魔法少女リリカルなのはvivid~過去と未来と現代の交差~   作:ガイル

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脳内ではすべてのマスターとサーヴァントを描いています。

それをどうやって自分の筆力で表せるかがこの作品での課題ですかね。

がんばって筆力を鍛えていこう。

では、8話目入ります。


八話“魔術師と暴君の交差”

 ―――廃墟した家

 

「聖杯……」

 

私はミッドチルダ東部にある森林地帯にポツンと建っている廃墟した一戸建ての中で、木製の古びた丸いテーブルとセットになっている木製の椅子に座っていた。

 

「マスターは聖杯が欲しいのか?」

 

私の対面の椅子に座っていた男性が凛とした表情で張りのある渋い声で聞いてきた。黒い髪に黒い瞳で巨躯の戦士。年は3~40歳代だろう。

しかし、その瞳は戦いの中で長年培ってきた目をしている。ちょっとやそっとでは揺らぐことが無い。この家は目の前の男性が別荘で使っていた家らしい。壊されずに残っていたのでしばらくはここを拠点にして動く事になる。

今回の聖杯戦争では私はマスターとして参戦することになった。その証拠に右手の甲に令呪が刻まれていた。彼はマスターを守るために召喚された私のサーヴァント。ランサーのクラスなので槍使いなのだろう。

 

「私の事は普通に名前で呼んでもらって構いません」

「そうか。なら、アルトリアで良いか?」

 

私は頷く。アルトリアは歴史上ではそのように明記されていない。名前が広がっていても私がアーサー王であると知られることは無い。

そして、私はゼストの最初の質問に答える。

 

「何でも叶う事の出来る聖杯ならば私は欲しい。王である私の存在を無かったことにしたい」

 

脳裏に浮かんで来たのはアーサー王として君臨し続けてきた自分自身の姿。民を想い行動した結果、誰も付いてくる者はいなかった。

 

『王は、人の気持ちが分からない』

 

円卓を去る間際に残された、あれは……一体誰の言葉だったか。

 

『王ならば、孤高であるしかない』

 

そう自らに言い聞かせ、ただ救国の道ばかりを探し求めながら、いったい私はどれほど多くの者たちの想いを、苦悩を、見過ごしてきたのだろうか。

忠勇の内に散ったガウェインは、使命に殉じたギャラハッドは、その最後に何を胸に懐いたのか。彼らはもしや至らぬ王を戴いた事を後悔し未練を残しながら果てたのではないか。

 

遂げたかった理想を、救いたかった人々を……私が王であったばかりに、滅び去っていた全てのモノがある。

 

私は王としての資格は無かった。こんな私はそもそも王になるべきではなかった。だから聖杯への願いはその奇跡によって私が王であったことを無かった事にしようと決めた。

 

「……私には王というモノの苦悩というのは分からないが、聞いた限りだとアルトリアは現実から逃げているような印象を感じた。王の責務の重さから逃げ出したくて聖杯を求めている」

 

ランサー……ゼストには私がアーサー王であることを話している。私の話を聞いていたゼストはその瞳を私から外さず正論をブツけてきた。

 

「……そうです。私は王だという事に苦悩して現実から逃げている。全てを無かったことにして、私に従ってくれていた騎士たちの無念や怨念から逃げたくて聖杯の奇跡にすがっている」

 

私は分かっていることなのだがその正論が眩しすぎてゼストから視線を外して斜め下を見る。私を責めているゼストが眩しく見える。だからか、このままゼストに叱ってくれた方が私の中の贖罪という重みも少しは楽になる気がした。

 

「だが、アルトリアという王があったからこそ円卓の騎士たちが居たのではないか?」

「え?」

 

ゼストは叱るような口調はせず、口調を少し和らげて相手を労わるような声を私に向けた。

 

……私という王が居たからこそ、その円卓の騎士たちが居た、と?

 

「運命は一度だけだ。進んで行った道を後戻りは出来ん。だが、この聖杯というものはその運命を変えることが出来る。あった事を無かったことするという事も可能だ。だが、アルトリア。お前はその騎士たちの無念や怨念を無くしたいと思っていても、全てが無かったことになるのだから騎士たちの理想や思考などを全て失うという事になるのだぞ?そこの気持ちを考えた事があるか?」

「あっ……」

 

全てを無かったことにする。それは、それまでに積み重ねてきたその者たちの理想や思考までも無かったことになる。全てが無くなるとはそういう事なのだ。

 

「私も昔は“ゼスト隊”という部隊で活動していた事がある。部下も持った。私が部隊長としてやらなければならない事は部下へのケアだった。この部下にはこのように接する、あの部下にはこうやれば強くなる、などとな。それによって生じた部下たちの理想や思考がある。部隊長としてそれを失わせるわけにはいかないものだ」

 

ゼストも王ではないが人の上に立って指示を出していた頃があったらしい。

だから、私の願いに対して経験論から真っ直ぐな意見をブツける事が出来たのだろう。私のやり方では結局、騎士たちは救われないと。

 

「……ゼストは良い騎士です。貴方みたいな者が王になるべきだった」

 

私は悲しく微笑んでゼストの事を見た。このような者が王になるべきだ。私のような者では王として立ってはならない。

 

「アルトリアも良い騎士だ」

 

しかし、返してきた言葉はやはり私を痛める言葉ではなく称賛の言葉だった。私は思わぬ返しにキョトンとした表情で顔が固まっていただろう。

 

「アルトリアは自分を責めているが王になっただけの技量、知識などがあったからこそ王になれたのだ。自分の事を責めているが、だが、それならそこだけは誇りに思うべきだ」

「ゼスト……」

 

私はゼストの瞳を見た。揺るぎのない強い瞳だ。そのような人物が私の事を良い騎士と言った。なら、そこだけは誇ってもいいのだろうと思えてくる。

 

「ありがとう」

 

私は頭を下げた。目の前の人物は私などとは違う。“騎士王”と言われたこともあるが、それは目の前の人物からすれば擦れてしまう。目の前の人物に“騎士王”とつけたい。

 

だが、気になる。目の前の人物はいったい何者なのだろうか?

 

私は頭に浮かんだ疑問をゼストに聞くため顔を上げた。

 

「ゼスト、あなたはいったい何者なのですか?」

 

これほど冷静に私の事を分析して把握したのだ。私をそこまで理解出来ること言う事は私と同様にかなりの場数を踏んで来たのだろう。私の言葉にゼストは目を瞑った。

 

「私はもう二度死んでいる」

「え?」

 

二度死んでいる。ゼストの口から思わぬ言葉が出てきたので思わず、言葉が出てしまった。だが、その言葉で無理やりだが私とゼストには共通点が存在していることがわかった。

私は二度サーヴァントとして死を迎えた。ゼストも何故二回死んだのかはわからないが、それが私がマスターとして呼び水になったのではないだろうか。

 

「地上本部の罠に陥り、部下を1人失わせてしまい私も死を迎えた。だが、とある科学者によって私は蘇った。命は短かったがいい仲間もいた。そして、二度目の死。全てを後輩に託して消えたのだがこうして再び地面に足をつけて歩く事になるとはな」

 

ゼストは目を開けた。その瞳はいつもと変わらない、揺らぎのない強い目をしていた。

 

「アルトリア。私の願望は……」

 

ゼストの願望を私はしっかりと胸に刻んだ。この者はやはり素晴らしい人物だ。主従関係を入れ替えても良いと考えてしまう。この者が王だったら騎士であった私は生涯忠誠を誓えると想ってしまうほどだ。

この者となら聖杯をとれる。何処からきた想いかはわからないが確かな自信があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――アラル港湾埠頭

 

「……」

 

何時になく、アインハルトの表情が少し引き詰っていた。いつもの無愛想な表情ではなく緊張の色を表情に出しているのが見て分かる。俺とアインハルトは廃墟倉庫区画へと移動している。これから行われるのはヴィヴィオとアインハルトの二度目の対決だ。

オリヴィエも行きたがっていたが、ノーヴェが来るとわかると行くことを諦めてしまった。一度、虹彩異色の目でノーヴェと対面してしまったらしい。それだとバレる可能性があるので部屋でお留守番してもらう事にしてもらった。

俺は無限書庫に行った後は歴史に出てくる有名な人物の特徴を調べ続けていた。聖杯戦争まで何も準備しない訳にもいかないのでやれることはやろうと決めた。おかげで歴史に関してはかなり知識がついた気がする。

そして、昨日いろいろな書店で買った歴史の本を読んでいるとアインハルトがやって来て、ヴィヴィオとの対決する場所に一緒に来てほしいと言われた。俺も2人がギクシャクしているのは気になっていたから二つ返事で返した。

 

「緊張しているのか?」

「……ええ」

「リラックスしとけよ」

 

俺は笑ってアインハルトの頭を撫でた。アインハルトの表情が少し柔らかくなった気がした。いつもならここで“子供扱いしないで下さい”と言ってくるのだが何も変化が無い。どうやら相当気を張っているようだ。

 

「……ま、頑張れや。緊張しすぎんなよ」

「はい」

 

そして、廃墟倉庫区画の広場へと進んだ。

 

「……」

 

ヴィヴィオが中央で静かに立っていた。隣にはヴィヴィオのデバイスであるクリスがふわふわと浮いている。周りにもこの対決を見るのために前回集まったメンツが揃っていた。

アインハルトは一度目を閉じて深呼吸をして、そして静かに目を開いた。

 

「お待たせしました。アインハルト・ストラトス参りました」

 

ヴィヴィオはこちらを向いた。表情はかなり真剣だ。

 

「来ていただきましてありがとうございます。アインハルトさん」

 

ぺこりと頭を下げるヴィヴィオ。それを見てアインハルトはどう受け止めたらよいか分からず困った表情をする。俺はここからは2人に任せようと思い観客席へと移動した。

 

「ガイさん、こんにちわ」

「こんにちわ」

 

元気な子供たちが挨拶をしてきた。俺も簡単に挨拶をする。

しかし、やはり友達が心配なのかヴィヴィオを心配そうに見つめている。

 

「ヴィヴィも頑張って鍛えてきたんだろ?毎日特訓したって言うメールが来るよ」

「ヴィヴィオは毎日頑張っていたからな。ノーヴェが自慢していた」

 

コロナ達の隣には同じくらいの背をしている右目に眼帯をしているチンクがいた。並ぶとチンクもコロナ達と同じ学年なんじゃないかって思う。

 

「……何か変な事を考えていなかったか、ガイ?」

「い、いや、何も考えていないよ」

 

俺は慌ててチンクから視線を離してヴィヴィオとアインハルトを見た。チンクは何か言いたげな表情をしていたが2人の対決が気になるのか俺と同じ方向へと視線を向ける。

 

「ここは救助隊の訓練でも使わせてもらっている場所なんだ。廃倉庫だし許可も取ってあるから安心して全力出してもいいぞ」

 

今回もジャッチをするノーヴェが指揮を取っていた。

 

「うん、最初から全力で行きます」

 

ヴィヴィオは浮いていたクリスを掴んで構えた。アインハルトも静かに構えた。

 

「セイグリット・ハート、セットアップ!!」

「……武装形態」

 

虹と碧銀の光が周り一帯を包んで2人は一瞬にして大人モードになった。アインハルトの大人モードは前見た格好だ。ヴィヴィオの大人モードはなのはさんを少し真似ているからか、サイドテールにして黒いインナーに薄い黒く薄い装甲の鎧を着てなのはさんと同じ白いバリアジャケットを羽織っている。組手などで何度か見たことある姿だ。

 

「ガイさんはどちらを応援するんですか?」

「……どっちも、だな」

 

どちらも俺との関わりはある。どちらかだけを応援するという事は出来ない。

 

「今回も魔法は無しの格闘オンリー五分一本勝負」

 

ノーヴェは右手を上げた。そして、それは勢いよく振り落ちた。

 

「それじゃあ試合開始ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノーヴェ「それじゃあ試合開始ッ!!!」

 

ノーヴェさんの合図で試合は始まった。構えているヴィヴィオさんを見る。

 

綺麗な構え……油断も甘さもない。いい師匠や仲間に囲まれて、この子はきっと格闘技を楽しんでいる。私とはきっと何もかも違うし、覇王の拳を向けていい相手じゃない。

 

私も静かに構えた。

 

私はいい師匠や仲間なんてものは存在しなかった。ずっと覇王の悲願を達成するために孤独を貫いてきた。でも、マンションに引っ越した時に隣に居たガイさんがマンションの使い方をいろいろ教えてくれた。第一印象が優しい人だった。ガイさんと居ると時折、温かい気持ちが胸の中に感じた。覇王の記憶でもないのに温かい気持ちが溢れてくる。

だから、ちょくちょくガイさんとはメールしているし、返信が来ると嬉しい。これが仲間っていうのかな?

 

私は一度思考を切り替えた。今はこんな事を考えている場合じゃない。

けど、結局覇王の拳を受け止めてくれる人物は現れなかった。ガイさんが受け止めてくれそうな気がするが、ガイさんは私との再戦を拒んでいる。

理由を聞いてみたら、

 

『俺では覇王の拳を受け止められない』

 

の一点張り。

そんな事はないと思う。たとえガイさんの魔力が低くてもあの動体視力と反射神経は覇王の型にひけを取らない。もしかしたら受け止めてくれるかもしれないのに。

 

……目の前の少女はこの覇王の拳を受け止めてくれるでしょうか?

 

私は思考を完全に戦闘一色に切り替えてヴィヴィオさんを見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガイさんが視ている。ううっ、緊張する。でも、そんな事を考えている場合じゃないよね。

 

私はアインハルトさんの姿を見据えた。アインハルトさんからはものすごい覇気を感じた。何処に隙があるのだろうか。たぶん探しても見つからないと思う。

 

凄い威圧感。一体どれくらい、どんな鍛えてきたんだろう。勝てるなんて思わない。だけど、だからこそ一撃ずつで伝えなきゃ。

 

私は走り出した。それに応じてアインハルトさんも走り出す。

アインハルトさんの右拳が早い。私は腕をクロスしてそれを胸前で受け止める。ものすごい音がした。腕にはピリピリした感覚が残った。なんて重い拳なのだろう。一撃一撃が凄い。

アインハルトさんはそのまま左拳を顔面に放ってきたので私はそれを紙一重でかわす。再び右拳が襲ってきたがそれを左腕で受け止める。何度か組手を交わしたが、アインハルトさんの肘が襲ってきたのでそれをしゃがんで避ける。アインハルトさんの腹に隙が出来た。私は右拳を構えて渾身の一撃を放った。

 

私の全力。私の格闘戦技!!!

 

その拳をアインハルトさんの腹にクリーンヒットさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アインハルトはヴィヴィオが放った右ストレートを腹に受けてその衝撃で擦り下がった。ヴィヴィオはそのまま追撃をするため走り寄って左ストレートを放つ。

しかし、それは簡単に受け止められ、アインハルトからの連撃が飛んできた。アインハルトは冷静に分析している。慌てることがない。

 

「……でも」

 

俺は2人の表情を見て笑みを零していた。

 

「ん?ガイさん、どうかしましたか?」

 

隣に居たリオが俺の発言を聞いたのかこちらに声を掛けてきた。コロナも俺の方を向く。

その間にヴィヴィオがアインハルトの拳に合わせて、カウンターパンチを放ちアインハルトの顔面にヒットした音が響いた。その勢いを殺しきれずアインハルトは下がった。

 

「はあああっ!!!」

 

ヴィヴィオが追撃を始める。

 

「2人とも楽しそうだなと思ってな」

「え?そうですか?」

「ん~そうかな~?」

 

俺の言った言葉にコロナとリオは理解できていないのだろう。確かに2人は真剣勝負で真剣な表情をして対決をしている。とても楽しそうには見えないだろう。

 

「表情は真剣でもなんだか楽しそうな雰囲気が2人から流れているんだよ。気のせいか?」

 

俺はアインハルトを見る。真剣な表情をしているがどこか楽しそうに対決をしているような感じがする。見ていて何となくというレベルで感じられるだけだが。ヴィヴィオは全力を出して楽しんでいるのは目に見えて分かっている。ヴィヴィオはそういう性格だ。その風に無意識にあてられいるのだろう。

 ヴィヴィオがアインハルトの無表情という鉄の仮面を剥がしてくれるかもしれない。

 

これならアインハルトが笑顔を見せる日は近いかもしれないな。ヴィヴィオが何とかしてくれそうだ。

 

「覇王断空拳」

「!!」

 

色々な思考に意識が言っている間に組手を何合か交わしていたアインハルトの拳がヴィヴィオの溝に当たり、ヴィヴィオを吹き飛ばして倉庫へ激突した。

 

「一本!そこまで!!」

ア「はぁはぁ……」

 

ノーヴェが試合を止めた。今回もアインハルトの勝ちのようだ。

コロナ達がヴィヴィオへと走っていく。たぶんアインハルトが防護を抜かないように気をつけていたから大丈夫だろう。

 

「楽しかったか、アイン?」

 

俺は武装形態を解除したアインハルトに近寄った。その言葉を聞いてアインハルトは俺から目を逸らして答える。

 

「……この気持ちは楽しいというものなのでしょうか?胸の内からうずうずと何かが疼いているような感じがします」

「ヴィヴィは積極的だから、消極的なアインとは相性が良いかもな」

「わ、私は消極的では……あっ……」

 

俺の言葉を否定しようとしていたアインハルトがふらっと体が傾いた。そのまま足で踏んばることが出来ずに俺の体へとぶつかった。

 

「大丈夫か、アイン?」

「す、すいません……あれ!?」

 

アインハルトは離れようとしているがうまく力が入らず戸惑っている。

 

「ラストに一発カウンターがカスってたろ。時間差で効いてきたか」

 

ノーヴェが先ほどの最後の場面を解説した。アインハルトの“覇王断空拳”に合わせて、ヴィヴィオがカウンターを放っていた。

確かにカスっていたがカスるだけでここまでのダメージだ。ヒットしていたら結果は逆だったかもしれない。

 

「ま、ダメージが抜けるまではじっとしてろよ」

「……ううっ」

 

アインハルトは何も言わず顔を赤くして俯いてしまった。

 

「お前らってやっぱり仲がいいよな」

「……まあ、悪い仲でもないし隣同士だしこんなもんだろ」

 

ノーヴェがあきれた表情でジト目をしてこちらを見てくる。

 

「……で、ヴィヴィオはどうだった?」

 

ノーヴェは追及するのをやめて、アインハルトの意見をきいてきた。少しまだ顔が赤いが頭を上げてノーヴェに視線を移す。

 

「彼女には謝らないといけませんん」

 

アインハルトは俺から離れた。大分ダメージも抜けたのだろう。

そして、目を瞑る。

 

「先週は失礼なこと言ってしまいました。訂正しますと」

「そうしてやってくれ、きっと喜ぶ」

 

ノーヴェは片目を閉じて笑った。このような結果になって満足なようだ。

アインハルトはそのまま、ディーチの膝枕で気を失っているヴィヴィオに近づいた。その表情にはさまざまな思考が入り混じっているように見えたが、そっとヴィヴィオの手を掴んだ。

 

「はじめまして……ヴィヴィオさん。アインハルト・ストラトスです」

 

前に一度、自己紹介をしたがあれは嘘のアインハルトの姿だった。今は本物のアインハルトが挨拶をしている。

 

「それ、ヴィヴィが起きている時に言ってやれよ」

「……恥ずかしいので嫌です」

 

だが、相手が起きていないと挨拶としての意味をなさなだろう。アインハルトは俺の言った言葉に対して冷めてきた頬を再び赤くして嫌がった。

 

「何処か休める場所に運びましょう。私が運びます」

 

アインハルトは気を失っているヴィヴィオを背負って歩き出した。

 

「素直じゃないね」

「そうですね」

 

近くに居たコロナが相槌をしてくすくす、と笑った。

 

とりあえず、アインハルトにはヴィヴィオが居るから大丈夫だと思う。オリヴィエでは無くヴィヴィオ。これなら覇王の悲願にそれほど苦しむ事は無いのかも知れない。

 

俺は今回の2人の対決でそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ミットチルダ都内

 

2人の対決後、俺は都内へと足を運んだ。アインハルトも付いてくるような事を言っていたが、ヴィヴィオが起きた時に対決した張本人が傍に居ないとダメだろう、と言って置いてきた。皆も休憩所でヴィヴィオを見ていた。

俺も居てやるべきなのかもしれないが、やることがあるので席を外して貰った。やることとは都内にある書店や本屋を徹底的に漁ること。

無限書庫に“聖杯戦争”というモノがヒットしないのならこのような所に存在するのではないかと考えて、無限書庫から戻ってきた次の日から行動に移した。いつもは仕事の後なので時間があまりとれなかったが、今日は休日なので残りの時間を全て検索に費やせる。

オリヴィエにも来てほしいものだが生憎と連絡手段がない。オリヴィエが通信端末を持っているわけもなく念話もなぜか使えない。仕方ないので1人で検索する事にした。

とはいえ、これで何店舗回ったのだろうか。数えるのも面倒になってきたので10以降は数えていない。

これほど探し回っているのに1つも“聖杯戦争”という言葉がヒットしない。

 

情報操作されているのか?

 

そんな事さえ思ってしまう。こうも情報が見つからないと探し回った疲労と精神からの疲れで思考が鈍り始める。今日はもう部屋に戻ってゆっくりするべきではないかと、簡単な方へと考えが行ってしまう。

それはダメだ。俺は頭を振って思考を切り替える。まだ探そう。きっと何処かに情報は眠っている。そう思いながら、曲がり角に入って行った。

 

「きゃ!!」

「わっ!!」

 

考え事をしていて視野が狭かったせいか出会いがしらで誰かとぶつかってしまった。その人物は尻もちをついてお尻をさすっていた。

相手は女性だ。黒い髪を黒いリボンでツインテールに縛り、翠の瞳。黒いニーソックスに黒く短いミニスカート。胸元に十字の紋章が付いている赤い服を着ている。

 

「すまん、考え事をして周りへの注意を怠っていた」

 

俺はそう言って、右手を差し出す。

 

「まったく、ちゃんと確認しなさいよ」

 

その女性は文句を言いながらも俺の差し出した手を握って立ち上がった。背は俺よりも低く、160cm位だろう。見た目はとても良い容姿をしている。目つきは鋭い。

 

でも、街中を歩いていたら声をかけられるんじゃないか?可愛いというか美人というか綺麗というか。100人の男が100人とも可愛いないし美人ないし綺麗と言うと思う。

 

女性はスカートについた埃をパンパンと叩いて叩き落とす。

 

「ま、誰しも考えなければならない事はあるし。いいわ、今回は無かったことにするわよ。でも、今度こんなことあったらタダじゃおかないからね」

 

女性は少し怒ったような表情をして俺の事を覗き込んだ。その仕草は男心を揺さぶるような可憐さがあった。

男である俺もそれにあてられていた。

 

「あ、ああ。悪かった」

「ん、ならよし。それじゃあ、またどこかで会う事があったら会いましょう」

 

女性は綺麗な頬笑みを俺に見せつけて、人ごみの中へと消えて行った。

 

「綺麗な人だったな」

 

俺は去り際に見せた頬笑みが脳裏に焼き付いてしまった。なのはさんやフェイトさんとはまた違う綺麗な女性。多分俺と同じぐらいの年だろう。幼げさが少し残っていた。

 

「っと、検索検索」

 

俺は頭を掻きながら思考を切り替えて次の書店へと移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの人……僅かながら何かを感知した」

 

私は先ほどの人とぶつかった後、路上からとあるアパートへと移動した。

そして、その中に入って鍵を締める。

 

『奏者よ、もう出ても良いのか?』

 

頭の中に声が反響した。私は頷く。

そして、私の目の前に人物が何処からともなく現れた。金髪の髪に翠の瞳。鮮やかな赤のドレスに随所に施された金の刺繍が高級感を漂わせ、大きく腰下まで開いた背中のラインがある。スカートの前が半透明なシースルーになっており白い下着が丸見えになっている。

私は最初に見たときにはセイバーだと思った。顔が瓜二つなのだから。だが、実際に話してみると全くの別人だった。

 

「しかし、ここも随分と古びた部屋だの、凛よ」

「それには同意」

 

私達は部屋を見渡す。所々ボロが目立つ。天井の一部は穴が開いているし、フローリングではあるが長年掃除をしていないからかかなり汚れが目立っている。部屋の角には必ずと言っていいほどクモの巣も張ってある。

ここに来てから寝床だけは綺麗にしたがそろそろ部屋も一通り掃除した方がいい。

 

「そうね。はあ、とりあえず掃除するわよ、セイバー」

「なんと、奏者は余に掃除をしろと申すか!?」

 

全く、このセイバーの性格はひどい。召喚してからそれほど日は立っていないが性格はある程度分かった。我儘な王様気質で唯我独尊タイプだ。

しかし、真名が何なのか聞こうとするとマスターである私に嫌われたら耐えられないからと真名を隠す。そういう可愛らしい一面も目撃できた。

 

見た目は前のセイバーに瓜二つだが中が全然違う。顔が似ているからどうもやりずらい時もあるけど、割りきることも大事よね。前のセイバーは凛々しくて大人しくて私的に嬉しかったのに。

 

「私だって嫌なんだから、一緒にやりなさい!!」

「嫌じゃ!美しいものなら余は好きだがこの汚い部屋は流石に我慢ならん!!」

「だから掃除しなさいっての!令呪を使うわよ!?」

 

私は長そでの赤い服を腕までまくって、令呪を見せる。同じ場所に同じ紋章が刻まれている。それを見せたからかセイバーは少し大人しくなった。

 

「もったいないことするな。それに、そなたは美しいのだからこのような掃除は家臣の物にやらせておけばよかろう」

「……褒めたって何も出ないからね。それに家臣なんていないわよ」

 

私は腕まくりしていた服を下ろした。美しいと褒められて悪い気はしない。怒りの沸点から少しメータが落ちて冷静になった。

 

「凛も短気でなければ良き術者だと言うのに、性格に難ありだぞ、奏者よ」

「流石に貴方に言われたくないわ!!」

 

しかし、そのメータは再び簡単に怒りの沸点を越えてしまい私はセイバーに指をさして怒鳴った。

 

こんな我儘な王様気質で唯我独尊タイプなサーヴァントに言われたくない。

 

「余は美しいモノが好きなのだ。英雄、色を好むと言うしな!美少年は良い。美少女はもっと良い。何であれ、美しいものは大好物だ!!うむ、奏者も美少女である」

「うっ……」

 

そんな事を言われたらなんて返せばいいのよ、バカ。私はセイバーから視線を外した。

 

「わ、わかったわ。私が掃除するからその間は霊体化してなさい」

「うむ、任せたぞ」

 

そう言って赤いセイバーは満足したような表情で消えた。霊体化したのだ。

私はため息をついた。家訓に“どんな時でも余裕を持って優雅たれ”を実践するとある。今はとても余裕をもって優雅など保てない。

今回の聖杯戦争は巻き込まれた様なものだ。あの第五次聖杯戦争の後、私はアーチャーとの約束で士郎の事を面倒見ることになった。別に士郎の事は嫌でもないしほっとくと勝手に“正義の味方”を目指して走り続けてしまう。走り続けるのは別にいいけどちゃんと順序を踏まないと意味が無い。

私はさっそく、学校の放課後に士郎を教室に呼んで魔術の勉強をさせようと思った。そして、薄い赤のかかった短髪に薄い黄色い目の士郎が教室に入ってきた瞬間、私と士郎の間に大きな“穴”が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――放課後の教室

 

「な、何よこれ……」

「な、なんだ?」

 

私達は突然現れた黒い“穴”に驚きを隠せなかった。それは“穴”と言うには変だ。黒い“丸”と言うべきだろう。トンネルの内部の壁が塞がって先が繋がっていないように見えるのだから。

 

「と、とりあえず、害は無さそうね」

「大丈夫なのか?」

 

士郎が険悪した表情のまま私の所まで近寄ってきてくれた。こんなイレギュラーは困る。

 

「これは、ギルガメッシュが引き込まれた“孔”に似ている」

「でも、あれは無くなったはず。今回の“穴”は聖杯とは関係ないわ」

 

聖杯はセイバーが破壊してくれた。その中にあったグロテスクな黒い泥も一緒に。正直、あんなもののために、アインツベルン・遠坂・マキリの三家がそれぞれの思惑から協力したことで始まった聖杯戦争の正体だったと。

私はあの聖杯の正体を知ったとき絶望感で胸の中に満たされてしまった。今まで苦労して求めてきたモノは願望機ではなかった。人を殺すことしかできないモノだったのだから。

 

『それは冬木の聖杯は欠陥品だったからだ』

「「!!」」

 

突然、声が教室内に響いた。渋くて低い声。それは一瞬、あの神父の言峰のような声だと思ったが違う。言峰は私の目の前でランサーの宝具“刺し穿つ死刺の槍(ゲイボルク)”で心臓を突かれたはず。もはや現世に存在しない。

その言葉の声を聞いた私達は戸惑いを隠せないでいた。

そして、今まで何も行動を起こさなかった“穴”が行動を起こした。

 

「わっ!!」

「凛、何かにつかまれ!!」

 

大きな地震が起きたのではないかと思うぐらいの地響きの揺れと共に塞がっていた“穴”が開いた。

そして、中からの吸引力が人が踏ん張って留まれることが出来ないほどの威力で教室内を襲いかかった。窓ガラスは割れて机などがどんどんあの“穴”の中へと吸い込まれる。

 

「な、なんなのよ~!!」

「うわああああああ!!」

 

無論、私たちもそれに抵抗できるわけ無く“穴”へと吸い込まれた。

そして、一瞬にして小さな薄暗い部屋に出てきた。“穴”から出てきた私は何とか着地をした。

 

「あれはなんなのよ、士郎」

 

私の隣に居た士郎に声をかける……が、その言葉に帰ってくる声が無かった。私は周りを見た。先ほどまで隣に居た士郎が居なかった。それだけではない。机などが先に吸い込まれたのにそれらも存在しない。この部屋に吸い込まれたモノが何もないのだ。

部屋には何もない状態。私は不安と恐怖で胸に満たされた。

何が起きてもおかしくない状況。周りには頼れる存在の士郎もいない。私の顔に冷や汗をかいているのも分かった。

 

『なに、そう緊張することではない』

「!!」

 

突然、私の前にモニターが現れて声が聞こえてきた。私は驚いた。電子機器全般がダメな私でもわかる。これは現段階の地球の技術力では無理な技術。

それが私の目の前で行われているのだ。驚かないわけがない。モニターは真っ暗だが人がいることが分かる。

 

「あ、あなたは誰?」

『私は“管理者”と名乗らせてもらう』

 

管理者……聖杯の?

 

私の脳裏には第五次聖杯戦争の監督者だった言峰綺礼が浮かんできた。いつも私をコケにしているような表現をしてバカにしてくる八極拳の師匠。

 

『先ほど言ったはずだ。冬木の聖杯は欠陥品だ』

「な、何のことを言っているの?」

 

冬木の?なら、聖杯は他にも存在する?

 

『いろいろ順を追って説明しよう』

 

そして、現在の状況も把握できないまま管理者からいろいろな話を聞かされた。

冬木の聖杯の正体は“この世の悪のすべて(アンリマユ)”で、聖杯が溜め込む“無色の力”は汚染されて“人を殺す”という方向性を持った呪いの魔力の渦と化して、冬木の聖杯は人を貶める形でしか願いを叶えられない欠陥品であること。

しかし、この星のミッドチルダにも聖杯が存在し、“無色の力”のままで存在。今はマスターが少しずつ参戦していること。

ここは地球と言う星があった世界ではなく“ワームホール”で別世界にやって来たことなど。

とてもじゃないが信用できない内容ばかりだ。私は表情を硬くして考え込んだ。

 

『今は三人のマスターが登録された』

「士郎は何処に居るのよ?」

 

信用できない奴から聞くのも変だが情報が豊富にあるこいつからは色々と聞けそうだ。同じ“ワームホール”に吸い込まれたのに、出てきたときには隣に居なかったのだから。

 

『ああ、あの“贋作”か』

「……今、なんて言った?」

 

私の中に怒りの感情がこみ上げて来たのが自分でも分かった。確かに士郎の“投影”は本物に近い武器を投影することが可能だ。それは偽物ともいえる。

しかし、モニター越しに映っている管理者は表現を悪くした言いで士郎の事をバカにしている。

アーチャーに頼まれた士郎をバカにされて私は怒っているのだ。

 

『あいつもこの世界に来ている。暇があれば探してみるといい』

「あんたが私たちを連れてきたんでしょ!!」

 

私は声を高くして怒鳴った。

 

『前の聖杯戦争で生き残ったマスターが居ると盛り上がると思ってな。なに、今回の聖杯は“無色な力”を持っている。願望機として申し分ないだろう。安心すると良い』

「私は一度も参戦しようなんて……!!」

「だが、喜ぶといい凛。君が願っていたクラス……セイバーで聖杯戦争を望めるのだぞ」

「え?」

 

私の言葉を遮って管理者は私の事をマスターとして登録しようとしていた。

断ろうとしたが最優のサーヴァントと謳われるセイバーのクラスが私のサーヴァントだってことになると気持ちが一瞬揺らいだ。

前回のセイバーが私の純マスターになってくれる。前は一時的だったとは言えセイバーのマスターになったのだ。人前には表情を出さなかったが嬉しかった。

 

「な、召喚の紋章!!」

 

その一瞬の揺らいだ気持ちが管理者が承諾と受け取ったのか私の目の前に赤い召喚の紋章が現れた。

そして、私の腕に前回の聖杯戦争と同じ形をした令呪が刻まれた。

 

『召喚は私がやっておいた。クラスはセイバーだが何を引くかはわからんがな』

 

そして、召喚の紋章から人物が目を瞑りながら地面からゆっくり現れた。金髪の髪に翠の瞳。鮮やかな赤のドレスに、随所に施された金の刺繍が高級感を漂わせ大きく腰下まで開いた背中のラインがある。スカートの前が半透明なシースルーになっており白い下着が丸見えになっている。

 

「セ、セイバー?」

 

私はその容姿を見て、前回参戦していたセイバーが脳裏をよぎった。あのセイバーと瓜二つなのだ。あの忠義なセイバーが私のサーヴァントになってくれると思い嬉しさが込み上げてきた。

 

「問おう。奏者が余のマスターか?」

「……はい?」

 

だが、その口調で脳裏に浮かんでいたセイバーの姿は消えた。セイバーが“奏者”や“余”などと言った記憶はない。

 

「貴方、セイバーでしょ?」

「うむ、余はセイバーだぞ」

「エクスカリバーは持っているの?」

「えくすかりばー?」

 

そのセイバーは私の言った言葉の意味が分からなかったのか首をかしげた。召喚されたセイバーは前回のセイバーではなかった。

 

「あなたはアーサー王?」

「誰だそれは?」

 

私はガクっと顔を落とした。前回のセイバーの真名は知らなかったがエクスカリバーからアーサー王だったって事は分かっていた。だが、目の前のセイバーはエクスカリバーを知らないと言っていた。

 

「私が貴方のマスターよ。で、あなたの真名は何?」

 

私は気を取り直して腕に刻まれた令呪をセイバーに見せた。セイバーはそれを見て私がマスターだと分かって頷いた。

 

「……どうしても真名を答えなければならないか?」

「ええ、パートナーである貴方の真名を知っておいた方が聖杯戦争を有利に進めるわ」

「だが、断る!!」

「はあ!?」

 

しかし、セイバーは問い詰めた真名を明かそうとはしなかった。

 

「余の真名を明かして美しいマスターに嫌われたら耐えきれん……」

 

セイバーが頬を赤く染めて視線をそらした。

 

私に嫌われたら耐えきれない?

 

「セイバー……貴方“反英雄”なの?」

 

“反英雄”とは悪によってかえって善を明確にし世を救ったもの。忌み嫌われる存在でありながら崇め奉られることになった者を差す。

 

「……かもしれんな。余は“暴君”とも呼ばれていた事がある」

「……暴君」

 

セイバーからの覇気が少し小さくなった気がした。セイバーは目を閉じた。このセイバーは“反英雄”なのかもしれない。真名をマスターに教えて関係を断ち切られるとを恐れているのだ。

 

「……分かったわ。真名は聞かないであげる」

「すまぬ、奏者の心使いに感謝する」

 

口調から王族であることは間違いない。“暴君”と“王族”で後で調べてみる必要があるわね。

 

『話は纏まったか?』

 

そこにセイバーが現れてから今まで声を出さなかった管理者が問いかけてきた。

 

「正直、聖杯戦争はもうやりたくないんだけど……士郎はこれがまだ続いていたと知っていたらきっと参戦してくるわ。私は士郎を止めないといけない」

『ふっ、では、遠坂凛は四人目のマスターだ。サーヴァントのクラスはセイバー。登録しておこう』

 

モニター越しから小さく笑い声が聞こえる。何か苛立ちを覚える。

 

「貴様、マスターの侮辱は許さんぞ」

 

セイバーの左手にはいつの間にか赤と黒のラインの捻れた特徴的な剣が握られていた。剣には銘として“regnum caelorum et gehenna”と刻まれているのが確認できた。意味はラテン語で”天国と地獄 ”。

その捻じれた特徴的な剣は精密に鍛錬されて作られたモノだろう。

 

『ふっ、貴様の剣は怖いな。モニター越しでもその剣からのオーラがこちらに伝わってくる』

「隠れていないで出てきたらどうだ?」

『生憎とまだ表に出れないのでな。では、凛よ。次の連絡した時は聖杯戦争の開始の狼煙だ。それまで住む場所がないと思うので、1つ部屋を貸そう。好きに使え』

「あ、ま、待ちなさい!!まだ聞きたい事が……」

 

薄暗い部屋からモニターが一方的に消された。

 

「……まったく、またこれに参戦するとはね」

「奏者は二度目か。なら心強い」

 

ありがと、と私は相槌を打って周りを見渡した。ドアがポツンとあった。他には何もない。窓も電球も。

 

「変な場所ね。それに……」

 

私は目を瞑って意識を集中した。大気中に存在する魔力(マナ)の量が測れた。その量は地球にあった魔力(マナ)とは比べ物にならないほど膨大だ。

“魔術”の特性は、術の構成を練る際に、自分以外の魔力……要は大気中に存在する魔力を集めて、自分自身の魔力と一緒に練り上げる。それを制御することによって初めて“魔術”というモノを扱う事が出来る。

私たち魔術師は“魔術”を秘匿で扱う事によって、魔術師を増さず大気の魔力(マナ)を減らさないようにしている。それでも地球の大気の魔力(マナ)は減り続けていた。

だが、ここには膨大な量の魔力(マナ)が殆ど手付かずの状態だ。

 

「……今回の聖杯戦争は頑張って行ける……かな」

 

魔術師は自らの許容量を超えた魔術を使ってはならない。それは術者の身を滅ぼ諸刃の剣。

私自身の許容量を増やすには時間がかかる。その代りに宝石に魔力を蓄えておくことはできる。これほどの膨大な量の魔力(マナ)だ。私自身を強化して行ければ“魔術”を強くしていける。

私はこれからの行動の算段を考えてそして微笑んだ。マスターがサーヴァントに敵わないなんてことはない。

 

士郎だってサーヴァントと渡り合えたのだから。私にだってキャスターと戦えた。

 

「うむ、余のマスターは頼もしく思えるぞ」

「ええ、しっかり働いてもらうわよ。セイバー」

 

セイバーは強く頷き、そして、霊体化して消えた。私はドアへと足を進める。

そして、ドアノブには一切れの紙が張りついていた。それを見るととある場所までの地図が書かれていた。おそらくこれから使う部屋への道筋だろう。

 

「あのバカも探さないとね」

 

私はため息をつき今後の行動を考えながらドアを開けた。眩い光が私を包みこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――アパート

 

「やっと、終わった……」

 

私はモップに体重をかけて、はあ、と疲れた息を吐いた。部屋はだいぶ綺麗になった。1人暮らししていくには丁度良い広さだ。

 

「マスターよ。ご苦労であった」

「やっぱり、あんたにもさせるべきだった」

 

赤いセイバーが姿を現した。私がすべてやると言ってしまったので最後まで私1人でやったが、やはりこのサーヴァントにもやらすべきだった。

先ほどの行為は後悔している。

 

「しかし、あの管理者ってやつはどこまで“聖杯戦争”の事を知っているのかしらね」

 

私は自分の姿を見た。黒いニーソックスに黒く短いミニスカート。胸元に十字の紋章が付いている赤い服。これは前回の“聖杯戦争”の時に浸かっていた服だ。教室の放課後に“ワームホール”に入ったので制服姿のままだったが、この部屋に来ると丸いテーブルの上にこの服が畳んで置いてあったのだ。それとこの世界の通貨なのかお金がいくらか置いてあった。

 

「まあ、それが戦闘服なら良いではないか。では、さっそく豪華なご飯を食べようではないか」

「駄目よ。ここにあるお金しかないんだから倹約していかないと」

 

この世界の通貨は分からないがあまり多くは置いていないだろう。宝石を買えたら買いたかったが学生鞄の中にある宝石しかない。

 

「はあ、どこの世界に行っても倹約するなんてね」

 

 さっきからため息が尽きない。

 

「余は倹約などやったことない」

「あんたに聞いていないわ」

 

聖杯戦争が始まるまではまだ時間はある。それまでに私自身をどれくらい強化できるか。それに、目の前のサーヴァントの正体も知っておきたい。

 

「ねえ、セイバー。あなたの真名はやっぱり聞いちゃ駄目?」

「すまぬ、余の真名は教えることはできん。だが、時が着たら必ず真名を教えよう」

 

そう、と私は相槌を打った。

 

「なら、それ相応の働きをしなさいよ」

「うむ、マスターの期待に添えよう」

 

セイバーは自信のあるような表情をして強く微笑んだ。

 

確かに腕には自信がありそうね。

 

「さて、それじゃあ、いろいろ準備をしないとね」

 

私は今後の活動を赤いセイバーと一緒に考えた。




fate/extraから赤セイバー参戦しました。

ええ、あの技を描写したかったのですw

やっている人はわかる。やっていない人は私の筆力で想像してね(無理言うなw)。

赤セイバーとの対決する人物はもちろん………。

何か一言感想がありますとやる気が上がります。

今後もこの作品を読んでくれたら幸いです。

では、また(・ω・)/
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