大長編ジータちゃん ~ルリアと小さなカリオストロ~   作:コモリモリオ

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第2話

 ☆【episode2 1/4】

 

 カリオストロが呼び出した異空間は

 現実の空間に姿を見せたからと言って

 触れば中に入れると言うものでは無い。

 

 錬金術の奥義を修めた者のみが

 異空間を自らの住居と成す事ができ、

 

 中に入ろうとするなら

 自ら設定した複雑な手順を

 正確に再現する必要がある。

 

 手順を間違えた場合の

 ペナルティは住居の主により様々だが、

 

 大抵の場合には

 不法な侵入者に致死性の攻撃を加える。

 

 そして、カリオストロのそれは

 強大な力を持つ星晶獣でも

 耐え切れず即死するほど強力。

 

 抜け道の無いものだ、本来は。

 

 カリオストロ

「………あ?」

 

 だが、しかし。

 それ故に油断していたのか。

 

 あるいはグランサイファーでの

 ジータと過ごして来た日々が、

 

 カリオストロの

 偏狭とも言える研究への執念を

 意識の隅に追いやってしまったか。

 

 カリオストロの意識の間隙をついて

 異空間へと濃密な影が飛び込んだ。

 

 カリオストロは即座に対抗措置を取る。

 異空間がシャボン玉のようにはじけ飛び、

 二体のウロボロスの口に吸いこまれる。

 

 ウロボロスの口内は

 ひとつの完成された地獄だ。

 

 カリオストロの聖域への

 不埒な侵入者達が次々と

 その地獄へと取り込まれていき、

 

 彼らの肉体も、その魂も、

 等しく運命を共にし、

 

 強靭も、狡猾も、異形も、呪怨も、

 どれもが何ひとつ意味をなさぬまま

 瞬きよりも早く分解されていく。

 

 だが、カリオストロの油断は

 事ここに至っても続いていた。

 

 一桁二桁の違いでは無く、

 侵入者の数を

 あまりに少なく見誤っていたのである。

 

 地平に並べたならば

 視界を埋め尽くしたであろうほどの

 無数の数、数、数。

 

 人影ほどの大きさの

 濃密な影の中にはどう言う理屈か

 それだけの生命が存在していた。

 

 その全てが口内に収まれば

 さしものウロボロスも周囲に

 影響を全く与えない訳にもいかない。

 

 ひとつの国の国民を丸ごと集めて

 全て同時に八つ裂きにしたかのような

 悲鳴がカリオストロの鼓膜を直撃した。

 

 さしものカリオストロも

 これには意識が朦朧としてしまう、

 五感の幾つかが脳の混乱で停止した。

 

 ☆【episode2 2/4】

 

 五感に損傷を抱えたままでは戦えないと、

 カリオストロは魂を用いた霊的な感覚へと

 肉体の情報伝達の回路を切り替える。

 

 カリオストロが怒りのままに

 周囲を見渡すとそこには複数の影があった。

 

 侵入者の指揮官のような立場なのだろうか、

 異空間に飛び込む事無く待機したらしい。

 数体、ウロボロスの牙を逃れた者が居る。

 

 カリオストロ

「こんな時間に馬鹿みたいに騒ぎやがって!

 とっさに部屋だけでも防音してなかったら

 ジータの所までこのまま聞こえるぞ!」

 

 防音をしたせいで助けが来る見込みは薄い。

 今はカリオストロだけで

 この敵を撃退しなければならない。

 

 だが、撃退するだけなら簡単だ。

 後始末が難しい。

 

 本来ぜい弱なホムンクルスの肉体では

 カリオストロの巨大な魂を

 完全に受け入れる事は出来ない。

 

 その為、カリオストロの霊体は

 普段であれば身じろぎせずに

 じっとしているようなものだが、

 

 情報伝達を霊的な感覚に切り替えて

 不本意ながら全力も出せる状態に

 移行してしまった。

 

 身体を酷使すれば即座に限界が来る。

 巨象が鶏卵に足を掛けるようなものだ、

 何処までも力を抑えなければいけない。

 

 侵入者

「やってくれたな、カリオストロ。

 貴様に我が同胞の死の数と同じだけの

 苦しみを与えてやる、今すぐにだ!」

 

 カリオストロ

「ああ………何かと思えばお前らか、

 こんな雑魚にしてやられるとはな。」

 

 侵入者

「なに!?」

 

 カリオストロ

「幽世の使徒、そうだろう?

 たいそうな名前を名乗りやがって。」

 

 カリオストロ

「覇空戦争の時にオレ様に怯えて

 あの世の果てまで逃げ隠れした

 生き残りのカスがお前らの親玉だ!」

 

 幽世の使徒

「戯言を、人間風情が!」

 

 カリオストロ

「そんなカスの命令を受けて

 動き回るお前らが、

 このカリオストロの前に立つか。」

 

 カリオストロ

「いいだろう。

 千年ぶりにオレ様を敵に回す事の

 恐怖を教えてやる。」

 

 カリオストロ

「縁もゆかりもない奴に

 オレ様がどれだけ残酷になれるか

 思い知らせてやらぁ!」

 

 ☆【episode2 3/4】

 

 不思議な胸騒ぎがして

 ジータは目を覚ました。

 外はまだ暗い。

 

 深夜とは言えないかもしれないが、

 早朝にしても始まったばかり。

 ほとんど眠れなかったようだ。

 

 ぬぐえない眠気はあるが

 再び寝てはならない気がする。

 

 昨日の日中の盗賊退治、

 一晩続いたカリオストロの講義。

 

 疲れているはずなのに

 やたら早くに目が覚めるなんて、

 大体はトラブルの前触れである。

 

 まだ長いとも言えない

 騎空士生活だが、

 こんな事にだけは自信が出て来た。

 

 ルリア

「………」

 

 どうやらルリアも

 目を覚ましたようだ。

 

 ルリア

「ジータさん、お手洗いですか?」

 

 カリオストロの様子を

 見に行くと言えば、

 ルリアも驚く事無く同行を申し出た。

 

 眠ったままのビィを抱える

 ルリアを連れて、

 カリオストロの部屋へと向かう。

 

 広いグランサイファーだが

 カリオストロの部屋は

 ジータの部屋からそう遠くはない。

 

 夜中なのに何故だろうか、

 カリオストロの部屋がある通路には

 明かりが灯され、

 

 幾つもの聞き覚えのある声が

 曲がり角の向こうから聞こえて来る。

 

 小走りで向かった先には

 カタリナを始めとして

 数名の騎空士が集まっていた。

 

 カタリナはその腕に

 カリオストロを抱きかかえている。

 

 ルリア

「カリオストロさん!

 カタリナ、一体何があったんですか!」

 

 カタリナ

「お前たちか。、

 見ての通りカリオストロが倒れた。

 酷い熱だ、医務室へ運ぶぞ。」

 

 カリオストロ

「だから…少し待てってカタリナ…。

 ジータに言っておく事がある。

 他の奴らもちょっとは聞いてろ」 

 

 そう言ってカリオストロは

 顔だけをジータに向ける。

 

 カリオストロ

「オレ様は幽世の使徒に襲われた…。

 向かってくるのは始末したが、

 スペアボディが幾つか盗まれた。」

 

 カリオストロ

「今はグランサイファーから

 持ち出せないようにしているが、

 それにも時間制限がある…。」

 

 カリオストロ

「奴ら、幽世の使徒は

 盗んだスペアボディと

 一体化を始めた。」

 

 カリオストロ

「完全に融合したらチェックメイトだ。

 船から飛んで逃げられると思え。」

 

 カリオストロ

「オレ様のスペアボディだからって

 オレ様の姿な訳じゃない、

 奴らが知る限り誰にでも化けれる…。」

 

 カリオストロ

「例外はジータ、ルリア、ビィ、

 お前たちくらいなもんさ。」

 

 カリオストロ

「他にも今ここに居る奴らは大丈夫だ。

 カタリナ達は出来るならひとかたまりで

 行動してくれ…。」

 

 辛い発作が来たのか、

 ふぅ、ふぅ、と苦しそうな息を

 無理やりに整えて話は続く。

 

 カリオストロ

「腹立たしいが、奴らはスペアボディを

 この短時間で解析して、オレ様に対して

 遠隔攻撃を仕掛けてきやがっている。」

 

 カリオストロ

「あの雑な盗みには一応の意味があった。

 早とちりはするもんじゃねえな…。」

 

 周囲にはうわ言としか思われないが、

 カリオストロは何故か満足さえしていた。

 

 カリオストロ

「オレ様を苦しめる為に

 奴らは事前に

 それなりの準備をしていたんだ。」

 

 カリオストロ

「オレ様の居ない間に錬金術も、

 少しは進んでたようで嬉しいぜ…。」

 

 カリオストロ

「だがな、オレ様の技術を持ち逃げされる

 訳にはいかねえ。」

 

 カリオストロ

「ジータ、グランサイファ―は

 今からしばらく何処にも

 寄港するな。人の出入りは禁止だ…。」

 

 カリオストロ

「オレ様の部屋の中にいいものがある、

 あとはそいつの言う事を聞いてくれ。」

 

 カリオストロ

「悪いな、

 かわいいカリオストロちゃんからの

 お願い、だ。」

 

 そこまでを一気に言い切ると

 既に意識がもうろうとし始めたのか。

 

 カリオストロは熱病に浮かされたように

 視点は定まらず、顔を赤く染め、

 玉のような汗を大量に吹き出し始めた。

 

 その尋常ではない様子に

 慌ててカリオストロを

 医務室へと運んでいったカタリナ達。

 

 いつの間に目覚めていたのか

 ビィも心配そうにカタリナ達を見送る。

 

 ビィ

「あんなに体調が悪そうな

 カリオストロ初めてみたぜ。

 大丈夫かなぁ。」

 

 自分達も着いていくべきか迷って、

 カリオストロが最後に残した言葉を

 ちゃんと確認すべきだと考え直す。

 

 ????

「おい」

 

 何故だろう、部屋の中から

 カリオストロの声がする。

 

 幻聴かと思いきや、

 ルリアにも聞こえているようで

 思わず顔を見合わせる。

 

 ????

「なにしてやがる

 はやくはいってこいよ、じーた」

 

 何か違和感はあるもののこの口調、

 これは間違いなく

 カリオストロの声のようだ。

 

 カリオストロが言う事を聞けと

 言い残したのは、

 この声の持ち主についてだろうか。

 

 ジータ達はカリオストロの部屋へと

 足を踏み入れた。

 

 ☆【episode2 4/4】

 

 ルリア

「か、かわいいです………っ!」

 

 ルリアの視線の先、テーブルの上には

 子供の手のひらに収まるほどの

 小さなカリオストロが胸を張っていた。

 

 ????

「おれさまがかわいいのは

 とうぜんのことだ!」

 

 単に小さくなったと言うよりも

 人形のようにデフォルメされた

 外見のカリオストロは

 

 口調さえ普段のカリオストロよりも

 五割増しで舌足らずのようだ。

 

 ルリア

「カリオストロさん、なんですか?」

 

 ????

「ああ!まあ、

 げんみつにはちょっとちがうんだけどな。」

 

 ????

「すぺあぼでぃはうごかせないし、

 しかたがないからさぽーとぼでぃを

 うんようすることにしたってことだ。」

 

 ビィ

「カリオストロは小さくなっても

 なんだか難しい事ばっかり言うんだな。

 オイラにはよくわかんねぇよ!」

 

 ルリア

「スペア………サポート………?」

 

 両者の違いがうまく飲み込めないのか、

 ルリアは小さなカリオストロの言葉を

 おうむ返しにつぶやく。

 

 ????

「うーん、るりあちゃん?

 わかりにくかったらぁ、

 ぷちかりおすとろ………。」

 

 プチカ

「ううん、

 ぷちかちゃんってよんでもいいよ☆」

 

 ルリア

「はい、解りました!

 プチカちゃんよろしくお願いしますね!」

 

 呼び名が決まった

 人形サイズの小さなカリオストロ、

 プチカ。

 

 カリオストロのサポートボディを

 名乗る彼女は、このグランサイファーに

 起きた事件の救いの主となり得るのか。

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