魔法少女リリカルなのはvivid~過去と未来と現代の交差~   作:ガイル

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最近はオリヴィエが可愛く見えてきて仕方ないw

これも書いているうちに感情移入してしまったからだろうか………

では、四話目入ります。


四話“現代と現代の交差”

 ―――???

 

「よかろう、君がマスターとして2人目だ」

 

 管理者は暗闇の部屋の中、1つのモニターを見ていた。新しいマスターが参戦してきたようだ。

 見た目は整った黒髪に30~40の男性。上着である灰色のスーツを脱いで片腕にかけて、灰色のネクタイに白い長そでのワイシャツに袖なしの黒いセーターを着込んでいた。パッと見れば一般社会の営業マンに見えるだろう。

 しかし、その瞳は静かに、そして強い意志が存在しているのがモニター越しから見てもわかる。

 

『……』

 

 そいつは静かにこちらを見ていた。敵意なのか殺意なのかはわからないが何か黒い感情を持っているのがふつふつと感じさせる鋭い目だ。

 

「では、貴様が召喚したサーヴァントのクラスは何だ?」

『……キャスターだ』

 

 そう言って、一方的に切られた。

 

「キャスターか……そして、マスターの名は……これも、運命か……」

 

 聖杯戦争は静かにそして、着実に開始のその時を刻んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――マンション

 

「……」

「……」

「……」

 

 どのくらいの沈黙が流れたのだろう。私たちはテーブルを囲んで座っていた。私はノーヴェ・ナカジマとの対決後、コインロッカー室の中で意識を失った。

 そして、気がついたらガイさんのベッドで寝ていた。ガイさんが私の事をここまで運んでくれたのだろう。ガイさんが居なかったらあそこで多分捕まっていた。

 

 それに関してはガイさんに感謝します。でも、今はこの人が誰なのかを知りたい。

 

「……」

 

 私は虹彩異色の紅と翠の鮮やかな瞳に綺麗なライトブラウンの女性を見る。

 

 この人の瞳の……紅と翠の鮮やかな瞳、そしてこの容姿は覇王の記憶に焼き付いた間違うはずもない聖王女の証。この人は間違いなくオリヴィエのはずだ。

 

 しかし、確信できるモノが何もない。外見だけは本当にオリヴィエに瓜二つで似ている。私はこれからどうするか考える。

 ガイさんもこの人も何か落ち付かない様子で私の事を見ている。

 

「……あなたは……」

「は、はい!!」

 

 そして、私は長い沈黙を破ることにした。真実を知るために。その人は少し高い声を上げていた。

 

 私の言葉でびっくりしたのでしょうか?そのびっくりした表情も記憶の中に残っている表情と同じですね。

 

 私は声高い返事を受け止めて拳を胸の前で握って話を続ける。

 

「あなたは……あなたはオリヴィエ・ゼーゲブレヒトですか?」

 

 私はここを一番知らなければならない。本物なのかどうか。

 しかし、ありえないのだ。昔に亡くなった人が現在に現れることなど。

 

 タイムスリップなんてことありえませんし。

 

 私は先ほどのガイさんとのメールのやり取りでその似た話があったの思い出す。未来の私ならガイさんから年下扱いしないと。

 それは未来の私がタイムスリップしないと無理な話なのだから。

そういう話があったのを思い出しながら視界に入っているその人はチラッとガイさんの事を見る。

 ガイさんもその人の事を見て困惑した表情で考えていた。2人は何かを隠している。

 

 ガイさんも隠し事をしている……いったい何があるんだろう。

 

 そして、ガイさんは覚悟を決めたのか真剣な表情で私に顔を向けた。

 

「アイン、これから話す事は誰にも言わない事を約束してくれないか?」

 

 ガイさんはこれから話すことを他言無用としてほしいと言ってきた。この人がここに居る理由には訳がある。それも秘密的なものが。

 

「……はい、約束します」

 

 私は真実を知るために、ガイさんの言葉に力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……はい、約束します」

 

 アインハルトは俺の言葉に力強く頷いた。真剣な表情でその虹彩異色の瞳には揺らぎが無い。その虹彩異色の瞳は本当に夢で見たクラウスと同じ色だ。

 俺はオリヴィエを見る。オリヴィエはまだ戸惑いの表情が残っていたが俺の視線に気づき頷いた。

 

「単刀直入に言うよ。ここに居る人物はオリヴィエ・ゼーゲブレヒド。かつてベルカ諸王時代に“聖王女”と言われた人物だ」

「本当……ですか?」

 

 アインハルトはオリヴィエを見た。先ほどの揺らぎが無い表情とは一変、驚きと期待と不安の入り混じった瞳で。

 オリヴィエは答える。

 

「……はい、私はオリヴィエ・ゼーゲブレヒトです」

「どう……やって、この時代に?」

 

 アインハルトから戸惑い気味に聞いてくる。分かっていた事だが普通のものさしの知識だと過去の人物がなぜこの時代に居るのかという疑問が飛んでくるのは当たり前だ。

 

 さて、ここをどうやって説明しようか。

 

 聖杯戦争のシステムでここに居ると言う訳にもいかない。それを言ったら最後、アインハルトはきっと……。

 

「……すまない、アイン。そこだけは説明できない」

 

 俺はいくら考えても良い案が思い浮かばなかった。

 聖杯戦争……人が測るることのできる知識のものさしは普通の物だとそれは明らかに歪な形をしていて測ることが出来ない。

 特殊なものさし……聖杯戦争という歪んだ形を測る事の出来るものさしが必要だ。

 俺もそうだったようにアインハルトも持っているものさしは普通の物だろう。だから、どう説明したらよいか分からない。

 それに、そこを話してしまったらきっと管理者が黙っていないだろう。俺は普通に謝ることにした。

 

「……でも、あなたは正真正銘のオリヴィエです……話を少しして確信しました。私の中の覇王の血が色濃く疼いて貴方がオリヴィエだと言う事に間違いないと」

「“覇王”……やはり、あなたはクラウス・イングヴァルドの子孫なのですね」

 

 アインハルトはその言葉に強く頷いた。

 その碧銀の髪、左眼が薄蒼で右眼が紫の虹彩異色の瞳。夢に出てきたクラウスと同じだ。アインハルトはヴィヴィオのような複製母体ではなく、クラウスの子孫。 アインハルトとクラウスの繋がりが確かにあった。

 

「碧銀の髪やこの色彩の虹彩異色。覇王の身体資質と覇王流」

 

 そして、アインハルトは悲しい表情をしながら静かに語り始めた。

 

「それらと一緒に少しの記憶もこの体は受け継いでいます。私の記憶にいる“彼”の悲願なんです天地に覇をもって、和を成せる、そんな“王”であること」

 

 アインハルトは一度言葉を切った。オリヴィエを見る。

 

「弱かったせいで、強くなかったせいで……“彼”は“彼女”を救う事が出来なかった……守れなかった!!」

 

 アインハルトの瞳が潤んでいるのがわかる。自分の中の覇王の血を必死にオリヴィエに語っているのだろう。かつて彼……クラウスが守れなかった彼女……オリヴィエに。

 

「そんな数百年分の後悔が……私の中にあるんです。だけど、この世界にはぶつける相手がほとんどいない……救うべき相手も守るべき国も世界も……!!」

 

 アインハルトは涙を流して泣いていた。

 数百年分の後悔……想像を絶するモノだろう。俺にはとても想像出来ない。そんな思いをアインハルトはその小さな体で受け継いでいたのだ。

 この世界ではそれを清算する手立てが無くて辛いのだろう。

 

 アインハルトから悲痛な気持ちが痛いほど伝わってくる。それほどまでに溜まりに溜まっていたのだろう。

 

「……ですが、オリヴィエ。どのようにしてこの世界に現れたかは知りませんが、私の中の覇王の血が貴方に会えたことでとても温かい気持ちが溢れてきます」

「そう……ですか」

 

 オリヴィエはどう答えたらよいか分からない様子だったが、アインハルトの涙を見て笑みを作る。

 そして、泣いているアインハルトに近づいて涙を指で取った。

 

「まったく、クラウスはこんな可愛い子孫にこのような辛い思いをさせて。もし会う事が出来たらお仕置をしませんとね」

 

 そう言って、微笑みながらアインハルトの頭を撫でて抱き寄せる。

 

「あっ……」

「その覇王の血から温かい気持ちが溢れているの事は私にとっても嬉しいことです。クラウスとの生活は私も温かい気持ちにさせてくれましたから。それを教えて下さいましてありがとうございます」

 

 オリヴィエはアインハルトを抱き抱えたままお礼を言う。アインハルトは抱き抱えられたままで大人しくしている。

 

「ですが、その悲願は私では止める事が出来ない。それは私の事を守れなかったから出来た悲願。私自身が手を出すわけにはいきません。申し訳ありません」

「……はい、分かっています。今、オリヴィエが現れたとしてもこの悲願はオリヴィエが亡くなったのが原因で作られたもの。オリヴィエに向けるための拳ではありません」

 

 そう、その悲願はオリヴィエが亡くなって作られたモノ。それをオリヴィエ自身に向けては矛盾が生じてしまう。

 だが、これではアインハルトの中にある悲願を……その覇王の拳を受け止める者が居ない。

 受け止める者がいなければアインハルトは数百年分の後悔に押しつぶされてしまう。今はオリヴィエが居るからいいが、聖杯戦争の後はどうなるかは分からない。

 

「……ガイさん」

「ん?」

 

 アインハルトはオリヴィエの抱擁から離れて、俺の事を見る。まだ少し涙目だ。

 

「私と拳を交えてくれませんか?」

「……俺か」

 

 アインハルトの覇王の拳を受け止める者が必要。それは俺のような奴で受け止められるのだろうか?

 

「俺なんかで覇王の拳を止められるのか?俺なんかじゃなくてもっと強い奴を紹介してやるぞ」

 

 脳裏になのはさんやヴィータさん、ノーヴェ、ミカヤなどを思い浮かべる

 

「この世界にはこの拳を受け止めてくれる人が今まで居なかった。先ほど、ノーヴェ・ナカジマと街灯試合を申し込みましたが、彼女も受け止めてくれませんでした」

「……え?」

 

 ん?まて。今、知っている名前が出てきたぞ。ちょうど脳裏に浮かんでいる人物。

 

 俺は先ほど脳裏に浮かんできた人物たちの中に居た薄赤のショートヘアの髪のヴィヴィオ達の師匠をクローズアップする。

 

「ま、まて、アイン。さっきノーヴェと戦っていたのか?」

「はい。彼女はかなり腕の立つ実力者でしたので申し込みました。彼女の一撃は破壊力抜群でした」

「……もしかして」

 

 俺はとある仮説を立てた。もし事実だったらノーヴェに謝りに行かないと。

 

「連続傷害事件の犯人って……アイン?」

「……はい」

 

 アインハルトは一瞬戸惑ったが、素直に真実を告げてくれた。確かに、最初に犯人を見た時も碧銀の髪だった。

 

「で、さっきはノーヴェと対決した。そして、その帰りにその一撃のダメージが強くてコインロッカー室で気を失ってしまったと?」

 

 アインハルトは頷く。おそらくあの発信機はノーヴェが付けたモノだろう。もし逃がしてしまっても追尾出来るようにと。

 

「ノーヴェに連絡しないと」

「ま、待って下さい!!」

 

 ノーヴェに連絡しようとモニターを開いたがアインハルトは慌てて俺に近づいて止めに入った。

 

「私のこの連続傷害についてはちゃんと清算します。ですが、最後にガイさん。私はあなたと戦いたい」

 

 アインハルトが不安げな表情で俺の事を上目使いで見上げてくる。不安な表情からは必死さが伝わってくる。

 

「……俺と対戦した後、ちゃんとノーヴェに謝りに行くと約束できるか?」

「はい」

 

 即答で答えてくれた。それならと俺はその言葉を信用し軽く笑ってモニターを消した。

 

「俺で覇王の拳を止めれるか分からないが受けて立つよ」

「ありがとうございます」

 

 アインハルトは頭を下げた。その時、きゅうるるると誰かのお腹が鳴る音がした。

 

「……はっ!!」

 

 その音に反応したのはアインハルトだけだったので犯人はアインハルトだろう。アインハルトは顔を真っ赤にしたまま頭を上げてこない。

 

「……そういや、夕飯を作る途中だったな。アインの分も作るよ」

 

 腹の音のおかげで場の雰囲気が和みだし俺は笑って立ちあがる。オリヴィエも笑みを崩さない。

 

「あ、い、いえ、そこまでご迷惑になるわけには……」

 

 アインハルトは頬が赤いままで顔を上げる。涙目だけど理由は先ほどとは違うのだろう。

 

「覇王の拳を受け止めるためにもしっかりと栄養を取らないとな。アイン。お前も栄養をしっかりと取って全力の覇王の拳をぶつけて来いよ。俺なんかが受け止めれるか分からないけど」

「は、はい……ありがとうございます」

 

 まだ少し頬が赤いがアインハルトは再び頭を下げる。

 

「はいよ。少し待ってな」

 

 俺はキッチンに入って、料理を始めた。

 

 しかしまあ、一昨日は1人分の料理だったのに昨日は2人分、今日は3人分ときたもんだ。一日ごとに人が増えるのか?

 

 料理中、どうでもいい事を考えてしまった。これからアインハルトと対決するというのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――市民公園内 公共魔法練習場

 

「デバイスもありか?」

「ええ、構いません」

 

 俺とアインハルトは少し離れて対峙してる。夜のこの時間帯は人も疎らになる。今は誰もいないようだ。

 夕飯の食事を三人で食べた後、この練習場にやってきた。因みに料理の評価は2人から花丸を貰った。

 その時は冷静に返したが内心はかなり嬉しかった。

 

「ガイとアインハルトも怪我には注意してください」

 

 少し離れた場所のベンチにはオリヴィエが座っている。

 オリヴィエはオリヴィエを知っている人に会うと正体がばれてマズイと食事の時に言ってきたので、とりあえずカモフラージュのために帽子をかぶせた。気休めにしかならないが、無いよりはマシだ。後は虹彩異色を如何にかしたいと。

 

 今度、紅色か翠色のカラーコンタクトでも買ってくるか。ああ、また出費がかさむんだな。

 

「武装形態」

 

 考え事をしているとアインハルトが光に包まれて、背が高くなり、服装も変わって現れた。

 碧銀の髪を軽くツインテールに結い、残りを下ろし、そして、その服装はクラウスが着ていたものに少し似ていた。

 

「……私の方が背が低い」

「何の話だ?」

「いえ、なんでもありません。ガイさん。貴方も準備してください」

 

 アインハルトは大人モードになって俺の事を見て何か不服のような発言をしたがあまり気にしなかった。

 

「プリムラ、セットアップだ」

『了解しました』

 

 俺もプリムラに命令した。

 俺は黒い光に包まれ、服はバリアジャケットに変わった。黒と白を強調するような服だ。黒いズボンにインナーは黒いシャツ。その上にロングコートの白い上着を着きている。

 ベルトは手前でクロスするようになって二つ付いており、腰に刀と鞘が一対となったプリムラを帯刀するために使われる。普段は使わないが。

 俺は刀となったプリムラの鞘を左手に持つ。

 

「では、よろしくお願いします」

「お手柔らかに」

 

 アインハルトは静かに右拳を後ろに下げ、左手を前に突き出して構えた。

 俺も左足を半歩下げて、体を少し左にひねり、刀を腰の後ろに持っていき居合の構えに入る。

 

 この距離で近接距離の構え?何をしてくる?

 

 俺は少し離れている距離でアインハルトが拳を握って構えている事に疑問を持ちつつ分析に入った。

 そして、その疑問はすぐに解決した。アインハルトは一歩のステップで一瞬にして距離を詰めてきたのだ。その握っている右拳を俺に当てるために。

 しかし、俺には視えていた。

 

 視えていたのなら最小限の動きで避けるまで!!

 

「!!」

 

 アインハルトの右拳は半歩横に動いた俺のわずか手前をかすっていく。

 そして、目の前に無防備な状態でいるのなら刀を抜くにはチャンス。俺は鞘から鞘走りをして刀を抜く。

 しかし、刃が黒くそりが白いその刀は空を切っただけだった。横切りをした刀をアインハルトはしゃがんで避けた。ダッシュした勢いを良く殺せたと俺はそこで思った。

 そして、アッパー気味に拳を突き上げてくる。俺はそれを半歩下がって避ける。そのまま左手に持っていた鞘でアインハルトに横振りを行った。

 

「くっ!!」

 

 アインハルトはそれも避けて、大きくバックステップを取り距離を取った。俺はゆっくりと刀を鞘に収める。

 

「……私の動きが視えていますね。無駄がありません」

「動体視力は一応鍛えているつもりだからな。それにアイン。よく突進の後に勢いを殺せてしゃがめたな。驚いたよ」

 

 アインハルトの突進は速かった。運動エネルギーが膨大に働いていたのだろう。

 しかし、停止する時の静止エネルギーはその二乗のエネルギーがなければ法則上、止まらない。

 膨大なエネルギーがアインハルトの体にあるのだろう。

 

「一応鍛えていますから」

 

 アインハルトも俺と同じことを言ってきた。冗談で言っているのか本気で言っているのかはわからないがあの澄ました瞳を見ると嘘とは言い切れない。

 俺は背後に黒い魔弾を二つ作った。俺の魔力の色は黒。あまり見かけない色だと開発者は言っていた。確かに俺の周りには黒い色の魔力の人はいない。

 アインハルトは俺が黒い魔弾を作った為か左手を前にして警戒し構える。

 

「ソニック」

 

 俺がそう言うと、二つの黒い魔弾はスピードを付けてアインハルトに向かって飛んで行く。アインハルトは動かない。そして、飛んできた魔弾がアインハルトに当たる寸前……。

 

「!!」

 

 俺は驚いた。それを手で受け止めたのだ。弾殻を壊さずに。普通は障害物などに当たったら弾殻は壊れてしまい飛行能力は失ってしまう。

 しかし、それをアインハルトはその弾殻ごと受け止めていた。

 

「“覇王流……」

 

 アインハルトはその受け止めている魔弾の手を円を回るように回し……。

 

「旋衝破”!!」

「なっ!!」

 

 それを投げ返してきた。俺は驚いていたので一瞬、反応が遅れてしまった。

その為、避ける事が無理だったので抜刀して一つ目の魔弾を横切り、刃を返してもう1つの魔弾を横切った。

 しかし、それは隙を作るには十分な行為だった。アインハルトは俺の目の前に迫って右拳を放っていた。

 

「くっ……」

 

 俺はそれを何とか鞘で受け止めたが、威力が凄まじく大きく擦り下がる。アインハルトはここぞと言わんばかりに俺の後を追い攻めてきた。擦り下がりながらも俺は納刀して、アインハルトの連撃の拳や蹴りを避け続けた。

 そして、アインハルトの右拳を鞘で受け止めた。かなり重い打撃だ。受け止めただけでも手首に電流のような痺れが走る。

 

 覇王の拳……こんなに重いか。俺じゃあ受け止めきれないな。

 

「……まさか、魔弾が返されるとは思わなかった」

「ですが二度目は通じません。あれでガイさんの隙を作れることはもうないで、しょう!!」

 

 二言の会話。その会話の最後、アインハルトは左足を蹴り上げる。不意を突いたのだろう。

 しかし、俺にはそれが視える。俺は体を思いっきり右回転してそれを避ける。

 

「!!」

 

 アインハルトは鞘に体重をかけていた右拳が右にずれてバランスを崩す。鞘は右拳から離れたので自由になり、俺は右回転で一回転しその勢いで抜刀をして……。

 

「あぐっ!!」

 

 アインハルトの隙が出来た横腹に一太刀入れた。アインハルトは表情を苦くして片膝をついた。

 俺は刀をゆっくり収める。

 

「俺の勝ちだな」

「くっ……」

 

 チン、と鞘に刀が完全に納刀した音をたてて俺は告げた。アインハルトは必死に体を立ち上がらせようと足に力を入れている。

 しかし、力が入らないようだ。

 

「まあ、今日はノーヴェとも戦って体力が消耗していたんだろ?多分、それだから俺でも勝てたのかもしれない。料理の栄養はすぐに出るわけでもないし」

 

 アインハルトの拳を受け止めた時、覇王の拳の重さを体感し俺では無理だと悟った。今回勝てたのはアインハルトが消耗していたからだろう。

 

「ガ、ガイさんも航空部隊の訓練や私を三階にまで運ぶ重労働を行って疲労が溜まっていたのでしょう?」

「訓練と実戦の疲労度はかなり違う」

 

 俺はそう言ってバリアジャケットを解除してプリムラを待機モードに戻した。

 

「ま、まだです。私はまだ戦います!!」

 

 俺がバリアジャケットを解いたからかアインハルトが必死に抵抗をしてきた。

 

「この勝負は俺の勝ちだ。斬撃の相手だから動けない状態が続いたら首を落とされて終了だ」

「そ、それはたしかにそうですが……」

 

 アインハルトは先ほどから立ち上がろうとしても立てずに何秒も同じ位置に片膝をついている。もし命の取り合いだとしたら首を落とされて終わっている。非殺傷設定なので先ほどの一太刀は人体に影響はないが、非殺傷設定を無しにしたら間違いなく真っ二つになって死んでいただろう。

 

 ……聖杯戦争が始まったら非殺傷設定は外さないと生き残れないか?

 

「……それが殺し合いか」

「え?」

 

 俺は小さな声で呟きながら待機モードのネックレス型のプリムラを首にかける。アインハルトは聞き取れていなかったようだが聞いてほしい言葉でもない。

 

「まあ、とりあえずお疲れさん」

 

 俺はアインハルトに右手を差し出す。アインハルトはまだ抗議したそうな表情をしていたが、やがて諦めて……。

 

「……武装形態解除」

 

 そう言って大人モードを解除して赤い大きなリボンを左側につけた少女に戻る。

 

 まあ、こんなんじゃまだ覇王の拳を……悲願を受け止められていないだろう。俺じゃあ無理だな。

 アインハルトは俺の右手を掴んで立ち上がる。

 

「すごかったですよ。ガイもアインハルトも」

 

 そこに唯一の観客である帽子を深くかぶったオリヴィエがこちらにやってきた。

 

「あの“旋衝破”はかなりの努力と鍛錬が必要です。クラウスもモノにするのに数年かかったと言ってました。それを12歳のアインハルトが習得した。一体どれほどの鍛錬をしてきたのか想像がつきません」

「ああ、あの技には驚いた。反射でも吸収放射でもない。受け止めて投げ返したからな」

「あ、い、いえ……そ、それほど強い技でもありませんので……」

 

 褒められているからかアインハルトは頬を赤くして少し俯いていた。

 

「あっ……」

 

 しかし、アインハルトはその場で力なく尻もちをついて座り込んでしまった。今日は戦い過ぎたのだろう。疲労が体にきたようだ。

 

「やりすぎだ、そんなに体を酷使してまでやるからオーバーロードだ」

「そ、そのようです……」

 

 アインハルトは体にまったく力が入らないのか力無く答える。不安げな表情で俺を見つめていた。

 

「ガイ、どうしますか?」

「……はあ、ほれ」

 

 俺はそんな光景を見てため息をついてアインハルトの前に背中を向けてしゃがんだ。

 

「え?」

「乗れよ。家まで送ってやるから」

「い、いえ、そういう訳にも……」

「対戦した責任もあるんだ。家まで送ってやる」

「……わ、わりました」

 

 返事をしてから少ししてアインハルトは遠慮がちに俺の背中に体重を乗せてきた。そして、ふとももを掴んで立ち上がる。

 

「アインハルト、顔が赤いですよ?」

「あ、あぅ……」

 

 オリヴィエがアインハルトの顔を見たのか顔が赤いらしい。俺からは見えないけど。

 そして、俺たちは歩きだした。

 

「とりあえず帰って、ノーヴェに連絡を入れないとな」

「そ、そうですね」

 

 アインハルトはそう言いつつ頭まで俺の背中に預けてきた。

 

「す、少しだけ眠ってもいいですか?」

「ああ、好きにしな。着いたら起こしてやるよ」

「はい……あったかい……」

 

 背中からすぐに寝息の声が聞こえてきた。かなりの疲労が溜まっていたのだろう。

 

「本当にこの子は覇王の悲願のために頑張っています」

「そうだな」

 

 隣にいるオリヴィエが話してくる。この背負っている重みはアインハルトだけのものではない。きっと覇王の悲願の重みもあるのだろう。

 

 拳も悲願も重い覇王……か。辛い思いをしてるんだな、アイン。

 

「この子には辛い思いをさせたと思いました」

「それをさせたのは覇王の悲願の記憶だけどな。その原因を作ったフリーのせいじゃない」

 

 オリヴィエが自虐的に話してきたので俺は否定した。そのような考えはあまり良くない。

 

「アイン……いつか、こいつが心から笑っている笑顔を見たいな」

「……そうですね」

 

 それはいつ見れるのか分からなかった。覇王の悲願を消せない限り見る事はないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――マンション

 

「と、いうわけだ」

『と、いうわけだ……じゃねえよ!!』

 

 マンションに戻ってから俺は背中で寝ているアインをベッドで寝かせてた後、ノーヴェに連絡を取るためにモニターを開いた。

 因みにオリヴィエはシャワーを浴びている。

 

『発信機壊した犯人はてめえかよ』

「そこは悪かったとしか言えない」

 

 俺はアインハルトを保護したあたりから対戦までの話をした……オリヴィエの事は話していないが。

 

『で、お前も覇王の悲願のために対戦してやったてぇのか?』

「ああ。何とか勝つ事は出来た。でも、あんなんじゃ覇王の悲願は消えないだろうな」

 

 っち、とノーヴェはモニター越しから舌打ちをしたのが聞こえた。表情も不機嫌になる。

 

『何でお前に勝ててあたしは勝てねえんだよ!!』

「そんな事、言われてもな。ノーヴェの後だから勝てたようなもんだ」

『うるせぇ。そんな言葉聞きたくねぇ。あ~、もう今度会ったら組手な。ぜってぇ負けねえぞ』

 

 今度会ったらノーヴェと組手をする約束を強制的にされてしまった。まあ、久々に組手をやりたい相手だったからいいけど。

 

『で、その覇王の子……アインハルトはお前の隣に住んでいたのか?』

「ああ」

 

 モニター越しのノーヴェが真剣な表情になって本題に戻った。

 

「なあ、ここら辺で起きていた連続傷害事件の犯人はアインだけど、被害届は出ていないから何とかしてやれないか?」

『なんだ?そいつを助けたいのか?』

「ああ、知らない仲ではないからな」

 

 俺はアインハルトが捕まってほしいとは思わなかった。覇王の悲願で連続傷害事件になってしまったこれを何とかして止めたい。

 

『ま、被害届は出てないしもう喧嘩しないって約束が出来るんだったら署で少し話をして返してくれると思うぜ』

「本当か!?」

 

 アインハルトが捕まらない事に俺は喜びを覚えてモニターに顔を近づく。

 

『ああ。それに、あたしも行く。あたしと対戦た時はあたしが先に手を出したからな。喧嘩両成敗ってことにしてもらう』

「なら俺も……」

『先に手を出したのは聞いた話の限りじゃ覇王の子じゃないのか?』

「あっ……」

 

 確かにはアインハルトが先だった。俺は後だ。これでは意味が無い。

 

『まあいいや。明日、朝にそいつを連れて湾岸第六警防署に来いよ』

「ああ。ありがとなノーヴェ」

 

 その言葉にノーヴェは笑みを作ってモニターを切ったようだ。モニターが切られた。俺は静かに寝息をたてて眠っているアインハルトを見る。

 

「オリヴィエには賛成だな。覇王の悲願でこんな女の子が苦しんでいるんだ。もし会えることが出来たら一発殴らないとな」

 

 オリヴィエが言っていた事を思い出す。

 

『クラウスも子孫にこのような辛い思いをさせて。もし会う事が出来たらお仕置をしませんとね』

 

 まったくだ。その悲願をクラウスの人生で叶えられればアインハルトもこんなに辛い思いはしなかったのにな。

 

 俺は眠っているアインハルトの頭をそっと撫でた。今でも静かに寝息をたてて軽く触れただけでは起きないだろう。

 

 ……寝顔、可愛いな。

 

「ガイ、お風呂が開きました。入るといいですよ」

「っ!!」

 

 そこに背後からシャワーを浴びていたオリヴィエの声がした。風呂から出たのだろう。俺は慌ててアインハルトの頭に乗せていた手を離す。

 

「あ、ああ、わかった。俺もはいr……」

 

 俺は振りむいた。

 そして、今朝と同様に思考が停止して動きが止まった。

 

「どうかしましたか?」

 

 オリヴィエは特に恥ずかしがること無く裸体にバスタオル一枚を纏ったままの状態でこちらを向いていた。その細くて白い四脚を恥ずかしがること無く異性である俺に見せてくる。

 

「い、いいから何か着てろ!!」

「そう言われましても、脱衣所に服を持ってくるのを忘れまして」

 

 俺は慌てたがオリヴィエは慌てるそぶりを見せることもなく、俺の横を通り過ぎる。そして、ベッドの傍に畳んである。服の山から白い下着を取り出す。

 

「ガイは純情すぎですよ」

「オリヴィエが鈍感すぎだろ……」

 

 そうでしょうか?と言いつつオリヴィエは首をかしげた。

 

「あっ……」

 

 その時、オリヴィエの体を纏っていたバスタオルが緩かったのかズレ落ちた。

 

「……っ」

 

 そのバスタオルに隠れていた部分の肌色が視線に入りそうになって俺は急いで玄関の方へ向きを変えて、脱衣所へと移動(避難)した。

 

「オ、オリヴィエ、せめてもう少しくらいは羞恥心を持ってくれ」

 

 俺は脱衣所のドア越しにオリヴィエと話した。

 

「ですが……」

「ちゃんと持ってくれ!!」

 

 俺はオリヴィエに一言釘を刺して深いため息をつきその場にしゃがみこんだ。多分ここで念を押して言ってもオリヴィエが羞恥心を持つ事は出来ないだろう。あれはもう治せない性格だと思う。

 

 ここの宿主の威厳と言うものは無くなりつつある……というか元々ないけど。

 

『これはなんてプレイですか?』

「少し黙っててくれ」

 

 そして、胸元にあるプリムラが先ほどの光景を見て一言発言した。やはり、プリムラの開発者に聞きに行く必要性が120%ある。

 俺は明日、開発者に聞きに行くことを決めた。

 

 風呂で温まり風呂場から出ると、青の縞模様の縦ラインのパジャマを着たオリヴィエがテーブルの前で座って、湯呑に入っているお茶を飲んでいた。

 

「あ、ガイもどうぞ」

「ああ、サンキュー」

 

 俺はオリヴィエから湯呑を貰って座った。来客用の何の捻りもない白い食器一式をオリヴィエ用にしたが特に不満は無さそうだ。

 そして、一口飲んで一息つけた。気を抜いたら体が一気に重くなった。俺も相当疲れているようだ。

 

「今日はパジャマを着てくれるんだな?」

「はい、下着姿で寝たいのも山々なのですがガイが駄目というので」

 

 オリヴィエは下着姿で寝る習慣があるらしい。それは刺激が強すぎるので俺はパジャマを着るように言った。

 しかし、寝るときに着ることは無いと思っていたのか服を買いに行くときにパジャマを買ってなかった。仕方ないので俺のパジャマを貸した。

 

「このパジャマという服はぶかぶかし過ぎです」

「寝るのは体の疲労を取るためだ。だから窮屈な服だと体が休めないだろ?」

「それはそうですが……」

 

 オリヴィエは何か言いたそうな表情をしたが一口お茶を飲んで、笑みをこぼした。

 

「まあ、いいです。さて、そろそろ寝ましょう。明日も早いのですよね?」

「そうだな。っと、アインは寝たままか?」

 

 俺は眠っているアインハルトのほうを見る。穏やかで安心しきっている表情で眠っている。

 こういう無防備な姿を見ているとアインハルトは覇王の悲願とは全く関係ないように思う。

 

「……起こしてやるとは言ったが起こすのも可哀想だな。オリヴィエ、ソファーで良いならそこで寝なよ。俺は床でいい」

「いえ、ガイはこの前私にベッドを譲ってくださいましたので今度は私が床で寝ます」

 

 オリヴィエは昨日、ガイのベッドに寝たからガイがソファーで眠ることになったことに申し訳なかったのか複雑な表情だ。

 

「いいよ。たまにはこういうのもいい」

 

 俺はベッドを背中にしてもたれて目を瞑った。

 

「ガイがそのように申しますのなら……」

 

 オリヴィエはしぶしぶといった表情でソファーで横になった。

 

「昨日は言えなかったが、おやすみ、オリヴィエ」

「はい、おやすみなさい、ガイ」

 

 目を瞑ってからすぐに眠気が襲ってきた。アインハルトにオーバロードと言ったが俺もかなり体を酷使していた証拠だ。そして、眠気に身を任せて意識が闇の中に沈んでいった。




キャスターのマスターが登録を完了しますた。

伏線が多すぎてまだまだ謎のキャラですけどね。

今回は戦闘風景を取り入れてみました。

前回はマンガ本にあった戦闘でしたので楽でしたが、オリジナルで戦闘するには相当な筆力が必要だと実感しました。

しかし、この四話目を投下しても時間軸が経過したのは3~4時間ぐらい。

展開が遅いw

まあ、ほのぼのは好きですけどね。

何か一言感想がありますとモチベが上がります(多分w

こんな駄作を今後も読んでいただければ幸いです。

では、また(・ω・)/
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