複製体では無くてもクラウスのその子孫かも知れない。少なくとも、クラウスとアインハルトが何かで繋がっているのは間違いない。

 

「「「……」」」

 

 俺たちは何も発言することが出来なかった。皆が皆、様々な思惑を感じているのだろう。

 聞こえてくるのはフライパンに野菜を炒めている音と壁に掛けてある時計の針の音だけだった。




どこで切るか考えていたが、どこを切ってもいい感じに終わらなかったから、どばっと書いたw

もし、長すぎだよこの駄目作家など思いましたら一言ください。

今後の参考にいたします。

しかし、大会も始まって新たに五人新キャラが参戦と藤真さんは言っていたけど、ミカヤさん忘れているよw

ミカヤさんも新キャラですよw

ガイと同じ抜刀術なので一緒に稽古する風景を取り入れてみました。

何か一言感想がありますと嬉しいです。

こんな小説ですが今後も読んでくれれば幸いです。

では、また(・ω・)/
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