異世界奇譚~最強の従者へ   作:幻花

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古の魔道士

 保健室へと連れて行きシルヴィは和人の手をギュッと強く握る。

 彼女は誰の命も失わずに元のイースタクト国のような活気を戻したいと考えたいた。

 その中でも特に和人に対しては人一倍親身になっている。

 彼はこちらの世界では孤独なのだ。それを少しでも和らげたいと心の底から思っている。

 もっと知りたいという気持ちもあるが、今は彼が起きることを最優先に願っていた。

 その瞬間和人は表情を苦しめた。

 

 彼は再び小さい頃の夢を見ていた。

 千夏に降りかかりそうになる災いの種を全て自分が肩代わりし、自分の将来を壊した。

 彼自身は何も後悔はしていないが、いつもこの夢を見ると胸が苦しくなる。

 しかし、いつもならまだ続く夢なのだが温かな何かが触れるのと同時にシルヴィの声が聞こえ彼の意識は覚醒する。

 

「王女様、御心配をおかけいたし―」

 すべてを言い終わる前に抱きしめられ思わず言葉が止まる。

 そしてこれほどまでに自分のことを心配してくれる人が千夏以外にいるという事実に彼の擦り減った心に安らぎを与える。

「本当に……良かったです……」

 泣きじゃくる王女の頭を撫でながら優しくなだめる。

 彼女はこんなにも自分のかわりに泣いてくれている。

 彼女はこんなにも自分のことを心配してくれる。

 シルヴィの頭を優しく撫でながらぎこちなくも笑顔を見せる。

「それにしても敵はどのように侵入してきたのでしょうか……?人より少しだけ気配を感じるのは得意なのですが、一切感知することができませんでした……」

 この事実だけは伝えて今まで以上に警戒を強めてもらわないと。

 敵の個々の戦闘力を考慮しなくてもこちらが圧倒的に不利なことに変わりはないだろう。

「そうですね……恐らくハイドの魔法を使ったのでしょう。気配を隠す魔法ですし、第六感などでは分かったりはしないのかもしれません」

 気配を消す魔法……あっちで嫌というほど体に叩きこまれたからどうにかなると思っていましたが、異世界に異世界の常識が通じるわけありませんか。

 とりあえず今は学業に専念しないといけませんね。

「王女様、そろそろ教室に戻りましょう。今度は自分もご一緒致しますので他の生徒の方々にこれ以上心配を掛けさせるのはやめましょう」

 にっこりと笑いながら手を差し伸べる。

 その手を握りながら和人とシルヴィを連れ教室へと戻る。

 

 教室へ入ると和人の周りにクラスメイトが集まる。

 全員が心配しているらしく戸惑ってしまう。

「私はこれから王城へ戻って対策会議に出なければなりませんがカズトはそのまま授業に出てください」

 その様子が気に入らなかったのか、ややふてくされた声音で言うと教室から出て行く。

 和人は慌てて声を掛けるが無視され、何がいけなかったのか分からず困ってしまう。

「あ、あの、ヤナギさん大丈夫でしょうか?」

 と、考え事をしていると声がかかる。

「えっと、あなたは…?」

 名前が分からずどう呼べばいいのか分からないから仕方ないですが、それにしても綺麗な髪だ。

 

「私としたことが申し訳ございません。エリス公爵家の長女、エリス・ホリーと申します。エリスと呼んでくださると嬉しいですわ」

「こちらこそよろしくお願い致します、エリスさん」

 握手を求められ和人は笑顔で手を差し出す。

 友好的で良かった。これなら王女様も安心だろう。

 握手を終え和人は自分の席へと戻ろうとしたが目の前に人が立つ。

「おうカズト!よろしくな!俺はシュヴァインだ。ディオス・シュヴァイン、気軽にディオって呼んでくれ」

 クラスにいる数少ない男子生徒ですか、貴重な話し相手になりそうですね。

「こちらこそよろしくディオ」

 同じように笑顔で握り返す。

 チャイムが鳴り響くと和人は自分の席に戻り窓から外を眺める。

 先のシルヴィのことが頭から離れずモヤモヤとする。

 分からない、何がいけないのか分からない。

 結局今日の授業は全く頭に入らずそのまま帰宅しようとしていた。

 しかしフローリアが教室に来て和人を呼び出し帰ることはできなくなった。

 疑問に思ったがそのまま着いて行くしかなかった。

 着いた先は学院の裏にある森だった。

「木々が踏み荒らされていますね……。おそらくこの森から侵入したのでしょう、シュバルンの者たちは」

「そうだろうな。で、実際に戦ってみてどうだったかね?実力だけなら余裕だと私は思っていたのだが」

 フローリアはこちらを見透かすような瞳で見ていた。

 いや、すでに見透かされているのかもしれない。

「仰る通りでございます……。近接での実力で負けたとは思っておりません……」

「だろうね、つまり今の坊やに何が足りないのかと言えばそれは魔法に対しての知識だ」

 やはりそうなるのだろう。

 魔法について詳しく知ればどこから発射されるかくらいは分かるのかもしれない。

 今の自分に足りないのは圧倒的に魔法への知識や対抗策だ。

 それは今日実戦で痛感した。

「まず魔法への対処だが実際に魔法を使えるようにならないと感じることはできない。つまりその時点で坊やが魔法を使えないということを暴露していることになるのさ。まずはそこから始めるとしようか」

 なるほど、気配を掴むみたいな感じですか。

 魔法の感覚を掴めば何となく分かるようになるかもしれない、と。

「そもそも魔法にも自らの魔力を使う潜在型と精霊や悪魔などと契約して魔力を借りる転換型の二種類があるけどそのことに関しては知っているね?」

「はい、そのことは読書である程度の知識を得ております。ただ自分にはその魔力の流れを感知できないのですがこれは転換型の典型なのでしょうか?それとも誰かに魔力の波動のようなものを送ってもらって魔力に感知できるようになるのですか?」

 知らないことは知っておきたいためいつもより口数が多くなる。

 予想以上に質問してくる和人に驚いたのか固まってしまうフローリア。

「なぜ魔法を使えるようにならないと魔法を視ることができないのは未だに証明されていないが、恐らく転換型なのだろう。今から坊やに魔力を送るからそれを感知できるか教えておくれ」

 フローリアが近寄り魔力を送ろうとする。

 その直後体がとてつもない拒否反応を起こし魔力をかき消してしまう。

「これは……?こんなことは初めてだ……坊やは一体……?」

 この世界の住人じゃないからなのかそれともそういう体質なのか―。

 しかしこれで確かめる術がなくなり自分が潜在型なのか転換型なのかは分からなくなってしまった。

 いや、そもそもこの世界の生物ではないのだ、自分に魔力があるとは考えにくい。

「となると転換型……契約する場所というのはどこでもいいのでしょうか?」

「まあそうなのだがな―」

 辺りを少し見回し何かを警戒しているように見える。

「この学院ではなにかと不便だ、ちょっと目を瞑っていてくれるかい?」

 言われるまま和人は目を瞑る。

 突如体を謎の浮遊感が襲う。

 数秒間浮遊感を感じた後フローリアの声が聞こえる。

「もう目を開けていいよ坊や」

 声が聞こえゆっくりと目を開ける。

 視界の先にはたくさんの本が置かれていた。

 綺麗に保管されているわけではなく様々なところに置かれていた。

「まるで魔女の家のような……そんな感じがします」

 あたりを見回しながらそんなことを呟く。

「魔女の家……ふむ、なかなかに面白い表現、気に入った」

 フローリアは感心したような声音とともに一冊の本を取り上げる

 ルーン文字のような字体でタイトルが書いてあり読めずにいた。

 改めて周りの本を見回すとどれも知識にない文字で書かれていた。

 おそらく今では使われなくなった文字なのだろう。

 王城での書物では見たこともないような文字ばかりですね、宝物庫などに行けばあるのでしょうが。

「さて坊やにはこれから契約してもらうよ。恐らく低級な契約相手にはならないと思うけれど大丈夫かい?」

 その言葉の意味には自分の異様な体質に適応できることができる悪魔や精霊が少ないことを意味しているのでしょう。

 もとより強くなりたいと思っているのでフローリアから聞いたことは好都合というものだった。

「それじゃあ坊や。今から呼び出すから呼び出した後は任せるよ」

 頷いたときこの部屋の空気が明らかに変わった。

 周囲を警戒しながらフローリアのほうを見つめる。

 先ほどから持っていた本を広げ、本の上に魔法陣が展開される。

「古の者たちよ、此の者に汝らと対等な契約を申し込みたく儀を行った。此の者と契約してくれる者はいないだろうか?」

 どうやらあの魔法陣は精霊たちと話すために必要なもののようだった。

 悪魔が出るか精霊が出るかそれ以外が出るか―。

 額に汗を浮かべながら和人は待っていた。

 少しして部屋にある魔導書が一斉に開き出すのと同時に無数の魔法陣が現れる。

 この現象にはフローリアも驚いたらしく辺りを警戒していた。

 持っていた本が空高くへと浮かびその周りを黒い靄が包み込む。

「我が契約相手になろう……人間」

 それは少女の姿をしていた。

 しかしその少女の外見からは恐ろしいほどの力を感じる。

 これは……蛇が出たのか……?




考えれば考えるほど文章を綴るのが分からなくなりますね。

それは置いておいていよいよ和人の契約相手が現れました。和人の魔法への対策はできるようになるのでしょうか
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