異世界奇譚~最強の従者へ   作:幻花

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彼の無双

 和人が先陣を切り敵陣へ斬り込む。

 その一連の行為は音を出さずに迫り敵兵士の首を刎ねていた。

「この程度にも反応できないとは、驚きましたね」

 敵陣のど真ん中でナイフに付着した血を払い落とし、軽く挑発をする。

 彼自身が今まで戦争で負けていたわけではないのだが、この場にいないシルヴィの為にも彼は心も体も折るつもりでいた。

 突然の敵に気付き兵士たちが和人に襲い掛かるが、振り下ろされる前に和人の鋭い斬撃が敵の首を正確に跳ね飛ばす。

 魔導師も遅れて魔法を放ってくるが、グリモアとの修行で受けていた魔法と比べると天と地ほどの差であり、避ける動作すら見せずに不動の構えを貫き、何事もなかったかのように突進し魔導師たちの首を刎ねる。

 その後素早く体を翻し騎士の首も刎ねてゆく。

 ほんの少しの間に彼は五十人近くの首を刎ねており、そのあまりにも異様な光景に相手の兵士の表情が次第に恐怖へと変わっていった。

 和人は笑みを崩さないまま人を斬りつけているのだが、恐らくこれが大きなダメージになったのだろう。

 

 戦いが始まり五分ほどが経ち、とにかく数を減らすためひたすらに首を刎ねていると十字騎士団の気配を感じ取り、そちらへ振り返る。

「随分と遅いご登場でございますね。私が手を止めていなければ今頃全滅していたかもしれませんよ?」

 適当に拾った兵士の生首を笑顔のまま騎士団目掛け投げる。

「イースタクトの戦士よ、貴様だけは絶対に許すわけにはいかん!死んでいった仲間のため、貴様をここで討たせてもらおう!」

「あなたは確か……ディーンさんでしたね。そのお言葉、そのままお返し致しましょう」

 そちらが何人死んだかなんて私たちには関係がないのですが、気付いていないのでしょうか?

 こちらがどれほど多くの命が消え去ったのか考えすらしない貴方たちにはきっと分からないのでしょうが。

 彼は少しだけ殺気を強め、睨み付ける。

 

 少しの間お互いが見合っているとグリモアたちがやってくる。

「大丈夫かどうかは……聞かなくても良さそうじゃな」

「ええ、問題ありません。それでは手筈通り余裕が出来たらお願いいたします」

 和人はグリモアに伝えると十字騎士団のほうを向き跳躍する。

 騎士団の前に着地した瞬間十字騎士団が一斉に魔法を放ってくる。

 魔法自体は喰らっても痛くもないので和人は敢えて避けずに直撃させた。

「奴には魔法が通じにくい、出し惜しみなどせずに倒すぞ!」

 ディーンの瞳が怪しく光り出すと、他の騎士も同じような現象が起こる。

 どういった状態になるのか分からないため一旦距離を取る。

 恐らくあれが悪魔の力を使っている状態なのでしょう。

 聞いた話によれば全体的に能力値が上がるといった効果のようですが、どれほどのものなのでしょう。

「ですが、世の中強化するために必要な時間を待ってくれる優しい敵がいるとお思いで?」

 少しだけ様子を見ていた和人だが、これは発動に必要な時間なのかもしれないと決め駆け出す。

 ディーンを庇うように騎士団の一人が斬りかかって来るが、剣が振り下ろされる前に首を刎ね、ディーンの元へ再び近づこうとした刹那和人の頬を何かが掠めた。

 動きを止め頬に手を当てる。

 特に切られてはいない……ということは魔法?

 しかしこのような魔法をグリモアは使っていなかったので和人には知る術がない。

 だが、ある程度の理解はすることができた。

「自分で言っておきながら、優しい敵になるとは……。全く嫌になりますね」

「貴様が躊躇っている間にこちらの準備は整った。行くぞ!」

 身構えようとしたがディーンがすぐ目の前に現れ、剣を振り下ろす。

 あまりに唐突な出来事に防御に至るまでに少し遅れ、防ぐために使った短剣はとても簡単に折れてしまった。

 だが軌道をズラすことはできたので和人自身にダメージは無く、今度こそ本当に距離を置いた。

 

「なるほど、それが悪魔の力ですか」

 速さの上がり具合が尋常ではなかったが、しかしあの程度の速さに留まるなら問題はなさそうだ。

 それよりも厄介なのがあの攻撃力か。咄嗟の防御とはいえ加護を貰った短剣を一発で破壊するとは思わなかった。

 悪魔の力の効果がどの程度かは分からないが、ゲームで言うところの全ステータスが上がっている状態ってわけか。それでいてバーサーク状態とかにはならないおまけ付きと。

「しかし短剣が一本あるだけ感謝しないといけませんね」

 再度跳躍しディーンではない十字騎士団の首筋目掛け短剣で襲い掛かるが、同じように能力が上がっている騎士団もこちらに気付けるようになっていた。

 和人はさらに速度を上げるため力いっぱい地面を蹴り飛ばし、さらに速度を上乗せした一撃で首を刎ね飛ばす。

 刎ねられる前に驚く動作が見られ、和人の狙いが若干ズレてしまい返り血を浴びる。

「……少しばかり腕が鈍ってしまったようですね。と、グリモアたちも問題なく事が進んでいるようですね」

 時々少し離れた場所で魔法の炸裂音が響いていたが、頻度が減って来ていた。

 これはグリモアたちがある程度敵の戦力を削ったということだ。

「それにしても―」

 彼がこの近辺にいないのは一体どうしてなのでしょうか。

 

「多数を相手にするのだから確実に数を減らしていくのは当たり前か」

 このまま一方的にやられていけば間違いなく数の有利さを失う。

 だがそれもこれまで。これ以上は決して失わぬ!

 そうなる前に一刻も早く倒さねばならない。

 和人を睨み、剣を構え突進する。

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