大長編ジータちゃん ~ルリアと小さなカリオストロ~   作:コモリモリオ

1 / 5
第1話

 bitter sweet smile again

 

 ☆【opening】

 

 ファータ・グランデ空域での活動も

 ひとしきり慣れて来た頃。

 

 ジータたちは先日、

 騎空団を幾つかのチームに分け、

 同時に複数の依頼を達成した。

 

 今は補給の為に近くの島へと

 降り立ったグランサイファー。

 

 ルリア達と出会った当初からは

 信じられないほどの大所帯となった

 ジータの騎空団であるが。

 

 食料などの消耗品の消費量も

 人が増えるにしたがって

 おのずと多くなる。

 

 その中でも飛び抜けた

 大荷物を要求する者が一人。

 

 全空に我を超える者なしと

 言ってはばからない、

 稀代の錬金術士。

 

 人の作りし神話に名を残す

 カリオストロである。

 

 そんな彼女は

 可愛らしい掛け声と共に、

 

 ジータから手渡された

 荷物の数々を開封し、

 無常なる選別を重ねていた。

 

 カリオストロ

「う~ん、これもダメッ☆

 あれもダメッ☆それもダメッ☆」

 

 カリオストロ

「どうなってんだ!

 オレ様が欲しいと言ったものが

 半分も入ってないじゃねえか!」

 

 カリオストロ

「ジータ!なんだこれは!

 それでも弟子か!

 素材の見分け方は教えただろ!」

 

 カリオストロ

「なになに、今日は仕方がない?

 錬金術の素材どころか、

 下手すれば芋の一個も出回らない?」

 

 カリオストロ

「いつもの業者が住む村が

 盗賊に囲まれて身動きが取れなくて、

 それで今から助けに行く?」

 

 カリオストロ

「はぁ、しかたがねぇ………。

 行くぞ!オレ様とお前は

 ウロボロスで先に向かう!」

 

 その可憐な身体にどれほどの

 エネルギーが潜むと言うのか。

 

 カリオストロは電光石火の勢いで、

 周囲の団員が口を挟む間もなく

 ジータの襟首を掴み、

 

 グランサイファーの

 舳先に駆け上がるや否や

 ためらわず空へと飛び降りる。

 

 ルリア

「きゃあ!」

 

 ジータと一心同体、

 巻き込まれたルリアは

 たまったものでは無い。

 

 悲鳴を上げると姿を消し、

 ジータの中に隠れてしまった。

 

 カリオストロ

「おっと、悪いなルリア。

 ウロボロスは三人でも乗れるから

 安心してくれ。」

 

 隠れる事が出来るルリアとは違い

 ジータは悲鳴をあげながら

 何処までも青空を落ちていく。

 

 カリオストロは

 ジータに抱き着きながら

 その耳に甘い声をささやいた。

 

 カリオストロ

「ジータちゃんに、ルリアちゃんもぉ、

 かわいいカリオストロと空の旅、

 一緒に楽しもうね☆」

 

 ☆【episode1 1/4】

 

 グランサイファーの全力と

 比べても、変わらないような高速で

 ウロボロスは空を進んでいく。

 

 本来なら恐ろしいほどの風圧が

 ジータたちの身を襲うはずだが、

 

 カリオストロの展開した

 高エネルギー場が

 ウロボロスの背中を包んでおり、

 

 その気になれば

 トランプで遊ぶ事さえ可能なほどの

 快適な環境を作り出していた。

 

 ルリア

「わたし、ワンペアです………。」

 

 カリオストロ

「ん…村が見えて来たか、

 悪いな、勝ち逃げするぜ。

 ファイブカードだ!」

 

 村の上空に着くやいなや

 もう一体のウロボロスを呼び出し

 我先にと降下していくカリオストロ。

 

 ジータとルリアを残した

 ウロボロスも遅れじと

 後に続いていく。

 

 負けたつもりは無いと

 ジータが手札を見せる間もなく、

 

 村を囲む盗賊の一団が

 二人を待ち受けようとしていた。

 

 ☆【episode1 2/4】

 

 盗賊A

「ひ、ひぃー!」

 

 盗賊B

「逃げろっ、勝てる訳がねえ!」

 

 カリオストロ

「なーんだ☆、逃げちゃうの?

 カリオストロ、知らないおじさんに

 囲まれて怖いなって思ったけどぉ。」

 

 カリオストロ

「いい年こいたワルガキどもに

 ゲンコツ落とす趣味は無いんだよ!

 ウロボロス、全員捕まえとけ。」

 

 ウロボロスがグオゥ、と

 巨大な岩石同士をぶつけたような

 大音量の咆哮で返事をすると、

 

 村から離れようとした盗賊たちを

 掃除でもするかのようにしっぽで

 はたき、ひとまとめに集める。

 

 間もなく盗賊団の全員が

 逆らう気力を無くしたようだ、

 

 ジータが一人ずつ

 盗賊を縄で縛っていく。

 

 村人は安全が確保されたからか

 次々と家の中から飛び出し

 ジータとカリオストロに礼を述べる。

 

 村人

「これはこれは、

 本当にありがとうございます。

 とても恐ろしい思いをしていました。」

 

 カリオストロ

「カリオストロもぉ、

 ちょっとだけ怖かったんだぁ。」

 

 少女

「お姉さん達、強いんだね。

 小さなお姉さんも凄いなあ。」

 

 カリオストロ

「ふふ、ありがと☆」

 

 普段は超然とした態度を崩さない

 カリオストロも、今ばかりは

 猫を被って応対を続けている。

 

 そんな村人達の中に

 顔見知りの行商人の姿を見付けた

 ジータはこれ幸いと声を掛けた。

 

 行商人

「おお、いつもの騎空士さんか。

 バザーの日だと言うのに街に

 行商に行けなくてすまなかったな。」

 

 ジータはこんな時に申し訳ないと

 頭を下げながら、

 錬金術の素材の販売をお願いする。

 

 行商人

「うんうん、こちらも望む所さ。

 命の恩人相手に商売をさぼるほど

 商人根性は腐っちゃいないよ。」

 

 行商人は家の中から

 錬金素材の在庫と言う在庫を

 担ぎ出して目の前に並べ始めた。

 

☆【episode1 3/4】

 

 行商人の並べた品物の数々に

 カリオストロは錬金術師としての

 微笑みを隠す事は無かった。

 

 カリオストロ

「ほぉ、千年前ならいざ知らず、

 今時こんなプロが居るとはな。」

 

 カリオストロ

「自分で採集したんだろう?

 ここから右の品は全て

 今の世じゃ禁制品の扱いだ。」

 

 カリオストロ

「バルツだろうが帝国だろうが

 持っているだけで処刑台に

 連れていかれるだろうさ。」

 

 カリオストロ

「どうやら、あくどく

 儲けてるって訳でもなさそうだが

 これを幾らで売るつもりなんだ?」

 

 行商人

「あんた、この品物の価値を

 ぱっと見ただけで解ったのか!?」

 

 カリオストロ

「うん☆ それでねぇ?

 お願いなんだけどぉ、

 ここにあるの全部ちょうだいっ!」

 

 幾らなんでもそれは

 財布を逆さにしても無理だと、

 

 ジータはカリオストロを

 止めようとしたが

 行商人は笑って首を縦に振る。

 

 行商人

「はっはっは、禁制品だけなら

 全部まとめて100ルピにするよ。

 そもそも街で売る度胸も無い。」

 

 行商人

「学んだ採集の腕を鈍らせない為に

 無理に集めていただけで、

 捨てる事も出来なかった品物だ。」

 

 行商人

「使う人の手に渡ってもらって

 今日だけ豪華な晩飯が喰えれば、

 それ以上は望まないさ。」

 

 カリオストロ

「わ~い☆ カリオストロ、

 おじさんだいすき!」

 

 結局、禁制品以外にも

 カリオストロが

 色々と買い込んだ結果、

 

 行商人の好意により

 普通な品物にも

 十分な割引をしてもらえたが、

 

 ジータとカリオストロの

 個人的な財布の中身は

 ほぼ空っぽになってしまった。

 

 カリオストロ

「ははっ、わりぃなジータ。」

 

 カリオストロ

「お礼にぃ、

 今日は一晩中カリオストロが

 サービスしてあげる☆」

 

 つまり錬金術の講義の予告だ。

 望むところとも言えるが、

 いまいち納得が行かない。

 

 すぐ近くまで追いついた

 グランサイファーを背に

 渋い顔をするジータであった。

 

 ☆【episode1 4/4】

 

 深夜を迎えたグランサイファー。

 

 魔物の襲撃を警戒する

 見張り当番を除いて

 団員の大半が眠り始めたが、

 

 カリオストロの私室で行われる

 ジータへの錬金術の講義は

 いまだ終わる気配を見せなかった。

 

 カリオストロ

「で、だ。この溶液の濃度が

 熟した茄子に似た深紫色になった時に

 氷点下22度まで一気に冷やす。」

 

 ルリア

「ぐー、ぐー。」

 

 カリオストロ

「事前に用意しておいた合成金属を

 土と風の属性を混合した

 回転魔法の応用でらせん状に変形。」

 

 ビィ

「すぴー、すぴー。」

 

 カリオストロ

「合成金属のここに空く小さな穴に

 さっきの溶液を注入して………。

 おい、ジータ、お前まで寝るな。」

 

 その声に、はっと気付いたジータは

 自分の意識が

 一瞬消えていた事を思い出す。

 

 カリオストロ

「やる気が無いなら

 謝られても仕方がないんだ、

 まだ朝にもなっていないぞ。」

 

 カリオストロ

「だから昨日手に入った素材で

 栄養ドリンクを作ってやったのに、

 なんで飲むのを嫌がりやがった。」

 

 カリオストロ

「それともぉ、カリオストロにぃ、

 口移しで飲ませてもらわないと

 飲めないのかな☆」

 

 冗談だと解っていても冗談ではない。

 

 もう既に目は覚めていると

 身振り手振りで

 必死にアピールをする。

 

 カリオストロ

「ふん!少しは喜びやがれ!

 目が覚めた所で次に行くぞ。」

 

 カリオストロ

「そうしたらキリが良くなるから

 解散だ、眠らせてやる。」

 

 ジータの返答を待つ事無く

 壁面の大きな文字盤へと身体を向けて

 講義に必要な公式などを記していく。

 

 背を向けたカリオストロの

 ジータからは見えないその顔には、

 

 可愛らしさを演出した

 作り笑顔の時には混ぜていない、

 本物の優しさが少しだけ含まれていた。

 

 30分後。

 

 完全に眠りこけたルリアはジータが、

 ビィはカリオストロがそれぞれ背負い、

 ジータの部屋まで連れていく。

 

 二人と一匹を部屋まで見送ったあと、

 カリオストロは手製の栄養ドリンクを

 飲みながら一息ついていた。

 

 カリオストロ

「ふぅ…この味も久々だな。

 バルツも帝国も頭が固くてダメだ。」

 

 カリオストロ

「禁制品、禁制品とうるさい割に

 ほとんど毒にしかならない

 ふざけた薬を市場にばらまく。」

 

 カリオストロ

「その癖に俺の研究には興味津々。

 頭の中に何が詰まってやがるんだ。」

 

 カリオストロ

「あんな奴らが科学だ魔法だ錬金だと

 適当な事をのたまいやがるから、

 ジータの教育に悪くて仕方がない。」

 

 イスに座り、ぶらぶらと

 持て余した足を机にコツコツと

 ぶつけて苛立ちを紛らわせる。

 

 カリオストロ

「ジータもジータだ。

 何故オレ様をもう少し信用しねぇ。」

 

 カリオストロ

「そんなに禁制品が気に入らないのか?

 俺がアイツに毒になるものを

 飲ませる訳がないだろう………。」

 

 カリオストロ

「ま、たまにショック死するほど

 クソ不味いのは玉に瑕だがな!」

 

 いま、カリオストロが

 飲んでいる物は原液そのままだが、

 

 水で十倍に薄めたものを

 ジータに飲ませようとしたところ、

 匂いだけで泣きそうな顔になり

 

 半ば無理やり

 ジータの口に含ませた瞬間に

 その全てを顔に吹き出された時は、

 

 思わず本気で怒ってしまったが、

 今となっては良い思い出である。

 

 カリオストロ

「ふふ、あはははっ。」

 

 思わず笑いがこみ上げたが、

 あれが飲めないようでは

 連日の徹夜に身体が耐えられない。

 

 あの不味さを受け入れる事が

 カリオストロの考える

 優秀な錬金術師の第一歩である。

 

 このままではいつまで経っても

 講義の時間がまともに作れない。

 

 あの年でほぼ素人同然の人間が、

 毎日騎空士として活動しながら

 錬金術師としても大成する。

 

 無理な話だ。

 錬金術の世界とは、そんな事が可能な

 甘っちょろい道では無い。

 

 唯一無二の天才、カリオストロでさえ

 その身の全てを錬金術に捧げて

 全てを見通す事がいまだに叶わない。

 

 ジータがカリオストロに並ぶほどの

 大きな才能を持っていると仮定しても、

 

 騎空士としてはいざ知らず、

 錬金術師としては

 小さくまとまるのが関の山だ。

 

 このままではジータを一人前の

 錬金術師に育て上げるまでには、

 途方も無い時間が掛かるだろう。

 

 まして、弟子から助手に昇格するのは

 いつになる事か。

 

 切磋琢磨するライバルと成り得るのか。

 

 そんな日は永遠に来ないのではないか。

 

 何も無い空間に千年閉じ込められても

 研究課題は尽きないカリオストロだが、

 今は一人で居る事にむなしさを覚えた。

 

 カリオストロ

「ちっ、休憩にならねえな。

 今日はオレ様も研究はひとまず置いて、

 気分転換に備品の点検でもするか。」

 

 壁に立てかけた杖を手に取ると

 二体のウロボロスを呼び出し、

 

 彼らの口も借りて同時に三重の呪文を

 詠唱すると、部屋の中央に

 ゆらゆらと揺れる異空間が現れた。

 

 ただ一人の弟子であるジータにさえ

 いまだ足を踏み入れさせた事の無い、

 カリオストロの真の研究室。

 

 全空で唯一カリオストロだけを除き、

 あらゆる錬金術師がいまだ手の届かぬ

 未知の技術を無数に集めた聖域である。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。