シルヴィが玉座につくと、ティアーゴが状況を説明する。
「先ほど偵察部隊から情報が入りまして、シュバルン国の兵士がイースタクト方面に進行しだしたとのことです」
その重たい表情からとてもまずい状況だというのが分かる。
聞いた話では戦力はシュバルン国のほうが数倍も持っているという話だ。
有象無象の兵士たちにはグリモアをぶつければ問題は無いのかもしれないが、問題は十字騎士団の連中だ。
多くの騎士団と戦ってきたわけではないが、アディルスクラスの相手が何人もいるとなると、とてもじゃないが勝てる気がしない。
こちらの世界での強さの基準が全く分からないがアディルスの強さはかなりのものだと戦ってなんとなく分かっている。
―待て主よ。我に兵士の軍団を押し付けるなど冗談ではない。
グリモアから抗議の声が聞こえてくるが、気のせいでなければ若干嬉しそうな声音な気がする。というより無茶でもやってもらわないと間違いなく国は滅んでしまう。幼少期から千夏以外の家系の者から嬲られていたので人の死にそれほどまでに恐怖を感じはしない彼だが、シルヴィに危険が訪れる可能性があるならばそれは徹底的に排除するのみ。
それに一人で軍勢を相手にするわけではございませんよ。イースタクト国の戦士たちがいます。
―やれるだけのことはやってみるが、主も死ぬでないぞ。
忠告のような言葉を貰うが、やってみなければ分からない。
「我が国の兵士たちの数は多く見ても七千程でしょう……。此度の戦争に負ければ間違いなく国は支配され私たちは殺されるでしょう」
シルヴィは目を伏せながら言葉を発する。
そこにどれほどの感情が込められているのか彼には分からないが、憎しみには囚われないでいて欲しいと思っていた。
「魔法師でお一人だけ心当たりがございます。実力は保障いたします。」
と、ここで和人が初めて言葉を発すると皆が一斉にこちらへ振り向く。
次の言葉を話し出すまで誰も言葉を出さない。
「グリモア、お願いいたします」
和人の言葉を聞き魔法陣からグリモアが現れる。
その様子にシルヴィも含め皆驚愕しながらこちらを見ている。
「我が名はグリモア、そこの主に興味が湧き契約を交わした者じゃ」
「詳しい説明を致しますと、学院へ侵入してきた襲撃者を撃退した後、フローリア様に契約魔法を教わり、グリモアと契約をさせていただきました」
グリモアから溢れる魔力に酔ったのか、何度か深呼吸して落ち着こうとしている者もいた。
納得してもらえたと確信し、和人とグリモアも会議へと参加した。