山猫の砲撃手   作:中澤織部

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何故かしっちゃかめっちゃかになった休憩話。

アーマードコアの新作をまちながら傭兵業してる毎日。

VDではナイス=ショットという名前の中量二脚で傭兵とかしてますので、もし会うことがあったらどうぞよろしく(*・∀・*)ノ


束の間の休息

第4試合

リリウム ・ウォルコット(アンビエント)VSミリア・B・カーチス(ストレイド)

 

ーー勝者、ミリア・B・カーチス

 

ベルリオーズの娘の鮮烈なまでのデビュー戦は、僅か数分後におおよその下馬評を大きく覆して決着した。

ランク2のリリウム・ウォルコットを相手に圧倒的な勝利を修め、天才的な素質を見せつけたミリアは一瞬にして世界から注目された。

無論、それはカラードのリンクスにとっても例外ではなく、下位から中堅のリンクス達はミリアに感嘆と嫉妬を表し、中堅から上位のリンクスはある種の危機感をもって彼女の実力を認めた。

カラード本社ビルの中でも、セキュリティに優れたVIPルーム……通称『お茶会』と呼ばれる上位リンクスの会合が行われている場所では、突如として現れたミリアの後見人となっているセレン・ヘイズに、『お茶会』の主要メンバーたるトップリンクス達は改めて注目した。

 

「今更になってベルリオーズ……あの亡霊の名を聞くことになるとは。貴様、狙ってやったな?」

 

王小龍の睨みも意に介すことなく、セレンはグラスを傾けて言う。

 

「可愛がってるウォルコットの小娘の経歴に泥を塗られてお怒りか? まあ、その程度のことはどうでもいい」

 

そう言ってセレンは懐から端末を取り出し、机の上へ置いた。

起動させた端末はホログラムを投影し、幾つかの画像を表示させる。

表示されたのは、件のリンクスであるミリア・ベルリオーズ・カーチスの一部経歴と詳細な検査結果だ。

 

「最高クラスのAMS適正値に優れた汚染耐性……、流石はあの英雄の娘か。末恐ろしいな」

 

ローディーがそう呟くのも無理はない。

現在に至るまでに最高のAMS適正値を叩き出していたのは、オーメルのセロやアスピナのジョシュア・O・ブライエン、そしてレイレナードのベルリオーズの三名のみである。

しかし、彼等は何れもリンクス戦争で死亡した故人であり、現在における最高クラスのAMS適正を持つオッツダルヴァやハリにリザイアや、適正があっても実力がないダン・モロといった面々ですら彼らには及ばない。

そんな現状において、父を越える才能と非常に稀有なことで知られる汚染耐性を持つ彼女は最高の人材である。

 

「見ての通り、アイツは天才的な素質を持っている。それに先程の試合を見れば、如何に貴重かつ警戒すべき戦力だとわかるだろう?」

 

「天才どころかまるで怪物だな……。こんなモノを何処から見つけてきたと言うんだ?」

 

すました表情で問いかけるオッツダルヴァに、ウィン・Dも同調する。

 

「教官には毎度のこと驚かされますが、今回は異常にすぎます。あのベルリオーズの娘などと、戸籍情報ですら無かったと言うのに……」

 

「フン、アイツに関してはこれ以上は話せん。如何せん長いだけの昔話だからな。詳しくは暫くしてからだ」

 

過去には自らが天才に匹敵するとまで謳われ、引退した今では教え子が天才的な才能を見せつけている

セレン・ヘイズーーかつて霞・スミカの名で呼ばれた彼女は、不敵な笑みを浮かべて王小龍に言葉を放った。

 

「さて、これでアイツの可能性は概ね示したワケだが、……ここからは本題だ」

 

セレンが端末を操作すると、ミリアのデータから、とある機体の図面と幾つかの画像が表示される。

表示されたのは、両手にライフルを装備した、特徴的なフォルムと設計の中量二脚ネクスト。

長い間企業に抵抗し続けてきた民主主義組織、ラインアークの切り札の姿だ。

 

「何れ来るだろうカラードランク9『ホワイト・グリント』との戦いに、ミリアを参加させろ。……無理にとは言わんがな」

 

ホワイト・グリント。

殆どのリンクスが企業で開発されたパーツを組み合わせている中、天才アーキテクトとして知られるアブ・マーシュの手によってフレームを設計された、文字道理のワンオフ機体である。

数少ない反企業組織の一つにして最大規模を誇るラインアークだが、彼等が反抗を続けられているのはホワイト・グリントの存在こそが理由である。

かつては長引くと予想されていたリンクス戦争の戦況を覆し、単機で一つの企業を滅ぼした伝説のリンクスが駆る真白き閃光は、圧倒的な戦闘能力でラインアークの存続に大きく貢献してきた。

例えホワイト・グリントを打倒できたとしても、企業にとっては大きすぎる損失を被る可能性があり、何よりも貴重なネクスト戦力を失うことを恐れた企業達が揃って出し惜しんだが為に、現在の状況が生まれているのだ。

 

「成る程、既に滅んだレイレナードとはいえ、企業側の英雄ベルリオーズの遺児がホワイト・グリントを討ち滅ぼす……。ボケた老人共も納得するB級シナリオだな」

 

オッツダルヴァが含みのある表情で嘯く。

企業がリンクスを出し惜しみする大きな理由は、ホワイト・グリント程の存在に敵うだろう上位リンクスが、揃って企業専属ばかりになるからである。

例え居なくなっても困ることのない独立傭兵は基本的にカラード下位の者ばかりであった。

独立傭兵で唯一の上位ランカーであるロイ・ザーランドも、インテリオル寄りのリンクスである為に捨て駒に出来ない。

そんな中で、かつてオリジナルリンクスのNo.1として活躍した英雄ベルリオーズの愛娘が、父の仇でもあるホワイト・グリントを打倒しようとしている。

セレンがそれをわざわざ提案するのは、企業にとって大きなメリットが二つほどあるからだ。

 

第一に、目の上のたん瘤であるラインアークを排除できるという点だ。

ホワイト・グリントという唯一の存在に半ば依存しているラインアークは、言い換えてみればただの烏合の衆に過ぎず、最高戦力を失えば自然と崩壊するだろう。そうなれば企業も悩みの種であった不穏分子を排除し、他のことに注力することができる。

 

第二に、英雄の娘の敵討ちという大義名分と、“企業連合の象徴”を得られるという点だ。

かつて、ホワイト・グリントのパイロットはリンクス戦争の終盤に、レイレナード陣営の切り札であるベルリオーズ率いるネクスト部隊と交戦し、それを打ち破った過去がある。

刺激的なドラマを欲する民衆からすれば、肉親の仇討ちという大義名分を持つミリアは最高の主役だ。

企業連合が彼女を担ぎ上げれば、盲目な民衆も挙ってそれに続くだろう。

クレイドル体制以降、ラインアーク等の反体制勢力や詳細不明のネクストの出没など、企業に対する不安や不平不満が蔓延する中で、解り易いヒーローというのは不可欠な存在なのだ。

 

企業にとっての煩わしい存在を打倒し、加えて統治者である企業の威厳を保つ為の象徴を確保できる。

たとえ失敗したとしても、独立傭兵一人の損失ならば企業も専属リンクスという貴重な戦力を温存できる。

何とも単純で旨味ばかりの分かりやすい取引だが、企業からすれば万歳三唱して迎え入れたい程の安い条件だ。

 

「では、その要望は私の方から出しておきましょう。教官の経歴を踏まえれば、インテリオルからのルートからの方が容易に通る筈ですので」

 

ウィンがそう言うと、セレンはこれ以上は必要ないと判断したのか、端末の電源を落として懐に仕舞うと、グラスを片手に席を立った。

部屋から退出しようとするセレンに、呼び止めの声がかけられる。

 

「待てセレン・ヘイズ。最後に確認したいことがある」

 

声の主はGAのトップリンクス、ローディーであった。

彼は葉巻から紫煙を昇らせながら、老練とした眼差しでセレンに問いかけた。

 

「その要求……それはベルリオーズの娘が言い出したものか?」

 

ほんの一瞬、セレンは僅かに表情を堅くして、間を空けて応える。

 

「ああ、……アイツがどうしてもと言ってな」

 

「そうか。ならば何も言うまい」

 

そうか、とローディーの返答にセレンは短く答えると、急ぐように部屋を退出した。

残った五人は改めてモニターに目を向け、大いなるジャイアントキリングに未だ冷め止まらぬ歓声の響く中継を見た。

 

 

……

 

 

「ベルリオーズ……、今になってそんな名前を聞くなんて……」

眉をひそめたメノは、まるで宴会場の様な有り様になった食堂でそう呟いた。

昼食を終えた加藤勇季とメノ・ルー、そして大量のデザートを頼んだエイ・プールの三名が食後のティータイムをしていた時、試合に負けたので暇になったダン・モロと試合前にも関わらず余裕を見せるカニスの二人が意外な人物を連れてきたのが原因だった。

 

「……ミリアです……宜しく」

 

二人に挟まれる状態で連れて来られたのは、現在において最も話題になっているミリア・ベルリオーズ・カーチスだった。

誰とでも仲良くなれることで有名なダンとカニスだが、まさか彼女まで連れてくるとは、流石に勇季達も思わなかった。

 

「いやあ、負けた後にカニスと駄弁ってたら、暇そうにしてたのを見つけてよ」

 

「ああ、だから一緒に飯でも食おうかって話になったんだよ」

 

二人揃ってデカいステーキを頬張りながら、ダンとカニスの馬鹿二人はそう嘯いた。

誰であろうと気兼ねしないフレンドリー極まる彼等の行動は、時として企業の重鎮達の予想を遥か斜めに超えて来る。

 

「凄えよお前ら、お前らやっぱ凄えよ。……あ、俺は加藤勇季、よろしくな」

 

二人のお陰で早くに馴染めた経験のある勇季も、彼等と肩を組んでミリアを歓迎する。

そんな彼らに対し、驚きと戸惑いの感情を含みながら彼女は答えた。

 

「……勇季さん、ですか……」

 

英雄の忘れ形見。ベルリオーズの残り香。早くもそういった通称がまかり通っているが、生前のベルリオーズと面識のあったメノからすれば、生前の英雄がかつて見せた、戦士としての威厳と実直さは彼女にはなく、寡黙というよりは自己主張のなさが感じられた。

 

「ベルリオーズさんのお子さんでしたか。何か面影はあるんですけど、やっぱり雰囲気は違うんですね?」

 

沢山のデザートを口に頬張りながら、エイ・プールはミリアの顔をまじまじと見つめて言う。

それにミリアは萎縮してしまい、それを見たダンとカニスがミリアの肩を掴んで引き寄せた。

 

「エイさん酷いっすよ、そんなこと言って!」

 

「ミリアを苛めたら、マッハで蜂の巣にしてやんぞ!」

 

ある種の冤罪に似た非難に対し、エイはあらぬ罪に狼狽し、椅子から半ば浮いた姿勢で反論した。

 

「ちょ、何でそうなるんですか!? わ、私なにもしてませんよ!!」

 

「ミリアちゃんが怯えてるだろーが、気付け年増!」

 

「そうだぞインテリオルのBBAが!!」

 

「な、何を言ってるんですかババアって!? 私はまだ三十ちょっとですよ!!」

 

いや、三十代で行き倒れてたりするのは色々と手遅れではないのだろうか。

そう思うメノも、もう三十手前に来ているのだが、かつてそれを指摘した勇季は全治二週間の怪我を負った過去があるからか、彼は過ちを犯さぬようにダンとカニスから少しずれて、メノの側に寄っていた。

 

「三十代かー。結構若く見えるけどな?」

 

「何で私の方に来てソレを言うのか解らないけど、確かにエイは若いのよねー。……見た目は」

 

メノの言葉を聞き、少し喉が乾いた勇季はテーブルに置かれたグラスを手に取り、口をつけた。

喉を潤す感覚。少しだけの辛味があるそれは、クーガーの食品部門が売り出しているジンジャーエールだ。

以前に飲んだクーガーコーラとほぼ同じ時期に発売しており、市販のラベルにはデカデカと印刷されたローディーと共に『渋い大人の炭酸飲料。ベテランの味わい』という謎のキャッチコピーが記されていた。

食堂ではドリンクバーが設置されており、スポンサーでもある企業の供給により、飲み物ならば不足しないとも評されている。

因みに、先程まで食べたものは、質の良い合成食品ばかりである。

話を戻そう。

 

「メノは充分若いだろ? 俺の少し上だったっけ?」

 

「……貴女より二つ上。やっぱり皆、若い娘が好きなのかな」

 

「いや、俺はそういうの無いし、むしろメノぐらいが一番魅力的だぞ?」

 

「……勇季、お仕置き追加」

 

頬を少しだけ赤らめたメノとたわいもない会話を勇季がしていると、エイと取っ組み合いになりかけていたダンとカニスが一転して勇季とメノに目を向け、直ぐ後に絶望したような悔し涙を浮かべると、テーブルに拳を叩きつけて叫んだ。

 

「くそう、目の前のリア充が憎たらしい……!」

 

「アレを平然と言える神経が羨ましいぞ畜生!?」

 

見れば、エイの方も絶望した顔を浮かべながら、テーブルに突っ伏しつつ、悔しそうに呪詛を吐いていた。

 

「……お二人とも羨ましいですね。私なんて家に帰っても一人だけで何もないんですよ? もう三十を過ぎたのに独り身なんて哀れですよねー。リンクスになる前の友人なんて、もう結婚して子供が二人もいるそうですよ? 年長は小学校に入ったって嬉しそうにしてて、それなのに私なんてお金がなくて行き倒れてるような体たらく……こんな私じゃ出会いなんて有りませんよ。ハ、ハハハハハ……」

 

やや鬱が入りかけたエイを見て、これはかなり酷い状態だと、勇季は内心でそう判断した。

かつて、初めて出会ってからまだ幾ばくも経たない頃のメノも、こんな状態になっていたことがあった。

リンクスにとって重要なAMSというものは、それこそ適正に優れる人間ならばそもそもの症状もないが、かのアマジーグやアナトリアの傭兵といった人物の事例があるように、AMS適正の低い者がネクストに搭乗した場合、酷い精神負荷の影響もあって徐々に精神を蝕まれるケースが見られている。

適正の低さを武器腕で補っているエイは、低い適正と惜しみ無い努力によってその影響も強い。

 

「あー、貴女も充分魅力的な人だし、そんなに卑下する必要もないと思うんだが……」

 

「ハハハ、心にもないこと言わないでください。口だけならなんとでもーー」

 

「いや、貴女が良いなら食費とか養っても……」

 

何とも迂闊な一言だと、その場にいた誰もが勇季に呆れの感情を向けた。

基本的に、リンクスというものは自立した生活をしている。

それは、傭兵という職業の過酷さや孤独から生まれるものなのだが、エイ・プールのような企業専属のリンクスは半ば企業の社員待遇として扱われている為にそう上手くはいかない。

独立傭兵のような、特定のスポンサーを持たずに多企業からの依頼を受ける生活ならば、まだ形振り構わない仕事もよろこんで受けられるが、企業専属ともなるとそう簡単にいくことは先ずない。

エイ・プールは主にインテリオル・ユニオンやトーラスにアルドラといったグループからの依頼(というなの任務)をこなしているのだが、恐ろしいことにインテリオルの情報は極端に少ない上に不正確。過去には敵戦力を大幅に間違えたことにより、エイ自身が命の危機を感じたことは少なくない。

しかも報酬額がかなり渋い為、弾薬費や修理費で赤字寸前なのが更に悲惨さを加速させる。

正直な話、誰かに養ってもらうのならばどんな条件だろうと喜んで受け入れるだろう。

 

「……それ、本当ですか?」

 

ガバリ、と顔を上げたエイ・プールの表情は真剣そのもので、目は思い切り見開かれ、凄まじい形相になっていた。

 

「えーと、俺はわりかし本気だけどな。エイは可愛……綺麗だし、異性としても魅力的だと思うが?」

 

「な、なあカニス。アイツ死んだかな?」

 

「お前解ってんだろ? アイツは何時も自然に口説いて死ぬのさ。……ミリアちゃんも気を付けろよ?」

 

「……勇季は年上好きの女誑し……?」

 

「いやいやちょっと待てそこの馬鹿共。俺は正直に言っただけだぞ!?」

 

「勇季……。まさかとは思うけど二股とか考えてた?」

 

メノやミリアのような女性陣とダンとカニスら非リア充からの視線が痛い。

そんな有り様でも、エイはこれ幸いにと勇季の手を強引に握りしめ、何時の間にやら所持していた書類を押し付けた。

 

「この書類にサインして養ってください。記入してくれるのなら何でもしますから!」

 

「おま、これ企業連発行の婚姻届か!? 何処から取り出してきたんだソレ!?」

 

「……其処のシェフが手渡してた。ほら……」

 

「シェフーーーー!? 貴様ーーーー!!」

 

ミリアの言葉に勇季が叫ぶと、シェフはそそくさと厨房の奥に逃げ、デカいステーキとハンバーグの盛り合わせをカウンターに置いて、親指を立てながら奥に逃げた。

ウェイターが持ってきたそれにはお子様ランチ特有の旗が立っており、そこにはミリアのエンブレムと『デビューおめでとう。記念にタダだ!』とミリア宛のメモが書かれていた。

 

「……有り難う……」

 

ミリアは笑顔で厨房に手を振ると、早速フォークを手に取って食い始めた。

無論、そんな光景の中でも勇季とエイは取っ組み合いを続けていた。

 

「大丈夫ですよ企業連からは重婚も認められていますから、メノさんの欄もほらここに!」

 

「あ、本当ね。ちゃんと二人分の記入欄があるわ。最近の企業ってこんなの認めてるの?」

 

「だから何で認めてんだよ企業連は!!」

 

「やっぱり皆ハーレムが好きなんでーー」

 

「ーー馬鹿が。そんな単純な理由ならば、企業も苦労などしないだろうが」

 

突然加わった新しい声が響くと同時、エイの頭頂部に手刀が叩き込まれた。

まともに食らえばかなりの激痛となるだろうそれは、エイの意識を一息吐く分は途切れさせるには充分な威力であった。

 

「……ったぁ。だ、誰ですかいきなりーー」

 

「私だ。まだ私生活まで弛んでいるのか? 貴様は」

 

背後から通る冷たい声に、エイはだらだらと滝のような汗を流し、恐る恐る振り返った。

見れば其処には、すらりとした長身と引き締まったボディラインに暗いえんじ色のスーツを纏った、三十代後半の女性の姿があった。

纏められた黒の長髪と鋭い切れ長の目は日系と称される外観の中でも優美なものだが、彼女の纏う空気はまるで冷気のように冷たい。

ひい、という短い悲鳴とともにエイは勢いよく後退り、勇季の背に隠れた。

余程恐ろしい記憶が有るのか、エイは怯えるようにガタガタと身を震わし、傍らのメノも露骨なまでに彼女を警戒していた。

 

「えーと、まあ色々と言いたいこともあるにはあるが、先ずはアンタ誰だ?」

 

勇季が困惑気味に問うと、相手は苛立ち混じり故か、ややキツめの喋り方で答えた。

 

「私はそこにいるミリアのオペレーター、名をセレン・ヘイズという」

 

話を聞けば、彼女がある場所に顔を出した後、戻ってみたらミリアが消えていたので彼方此方を探したところ、やたらと騒がしい食堂を見れば馬鹿騒ぎの中で呑気に飯を食っていたというのだ。

勇季は元凶のダンとカニスを睨むも、二人はそっぽを向いて我知らぬとばかりに口笛を吹く。

後で絶対に酷い目に合わせてやると、勇季が心の中で思っていると、セレンはミリアの側まで移動し、彼女を咎めた。

 

「……なあ、何処かに行くのなら、先ずは私に連絡を取れと言っただろう?」

 

こつん、とセレンはミリアの頭を軽く叩いた。

対してミリアはセレンを見て、やや渋めに顔をしかめて言った。

 

「……セレン、酒臭い……」

 

「ああ、つい先程二、三杯程度な。心配するな、オペレートに支障がない程度だ」

 

それでも飲んでるのか、と回りからのツッコミにどこ吹く風か、セレンは既に頼んでいたらしいビールジョッキを片手にミリアの隣にドカリと座る。

 

「それより、随分と楽しそうだったじゃないか? 私も混ぜろ、代金は私が支払う」

 

何とも豪快なことだ、と勇季が率直に感想を抱いていると、周りのメノやダンにカニスらは率先して高いものを注文しようとしており、下手に欲張ると後で殺されると考えた勇季は、無難に軽いデザートでも頂こうかと決める。

束の間の平和な時間が、長く続いてくれればと思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

※顔文字を含めて試験的に書いてみました。

顔文字とか、たまに入れてもいいのか問うてみます。

 

 

……

 

 

ダン&カニス「それじゃあ、お言葉に甘えて俺達はこれとこれかな(・∀・)人(・∀・)」

 

ミリア「……私は、これ追加で……(  ̄▽ ̄)」

 

エイ「えーと、じゃあ私はー(*´ω`*)」

 

勇季「平和だなー( ´∀`)」

 

メノ「そうねー……あ、あとこれ追加で(´∀`*)」

 

 

……

 

 

セレン「言っておくが、お前だけは自腹か他を頼ってくれ。(# ゜Д゜)」

 

エイ「そ、そんなぁーー!?!Σ( ̄□ ̄;)」

 

 




セレンさんは酒豪。ミリアは未成年なのでそういうのは慣れていないという設定です。
後、エイ・プールは大食いで金欠のため、インテリオルやアルドラのリンクス達は、奢る度に酷い目に遭った過去を持っており、セレンもエイには奢りたくないとのこと。

次からは本編チャプター1です。

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