異世界奇譚~最強の従者へ   作:幻花

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特訓

 王城に戻るとシルヴィがいち早く駆け寄って来る。

「カズトさん、こんな遅くまで一体どちらにいらっしゃったのですか……?とても心配したのですよ……」

 どこか申し訳なさそうな表情を浮かべながらチラチラとこちらの様子を窺っている。

 日が沈んでから帰って心配されるとは、思ってもいなかった。

「申し訳ございません王女様、フローリア学院長様に呼ばれておりまして」

 軽く事情を説明しながら、食堂からシルヴィの食事を持っていく。

 彼が貰いに来てだからか、と意味深な言葉を呟きながら料理を渡す。

 少し不思議に感じたが、悪い意味ではないのだろうと判断し聞いたりはしなかった。

「お待たせいたしました」

 自室へと料理を持っていきそのすぐ横で食べ終わるのを待つ。

 ありがとう、とお礼を言うと王女はゆっくりと食事を始める。

「カズトさん、今日の昼は申し訳ございません」

「私の不用意な発言のせいでございます、王女様に非はございません」

「ではおあいこということでよろしいですね?」

 くすりと笑いながらこちらを見ている。

 自分としては王女様の心のわだかまりが無ければそれでいいので頷くのが適切だろうと判断し、同意した。

「かしこまりました、シルヴィ様。明日から三日ほど学院長様の元で魔法に関する知識を教わろうと考えておりまして、恐らく帰るのが同じような時間となってしまうのですが、よろしいでしょうか?」

 彼の要望を聞いた途端シルヴィの表情が変わる。

 なんとなく理解はできていましたが、やはり今度の戦いのために……。

 そう思い至と表情からも申し訳ないという気持ちが伝わって来る。

「やはり王女様はお優しいですね。大丈夫でございます、必ずや無事にお戻りいたしますので」

 優しいいつもの表情のまま諭す。

「分かりました。カズトさんを信じます。落ち着いたら私がイースタクトを案内いたしますわ!」

 

 そして真夜中、和人はグリモアを呼び出し魔法の感覚を掴むため特訓を始める。

 外の空気を吸うのが久しいのか、グリモアは大きく深呼吸を繰り返していた。

「夜風に当たるのは何百年ぶりだが、気持ちいいな」

 と、少女見た目からは想像もできないほど優雅に立っていた。

 その様子をどこか嬉しく感じながら、彼女が満足するのを待つ。

「待たせたな主よ、特訓を始めるか」

 数分が経過し、満足したグリモアの手から炎が現れると同時に和人目掛けて襲い掛かって来る。

 彼はその魔法を一切目を逸らさず見つめ、分析する。

 それはどういう動きをするのか、規則性のある動きなのか、術者の意思で変えられるのか。

 結果としては、こちらに一直線に飛んでいくだけだった。

 それが分かり、満足すると迫り来る炎に彼は腰を据え拳を突き出す。

 幼い頃から火傷などが残らない程度には火に弄ばれていた。そのおかげか、彼の皮膚は凄まじく硬くなっていた。

 そのため炎の魔法は霧散し、彼の拳からは蒸気が発しているだけだった。

 その様子をグリモアもまた、まじまじと観察していた。

 やはり主は面白い体をしておる。魔法を打撃で打ち消した者など初めてじゃ。我が生きていたときには無かったのう……。

「ふぅ、次は水魔法でお願いいたします。もう少し威力を上げられるならお願いいたします」

「うむ!ではいくぞ!」

 先ほどまでとは違い一直線ではなく不規則な動きをしながらこちらに迫って来る。

 やはりそう簡単にはいきませんか。しかしこの程度なら!

 目の前まで迫ってきた水流を避けながら一つずつ壊そうと拳を突き出そうとするが、その寸前グリモアが背後まで迫り魔法を放つ。

 ガードが間に合わず吹き飛ばされるが、痛みなどは無かった。

 着地しグリモアのほうを見つめると驚きの表情のままのグリモアがいた。

「今の感触……ふむ、なるほどなるほど。不思議な能力じゃ!」

 まるで新しい物を発見した時のように喜々とした表情で歩いてくる。

「主よ、今の魔法でダメージを負ったか?」

「吹き飛ばされはしましたが、ダメージは一切受けておりません」

 その答えにグリモアがやはり、と言わんばかりの表情で頷いていた。

「原理はよく分かっておらんが、主は魔法への耐性が非常に高いようだ。魔法自体のダメージはほとんど受けないようじゃが、その後に発生する現象には働いていないようじゃが」

 そこまで説明されればおおよその検討はつく。

 あの時も火魔法を受けてもダメージは受けず、着弾した後に発生した爆風で吹き飛ばされたのかというのも納得できる。

 ガードさえできればとても優秀な力ですね、元の世界でひたすら我慢してきた暴力のおかげでしょうか。何とも言えない気持ちですが、有効に活用してしていかなければなりませんね。

「しかし物理は普通に入るみたいです、表面にできる切り傷などではあまり痛みを感じないので私との相性は良いものかと」

「なるほどのう、まあ魔法に対して耐性があるというだけでかなり脅威じゃからな。きちんと守るべき者くらいは守れるようにならねばな。では続きと行くか」

 グリモアは耐性があると分かると先ほどの二つの魔法を同時に放ってくるだけでなく、他の属性魔法も同時に唱えてくる。

 和人は冷や汗をかきながら一つ一つ避ける、壊すのどちらかを行う。来たるべき戦いのために―

 

 シュバルン国城内、アディルスは今か今かと戦意を剥き出しにしながら待っていた。

 遅くても後二日したら城を出て攻め入る、それが楽しみでしょうがない。

「我の忠告をきちんと受け、対策を練ったならばさぞ楽しい戦いになるのであろう。くくく、ここまで昂るのも久しい。実に何十年ぶりの戦争だろうか」

 最も、ここの戦士たちの大半が戦争というより蹂躙と考えているようだが。

 この戦で命を落とされても特に痛くもないがな。

 アディルスの笑い声が辺りに響き渡り、他の戦士たちはそれを遠巻きに見ながら恐れていた。




全体的に文章を短くして更新を速めて行こうと努力しています。
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