山猫の砲撃手   作:中澤織部

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ついに始まった公開カラードマッチ。
……と思っていたら、実際の試合自体はまた次回です。

今回は、他リンクスとの絡みなどをお楽しみください。

……メノと勇季ののろけとか誤字とか、コメント等からご指摘してくだされば有り難いです。

後、リンクスとの絡みなどについても、リクエストなど頂ければ幸いです。




公開カラードマッチ(前編)

公開カラードマッチ当日。

 

「うっわ、なんだよこの人の数は……」

 

依頼通りに勇季とメノは、カラードマッチ開催の中心地であるカラード本部に来ていた。

普段はそれなりの出入りがある程度のカラード本部ビルとその周辺の施設郡は、現在カラードに所属するリンクスと、彼らのネクストを整備するスタッフや各企業の派遣した人員を始め、多くの人で賑わっていた。

今回企業連が主催する公開カラードマッチは、その試合風景などが重役のいる各クレイドルや地上で企業が管理する地下都市群などに中継される為、企業からすれば自社製品をPRする格好の舞台だ。

試合の合間には各企業がCMを放送することもできるので、ネクスト用のパーツや武器のみならず、一般に流通する品物も宣伝できる。

だからこそ、企業は自社製品を売るためにも、自陣営に所属する専属傭兵や、関係の深い独立傭兵を宣伝の為に囲い込む必要があった。

勇季が受けた依頼も、そういった理由と経緯から舞い込んできたものだ。

人混みを掻き分けてカラード本部の中に入ると、とにかく広く作られた、五階層までが吹き抜けになったロビーが直ぐ目の前に広がる。

リンクス戦争時には船を本社にしていたBFFや、本社そのものが浮遊する要塞だったGAに、本社の形状や建築方法が突飛過ぎたレイレナードといったものに比べると些か普通に見えるが、ここはリンクス達の情報や各種資料を初め、各企業の機密の一部が保管されている最重要施設ということもあり、この施設にはかなりの防衛設備と最新技術が導入されている。

最新の建築技術と欧州における伝統的装飾の施された優美にして華美なロビーは、今や大勢の人間が入り乱れたパーティー会場さながらであり、中には知っている顔もちらほらと見えた。

 

「あら、よく見たらエルカーノさん達もいるわ」

 

見知った顔を見つけたらしく、メノは人混みの中でも特に人の多いグループを示した。

衣服にGAやMSACといった企業のロゴが入った技術者や整備士、そして企業の職員の他、恐らくはリンクスらしき人物が数人程。

GAからの依頼で参加した勇季とメノは、そのグループへと向かった。

 

「失礼、GA社への協力を依頼された傭兵の加藤だ。……責任者と話したいんだが、今どちらに?」

 

そう声をかけると、グループの中から何人かが反応し、此方に視線を向けてくる。

一番初めに応えたのは、何処にでもいそうな雰囲気のある青年。短くカットした明るい茶色の髪や目付きも含めて一般人と言った容貌の彼は、こういう世界には慣れて居ない、若さゆえの経験不足という印象が強い。

 

「お、加藤じゃねえか。やっぱりお前もこっち側だったか?」

 

誰を相手にしても態度を変えない気兼ねないスタンスは、勇季のような新参からすれば、有り難いと思える存在と言えた。

 

「まあな。やはりダンも此方側なのか?」

 

やや肩を竦める調子で、勇季は青年『ダン・モロ』に挨拶をする。

ダンはカラードランク28位の独立傭兵で、実力自体は他のリンクスと比べても優れているとは言えない。むしろ弱い部類と言えるだろう。

ネクスト戦力を欲するGAからみても、数合わせ程度に過ぎないレベルの人材だった。

 

「へへへ、やっぱGAは見る目があるぜ。ま、俺達の実力なら楽勝ってもんだろ?」

 

……この妙に自信過剰な台詞と自信を覗けば、正義感と情に厚いただの好青年で済むんだが。

そう内心で苦笑しながらも、勇季はダンとたわいもない会話を交わした。

ネクスト用装備の試作品や配備された新型アームズフォートの噂から、最近始まったGAのTVアニメ『ネクスト戦隊サンシャインズ』の話と、趣味の合うダンと話す話題は多い。

 

「それでよ、サンシャインズの新「ねえ、ちょっといいかしら?」て、……どうしたんすかメイ姐さん?」

 

そう言ってダンとの話に割り込んできたのは、緑がかった黒髪と長身でグラマラスな体型を隠そうとしないラフな衣服を纏った、それでいて年上の女性のような落ち着いた印象を与える女性。

GAに所属するカラードラーランク18位のリンクス『メイ・グリンフィールド』だった。

彼女は、品定めするような素振りで勇季を見据えると、チャームポイントとして有名な笑みを浮かべる。

 

「へえ、貴方が噂の新人クンかしら?」

 

「始めまして、ミス・グリンフィールド。ランク31、加藤勇季と申します」

 

恭しく礼をすると、彼女は手を横に振ってそれを制した。

 

「イヤね、メイで良いわよメイで。そんなに畏まらなくても大丈夫よ?」

 

彼女、メイの浮かべる嫌みのない笑みは、成る程エンブレムと相まって『スマイリー』の異名に相応しい魅力的なものだ。

 

「貴方って、GAの中では結構噂になってるのよ? --かつてのGA最高リンクスのパートナーで、元は有澤重工ノーマル部隊所属のエースらしいじゃない?」

 

「そんな細かいことまで知られていましたか」

 

「私も、貴方のパートナーには世話になってるもの。久しぶりに会いたくなったし」

 

だから、と彼女はそう言うと勇季の傍らに居たメノへと視線を向けた。

対するメノも少し歩み出て、久しぶりに同郷の知り合いと出会えたからなのか、綻んだ表情でメイと視線を交わしていた。

 

「本当にお久し振りです、メノ先輩」

 

「ええ、久し振りね、メイ。元気にしていたかしら?」

 

二人の会話は当たり障りのない風に聞こえはするが、二人の表情を見れば、それだけでも充分なのだとわかる。

互いにGAを出身とする二人の関係について、勇季はメノから所々話は聞いてはいた。

彼女達は国家解体戦争より少し前の段階で知り合っていたらしく、企業のリンクス養成施設における先輩と後輩の間柄と聞いていた。

……しかし、何というか似ているなあ。

数歩ほど二人から下がってみて、勇季は思った。

メノもメイも、両者とも同じように女性らしくしなやかで美しい肢体をしている。

メノは小柄ながらに恵まれたスタイルをしており、一方でメイはその長身に見合ったプロポーションのスタイルといった違いはあるが、二人の挙動の度に揺れる胸は、一介の男として注視したくなるものだった。

 

「……やはり、胸というのは格別なものだなぁ……」

 

「「…………」」

 

無意識の内に勇季が口走ると二人は急に黙り、勇季の方を見た。

一体何故に此方を見ているのか、それに目付きも半目で、半分呆れと侮蔑が入り交じっているのどういうことだ、と勇季は疑問を浮かべたのだが……、

 

「ねえ勇季? 後で話があるのだけど……」

 

静かな口調に恥ずかしさと怒りを含ませ、顔を薄く赤らめながらメノが言う。

どうしてか分からずに勇季が疑念を浮かべていると、先程から空気になりかけていたダンが、呆れた調子でニヤニヤと笑いながらメノの反応について代弁した。

 

「あのな加藤、お前は何を口頭で口走ってるんだ?」

 

それを聞いて、勇季はやっと自分が無意識に口走っていたことを理解し、メノの表情の理由を知った。

 

「ああ、成る程すまないメノ。どうやら、思っていたことがつい口に出てしまったようだな?」

 

「謝るのなら、止めてもらいたいのだけど」

 

「ハハハ、何を言っているんだ? お前が魅力的な女性なのは当然の事実だろう」

 

「だからそういうことじゃなくて……ああもう……!」

 

と、メノ静かな怒りを抱きながら右手で勇季の左手を掴むと、そのまま何処かへと連れていこうとする。

 

「おいおい一体どうし「黙って」……」

 

「そ、それじゃあ俺はカニスとでも話してくるからよ」

 

そう言ってダンは微妙な表情で片手を挙げつつ、人混みの中に逃げていった。

 

「あら、じゃあ私もお邪魔させていただくわ」

 

メイは手を軽く振りながら、ズルズルと引き摺られていく勇季に笑みを向けてそう告げると、GAの整備員らしき人物に声をかける。

一方で、当の勇季はメノに拘束されたまま、何処かへと連れていかれたのであった。

 

 

 

 

 

……もう何で、ああいうことを平然と言ってしまうのかしら。

勇季の腕を掴んで連れて歩きながら、私は内心でため息をついていた。

勇季は何というか、普段は真面目で気遣いのできる人間なのだが、抜けているからなのか何気ない部分で女性を口説いていたりする。

私をパートナーとして選んでくれてはいるし、だからこそ、彼にとって私が一番大事なのは理解している。

けれど、

……私一人だけを見ていて欲しいだなんて、昔の私なら言いもしなかったのに。

私は、元々はプロテスタントの人間だった。

『根本主義者』と、企業の人間達は私のことを読んでいた。

他と比べても裕福な家に生まれた私、小さい頃から両親と同じように毎日熱心に祈りを捧げていて、両親と縁のある牧師様からは『君ほど熱心な信徒はそういないよ』と褒められたこともあった。

リンクスとなった後もそれは変わらなかったけど、それはあの日から変わってしまった。

 

『ハイダ工廠粛清』

 

リンクス戦争が勃発した直接の原因であり、私がネクストから逃げ出した理由となる事件。

あの日、私はGAの東欧方面基地で待機を行っていた。

後になってから、それがGAE離反に対する粛清の為だったと聞かされたが、その時の私はただ待機命令に従っていたに過ぎなかった。

その時、GAEからハイダ工廠防衛の要請が届けられ、その時の私はそれが待機していた理由なのだと勘違いしてしまっていた。

ハイダ工廠に向かった私を待っていたのは、どちらかと言えばGA側に与していた筈の、あの『アナトリアの傭兵』だった。

結果は知っての通り、私はあのレイヴンに敗れ、それでも運良く生き残った。

けど、事件から数週間の後、一時的な眠りから覚めた私が聞かされたのは、アクアビットと手を結んだGAEの離反と粛清という一連の真実。

そして、それによって起こってしまったリンクス戦争。

生き残ったのではなく、“生き残ってしまった”のだと、GA本社の特別病棟のベッドの上で、私は理解した。

GAの最高戦力が、裏切り者であるGAEに騙された挙げ句に敗北。

おまけに撃破された際、AMSの強制切断によって後遺症を患い、ネクストに乗れなくなってしまった。

私の誇りでもあったリンクスという強さの称号。

最早戦力として見なされていなかった私は、ストレスと死への恐怖から、次第に何もかもが信じられなくなっていて、かつてはあんなにも信じていた神様へすがることすらも出来なくなっていて。

 

気付けば、私はGAから逃げだしていた。

 

リンクス戦争の間、戦いから逃げるように各地を放浪としながら生き延びて、そしてとある町で勇季に出会った。

今になって思い返すと、その時の私は酷く惨めだったのをよく覚えている。

当時の私は現実から逃げるように薬に手を出していて、なけなしのお金と残飯で飢えを凌いでいた。

余りにもみすぼらしかった私に声をかけてくれたお人好しの彼を、その時の私は神様か何かと勘違いしてすがった。

今でも、私は彼との出会いを奇跡だと思っているし、彼のお陰で生きていられるのだと思っている。

でも、と私は思う。

今の私は、ただ彼に依存しているに過ぎないのだ。

だからこそ、公私のパートナーとして、一人の女性として私を選んだ彼が他の女性と関係を持つことが怖くて仕方がないのだ。

人目の無いところで足を止めて、彼を掴んでいた手を放す。

 

「おいおい、全くどうしたんだ?」

 

振り返って見た彼は、あの日に出会った時とほとんど変わっていない。

お人好しで努力家で、今の時代には珍しい、善人と言える人。

 

「あの、その……」

 

言葉がうまく出てこない。

ただ彼を独占したいだけの臆病な私は、何も言うことができなかった。

 

「--大丈夫だ、メノ」

 

彼が私に声をかけた。

 

「何があっても、俺の一番はお前だよ」

 

ああ、変わっていない。

その言葉を聞いた私の目から、急に涙が零れた。

 

「ええ、わかってるわ。勇季」

 

胸元のロザリオを握りしめて、一息を吐く。

幼い頃から大事にしていたこのロザリオだけが、私の数少ない大切な宝物だ。

大丈夫、いつもの悪い癖だ、と心を落ち着かせる。

彼が言ってくれるのだから、それを信じなくてどうするというのだろうか。

……私ったら、本当になんでかしらね。

自嘲気味に思うと、急に眼前の彼が思い付いたかのように表情を変えて、

 

「……ああでも、愛人というか、二番目ぐらいは許してくれないか?」

 

前言撤回。

やっぱり大丈夫じゃなかった。

 

「……勇季、帰ったらベッドでお説教ね」

 

私は低い声でそう告げると、苦笑いする彼を尻目に来た道を戻る。

……でも、“三人で”というのもいいかもしれないわね。

彼の言う二番目がどういう人なのかを考えながら、私は今日の試合について勇季と相談することにした。

 

 

 

 

 

「……」

メノ達が通り過ぎた物陰で、高級そうなスーツで身を固めた男は、ただ黙って二人の会話を聞いていた。

彼等が立ち去ったあと、懐のケースから煙草を一つ取り出すと、それを口に加えた。

そして、ポケットを探りながら自分がライターを忘れたことに気付いたタイミングで、脇からそれが差し出される。

 

「エルカーノか」

 

ライターを差し出した男の名を呼ぶ。

四十近くになっても全く変わらない、理知的ながら軽い雰囲気が特徴的な同期の元リンクスであり、現アーキテクトである『エンリケ・エルカーノ』は薄い笑みを浮かべる。

 

「どうだったローディー。彼女の様子は?」

 

スーツで固めた男、『ローディー』はエルカーノのライターの火で、煙草に火を点す。

代わりとしてエルカーノに煙草を手渡し、紫煙を吐きつつ言葉を放つ。

 

「……彼女にはパートナーが既にいるのだ。我々が気にすることでもないだろう」

 

「けどよ、メノちゃんが戻ってきたって聞いたとき、一番喜んでたのはお前さんだろ?」

 

リンクス戦争以前、GAには戦力たりえるリンクスの数が乏しく、いわゆる粗製に過ぎなかったローディー達にとって、年下でありながらオリジナルであったメノは、ある種の希望足り得ていた。

プライベートでもメノは出来の良い妹のような存在であり、ハイダ工廠の件以前は外出などもよく共にしていた。

 

「メノちゃんがいなくなってから、お前もユナイトも無茶ばっかやっててよ。ワカも……、てあいつは有澤だから違うか。だから、戦後になってアイツが戻ってきたときは、そりゃあ嬉しかったよなあ……」

 

当時を懐かしむエルカーノの言葉に、ローディーは黙ったまま頷く。

ユナイトはリンクス戦争で死に、ワカは四十三代目有澤隆文を襲名。横にいるエルカーノも、今ではGAネクストのアーキテクトで知られている。

かつては粗製と謗られたローディーも、今ではリンクスとしての仕事よりも、GAの看板リンクスとしてメディアなどの表仕事に出向くばかりだ。

妹分だったメノが一生のパートナーを見つけたことは嬉しく思うが、誰よりも心優しく、だからこそ無理をしていた彼女が、また果てのない戦いの世界に戻ることを考えると複雑な気分になる。

 

「っと、そろそろ時間だな。俺は手掛けたネクストの調整があるからよ」

 

それじゃあな、とエルカーノは軽い足取りで去っていった。

それを見届けたローディーは、吸っていた煙草を近くの灰皿に押し付けて火を消し、その場を後にする。

火を消しても残った紫煙のみが、そこに留まっていた。

 

 

 

 

 

メノと共にGAの技術者と合流した勇季は、早速機体のチェックと提供された武器の確認をするため格納庫に来ていた。

カラード本部には独立傭兵の何人か間借りするかたちで居住しているため、

ネクストの格納庫も、カラードに所属するランカーの分だけ用意されている。

かなりの大きさになる格納庫の奥側で、俺の愛機であるネクスト、ローザ=ファルチェは整備されていた。

 

「ローザ=ファルチェは四脚機体ですので、バズーカ自体は安定して撃てます。……ですが片腕の武器枠が埋まってしまいますので、他の武装やスタビライザーに関しては見直しを図ってみようと考えていますが……」

 

説明するような口調でそう言ったのは、今回提供された散弾バズーカの開発元であるGAから派遣された技術者で、名前を確か、オリヴァーと言ったか。

ローザ=ファルチェは四脚故に安定性が高く、バズーカの扱いも十全にこなせる。

オリヴァーの危惧とはつまり、バズーカ以外の武装に関することなのだろう。

 

「そこは気にしなくて構わないよ。本来、コイツの左腕武器は旧式のバズーカだからな」

 

「いえ、その事は事前の資料で確認していたのですが、以前のものと比べると、散弾という特性上から全体的なアセンブルの変更も視野にいれた方が良いかと思いましたので」

 

オリヴァーの発言も尤もな話だ。本来のバズーカと散弾バズーカでは、特性も用途も些か異なる。

 

「いや、大丈夫だ。事前にシュミュレーションで試してみたが、むしろああいう物の方が使いやすいよ」

 

「それは何よりだす。我が社が自信をもって開発した新商品ですから、気に入って頂けて何よりです」

 

それでは、と最終的な調整はもう済んでいたらしく、オリヴァーは足早に格納庫を去っていく。

勇季は改めて自分の機体を見た。

GA製の四脚パーツを中心に、様々な企業のパーツを組み合わせて作られた、四脚の射撃専門機体。

自分の得意分野を中心にしたそれは、火力を重視した構成だ。

カラーリングは暗めの赤褐色に黒に近い濃紺色を基本とし、アクセントに金のカラーリングを施している。

実のところ、実際にこのネクストを動かしたのは今まででも二、三回程度であり、久しぶりのネクスト搭乗に勇季は心を踊らせた。

感慨深そうに愛機を眺めていると、手続きを終わらせたメノが勇季の側に来た。

彼女はランダムに選ばれた組み合わせが記された対戦表を片手に言葉をかける。

 

「これが今回の対戦表なんだけど、勇季にはちょっと面倒な相手かもしれないわ」

 

手渡された対戦表には、第二回戦目の項に俺の名前と、対戦相手である『ダリオ・エンピオ』のリンクス名が記されていた。

 

「ダリオ・エンピオ、確か ローゼンタールのリンクスだったか……」

 

「カラードランク11位の実力者よ。決して侮れる相手じゃないけど……」

 

カラードランク11位ともなれば、相応の実力をもったリンクスであることは想像に難くない。

幾ら企業主催の人気取り目的とはいえ、最悪死ぬ可能性もあるので一応の注意はしておかなければならない。

だが、こちらとて負ける気など決して無いし、なにより、オリジナルであるメノから直接指導を受けたという自負が、勇季の確固たる自信となっている。

 

「大丈夫さ。必ず勝ってくるよ」

 

そう言って、勇季はメノの額にキスをする。

それは出撃の前には必ずこうするよう、彼が前々からメノに言われていたことだった。

彼女が願うからしていることではあるのだが、言われなくても自分からやっていただろう、と勇季は考える。

それは自分にとっても、彼女にとっても大事な約束だからだ。

そして勇季は、ついに始まろうとするカラードマッチを前に、胸を高鳴らせていた。

 

 

 

 

 

次回、公開カラードマッチ(中編)




というわけで、最初の相手はダリオになります。
色々悩んだんですが、彼がかませ役にならないよう、筆者も頑張りますのでどうか応援してくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

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